Harman International 2012年6月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2012年
6月期
2011年
6月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 4,364.1 3,772.3 15.7 -
営業利益 300.2 190.1 57.9 -
インフォテインメント
売上高 2,401.6 2,088.6 15.0 1)
営業利益 180.5 77.4 133.2
ライフスタイル
売上高 1,330.8 1,087.3 22.4 2)
営業利益 141.9 101.9 39.3

要因
1) インフォテインメント
-新製品の販売開始、生産量の増加、既存製品の新プラットフォームへの採用等が主な売上高増加の要因。売上高は、為替差損で40.6百万ドル相殺されたが増収増益となった。
-また、2011年3月に日本で発生した大震災の影響で、競合他社の供給が途絶したことを受け、2012年第1四半期に臨時の増収要因が発生した。

2) ライフスタイル
-主な増収要因は、欧州と北米における自動車用オーディオの売上増加、レアアース高騰分の価格転嫁、MWM Acousticsの買収効果。
-為替差損で12.2百万ドル相殺されたが、増収増益を達成。

受注

<2012年6月期>
 製品 自動車メーカー/搭載モデル 備考
Harman/Kardon オーディオシステム BMW 「X3」、「5 Series」、「6 Series」、「7 Series」 -
Harman/Kardon オーディオシステム Daimler 「Mercedes-Benz M-Class」、「Mercedes-Benz GLK-Class」、「Mercedes-Benz A-Class」、「Mercedes-Benz B-Class」、「Mercedes-Benz SLK-Class」、「Mercedes-Benz SL-Class」 -
オーディオ信号処理システム Volvo -
オーディオ、インフォテインメントシステム 吉利汽車 (Geely) 新型ミッドサイズラグジュアリーSUV、ラグジュアリーセダン -受注総額は500万ドル超。
JBL 13スピーカーオーディオシステム、次世代インフォテインメントプラットフォーム 北京汽車 (BAIC) フルサイズラグジュアリーセダン
JBL オーディオシステム Tata 「Aria」
Aha インフォテインメントプラットフォーム ホンダ 「Acura RLX 2013年モデル」 -
Harman/Kardon サウンドシステム Daimler 「Mercedes-Benz A-Class」 -
Harman/Kardon サラウンドサウンドシステム BMW 「3 Series」 -
インフォテインメントシステム Porsche 「Boxster」 -
JBL サウンドシステム、インフォテインメントプラットフォーム Ferrari 「F12berlinetta」 -
Harman/Kardon DSPアンプ BMW 「MINI Roadster」 -
JBL サウンドシステム Peugeot 「208」 -
マルチメディアシステム 「Toyota Touch & Go」 トヨタ 「86」、「Yaris Hybrid」 -
次世代インフォテインメントシステム Volkswagen 「Golf」、Audi 「A3」、Skoda 「Octavia」 -受注総額は約12.5億ドルの見込み。
マルチメディアシステム 「Toyota Touch & Go」、「Toyota Touch & Go Plus」 トヨタ 「Yaris (Europe)」、「Avensis (Europe)」、「Prius (Europe)」、「Hilux (Europe)」 -
マルチメディアシステム 「Toyota Entune」 トヨタ 「Prius」、「Camry」 -
JBL GreenEdge オーディオシステム トヨタ 「Prius 2012年モデル」、「Prius+ 2012年モデル」、「Camry 2012年モデル」 -
Mark Levinson オーディオシステム トヨタ 「Lexus GS」 -
Lexicon 17スピーカーオーディオシステム 現代 (Hyundai) 「Genesis 2014年モデル」 -契約期間は5年間で、売上は140百万ドルの見込み。
Harman/Kardon 12スピーカーオーディオシステム 双竜 (Ssangyong) 「Chairman H 2013年モデル」 -
Frontboss 新型オーディオシステム Daimler 「Mercedes-Benz SL Roadster」 -Daimlerとの共同開発。乗員の足元にウーファーを設置。スピーカーとシャシーの間の空間を、大型の反響室のように使用する設計。
新型インフォテインメントシステム Volkswagen -約4百万ドル規模の製品供給契約を延長。2014年からインフォテインメントシステム、2015年から次世代インフォテインメントシステムを供給。
Infinity 10スピーカーシステム、VMAxリアシート用オーディオシステム、パワードサブウーファー、アンプ 長安汽車 (Changan) 「CD101」 -
Infinity 12スピーカーオーディオ 起亜 (Kia) 「Optima 2012年モデル」 -
JBL Professional サウンドシステム、インフォテインメントシステム、ナビゲーションシステム Ferrari 「458 Italia Spider」 -

