株式会社デンソー 2009年3月期の動向

ハイライト

業績 (単位:億円)
  2009年
3月期
2008年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 31,427 40,251 (21.9) -世界的な車両生産の減少及び為替差損。
経常利益 (353) 3,683 - -売上減少による操業度差損、為替差損。
当期純利益 (841) 2,444 - -
自動車部門
売上高 30,427 39,111 (22.2) -下記製品グループ別売上高を参照

自動車分野・製品グループ別売上高 (単位:億円)
  2009年
3月期
2008年
3月期
増減率 (%) 要因
熱機器 10,069 12,879 (21.8) -日系カーメーカーの車両生産の減少。
-上期好調の欧州カーメーカー向けエアコンの売上も、第3四半期以降は対象車種の減産で減少。
パワトレイン機器 7,419 9,402 (21.1) -日系カーメーカーの車両生産の減少。
-上期好調の欧州でのディーゼルコモンレールシステムの売上も、第3四半期以降は対象車種の減産で減少。
情報安全 4,714 6,500 (27.5) -日系カーメーカー・米国カーメーカーの車両生産の減少によるカーナビゲーション等の販売減少。
電気機器 2,936 3,680 (20.2) -日系カーメーカーの車両生産の減少によるスタータ、オルタネータ等の販売減少。
電子機器 2,729 3,497 (22.0) -日系カーメーカーの車両生産の減少によるエンジンECU等の販売減少。
モータ 2,183 2,708 (19.4) -日系カーメーカー・米国カーメーカーの車両生産の減少によるワイパシシテム、パワーウィンドモータ等の販売減少。
その他 376 444   -
合計 30,427 39,111 (22.2) -

地域別売上高 (単位:億円)
  2009年
3月期
2008年
3月期
増減率 (%) 要因
日本
売上高 21,456 27,259 (21.3) -国内車両生産の減少及び海外生産用部品等の輸出減少、為替差損による。
営業利益 (1,147) 1,975 - -売上減少による操業度差損、為替差損。
北中南米
売上高 5,598 8,323 (32.7) -米国の車両生産減少。
営業利益 51 415 (87.8) -売上減少による操業度差損。
欧州
売上高 4,625 6,203 (25.4) -欧州諸国の車両生産減少。
営業利益 36 265 (86.4) -売上減少による操業度差損。
豪亜
売上高 5,077 6,162 (17.6) -アセアン諸国での日系車両生産の減少。
営業利益 605 804 (24.8) -為替差損、売上減少による操業度差損。


受注

-コンパクトカー用の小型カーエアコンを新開発。トヨタ自動車が日本と欧州で販売する超小型車「iQ」に搭載。

-カーナビやオーディオ、エアコンなどの操作を手元で行えるリモートタッチコントローラーを開発。トヨタのレクサス「RX」に採用された。

-新開発の小型の有機ELディスプレーがトヨタのレクサス「RX」のメーター表示の一部に採用。

>>>詳細は、開発動向参照


会社設立

-2008年11月、三重県いなべ市の大安製作所内に、パワートレーン制御システムの車両適合業務を行う新会社「デンソーパワトレインテクノロジーズ」を設立すると発表。2010年10月に業務を開始し、11年度に約15億円の売り上げを見込む。ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン・ハイブリッドシステムといった各種パワートレーンの制御技術の高度化により、同社では制御システムを車両やエンジンに適合させる業務が拡大している。適合業務に特化した新会社を設立することで需要拡大に対応する。(2008年11月19日付日刊自動車新聞より)

-カーエアコンの配管を生産するデンソーエアーズ(愛知県安城市)と車両用空調機器の製造などをてがけるGAC(長野県安曇野市)のホース部門を事業統合して新会社を設立すると発表。ホース製造から配管までを一体となった事業展開を可能とすることで競争力の強化を図るのが狙い。2009年7月に新会社を設立して2012年度に280億円の売り上げを目指す。新会社の名称は「デンソーエアーシステムズ」として、愛知県豊川市に設置する。(2009年2月26日付日刊自動車新聞より


事業再編
-英国子会社のDENSO MANUFACTURING MIDLANDS Ltd.の清算に向けた手続きを開始。DENSO MANUFACTURING MIDLANDSは、オルタネーター・スターターの製造・販売を行っている。欧州での電機機器事業の効率化を図るためDENSO MANUFACTURING ITALIA S.p.Aへ生産を集約し、同社を解散することとした。(2008年11月7日付プレスリリースより) 

