(株) タチエス 2019年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2019年
3月期
2018年
3月期
増減率
(%)
要因
売上高 300,530 295,470 1.7 -各地域における販売動向の影響及び通貨安による為替影響。
営業利益 5,411 8,663 (37.5) -
経常利益 7,049 11,934 (40.9) -
親会社株主に帰属する当期純利益 1,951 8,174 (76.1) -

地域別要因
-日本:販売が堅調に推移し、売上高は前年同期比5.9%増。販売製品構成の変化の影響等により、営業利益は前年同期比24.8%減の968百万円。
-北米:セダン市場の縮小により、売上高は前年度同期比2.9%減。販売製品構成の変化の影響により、営業損失は370百万円となった。
-中南米:一部得意先での洪水における操業停止の影響を受け、売上は前年同期比7.6%減。減収の影響に加え、販売製品構成の変化や為替変動の影響により営業損失は1,364百万円となった。
-欧州:売上高は前年同期比44.2%増。収益改善活動の効果により営業利益は32百万円。
-中国:販売が堅調に推移し、前年同期比3.8%増。営業利益は2.2%増の6,160百万円。
-東南アジア:売上高は前年同期比24.7%増、営業利益は169百万円。

 

中期計画「グローバルチームワーク 2020」

-同社は以下の目標を掲げる。

  • 品質No.1
  • 営業利益率7%
  • 世界生産シェア7%

-2018年度(2019年3月期)における同社グローバルシェアは5.2%。

 <フレーム事業の進化/深化>
-ジェイテクトとタチエスは、富士機工のシート事業をタチエスに移管(子会社TF-METALを新設)するとともに、ジェイテクトが実施する富士機工を完全子会社化するための株式公開買い付け(TOB)にタチエスが応募することで合意。ジェイテクトはステアリング製品事業、タチエスはシート事業をそれぞれ強化するのが目的。2020年には「TTK2改」にレーザー溶接(LW)を採用し、機構部品の改善を行い、更なる低コスト化を目指す。2022年までは「TTK-X」次世代フロントフレーム開発を目指している。

 

事業動向

<中南米>
-中南米において新規顧客よりシート生産・トリムカバー縫製等の受注を獲得

<米国>
-新規顧客よりEV車用シート開発ビジネス受注(TACHI-S Engineering U.S.A. にて設計および試作実験業務を行う)

メキシコ、中国に衝突試験機導入
-タチエスは、ニーズに即したタイムリーな製品開発を加速する。2018年までに日本、メキシコ、中国に衝突試験機を導入し、自動車用シートの開発、実験の世界3極体制を構築した。今後、さらに自動車メーカー各社の開発や生産の現地化、中国など海外の民族系メーカーのニーズへ迅速に対応できるようにし、採用車種の拡大や新規受注の獲得につなげる。17年にメキシコ、18年に中国と相次いで衝突試験機を導入し、グローバルでの開発体制を整えた。従来、海外の開発における衝突試験は、日本または外部機関に委託して実施していた。日本はもちろん、世界二大市場の米州と中国でも自動車メーカー各社の需要や要求にスピーディーに対応し、開発のリードタイムを短縮するとともに輸送費など開発に掛かるコストの削減につなげる。(2019年2月19日付日刊自動車新聞より)

 

受注

地域 メーカー名 モデル
日本 ホンダ Vezel、N-VAN、Jade
トヨタ RAV4
日産 Fairlady Z、Skyline
米国 ホンダ MDX、ACCORD、ACCORD FHEV
日産

Leaf、Maxima、Murano

メキシコ ホンダ HR-V
日産 KICKS(USA)、KICKS(MEXICO)、Versa、March
中国 ホンダ Vezel
日産 TERRA、X-Trail、Ruiqi6、Sylphy EV、Venucia T60、Qashqai
吉利 (Geely) 帝豪 PHEV、New 帝豪、帝豪 EV
奇瑞 Karry KX63
ASEAN 日産 Terra

