Haldex AB 2007年度の動向

ハイライト

業績

(百万スウェーデン・クローネ) 2007年度 2006年度 増減率(%) 備考
売上高
7,940 7,890 0.6% -
営業利益 302 390 -22.6% -
セグメント別売上高
商用車システム (CVS) 4,529 4,765 -5.0% 以下(1)項参照
油圧システム 1,467 1,331 10.2% (2)
Garphyttan ワイヤ 1,095 1,049 4.4% (3)
トラクションシステム 848 745 13.8% (4)

セグメント別動向

(1) 商用車システム
商用車システム(CVS)部門の2007年度の売上は、北米での売上が大幅に減少した影響を受け、前年度比5%減少して4,529百万クローネを計上(2006年度 :4,765百万クローネ)。欧州およびアジアの売上は、新製品発売の効果と相まって大幅に増加。これにより北米での売上減少の影響を部分的に相殺。
リストラ費用を除いた営業利益は、166百万クローネ(2006年度:232百万クローネ)。営業利益減の主な要因として、摩擦製品事業において、北米での販売量が減少したことが挙げられる。 また、2007年度通期にわたって高騰を続けた原材料費、米ドル安、北米での人員削減の関連費用も収益にマイナス影響を及ぼした。
2007年度、ディスクブレーキ関連事業の売上は約100百万クローネ減少。これは販売量減少とコスト目標が達成されなかったことが要因。
2008年度は、生産量の増加やコスト低減のために諸施策を実施すことにより、このマイナス要因が改善される見込み。

(2)油圧システム
油圧システムの2007年度の売上(為替レート変動分調整後)は、前年度比16%増加して467百万クローネ(2006年度:1,331百万クローネ)。この売上増には、主に中国企業Runguang Hydraulicsの買収と、Alfdexシステムの販売量増加が寄与。
2007年度の営業利益は、米ドル安と北米市場の低迷により、88百万クローネ(2006年度:90百万クローネ)に低下。
同部門は北米の油圧製品および大型車用ディーゼルエンジン向け市場で計上した減益分を、既存・新規の顧客に対する新規販売によって部分的に相殺した。
欧州では、好調な経済を背景に同社製品に対する需要が大幅に増加。 そのため、ドイツのHof工場の生産能力増強および生産性向上のための投資を行ってこの需要増に対応。

(3)Garphyttan ワイヤ
売上高は前年度比4%増加して1,095百万クローネ(2006年度:1,049百万クローネ)。為替レート変動調整後の売上高は7%増加。この増加は、主に高騰する原材料価格を顧客に転嫁したことによる。
営業利益は46百万クローネ(2006年度:55百万クローネ)に低下。前半6ヶ月間の収益は、Garphyttan工場での生産中断によるマイナス影響を受けた。この生産中断は主にサプライヤからの納入に関する問題が原因。また、ニッケル価格の大幅変動が棚卸し資産に影響し、そのマイナス影響が2007年度の収益に及んだ。

(4)トラクションシステム
売上高は14%増加して848百万クローネ。この増加は、主にLandroverへの継続納入およびVWの新モデル、Tiguan向け製品の納品によるもの。
営業利益は50百万クローネ(2006年度:48百万クローネ)。しかし2007年度第3四半期に納入が開始された新世代(第4世代)カップリングの生産立上げ費用、およびメキシコの新工場からの出荷準備に関する費用が発生したことが要因で。営業利益率は5.9%(2006年度:6.5%)に減少した。


受注
-2007年度、Ford GroupよりHaldex Generation IVシステムの納入契約を受注。この製品はFordの新モデル、Cougar/Kugaに搭載される。同契約では5年間にわたって製品を納入し、受注総額400百万クローネ。

-9月にフランクフルト国際自動車ショーに出展されたVolkswagenの新モデルVWTiguanに、第4世代の4輪駆動システムが搭載される。量産は2007年度終り頃に開始され、向こう5年間の受注総額は1,250百万クローネにのぼる見込み。

-2007年末、韓国の自動車メーカー、Hyundai-KIA Motorsから、第4世代カップリングおよびXWD電子ディファレンシャルブレーキをベースとした電子4輪駆動システムのプロトタイプ搭載を受注した。

