日立金属 (株) 2014年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位：百万円) |
| 2014年 3月期 |
2013年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
| 全社 | ||||
| 売上高 | 807,952 | 535,779 | 50.8 | -自動車および産業インフラ・エネルギー関連製品の需要が堅調に推移 |
| 営業利益 | 59,536 | 21,079 | 182.4 | -需要堅調による売上高増加、原価低減・コスト削減効果が寄与 |
| 経常利益 | 60,898 | 21,251 | 186.6 | - |
| 当期純利益 | 39,417 | 12,955 | 204.3 | - |
| 高級金属製品 | ||||
| 売上高 | 234,101 | 219,920 | 6.4 | 1) |
| 営業利益 | 25,412 | 17,655 | 43.9 | - |
| 磁性材料 | ||||
| 売上高 | 134,182 | 142,150 | (5.6) | 2) |
| 営業利益 | 11,718 | (864) | - | - |
| 高級機能部品 | ||||
| 売上高 | 187,426 | 171,986 | 9.0 | 3) |
| 営業利益 | 12,831 | 10,188 | 25.9 | - |
| 電線材料* | ||||
| 売上高 | 250,687 | - | - | 4) |
| 営業利益 | 17,047 | - | - | - |
要因
1) 高級金属製品
主要製品別の売上状況 (対前年度比)
<金型・工具用材料>
-海外需要が好調に推移。国内需要も年後半から自動車生産の持ち直し等に伴い売上が増加。
<産業機器・エネルギー関連材料>
-自動車関連材料は、環境親和関連製品が堅調に推移。エネルギー関連材料や航空機関連材料が伸長し、増加。
<各種ロール>
-海外需要は増加したものの、国内需要が低調に推移し、減少。
2) 磁性材料
主要製品別の売上状況 (対前年度比)
<マグネット>
-希土類磁石は、国内の自動車用電装部品は順調に推移したが、原材料価格の下落やHDD関連の落ち込みを補えず、減少。
-フェライト磁石は、国内・海外ともに自動車用電装部品、家電用部品の需要が好調に推移し、増加。
<軟質磁性材料>
-ソフトフェライトは、太陽光発電用部品や自動車用電装部品等が好調に推移し、伸長。
3) 高級機能部品
主要製品別の売上状況 (対前年度比)
<耐熱鋳造部品>
-主要市場である欧州の景気低迷による影響が継続し、減少。
<高級ダクタイル鋳鉄製品>
-米国等の海外乗用車需要が引き続き旺盛に推移。国内も商用車を中心とした需要が好調に推移し全体として増加。
<アルミホイール>
-米国、国内ともに計画を下回り、減少。
4) 電線材料
主要製品別の売上状況 (対前年度比)
<自動車用部品>
-注力分野の電装部品を中心とした需要が堅調に推移。北米市場が好調なことを受け、伸長。
中期経営計画
-2013年8月、2015年度中期経営計画 (～2016年3月期) を発表。最終年度の売上高は8,800億円、営業利益は750億円を目標とする。基本方針は以下の通り：- グローバル成長戦略の強化・加速
- 新製品創出・新技術開発力の強化
- 国内事業の精選、固定費削減
- 経営統合効果の早期実現
| 重点項目 | |
| グローバル成長戦略の強化・加速 | 営業体制の検討：海外売上高比率を45%以上に ・グローバル成長戦略を加速する販売体制の構築 (1) |
| グローバル拡大を推進：海外生産比率を30%以上に ・グローバル全体戦略の策定 (1) ・利益を伴う海外展開の加速、M&Aを含む事業領域の拡大 |
|
| グローバル調達：海外調達比率の向上 ・多極、最適集中購買を実施し、コスト競争力を強化 |
|
| 人材育成、人材開発 | |
| 新製品比率の拡大 事業領域の拡大 |
新製品の継続的創出による、持続的成長の堅持 基幹新製品のグローバル競争力強化 (2) |
| 次世代の柱となる新製品、新事業の創出 | |
| キャッシュフローの改善・創出 | 変動費の削減、生産性向上 |
| 固定費削減 | |
(1) グローバル戦略の加速
旧日立電線の海外拠点の活用・連携
