Harman International Industries, Inc. 2015年6月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2015年
6月期
2014年
6月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 6,155.3 5,348.5 15.1 1)
営業利益 469.6 329.7 42.4 2)
インフォテインメント部門
売上高 3,124.9 2,838.9 10.1 3)
営業利益 342.4 195.4 75.2 -
ライフスタイル部門
売上高 1,886.9 1,656.1 13.9 4)
営業利益 199.1 170.5 16.8 -


要因
1) 売上高
-2015年6月期の売上高は、前年比15.1%増の6,155.3百万ドル。為替のマイナス影響による308.7百万ドル分を除くと、売上高は前年比22.1%増となる。増収要因は、最近発売したプラットフォームの拡大、自動車生産台数の増加、車載向けインフォティンメントおよびオーディオ製品の使用量増加など。このほか、最近の様々な事業買収や、非自動車市場向けにグローバル物流チャネルを拡大したことなどがあげられる。

2) 営業利益
-2015年6月期の営業利益は、前年比42.4%増の469.6百万ドル。販売量が増加したことで固定費とのレバレッジ効果が高まり、粗利が増加。これにより、販売量増加に伴う販売管理費の増加分が部分的に相殺された。

3) インフォティンメント部門の売上高
-2015年6月期の部門売上高は、前年比10.1%増の3,124.9百万ドル。増収要因は、新プラットフォームの拡大、自動車生産台数の増加に伴う受注拡大、S1nn GmbH & Co. KGの買収など。これらの増収により、為替のマイナス影響による202.5百万ドル分が部分的に相殺された。

4) ライフスタイル部門の売上高
-2015年6月期の部門売上高は、前年比13.9%増の1,886.9百万ドル。インフォテインメント部門と同様に、新製品の導入、最近開始した自動車関連プログラム、自動車生産量の増加、受注増加、Bang & Olufsenの買収などが増収に貢献した。為替のマイナス影響による減収分は83.9百万ドルだった。

買収

-2015年5月、同社はデンマークのBang & Olufsen Automotiveより車載オーディオ事業の買収を完了したと発表した。買収額は約165.7百万ドルで、Bang & Olufsenの車載オーディオ事業、ならびにBang & OlufsenおよびB&O Play商標の使用ライセンスを獲得した。「Bang & Olufsen」 ブランドのオーディオ製品は、Audi、Aston Martin、BMW、Mercedes-Benzの幅広いモデルに搭載されている。今回の買収により、「Bang & Olufsen」 および 「B&O PLAY」 ブランドが同社の車載オーディオブランドのラインナップに追加される。(2015年5月29日付プレスリリースより)

-2015年1月、同社はイスラエルを本拠とするRed Bend Softwareを買収すると発表した。Red Bendは、無線端末のソフトウェアマネジメント技術やソフトウェアおよびファームウェアの無線配信 (OTA) アップデートサービスを提供している。買収額は170百万ドルで、手続きはHarmanの2015年第3四半期に完了する見込み。Harmanは、モバイル・キャリア市場におけるRed Bendの強みを活かし、自動車業界における成長を加速させるとともに、Red Bendのソフトウェアをモバイル端末や車載アプリケーション向けOTAソフトウェアサービスの業界標準にすることを目指す。(2015年1月22日付プレスリリースより)

-2014年12月、同社はインフォテインメントシステム、コネクティビティ、車載オーディオシステムなどの開発を行うS1nnを買収すると発表した。買収額は約55.4百万ドル。S1nnは、2004年にドイツのStuttgartで設立され、Volkswagen、Porsche、Audi、Bentley、Teslaなど大手自動車メーカー向けに、技術・システム統合ソリューションやソフトウェアアプリケーションサービスを提供している。従業員数は約100名。買収完了後、S1nnはHarmanのインフォテインメント部門に統合される予定。(2014年12月18日付プレスリリースより)

事業動向

-2015年6月期、BRICs (ブラジル、ロシア、インド、中国) 市場での売上高は前年より126.4百万ドル増加し、10億ドルに達した。

-2015年6月、同社のコネクテッドサービス (Connected Services) 部門が、車載ソフトウェア開発のプロセスモデル 「Automotive SPICE」 のレベル3認証を取得したと発表した。同認証はソフトウェア開発能力や、車載エレクトロニクスならびに組み込みシステムの専門性を証明するものとなる。(2015年6月16日付プレスリリースより)

-2015年3月、同社はノイズキャンセリング技術 「Road Noise Cancellation (RNC)」 を欧州市場で発売する。RNCは、タイヤやサスペンション、車体部品などを通じて、路面から車室内に伝わる不要な低周波広帯域のノイズを最小限にするシステム。RNCは、アクティブノイズコントロールシステム 「HALOsonic」 の製品ラインの一部。(2015年3月2日付プレスリリースより)