 

-鄭州日産 Ruiqi6 用シート
  生産拠点:鄭州泰新汽車内飾件有限公司

  • 標準フロントシートフレーム(TTK)に 現地機構部品を搭載した地域最適安価フレームを採用
  • 日産ナバラを踏襲したデザインを再現し、オリジナル同等の座り心地を実現

-東風日産 X-TRAIL 用シート
  生産拠点:襄陽東風李爾泰極愛思汽車座椅有限公司

  • 日産リアシート共用化フレーム構想に最大限即したリアバックフレームの採用
  • 大型アームレストや三名分ヘッドレスト、ISOFIXアンカなど充実装備を備えたリアシート

 

受賞

<本田技研工業(株)より優良感謝賞「開発賞」を受賞>
ーホンダN-VAN用シート(運転席/助手席)

<IAUD国際デザイン賞 2018 金賞受賞>
ークラリオンとの共同開発「InfoSeat」

<2018年北米自動車シート品質・満足度調査((J.D. Power 2018 U.S. Seat Quality and Satisfaction Study)>

マスマーケットコンパクトSUV/MPVセグメント 第一位 (27車種中)
 三菱アウトランダースポーツ(日本版RVR)(日本愛知工場)
マスマーケットミッドサイズ/ラージカーセグメント 第一位 (20車種中)
 ホンダ CLARITY(日本武蔵工場)

 

研究開発費

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 4,583 4,647 4,130

 

研究開発拠点

タチエス技術・モノづくりセンター 東京都青梅市
アドバンスト・テクノロジー・センター 東京都青梅市
タチエス技術センター愛知 愛知県安城市
TACHI-S Engineering U.S.A. Inc. 米国ミシガン州
TF-METAL Americas Corporation 米国ミシガン州
TACHI-S Engineering Latin America S.A. de C.V. メキシコ アグアスカリエンテス州
TACHI-S Engineering Europe S.A.R.L. フランス ヴェリジー・ビラクブレー市
泰極愛思(中国)投資有限公司
[TACHI-S China Co., Ltd.]
中国広東省
泰極愛思(鄭州)汽車座椅研発有限公司
[TACHI-S Engineering Zhengzhou Co., Ltd.]
中国河南省
TACHI-S Engineering Vietnam Co., Ltd. ベトナム ホーチミン市

 

研究開発体制

-新製品の開発および新技術の基礎研究は、主に国内の技術・モノづくりセンターで効率的な開発を行うとともに、米国・欧州の拠点および国内外の技術提携先企業等を通じて、先進技術や周辺技術の積極的な情報収集を実施。
 

研究開発活動

シートおよびオリジナル機構部品開発
-自動車用シート、またシートのリクライニングデバイス、スライドレール、リフター装置、パワーシートデバイス、シートアレンジデバイス、ロングスライドレール及びその付属機構等を含めた開発をシートシステムとして行い、得意先各社へ提案し採用されている。

安全性向上技術開発
-サイドエアバック組込シート、乗員感知式スマートエアバック対応シート、頸部障害軽減システム等の開発をシートシステムとして行い、顧客から採用されている。また前後面、側面衝突に対応した安全シート構造の研究開発を行っている。

環境対応技術開発
-各種環境負荷物質の全廃に向けての対応や、自動車の燃費向上のため新材料、新構造技術を織り込んだ超軽量シートの開発等を行い、得意先各社へ提案し採用されている。

福祉車両商品の開発
-乗降性に優れたヘルパーシートの開発を行い、得意先各社へ提案し採用されている。

原価低減商品の開発
-標準化、共通化を踏まえた低コスト次世代シートを開発し、国内外の得意先各社に採用されている。

生産技術開発
-接着成形シートの改良技術開発、ヘッドレスト、アームレストの一体発泡成形技術開発、シート組立の省力化・自動化技術開発、CAD/CAMによる型製作等を展開。また、多品種少量生産を可能にした混流ラインを開発し、車種数や商品構成の増加に対応している。