-中国・上海のソフトウエア開発会社・上海電装創智信息技術有限公司のすべての株式を2009年4月にデンソークリエイトから中国統括会社の電装(中国)投資有限公司(DICH)へ譲渡するとともに、社名を電装(上海)信息技術有限公司に変更すると発表。電装(上海)信息技術有限公司は事業をそのまま引き継ぎ、カーナビゲーションを中心とした量産製品のソフトウエア開発を行う。



2010年3月期の見通し
所在地別売上高予想 (単位:億円)
  2010年3月期 2009年3月期
日本 18,500 21,456
北中南米 5,000 5,598
欧州 3,720 4,625
豪亜 4,630 5,077

設備投資/研究開発費の見込み (単位:億円)
  2010年3月期 2009年3月期
設備投資 日本 1,020 2,216
北中南米 140 310
欧州 160 264
豪亜 240 354
1,560 3,144
研究開発費 2,600 2,971

開発動向

研究開発費 (単位:億円)
  2009年3月期 2008年3月期 2007年3月期
全社 2,971 3,115 2,799
自動車分野 2,883 3,025 2,707


研究開発体制
-1991年、愛知県に「デンソー基礎研究所」を設立。半導体エレクトロニクス、情報通信、ヒューマンマシンインターフェイス等の研究を行っている。2009年3月31日現在、従業員は396名。

-新しい技術開発課題に対応する全社横断組織「DP(デンソープロジェクト)」の運用を開始。省燃費や二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献する次世代技術をテーマに「DP省燃費技術開発室」など3室を設置した。同社の組織は事業部門ごとのグループ制で、技術開発についてもグループ単位で行うことが中心だった。DPは各事業部門から技術者を集め、当面の開発課題に対応した機動的な開発態勢をとる。今後も必要に応じ新設していく方針で、各事業部門の要素技術をベースにニーズの高い分野の技術開発を加速する。(2009年1月9日付日刊自動車新聞より)

-2008年10月、ディーゼル車用の燃料噴射装置であるコモンレールシステムの性能評価や耐久試験を行う実験棟を新たに建設すると発表。コモンレールシステムを生産する善明製作所(愛知県西尾市)内に80億円を投資して建設する。これまで本社で手掛けていた性能評価や耐久試験を、量産工場である善明製作所で行うことで開発スピードの向上を狙う。新実験棟は、善明製作所内に2009年5月に着工し、2010年4月から稼働する。建屋面積は約9千平方メートル。(2008年10月3日付日刊自動車新聞より)

-2008年4月、タイのDenso International Asia Co., Ltd.内に製品開発を行うアジアテクニカルセンターを開設。

研究開発活動
-自動車の燃費向上に取組み、ハイブリッド、ディーゼル、ガソリンの3つの主要なパワーソースに対し、さまざまな製品開発を実施。

(1) ハイブリッド
-1997年よりトヨタのプリウス向けに電池ECUやDC-DCコンバータ、高電圧リレーなどを供給し、その後高出力パワーコントロールユニットなどを製品化。今後ハイブリッド車の市場拡大に伴い、ハイブリッド製品の低コスト化、小型・軽量化、および高性能化を推進。

(2) ディーゼル
-コモンレールシステム(ディーゼル車用燃料噴射装置)の燃料噴射圧力と噴射制御の向上により、排出ガスをクリーンにする取組みを推進。

-総務省によるユビキタス特区認定を受け、2008年4月から網走市で車車間通信の一般道路試験を開始。


新製品開発
コンパクトカー用エアコンユニット
-コンパクトカー用の小型カーエアコンを新開発。「ヴィッツ」などに搭載される従来型のコンパクトカー用エアコンユニットに対し、横幅を320ミリメートルへと半減。体積を約20%低減し車室内空間の拡大につなげた。トヨタが日本と欧州で販売する超小型車「iQ」に搭載される。送風機部分に内蔵するブロワファンを小型化することで、送風機を本体と一体のコンパクトな構造にした。また、モーターを効率の良い回転数域で使うことで、エネルギー消費量を従来比で14%低減。新開発したエアコンユニットは縦型のため、同じ車種なら左ハンドル車・右ハンドル車の両方に搭載できる。このため、コスト面で従来よりも高い量産効果が期待できる。iQに搭載するユニットは愛知県西尾市の西尾製作所で生産を開始した。新開発したファンなどの部品は今後、他車種用のエアコンユニットにも展開していく。ファンなどの部分で合計10件の特許を出願。(2008年10月23日付日刊自動車新聞より)

