Johnson Matthey Plc 2019年3月期の動向

業績

(単位:百万ポンド)
2019年
3月期
2018年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 10,745 10,274 4.6 1)
営業利益 531 359 47.9 2)
部門別売上高
排気コントロールテクノロジー 2,720 2,454 10.8 3)
貴金属製品 991 956 3.7 4)
新規事業 362 312 16.0 5)


要因
1) 全社売上高
-2019年3月期の売上高は、前年比4.6%増の10,745百万ポンド。売上増は主にクリーンエアー部門の成長によるもの。

2) 営業利益
-2019年3月期の営業利益は、前年比47.9%増の531百万ポンド。増益の要因は2018年度の減損および事業再編費用90百万ポンドと2018年2月の訴訟の和解費用50百万ポンドによるもの。

3) クリーンエアー

-2019年3月期のクリーンエアー事業の売上高は、前年比10.8%増の2,720百万ポンド。

<ライトビークル用触媒事業ユニット>
-ライトビークル用触媒事業ユニットの売上高は、前年比11.1%増の1,738百万ポンド。欧州およびアジア売上高はそれぞれ21%増と3%増。米州地域の売上高約4%減により一部相殺された。

<大型ディーゼル触媒事業ユニット>
-大型ディーゼル触媒事業ユニットの売上高は、前年比10.9%増の938百万ポンド。米州クラス8トラック市場の好調が売上増に寄与した。

4) 天然資源
-2019年3月期の天然資源セクターの売上高は、前年比3.7%増の991百万ポンドとなった。

<先端ガラステクノロジー>
-先端ガラステクノロジー事業の2019年3月期売上はグローバル規模での自動車生産台数減、特に中国の販売減により前年比8.5%減の75百万ポンドとなった。

3) 新規事業
-新規事業の売上高は、前年比16.0%増の362百万ポンド。

<代替パワートレイン (Alternative Powertrain)>
-代替パワートレイン事業の売上高は、前年比32.1%増の206百万ポンド。自動車以外のバッテリーシステムおよび燃料電池に対する需要増が好調の要因。

最近の動向

-超高エネルギー電池正極材「eLNO」の商品化における2つの主要な戦略的開発を発表した。同社は、ポーランドのワルシャワ (Warsaw)西部のコニン (Konin)に43ヘクタールの土地を購入する契約を締結しており、初の「eLNO」量産工場を新設する。新工場は電気自動車 (EV)サプライチェーンの主要顧客に近接しており、「eLNO」の生産能力を年間最大10万メガトンまで拡張することができるという。また同社は、「eLNO」に使用される水酸化リチウムの供給に関して、Nemaska Lithiumとの10年契約に合意したこともあわせて発表した。(2019年3月28日付プレスリリースより)

-電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池用のニッケルベースの高出力陰極材料「GEMX」プラットフォームに関して、CAMXの知的財産権のライセンスを取得したと発表した。高ニッケル材料のNMCNCAおよびLNOを使用して幅広い陰極材料を生成する新技術「GEMX」は、今後10年以上にわたってEV用リチウムイオン電池に使用される見込み。このライセンスは、Johnson Mattheyの知的財産保護を改善、拡張し、同社の「eLNO」技術の商業化をサポートするという。(20181121日付プレスリリースより)

2020年3月期の見通し

-同社の2020年3月期の業績は、1桁台中盤~後半の増加を予想。

研究開発費

(単位:百万ポンド)
  2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 190 193 201

 

研究開発費内訳 (%)
部門 2019年3月期 2018年3月期
クリーンエアー 44 41
天然資源 19 21
ヘルス事業 8 13
新規事業 11 9
本社研究 18 16
合計 100 100

研究開発体制

-2019年3月末現在、研究開発部門の従業員はおよそ1,500名超。

研究開発人員割合 (%)
部門 2019年3月期 2018年3月期
クリーンエアー 43 41
天然資源 20 22
ヘルス事業 9 6
新規事業 11 11
本社研究 17 20
合計 100 100