シートの研究分野
-より快適なシートの開発を目指し、「座り心地」評価と、あるべきシートの構造方式について自主研究を継続。さらに、短期間での性能、質量、コストのバランスの取れた設計のため、CAE解析を行い開発期間短縮、コストダウン等を貢献。

シートデザインの開発
-将来シートコンセプト、新商品のデザイン開発、コーポレートデザインなどシートを含め同社に関するあらゆる分野のデザイン開発を独自で取組み、得意先各社へ提案し採用されている。

標準フレーム
-多様な車種で共通して使うことができる、高汎用、軽量かつ低コストの標準フレームをタチエス独自に開発、得意先各社へ提案し採用されている。

 

設備投資額

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 5,268 4,644 5,064

 
-2019年3月期の地域別設備投資額は以下の通り:

地域 主な内容 投資金額 (百万円)
日本 新規受注及びモデルチェンジ等に伴う生産対応設備 2,594
北米 モデルチェンジ等に伴う生産対応設備の更新 392
中南米 モデルチェンジ等に伴う生産対応設備の更新 1,815
欧州 生産対応設備の更新 10
中国 新規受注及び生産対応設備 284
東南アジア 生産対応設備 172


-中国現地法人の泰極愛思(鄭州)汽車座椅研発有限公司[TACHI-S Engineering Zhengzhou Co., Ltd.]が、衝突試験機を中国地域において初導入し、その稼動開始を記念する開業式を現地河南省鄭州市で行ったと発表した。衝突試験機導入は、同社グループ内で日本・メキシコに続く3機目。3拠点対応により、グローバルでオンデマンドな開発体制の基礎を構築し、顧客の要望にタイムリーに対応するとしている。(2018713日付プレスリリースより)

 

主な設備の新設計画

(2019年3月31日現在)
会社名/事業所名 設備の内容 投資予定総額
(百万円)
着工 完成予定
愛知工場 自動車座席の製造設備 2,014 2019年4月 2020年3月
平塚工場 自動車座席の製造設備 1,067 2019年4月 2020年3月
栃木工場 自動車座席の製造設備 547 2019年4月 2020年3月
(株) TF-METAL 自動車座席部品の製造設備 1,472 2019年4月 2020年3月
Industria de Asiento Superior S.A. de C.V. 自動車座席用製造設備 1,530 2019年4月 2020年3月

 

海外投資

<メキシコ>
 -Mexico-Nowは、同社が400万ドルを投じてメキシコAguascalientesに生産施設を新設し、600名を新規雇用すると報じた。Aguascalientes州拠点の従業員数は4,760名で、新規雇用によりメキシコ国内6カ所で最大の雇用人数を誇る拠点となる。報道機関によると、Aguascalientes工場は年間356,000個のシートカバーを生産する計画で、そのうち230,000個はトヨタ「Corolla」向けとなり、残りの126,000個はマツダがSalamanca工場で生産開始予定の新型「Mazda 3」向けとなる見込み。タチエスはこのほか、日産、インフィニティ、ホンダなどにも製品を供給している。(2019年2月11日付 Mexico-Nowより)

<中国>
-タチエスは中国子会社が、同国シートメーカーの湖南長豊汽車沙発の完全子会社である湖南長豊難波汽車部件の株式51%を取得して子会社化したと発表した。同時に名称を「湖南泰極愛思汽車座椅」に変更した。取得額は明らかにしていない。三菱自動車の広汽三菱汽車を主要納入先とする長豊難波を傘下に収め、中国市場で三菱自向けを強化する。新会社の前身の長豊難波は2012年7月に設立した。生産能力は年30万台で、三菱自と三菱商事、広州汽車集団との合弁会社を主要納入先とする。18年度の売上高は約5億元(約80億円)。新会社の株式の49%は長豊汽車沙発が引き続き保有する。(2019年4月22日付日刊自動車新聞より)