植物由来樹脂製のラジエータタンク
-2009年1月、植物由来樹脂を使ったラジエータータンクを開発し、今春から量産を開始すると発表。植物のヒマから抽出した原料を40%使い、製造から廃棄までのライフサイクル全体での二酸化炭素(CO2)排出量を従来のナイロン製に比べ3分の2に削減した。国内外で発売される一部の車種に搭載される予定。新開発のラジエータータンクに使う樹脂はデュポンと共同開発した。植物由来樹脂を使ったラジエータタンクはこれまでも他社製品にあったが、植物由来の材料使用割合が40%と高いものは初めて。新開発樹脂は耐塩化カルシウム性も従来に比べ7倍と高く、寒冷地仕様車の低コスト化が可能になる。今後、植物由来樹脂を使ったラジエータータンクの搭載車種拡大を目指すとともに、ナイロンを使用する水回り系の部品を中心に植物由来樹脂への置き換えを図る。(2009年1月15日付日刊自動車新聞より)

リモートタッチコントローラー
-カーナビやオーディオ、エアコンなどの操作を手元で行えるリモートタッチコントローラーを開発。トヨタのレクサス「RX」に採用された。センターコンソール部に設置した操作ノブを前後左右に操作することで画面上のポインタが移動、パソコンのマウスと同様の感覚で各種操作を行える。欧州メーカー車にはダイヤル式のリモートコントローラーが採用されている例があるが、縦横2方向に操作が可能なコントローラーは世界初。コントローラーにはモーターが組み込まれており、ポインタを画面上の目的の位置に移動させようとすると、目的の位置にポインタを引き寄せる感覚を付加し、離れたディスプレーに対し正確な操作を可能にした。(2009年1月29日付日刊自動車新聞より)

小型有機ELディスプレー
-開発した小型の有機ELディスプレーがトヨタのレクサス「RX」のメーター表示の一部に採用された。トヨタ車に有機エレクトロニックバンキング(EL)ディスプレーが採用されるのは初めて。液晶に比べると視認性が格段に優れることが最大の特徴で、ドライバーの負担軽減につながる。コスト面など課題はまだ多いものの大型化・フルカラー化・低コスト化の軸で技術開発を進め適用範囲の拡大や採用車種の拡大を図っていく。(2009年2月16日付日刊自動車新聞より)


技術提携
-同社と愛三工業は、燃料系部品のフューエルポンプモジュールについて、設計や仕様を両社で共通化する方向で検討を始めた。同製品の開発は現在、両社がそれぞれの設計に基づいて行っている。協業体制の推進に向け設計を共通化し、両社で開発を効率化していく方針。早ければ次期製品から、共通化方針に基づいた製品開発に着手する方向。両社は、フューエルポンプモジュールのほか、インジェクター、スロットルボディーの3製品で、事業効率化に向けた協業の推進を図っている。ECU(電子コントロールユニット)による制御が開発の中心になるインジェクターは同社が、吸気系部品のスロットルボディーは愛三工業が、それぞれ主体的に担っていく方向で大筋合意している。フューエルポンプモジュールについては、まず設計・仕様を両社製品の間で共通化し、同じ品質の製品を、それぞれの営業網と生産拠点網により供給する体制とする方向で検討を始めた。(2008年4月25日付日刊自動車新聞より)


主な技術契約(2009年3月31日現在)
会社名
(国名)
契約品目 契約内容 契約期間
Robert Bosch GmbH
(ドイツ)
-アンチロックブレーキ
-トラクションコントロールシステム
-ビークルスタビリティコントロール
-パワーアシストブレーキ
特許実施権の受諾 2005年5月~
2020年3月
(株)日立製作所
(日本)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年1月~
2012年12月
Delphi Corporation
(米国)
-ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年5月~
2026年5月
日本精機(株)
(日本)
-計器装置 特許実施権の許諾 2007年3月~
2022年12月
Advanced Diesel Particulate Filters Sp.z o.o.
(ポーランド)
-ディーゼルパーティキュレートフィルター 特許およびノウハウ実施権の許諾 2007年9月~
合弁契約終了
斗源重工業
(韓国)
-A/Cシステム 特許およびノウハウ実施権の許諾 2008年2月~
2013年2月
Delphi Corporation
(米国)
-バリアブルバルブタイミング 特許実施権の許諾 2008年2月~
2018年4月

設備投資

北中南米