横浜ゴム(株) 2007年3月期の動向
ハイライト
(単位: |
2007年 3月期 |
2006年 3月期 |
増減率 (%) |
主な要因 |
全社 | ||||
売上高 | 497,396 | 451,911 | 10.1 | 高機能商品の投入、国内外の販売体制の強化、生産能力の増強。 |
営業利益 | 21,069 | 21,947 | (4.0) | 天然ゴム、石油化学品を中心とした原材料価格高騰。 |
経常利益 | 20,084 | 19,015 | 5.6 | 為替差益および受取配当金の増加。 |
当期純利益 | 16,363 | 21,447 | (23.7) | 前年度に計上した米国子会社の株式評価損に対する税効果がなくなったことによる。 |
タイヤ事業 | ||||
売上高 | 372,793 | 335,802 | 11.0 | 国内においてトラックの生産は減少したが、乗用車の生産が増加。そのような状況の中で積極的な営業活動を推進し、新車用タイヤは販売量・売上高ともに前期を上回る。 |
営業利益 | 14,670 | 18,109 | (19.0) | 天然ゴム、石油化学品を中心とした原材料価格の高騰。 |
新会社設立
-中国
2006年8月、トラック・バス(TB)用スチールラジアルタイヤの生産拠点「蘇州横浜輪胎有限公司」(中国・蘇州市)が起工式を開催。
>>>詳細は 設備投資 参照
-インド
2007年1月に全額出資の販売会社をインドに設立。当面はタイヤ販売を手がけ、将来的に事業統括会社としてタイヤ・ゴム製品の生産も検討。新会社は「ヨコハマ・インド」で、ニューデリー市に本社を置く。資本金は5千万円。従業員は10人規模でスタートする。売り上げ目標は2007年に3億円としている。これまでインドではシンガポールの代理店を通じて乗用車用タイヤを販売してきたが、将来的な同国の自動車需要の拡大を見込み、生産・販売のインフラを整える。(2006年10月6日付日刊自動車新聞より)
受注
同社フラッグシップタイヤが独アウディ「S8」に新車装着されたと発表。同社のタイヤがアウディに新車装着タイヤとして納入されるのは今回が初めて。新車装着認証を得たのは、時速300km以上での超高速域でも安定した走行性能を発揮する「ADVAN Sport(V103S)」をベースにした専用開発タイヤ。(2006年7月25日付日刊自動車新聞より)
2006年9月、フラッグシップタイヤ「ADVAN Sport(V103S)」が独ブラバス社の「BRABUS ROCKET(ブラバスロケット)」の装着タイヤに認定されたと発表。なお、SUVタイプの「BRABUS MV12」の装着タイヤにも認定されている。
事業提携
子会社ヨコハマ・ヨーロッパGmbHは、米国の大手更正タイヤ、バンダグの欧州子会社バンダグNVと、欧州全域で業務提携することで合意。同社とバンダグは90年代から米国と欧州の一部地域で協力関係にあり、提携を欧州全域に拡げる。(2006年9月25日付日刊自動車新聞より)
事業計画
フラッグシップタイヤ「ADVAN(アドバン)」ブランド商品の自動車メーカーへのOE承認活動を本格化する。ハイパフォーマンスモデルや高級車にアドバンタイヤの装着を勧めることで、アドバンブランドのイメージ向上を図るのが狙い。同社は2005年から、アドバンブランドをグローバル・フラッグシップと位置付け、全世界に展開している。アドバンブランドとしては最近では、ベントレー「コンチネンタルGT」やポルシェ「911カレラ4」、レクサス「GS430」などに納入した実績がある。こうした高級・高性能な量販モデルへの装着推進を通じて、アドバンブランドのイメージアップを図っていく方針。(2006年4月24日付日刊自動車新聞より)
環境対策
2006年3月末までに、当初の計画より1年前倒しして国内全8生産事業所で完全ゼロエミッションを達成したと発表。2001年4月から廃棄物の埋め立て処分量を発生の1%未満にするゼロエミッション活動に取り組み、2005年3月までに国内全生産事業所で達成、引き続き完全ゼロを目指して2005年9月までに3生産事業所で完全ゼロエミッションを実現していた。今後は2010年度末までにリサイクル率100%を目標とする。(2006年4月15日付日刊自動車新聞より)