-2015年3月、同社は2015年ジュネーブモーターショーにおいて、新しいオーディオ技術 「Individual Sound Zones (ISZ)」 を欧州初公開すると発表した。この技術では、ドライバーや乗員は個々に音のゾーンを作り、車内で自分だけのオーディオ空間を作ることができるという。ナビゲーションの指示から電話や音楽まで、さまざまな種類の雑音を軽減し、全ての乗員がそれぞれ必要な音だけを聞くことができる。ISZは、全てのHarman製車載オーディオシステムにアンプを通じて統合が可能になる。(2015年3月2日付プレスリリースより)

主な受注

<2015年6月期>

搭載モデル 製品
起亜 「Optima」 (2016年モデル) Infinity Premium Audio (QuantumLogic Surround および Clari-Fi 搭載)
トヨタ 「Lexus RX」 (2016年モデル) Mark Levinson オーディオシステム
Lincoln 「Continental Concept」 Revel Premium Audio システム
Rinspeed 「Budii」 インフォテインメントシステム, Harman Kardon プレミアムオーディオシステム
Mercedes-Benz 「GLE Coupe」 Harman Kardon サウンドシステム
Mercedes-Benz 「CLA 45 AMG Shooting Brake」 Harman Kardon サウンドシステム
Volkswagen 「Touran」 MIB 2 High インフォテインメントシステム
Skoda 「Superb」 MIB 2 High インフォテインメントシステム
Seat 「Leon」 MIB 2 High インフォテインメントシステム
Audi 「Q7」 「R8」 MMI Navigation Plus インフォテインメントシステム
BMW 「1 Series」 ナビゲーションシステム Professional
Ferrari 「488 GTB」 インフォテインメントシステム, JBL Professional オーディオシステム
トヨタ 「Avensis」 Touch 2 インフォテインメントシステム (Go+ 搭載)
Land Rover 「Range Rover Evoque」 InControl Touch アドバンスドインフォテインメントシステム
Lincoln 「MKX」 Revel オーディオシステム, Revel Ultima オーディオシステム
BMW 「X5M」 「X6M」 Harman Kardon プレミアムオーディオシステム
起亜 「Sorento」 Infinity プレミアムオーディオシステム
トヨタ 「Lexus RC」 Mark Levinson プレミアムオーディオシステム
Fiat 「500X」 インフォテインメントシステム
Chrysler 「Jeep Renegade」 「Jeep Cherokee」 「Jeep Grand Cherokee」 インフォテインメントシステム
Dodge 「Viper」 インフォテインメントシステム
Ferrari 「458 Speciale Spider」 インフォテインメントシステム
トヨタ 「Yaris Hybrid」 インフォテインメントシステム
BMW 「2 Series Convertible」 「X6」 Harman Kardon プレミアムオーディオシステム, インフォテインメントシステム
BMW 「2 Series Active Tourer」 「i8」 インフォテインメントシステム
MINI 「5 door」 インフォテインメントシステム
Mercedes-Benz 「C-Class Estate」 「V-Class」 「S-Class」 インフォテインメントシステム
Audi 「A6」 「A6 Avant」 「A7 Sportsback」 「TT3」 「TT Roadster」 インフォテインメントシステム
Porsche 「Cayenne」 インフォテインメントシステム
Volkswagen 「Passat」 「Passat Variant」 インフォテインメントシステム
Land Rover 「Discovery Sport」 「XE」 インフォテインメントシステム


-同社は2015年1~4月におけるグローバル自動車メーカーからの受注総額が32億ドルに達したと発表した。BMW Group向けのインフォテインメントシステムとオーディオシステム、Daimlerおよび広汽菲亜特 (GAC-Fiat) 向けのインフォテインメントシステムなどの新規受注が含まれる。また、BMWのほかに、Ford、Fiat、Chrysler、吉利汽車 (Geely)、現代自動車からカーオーディオの新規受注も獲得している。(2015年4月30日付プレスリリースより)

-2015年4月、同社の統合インフォテインメントシステムを広汽菲亜特 (GAC-Fiat) の複数の新モデル向けに納入する複数年契約を締結したと発表した。また、吉利汽車 (Geely) のフラッグシップセダン「GC9」 には、マルチメディア・ナビゲーションシステムとプレミアムサラウンドサウンドオーディオシステムが搭載されている。同社は過去9カ月の間に、中国自動車メーカーより300百万ドル超の新規受注を獲得した。(2015年4月20日付プレスリリースより)

-同社は2014年7月におけるグローバル自動車メーカーからの新規受注額が総額13億ドルに達したと発表した。欧州の既存顧客1社からの追加受注に加え、スバル向けにも新たに受注を獲得した。スバルのグローバルモデルに搭載される次世代インフォテインメントシステム向けに、ローエンド、ミドルエンド、ハイエンドの製品を納入する。(2014年8月7日付プレスリリースより)

受賞

-2014年11月、同社子会社のHarman International (India) は、Tata Motorsより 「2014 Supplier of the Year」 を受賞したと発表した。Harmanの次世代インフォテインメントシステムは、Tata Motorsが2014年はじめに発売したミドルクラスセダン 「Zest」 に採用された。このシステムは、上海とドイツの中核センターによるサポートの下、インドのBangaloreおよびPuneにある研究開発センターで開発された。(2014年11月25日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ドル)
2015年6月期 2014年6月期 2013年6月期
全社 380.2 343.8 285.3