海外事業

-2012年6月期、同社は中国において前年比42%のプラス成長を達成するなど、BRIC諸国を始めとした新興国での売上は堅調であり、コストパフォーマンが高い新興国に約3,800名の人員を増員。中国においては遼寧省丹東市に同社最大規模の生産拠点および研究開発施設を新設。成都市にエンジニアリングセンター、北京に中国で二番目の旗艦販売拠点を設立。今後もインド、中国の開発拠点を増強予定。また、ロシアとブラジルでは2014年冬季オリンピック、2014年FIFAワールドカップ、2016年夏季オリンピックを商機と捉え展開していく。

-LTE通信モジュールをインフォテインメントシステムに統合し、欧州におけるLTEネットワークエリアでの路上テストの準備が完了したと発表。今後、米国でのテストも予定されている。このテスト車両には、Sierra Wireless製の組込みワイヤレスモジュールAirPrimeを統合したインフォテインメントシステムプラットフォームが搭載されている。なお、同社とSierra Wirelessは、4G/LTE通信に関して1年前に協業を開始した。(2011年11月9日付プレスリリースより)

企業買収

-マイクロフォン・組み込み音響製品メーカーのMWM Acoustics, LLCの買収を発表した。MWMは米国インディアナ州を本拠とし、中国に複数拠点を保有。自動車用アクティブノイズコントロールシステムやBluetoothヘッドセット/ハンズフリー向けに、音響技術を提供している。なおMWMの製品は、GMやMagnaなどの自動車メーカー・サプライヤーにも採用されている。(2011年7月26日付プレスリリースより)

事業提携

-米国の半導体メーカーTexas Instruments (TI)との提携を発表した。TIの「OMAP 5」プロセッサーを同社の自動車用インフォテインメントプラットフォームに搭載する計画。両社は「OMAP 5」のマルチコア構造を用いることで、自動車向けに耐久性のあるナビゲーションツール、1080pグラフィック、双方向のウェブストリーミングなどを提供する。(2012年2月27日付プレスリリースより)

事業再編

-同社は自動車部門およびコンシューマー部門を再編し、ライフスタイル部門・インフォテインメント部門の2部門を新設すると発表した。ライフスタイル部門に含まれるブランドは、AKG、Harman Kardon、JBL、Mark Levinson、Infinity、Lexicon。一方のインフォテインメント部門には、ナビゲーション、ハンズフリーフォン、インターネット・ワイヤレス接続に加え、様々な車載セーフティシステム(カメラ、赤外線、レーザー)に関する製品が含まれる。なお、同社はAudi、BMW、Chrysler、Ferrari、Fiat、Hyundai、Mercedes Benz、Porsche、Peugeot、Toyota、Volvo、Volkswagenへ、インフォテインメントシステムを納入している。(2011年8月10日付プレスリリースより)

受賞

-トヨタより「Technology & Development Award」を受賞したと発表。同社は、マルチメディアシステム「Toyota Touch & Go」および「Toyota Touch & Go Plus」を、トヨタの新型「Yaris」、「Verso S」、「Avensis」、「Prius」、「Hilux」などの欧州モデルに供給している。(2012年2月27日付プレスリリースより)

-Ferrariより「Innovation Award」を受賞したと発表。なお、同社はFerrari 「FF」向けに、サラウンド音声技術「QuantumLogic」を提供している。(2011年7月25日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2012年6月期 2011年6月期 2010年6月期
全社 331.9 304.6 322.7

