Johnson Matthey 2006年度の動向

ハイライト

事業概況
自動車関連事業(主に触媒部門の環境触媒テクノロジー事業)

1. 全体
- 環境触媒テクノロジー事業 (ECT)の業績は、特にディーゼル酸化触媒やキャタライズド・スート・フィルター(CSF)の売上など、欧州で伸張し前年を大きく上回った。また、アジアでは自動車用触媒の売上が伸び、北米では新たな大型ディーゼル車規制に適合する製品を導入して業績は上昇。
- アジアでの業績は好調を維持。2006年度、中国および日本での出荷量は大幅に増加し、インドおよびマレーシアの事業も引き続き好調。また今年度、日本のカーメーカーの需要に応えるため日本にある自動車用触媒の製造工場を拡張。今後さらに拡張する計画。

2. 大型ディーゼル(HDD)用触媒
-OEMへの大型ディーゼル用触媒(貴金属を除く)の売上は、2006年度前半の7百万ポンドから年度後半は46百万ポンドに増加。
-米国での売上は、トラックが法規制前の駆け込み需要の反動で、予想通り低調であった。
- 2007年度は、欧州および米国での法規制の適用時期が年度全体に広がり、かつ米国でのトラック売上が年間を通じて通常のレベルに戻ることもあり、大型ディーゼル用触媒の売上が急速に伸張するものとみている。
- アジアでのHDD事業は好調で、日本のOEM市場ではシェアを拡大、韓国ソウルで展開中の大規模なレトロフィット・キャンペーンでも売上は好調。
- 主要なトラック製造国である中国、インドの両国では、欧州・米国と同様の排ガス規制が2010年までに導入される見込み。欧州、米国、日本での大型ディーゼル排ガス規制は、2009年、2010年に大幅に強化され、今後その基準に適合するにはより高度な触媒システムが必要となる。

展望
2007年度は、2006年10月に欧州、2007年1月に米国で導入された新たな排ガス規制をクリアするためのHDD触媒の売上が年間を通して享受できると期待。業界では、2007年度の北米のトラックの売上は25%下がると予測しているが、新車として販売されるトラックは全て新たな排ガス規制に適合する必要があり、それにより同社のビジネスチャンスは大きくなるものと考えている。また同社は、軽量ディーゼル車用キャタライズド・スート・フィルター(CSF)の売上も大きく伸張、アジアにおける自動車用触媒の市場シェアも伸びるものとみており、2007年度は売上、営業利益のそれぞれで2けたの成長を見込んでいる。

開発動向

研究開発費用 (単位:百万ポンド)
- 2007年3月期 2006年3月期 2005年3月期
研究開発費用 66.5 62.7 58.2

研究開発体制
Johnson Matthey Technology Centre (JMTC) Sonning Common, UK -新材料開発
European Technology Center Royston, UK -触媒の開発及びテスト
Diesel Centre Gothenburg, Sweden -ディーゼル
Johnson Matthey Testing Detroit, USA -委託テスト
-定常状態エンジンセルダイナモ(ガソリン)
-過渡エンジンダイナモ(大型ディーゼル)
-SCAT装置
North American Technology Center Wayne, USA -触媒の開発及びテスト
Asian Technology Centre 栃木県喜連川 -触媒の開発及びテスト

・JMTCは、長期の研究を実施する主要拠点で、触媒作用、貴金属、物質科学をはじめとする分野における科学者、専門家を140名以上雇用。

-世界各地で予定されている新たな排ガス規制対応の要求に応えるため、環境触媒テクノロジー事業(ECT)の研究開発施設に投資。2007年度、英国Royston、スウェーデンGothenburgでの研究開発施設拡張が完了し、韓国の新工場にあるR&Dセンターも完成する予定。

-2006年度、燃料電池事業では、英国貿易産業省(DTI)から一部資金援助を受けて実施した最先端の自動車用の膜・電極一体構造(MEA)に関する重要プロジェクトを完了し、同様にDTIから資金援助を受けた他の英国のサプライヤーと共同で研究を行った。この研究では、MEAの核となる膜など重要な構成部品の耐久性を大きく改善。同社独自の複合設計を使用し、自動車の試験サイクルにおいて5倍の膜耐久性を実現。また、その他の改善では、パフォーマンスを維持もしくは改善させつつMEAで使用される基質と触媒のコストを5分の1に削減。

設備投資

2006年度の設備投資は、119.8百万ポンド。投資の大半は、環境触媒テクノロジー(ECT)を扱う触媒部門が対象となっており、生産能力拡大に63.9百万ポンドを投資。

国内投資

- 2006年度、キャタライズド・スート・フィルター(CSF)の製造を行う英国Roystonの新工場が完成。2007年度には別の施設を建設して生産能力を倍増。

海外投資
ロシア
今年度、ロシアで自動車用触媒の製造施設の建設を開始。この工場では、2006年春、ロシアにおいて自動車用触媒の装備を義務づける排ガス規制が導入されたことに伴い、ローカル自動車メーカーとグローバル自動車メーカー両方の需要に応えて触媒を製造する。

南アフリカ
南アフリカ工場においてキャタライズド・スート・フィルター(CSF)の生産能力を増強。欧州市場にも製品を供給。

韓国
アジアで5つめの工場となる韓国の新工場はまもなく完成し、2007年度中に生産を開始する。この新工場は、ディーゼル車及びガソリン車用の触媒を製造。また、急速に成長している韓国自動車産業をサポートするための研究開発活動も実施。