2005年度第4四半期(2006年1-3月)の国内全生産事業所による温室効果ガス排出量が、京都議定書で定める日本の削減目標値を上回るマイナス8%を達成したと発表した。2006年度第1四半期(2006年4-6月)ではさらに排出が低減、マイナス10%となったため、今年は通年でも日本の削減目標値を上回ると見ている。同社は2010年までに温室効果ガス排出量を基準年比12%以上削減を目標に、排出量換算集計システムの構築や専門組織の確立などの活動を展開してきた。これまでに高効率コー・ジェネシステム導入や、燃料の重油からガスへの転換推進や徹底的な省エネ活動を実施している。(2006年7月20日付日刊自動車新聞より)
タイヤ生産の主力工場である新城工場(愛知県新城市)に、コージェネレーション(熱電併給)システムを導入し、2007年1月から稼働を開始。液化天然ガス(LNG)を利用した出力7,230キロワットの設備で、CO2の排出量を稼働前と比べ22%削減する計画だ。同社はすでに平塚製造所、三島工場、三重工場にクリーン燃料のコージェネレーションシステムを導入済み。今回の新城工場への導入で国内タイヤ生産の主力工場で導入が完了した。これにより、国内での総温室効果ガス排出量の2006年度年間削減目標の達成が可能になったとしている。(2007年2月2日付日刊自動車新聞より)
開発動向
(単位:百万円) |
2007年3月期 | 2006年3月期 | 2005年3月期 | |
全社 | 14,649 | 14,557 | 14,265 | |
部門別 | 研究開発本部 | 1,390 | 1,359 | 1,257 |
タイヤ事業 | 8,932 | 9,120 | 9,030 |
研究開発体制
<研究内容>
・研究本部:新素材開発・シミュレーション技術開発・分析解析技術開発・環境対応技術開発・IT応用技術開発が中心。
・タイヤ事業:素材の複合化とシミュレーション技術を駆使した研究開発活動を実施
<研究設備>
・平塚製造所内の研究開発センター「RADIC(ラディック)」が中心。スーパーコンピュータや電子顕微鏡、ESCA(材料表面分析装置)、核遠心分離装置などの装置を導入し新技術の開発を推進。
・総合タイヤテストコース「D-PARC(ディー・パーク)」と冬季用タイヤテストコース「T*MARY(ティー・マリー)」で、実車テストを実施。
新技術開発
2005年発表した第三世代設計基盤技術「マルチスケール・シミュレーション」をさらに強化する新技術として、タイヤ騒音のひとつであるタイヤ内部で発生する共鳴音(空洞共鳴音)を、タイヤが実際に走行した状態でシミュレーションすることができる技術を開発。従来、空洞共鳴音の解析はタイヤが静止した状態でしかできなかったが、新技術によって走行状態での予測が可能となったため、タイヤの静粛性向上が一段と高いレベルで進められる。(2006年6月29日付プレスリリースより)
また、「マルチスケール・シミュレーション」をさらに強化する新技術として、タイヤ材料設計を飛躍的に向上させる技術も開発。従来の「マルチスケール・シミュレーション」では、ミクロスケールの材料設計を次のマクロスケールの走行シミュレーションに利用する「一方向」のみだったが、今回の新技術はマクロスケールで得た予測をミクロスケールにフィードバックして利用できる「双方向」性を実現させた。これにより、タイヤ特性とミクロな材料構造を並行して考察できるため、タイヤ設計精度を飛躍的に高めることが可能となった。(2006年6月29日付プレスリリースより)
騒音対策のために日本道路と共同開発を進めている「多機能型弾性舗装」を、神奈川県座間市の座間市役所前の市道17号に試験施工し騒音測定を行った。その結果、「高い騒音低減効果を実証した」(同社)としている。多機能型弾性舗装は、廃タイヤを粉砕したゴム粉とけい砂を骨材として使い、これらをウレタン樹脂で接着固化させる舗装技術。舗装内部にすき間が多く弾性があることから、タイヤが原因となる騒音を抑えることができる。(2007年1月15日付日刊自動車新聞より)
ゴム製品の生産工程で発生する加硫ゴム屑から、タイヤ製品などの原材料として再利用する再生ゴムのマテリアルリサイクル量産化技術を確立。2007年1月より業界で初めて同社内でのリサイクルゴム量産化を本格的に開始。同社リサイクル技術によって生産されるリサイクルゴムは従来技術と比べ、より高品質なゴム原材料を再生でき、タイヤ製品やベルトなどに使用しても品質が低下しないのが最大の特徴。(2007年1月24日付け同社プレスリリースより)
相手方の名称 | 契約発効年月日 | 契約の内容 | 契約期間 |
Continental
AG (ドイツ) |