技術提携

-2015年6月、同社は米国のソフトウェア会社Hortonworksとの提携を発表した。Hortonworksは、データ管理プラットフォーム 「Hortonworks Data Platform (HDP)」 を通じてオープンソースのソフトウェアフレームワークを提供している。両社は今回の提携により、リアルタイムのIoT (モノのインターネット) データや分析機能、予測システムなどをコネクテッドカーのエコシステムに提供し、自動車メーカーに変革をもたらすことができるとしている。HDPは、ドライバーの運転行動や交通安全、メンテナンスや修理の必要性に関するリアルタイム警告をもとに、コネクテッドカーのセンサーデータを収集・蓄積・分析する。HarmanとHortonworksは、HDPの機能をHarmanのクラウドベースの製品に統合することを目指す。(2015年6月3日付プレスリリースより)

製品開発

多機能組み込みインフォティンメントプラットフォーム
-2015年3月、同社はジュネーブモーターショーで機能を拡張した組み込みインフォテインメントプラットフォームを発表する。これまで中型車や高級車向けに提供していた機能拡張が可能な次世代インフォテインメントプラットフォームに加え、この最新のプラットフォームはエントリーモデルや中型車を含む全セグメントに対応する。Apple 「CarPlay」 や 「Android Auto」、「MirrorLink」 など最新のスマートフォン統合技術を利用できる多機能プラットフォームを自動車メーカー向けに提供していく。(2015年3月3日付プレスリリースより)

Navigation Data Standardベースのナビゲーションシステム
-2015年3月、同社はジュネーブモーターショーにおいて、地図データを順次アップデートするNavigation Data Standard (NDS) をベースとした初のナビゲーションシステムを発表する。無線通信を経由した (OTA) 地図アップデート技術は、地図データを解析し、アップデートが必要な情報のみインフォテインメントシステムに送信する仕組みとなる。これにより、最適なデータのダウンロードおよび迅速なアップデートが可能になる。バックグラウンド更新により、ドライバーが感知することなく、また、インフォテインメントシステムのパフォーマンスも損なわれないという。(2015年3月3日付プレスリリースより)

Aha クラウドサービス製品
-2015年1月、同社は米国Las Vegasで開催される国際家電ショー 「CES 2015」 において、3つの新たなAhaクラウドサービス 「Aha Remote」、「Aha Analytics」、「Aha Updates」 を発表する。Aha Remoteは、スマートフォンアプリケーションプラットフォームをOEMに供給するもので、OEMの顧客は車両のリモートコントロールに使用することができる。Aha Analyticsは、コネクテッドカーから得られるデータをOEMが分析用に編集できるようにするもの。Aha Updatesは、車両アプリケーションおよびコネクテッドデバイス用にコスト効果が高い無線アップデートをOEMが供給できるようにするもの。(2015年1月6日付プレスリリースより)

Road Noise Cancellation技術
-2014年10月、同社はアクティブノイズコントロールシステム「HALOsonic」の製品群を拡充する。このシステムは、Lotus Engineeringと共同で開発したもの。Harmanの 「Road Noise Cancellation (RNC)」 技術は、タイヤが道路を転がる際に発生する不要なノイズを最小限にする。「アンチノイズ」 の原理をベースとしたRNCは、ノイズ伝達経路に配置された加速度計で作られた参照信号に対して、アンチノイズ音波をオーディオシステムから出力しノイズを抑制する。その結果、より静かで快適な車室空間を作り出すことができるという。すでに市場導入の準備が完了しており、自動車メーカーは車の騒音レベルを気にすることなく、軽量化素材を使用して燃費向上を実現できるという。(2014年10月22日付プレスリリースより)

特許

-2015年6月末時点、同社は3,456件以上の特許を保有、2,211件の特許を申請中。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2015年6月期 2014年6月期 2013年6月期
インフォテインメント 117.3 91.5 54.4
ライフスタイル 42.8 43.0 25.6
プロフェッショナル 21.3 12.5 11.8
サービス 5.2 - -
その他 5.9 10.1 9.9
合計 192.5 157.1 101.7

米国国内投資

-2014年11月、同社は自動車事業の北米本社を着工したと発表した。米国ミシガン州のNoviに建設する新本社の建物面積は188,000平方フィート。2015年秋に完成する予定。まず従業員750名が勤務し、数年以内に250名を増員する。新本社は以下の設備・施設を備える予定。

  • 運転支援システム、次世代ナビゲーション、セキュリティ製品など先進インフォテインメントシステムおよびプラットフォームのエンジニアリング研究室
  • テレマティクス、無線アップデートサービス、車車間・路車間通信を含むコネクティビティ製品の開発スペース
  • Harmanと顧客がソフトウェアの共同開発を行うインフォテインメント設計スタジオ
  • 変換器 (スピーカー) の正確な設計・試験を可能にする無響室
  • 大規模な試験工場

(2014年11月20日付プレスリリースより)