-同社はグローバルな生産・販売体制の再編に乗り出す。日立電線との経営統合を機に、海外にある旧両社の販売会社の移転統合を進めている。両社は自動車部品を中心にグローバル拠点を展開しているため、旧日立電線のメキシコやベトナムなどの工場で、日立金属の自動車部品を製造することを検討する。両社の資産を有効活用して投資を抑制しながら、自動車メーカー向けの現地供給体制を強化する。旧日立電線のメキシコ工場ではブレーキホースやABSセンサーなどを製造している。メキシコは、主要納入先である日系自動車メーカーが相次いで生産工場を新・増設していることから、メキシコ工場で旧日立金属の自動車関連部品の製造を検討する。ベトナムなど、旧日立金属が進出していないエリアにある旧日立電線の工場の活用を積極的に進めていく方針だ。(2014年1月23日付日刊自動車新聞より)
(2) 事業領域の拡大・創出
インドにおける自動車用鋳物の生産・供給体制強化を推進
-技術提携を結んでいるインドの自動車鋳物製造会社「RPS VIKAS Casting」および「Garima Vikas Metals」を子会社化し、自動車用鋳物の高靱性ダクタイル鋳鉄を現地生産する。従来から高靱性ダクタイル鋳鉄「HNM」の生産を行なう日本、韓国、米国にインドを追加することで世界4極での生産・供給体制を構築することになる。2017年3月期の販売目標として50億円を計画している。子会社化の流れは以下の通り：
- 2014年4月：同社グループの南陽金属とHitachi Metals Singapore Pte. Ltd.がRPS VIKASおよびGarima Vikasに資本参加することで、同社グループが51%を出資。併せてGarima Vikasの社名を「HNV Castings Private Limited (仮称)」に変更
- 2015年3月期中：HNV Castings Private Limitedを存続会社としてRPS VIKASを吸収合併
開発動向
研究開発費 |
(単位：百万円) |
| 2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
| 高級金属製品 | 5,719 | 5,192 | 5,182 |
| 磁性材料 | 3,166 | 3,514 | 4,299 |
| 高級機能部品 | 2,709 | 2,370 | 2,672 |
| 電線材料 | 5,220 | - | - |
| 合計 | 16,814 | 11,076 | 12,153 |
| -対売上高比率 | 2.1% | 2.1% | 2.2% |
研究開発体制
-同社の研究開発体制は以下の通り：- ディビジョンラボ制を導入しており、各カンパニーはそれぞれの事業戦略に沿って、各カンパニーの研究開発部門で開発を推進している。
- 次世代の主力となる新製品・新技術や基盤技術は、株式会社日立製作所の各研究所と連携して開発を実施している。
- 将来の新製品に繋がる新材料・新技術シーズの発掘には、海外を含めた大学等の社外機関と共同開発を行なっている。
研究開発拠点
| 拠点名 | 所在地 |
| 生産システム研究所 | 埼玉県熊谷市 |
| 冶金研究所 | 島根県安来市 |
| 磁性材料研究所 | 大阪府三島郡 |
| 素材研究所 | 栃木県真岡市 |
| 電線材料研究所 | 茨城県日立市 |
主な研究開発実績 (2014年3月期)
| 部門 | 開発実績 |
| 磁性材料 | -低Dy希土類焼結磁石の開発 -希土類磁石スラッジの環境親和型リサイクル法の開発 -高性能フェライト磁石の開発 |
| 高級機能部品 | -低燃費高出力ダウンサイジングエンジン用耐熱鋳鋼製品の拡充 -軽量足回り部品向けダクタイル製品の拡充 |
| 電線材料 | -ハイブリッド・電気自動車駆動モーター用高部分放電開始電圧対応平角エナメル線の開発 -電動パーキングブレーキ用ハーネスの開発 -補機用小型電源ハーネスの開発 |
希土類磁石スラッジの環境親和型リサイクル法
-ハイブリッド車などに使用されるネオジム系焼結磁石の生産過程で発生する加工くず (スラッジ) から、希土類元素と鉄を効率的に回収する新しいリサイクル方法を開発。希土類元素を高い回収率で回収できるのに加え、環境負荷低減も図れる。ネオジム系焼結磁石は、高い磁力を持つなどの特性を持つレアアースの一種。従来の回収方法である湿式法では、酸・アルカリが大量に必要で、ホウ素を含有する廃水が生じるなどの環境負荷の懸念があるほか、回収効率も低かった。同社は、製鉄で使用されている直接還元製鉄法を焼成したスラッジに適用することで、希土類元素を抽出できるリサイクル方法を世界で初めて開発した。 (2014年3月19日付日刊自動車新聞より)
技術供与契約 |
(2014年3月31日現在) |
| 相手方 (国名) |
契約品目 | 契約内容 | 期間 |
| Advanced Technology & Materials Co., Ltd. (中国) |