研究開発拠点

-排気コントロールテクノロジー部門は以下8カ国にR&Dセンターを保有:

  • ブラジル
  • 中国
  • ドイツ
  • 日本
  • 韓国
  • スウェーデン
  • 英国
  • 米国


-燃料電池事業ユニットの研究開発は、英国のSonning Common拠点にて行なわれている。

製品開発

高エネルギーバッテリー向けeLNOカソード材料
-2017年9月、同社は自動車用バッテリーへの投資を発表するとともに、高エネルギーバッテリー向けのカソード材料リチウムニッケルオキサイド (eLNO) への開発投資を行うと発表した。同社は、9カ所の拠点で開発を進めるという。eLNOによりエネルギー密度の向上が可能で、EV向けとして性能およびコストの向上が期待できるという。

設備投資額

(単位:百万ポンド)
  2018年3月期 2018年3月期 2017年3月期
クリーンエアー 124 71 89
天然資源 53 49 53
ヘルス事業 29 40 57
新規事業 48 18 26
コーポレート 69 39 40
合計 323 217 265

 

-2019年3月期の設備投資は、約323百万ポンド。以下の主要な投資を実施:

  • ポーランド、中国、インドのクリーンエアー工場への投資。能力拡張により、欧州アジアの需要増に対応。
  • eLNO高密度バッテリー材料の開発および商品化への投資
  • 天然資源部門の白金族金属精製所の効率化と回復

-2020年3月期の設備投資は、最大約500百万ポンド。以下の主要な投資を計画:

  • ポーランド、中国、インドのクリーンエアー工場への継続的な投資。
  • eLNOへの継続投資

国内投資

-英国Clitheroeに電気自動車(EV)用電池材料のデモプラントを建設すると発表した。新工場の生産能力は年間1,000トンで、電池材料「eLNO」のサンプル提供のために使用される。また、同社初の「eLNO」の本格的商用生産工場の設計についても現在進行中で、欧州本土で2021年から2022年に生産を開始する計画。「eLNO」の主要成分はニッケルで、同社の既存のClitheroe工場はニッケル含有製品製造に豊富な経験があるため、新工場の建設地にClitheroeが選ばれたという。(201872日付プレスリリースより)

海外投資

<ポーランド>
-超高エネルギー電池正極材「eLNO」の商品化における2つの主要な戦略的開発を発表した。同社は、ポーランドのワルシャワ (Warsaw)西部のコニン (Konin)に43ヘクタールの土地を購入する契約を締結しており、初の「eLNO」量産工場を新設する。新工場は電気自動車 (EV)サプライチェーンの主要顧客に近接しており、「eLNO」の生産能力を年間最大10万メガトンまで拡張することができるという。また同社は、「eLNO」に使用される水酸化リチウムの供給に関して、Nemaska Lithiumとの10年契約に合意したこともあわせて発表した。(2019年3月28日付プレスリリースより)

-ポーランドGliwiceで最新の自動車触媒を生産する工場の起工式を行ったと発表した。投資額数百万ポンドの新工場は、広さ2万5,000平方メートル超と、この地域で最大規模の工場になる見込み。300人を雇用し、2019年半ばに稼働を開始する予定。(2018年7月24日付プレスリリースより)

<中国>
-Johnson Matthey (Zhangjiagang) Environmental Technologyが自動車触媒工場の起工式を20187月に行ったと発表した。工場は、広さ5万平方メートルで、江蘇省張家港市自由貿易地域の揚子江国際化学工業園に建設される。この自動車触媒プロジェクトは、中国の国家戦略に後押しされた投資で、中国政府が掲げる「中国製造2025」の環境にやさしい「グリーン製造コンセプト」に沿ったもの。自動車の排ガス規制が厳格化する中、顧客の中国排ガス基準「国6」への対応をサポートするとともに、よりクリーンで健康的な世界を目指す同社のビジョン実現も後押しするものになるという。(2018810日付プレスリリースより)