研究開発拠点

<中国>
-2012年6月期、遼寧省丹東市に研究開発施設を新設。また、成都市にエンジニアリングセンターを開設した。同社は上海、広東省深圳(Shenzhen)、江蘇省蘇州(Suzhou)に生産・研究開発拠点を保有。

特許

-同社の特許取得数および出願数をあわせると4,000件超に達すると発表した。なお、同社の2012年6月期の特許取得数は世界全体で200件超、出願数は250件超となっている。(2012年4月30日付プレスリリースより)

技術提携

-同社とBroadcom Corporation、NXP Semiconductors、Freescale Semiconductorは、イーサネットベースの自動車用接続システムの幅広い普及に向け、「OPEN Alliance SIG」を設立したと発表。BMW・現代自動車とともに設立したこのSIGは、車載安全性、快適性、インフォテインメントシステムの向上および、ネットワークの複雑性・配線コストの軽減を目指す。(2011年11月9日付プレスリリースより)

-フランスのAlcatel-Lucentが発足させた「ng Connect Program」へ参加すると発表した。「ng Connect Program」は多様な産業によって構成される組織で、LTE (Long Term Evolution)などの超高速帯域をベースとした次世代ブロードバンドサービスの開発・展開を行う。このプログラムにおいて、同社はさまざまなデジタル機器やプラットフォームの接続に関する開発を進める。これにより、自動車がオフィスや家の延長線上の役割を果たすことを目指す。(2011年7月19日付プレスリリースより)

製品開発

二輪車・四輪車用製品向けエントリーレベルのインフォテインメントプラットフォーム
-二輪車・四輪車用製品向けに、エントリーレベルのインフォテインメントプラットフォームを発表。同社の接続技術により、AndroidやAppleなどのスマートフォンはインフォテインメントシステムに常時接続できる。また、これまでハイエンド向けであったナビゲーションやインターネットラジオ、Harman製AHA Radioなどの機能を提供し、さらに様々なアプリへの接続が可能。なお、このプラットフォームの開発は同社のIndia Development Centerで行われた。(2012年1月9日付プレスリリースより)

サウンドシステム
-Ferrariの新型「458 Italia Spider」向けに、「JBL Professional」ブランドのサウンドシステムを開発したと発表。この11スピーカーシステムは、炭素繊維・アラミド繊維「Kevlar」・アルミニウムなど耐久性のある軽量素材を使用。また、同社はこのモデルにインフォテインメントシステム、ナビゲーションシステムも納入している。(2011年9月13日付プレスリリースより)

Androidオープンアクセサリープロトコル
-Androidオープンアクセサリープロトコルをサポートすると発表。このAndroidプロトコルをHarmanの自動車用製品に組み込むことで、スマートフォンやタブレット端末のコンテンツ(音楽、映画、ナビゲーションアプリなど)が、ダッシュボードやステアリングホイールコントロールから操作可能になる。 (2011年7月12日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
2012年6月期 2011年6月期 2010年6月期
インフォテインメント 66.0 61.7 41.0
ライフスタイル 23.7 18.1 2.7
その他 22.7 28.6 16.3
合計 112.5 108.4 60.0

海外投資

<中国>
-中国の遼寧省丹東(Dandong)市に新工場を開設したと発表。同国における生産・開発能力拡大に向けた投資計画の第2フェーズに当たり、投資額は100百万米ドル。面積46万平方フィートの同拠点に、2工場を建設。丹東のAutomtive Group工場では、オーディオ部品・システムを生産する。もう一方では、Professional GroupおよびConsumer Groupにおいて、Harman傘下の様々なブランドのオーディオエレクトロニクス、スピーカーを生産。なお同拠点は、Harmanにとって中国で4番目の拠点となる。同社は中国において、上海、広東省深圳(Shenzhen)、江蘇省蘇州(Suzhou)に生産・研究開発拠点を保有し、従業員1,200名超を雇用している。(2011年11月10日付プレスリリースより)