1990年05月21日 | トラック・バス用タイヤに関する特許及び製造技術の供与 | 2009年12月31日まで |
東洋ゴム工業(株) (日本) |
1990年08月02日 | トラック・バス用タイヤに関する特許及び製造技術の供与 | 2009年12月31日まで |
Continental
AG (ドイツ) |
2002年04月01日 | 自動車用タイヤに関する特許及び技術情報の使用許諾 | 2012年03月31日まで |
タイヤ事業の技術供与契約 (2007年3月期)
相手方の名称 | 契約発効年月日 | 契約の内容 | 契約期間 |
Continental
AG (ドイツ) |
1990年05月21日 | トラック・バス用タイヤに関する特許及び製造技術の供与 | 2009年12月31日まで |
東洋ゴム工業(株) (日本) |
1990年08月02日 | トラック・バス用タイヤに関する特許及び製造技術の供与 | 2009年12月31日まで |
Continental
AG (ドイツ) |
2002年04月01日 | 自動車用タイヤに関する特許及び技術情報の使用許諾 | 2012年03月31日まで |
設備投資
(単位:億円) | 2007年3月期 | 2006年3月期 | 2005年3月期 |
全社 | 406 | 290 | 275 |
タイヤ事業 | 370 | 256 | 226 |
・製造設備増強、生産性向上、品質向上のために131億円。
・Yokohama Tire Manufacturing (Thailand)において、乗用車・ライトトラック用タイヤ製造設備の新設で109億円。
・Yokohama Tire Philippines, Inc.において、乗用車用タイヤ製造設備の増設で55億円。
-ベトナム
ベトナムのホーチミン市近郊にバイアスタイヤの新工場を建設する。総投資額は10億円。2006年6月に着工し、2007年6月から操業を開始する。生産量を新ゴム量で年間3,100トンに引き上げる。従来からの同国向けバイアスタイヤに加え、日本市場向け産業車両用タイヤ、日本の自動車メーカー向けミニスペアタイヤなども生産する。(2006年5月22日付日刊自動車新聞より)
-中国
トラック・バス(TB)用スチールラジアルタイヤの生産拠点「蘇州横浜輪胎」(中国・蘇州市)が2006年8月11日に建設予定地である蘇州高新区で起工式を開催。同工場は2006年4月、中国事業の統括会社である「横浜橡塑(中国)」が全額出資で設立。総投資額は約93億円。2007年10月から年産35万本規模を生産する。日本・米国・タイに次ぐ、4番目のTB用スチールラジアルタイヤの工場となる。(2006年8月26日付日刊自動車新聞より)
設備の新設計画(タイヤ事業)
事業所 (所在地) |
設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 年月 |
完了 予定 年月 |
完成後の 増加能力 |
横浜ゴム(株) | |||||
平塚製造所 (神奈川県平塚市) |
生産設備 | 4,463 | 2006.04 | 2008.03 | - |
三重工場 (三重県伊勢市) |
生産設備 | 5,245 | 2006.04 | 2008.03 | - |
三島工場 (静岡県三島市) |
生産設備 | 3,077 | 2006.04 | 2008.03 | - |
新城工場 (愛知県新城市) |
生産設備 | 15,566 | 2006.04 | 2008.03 | - |
尾道工場 (広島県尾道市) |
生産設備 | 5,326 | 2006.04 | 2008.03 | - |
Yokohama Tire Corporation | |||||
セーラム工場 (米国バージニア州) 他 |
生産・その他の設備 | 3,070 | 2006.04 | 2008.03 | - |
Yokohama Tire Manufacturing Thailand | |||||
本社・工場 (タイ ラヨーン県) |
生産・その他の設備 | 7,458 | 2006.04 | 2008.03 | 乗用車・ライトトラック用 タイヤ140万本 |
杭州横浜輪胎有限公司 (Hangzhou Yokohama Tire Co., Ltd.) | |||||
本社・工場 (中国 浙江省) |
生産・その他の設備 | 2,971 | 2006.04 | 2008.03 | 乗用車用タイヤ75万本 |