微細結晶軟磁性合金 | 微細結晶軟磁性合金に関する非独占的実施権の許諾 | 2005年10月1日から 契約対象特許の終了日まで |
| -TDK株式会社 (日本) -信越化学工業株式会社 (日本) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 1988年3月24日 (基本発明の権利取得日) から、 許諾した特許出願の権利が消滅する日まで |
| MCP Canada Limited Partnership (カナダ) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する独占的実施権の許諾 | 2007年8月10日から 契約対象特許の終了日まで |
| Thinova Magnet Co, Ltd. (中国) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2012年11月14日から 契約対象特許の終了日まで |
| Beijing Zhong Ke San Huan High-Tech Co., Ltd. (中国) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年3月8日から 契約対象特許の終了日まで |
| Beijing Jingci Magnet Co. (中国) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年3月25日から 契約対象特許の終了日まで |
| Advanced Technology & Materials Co., Ltd. (中国) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年3月26日から 契約対象特許の終了日まで |
| Ningbo Yunsheng Co., Ltd. (中国) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年4月26日から 契約対象特許の終了日まで |
| Vacuumschmelze GmbH & Co. KG (ドイツ) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年11月15日から 2021年7月10日まで (以降1年毎の自動更新) |
| Neorem Magnets Oy (フィンランド) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する非独占的実施権の許諾 | 2013年11月15日から 2021年7月10日まで (以降1年毎の自動更新) |
相互援助技術契約 |
(2014年3月31日現在) |
| 相手方 (国名) |
契約品目 | 契約内容 | 期間 |
| MCP Canada Limited Partnership (カナダ) |
希土類磁石 | 希土類磁石に関する特許実施権の交換 | 2000年8月22日から 契約対象特許の終了日まで |
設備投資
設備投資額 |
(単位：百万円) |
| 2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
| 全社 | 31,987 | 26,688 | 24,300 |
| -高級金属製品 | 11,849 | 10,336 | 11,191 |
| -磁性材料 | 7,297 | 8,368 | 6,848 |
| -高級機能部品 | 6,380 | 7,015 | 5,660 |
| -電線材料 | 5,604 | - | - |
-2014年3月期の主な設備投資：
| 事業部門 | 投資目的・内容 |
| 高級金属製品 | 国内における高付加価値製品の生産体制の構築、合理化投資 |
| 磁性材料 | 希土類磁石の海外生産体制の構築、合理化投資 |
| 高級機能部品 | 海外での生産体制合理化、増産投資 |
| 電線材料 | 国内における高付加価値製品の開発強化、海外での増産投資 |
設備の新設計画 |
(2014年3月31日現在) |
| 事業セグメント | 予定金額 (百万円) |
投資目的・内容 |
| 全社 | 56,000 | - |
| -高級金属製品 | 21,000 | 国内工場の合理化投資 |
| -磁性材料 | 9,500 | 希土類磁石製品の国内および海外工場における能力増強 |
| -高級機能部品 | 9,000 | 自動車部品の海外増産投資、国内工場の環境対応投資 |
| -電線材料 | 14,000 | エナメル線の海外生産体制構築、自動車電装部品の能力増強 |