-2007年6月、新型SAAB 9-3向けに、4WD システムを供給すると発表した。新型SAAB 9-3は、4輪駆動のXWDで、SAAB が第1号車誕生から60周年を記念して発売したアニバーサリーモデル。HALDEXは、新型SAAB 9-3搭載用として、同社特許技術に基づく第4世代Haldex LSC(リミテッドスリップカップリング)をベースに開発した4WDシステム(Haldex カップリング)、ならびに、同じく同社特許技術を採用したHaldex LSD(リミテッドスリップディファレンシャル)の製品プラットフォームを基に全面改良したHaldex LSD(Haldex XWD)を供給する。Haldex カップリングおよびHaldex XWDは、メキシコ・Guanajuato新工場で生産し、SAABに供給される。(2007年6月12日付プレスリリースより)


リストラクチャリング

-2007年度、北米市場の困難な状況に対処するため、数々の施策を実施した。
その1つとして2007年度末に、米国アラバマ州Prattvilleにある摩擦製品工場の北米市場向けドラムブレーキライニングの生産事業を売却し、2008年度第1四半期に、 生産を主にメキシコ、中国、インドのサブサプライヤに委託することを決定した。また、主に北米のOEM市場を中心とした、ディスクブレーキ用ライニング製品の生産に関係する工場の操業に対してもさまざまな戦略上の代替案が検討されている。
さらに、米国テネシー州Parisにある工場を2007年初めに閉鎖。この工場では、主にコンプレッサーの生産、およびエアマネジメント事業部門のその他特定製品の組み立てを行っていた。同工場の生産機能の大部分を中国に移転し、生産機能の約4分の1を売却または段階的に廃止。
さらに、大幅な減産も実施した。

開発動向

研究開発費

(単位:百万スウェーデン・クローネ) 2007年
12月期
2006年
12月期
2005年
12月期
研究開発費 335 349 343

製品開発
第5世代の4輪駆動システム
-高い費用効果を発揮する、第5世代の4輪駆動システムの開発が現在複数の自動車メーカーと共同で進められている。2008年冬の時点では、2台の試作品を搭載して車両試験が実施されており、量産は2011年に開始予定。

制御可能なディファレンシャルスリップ
-高速走行時に車両のトラクションおよび安定性を向上させる、制御可能なディファレンシャルスリップを備えたシステムを開発。

Haldexデュアルトルクドライブ
-次世代のトルクベクタリング用システムの開発も推進中。このシステムはHaldexデュアルトルクドライブとして知られており、従来の4輪駆動システムと比較して、車両力学(車両ダイナミクス)が大幅に向上する。

ModulX
-ModulXを開発。これは圧縮空気を使用するディスクブレーキ用のモジュラーシステムで、さまざまなニーズに合わせた対応が可能。この新システムでは、顧客ニーズへの対応がより簡単になり、バリエーションも少なくなった上に、スペア部品点数も減少してメインテナンスコストも低減できる。 同社の場合、このモジュールの大部分を将来の世代のディスクブレーキシステム に使用できることから、この製品の開発の効率性は高い。ModulXは発売以来市場では好評で、その結果ScaniaとVolvoから2件の大口供給契約を受注した。

固定式キャリパーデュアルディスク
-同社はこれまでユニークな、特許取得済みの技術に基づく固定式キャリパーデュアルディスクと呼ばれる次世代ディスクブレーキを開発してきた。このソリューションは従来のディスクブレーキとは対照的に、固定式キャリパーと2枚の可動式ディスクブレーキを結合したものである。このシステムのメリットとして、小型・軽量 にも拘わらず性能が向上し、長寿命化が図られたことや、スペア部品の維持管理が簡素化されることなどが挙げられる。この新ブレーキシステムのテストは欧州および米国のトラックやトレーラーで広範囲に実施された。固定式キャリパーデュアルディスクの先行量産および納入は2008年度中に開始される予定。

ModulAir
-ModulAirの開発も継続して実施。これはモジュラーベースの知能的な空気乾燥および空気分散用の電子部品を内蔵した製品である。ModulAirは通常、車両の複数の部位に分散した機能を結合することによってのメリットを発揮する。また、低コスト化が実現されるほか、この製品をさまざまな自動車メーカーに固有の要件を満たすために簡単に改造することができる。

新世代の電子ブレーキシステム
-2007年、新世代の電子ブレーキシステムを導入した。このシステムでは、ブレーキ調整機能に加え、横滑り防止装置(ESC)、リフトアクスルインテリジェント制御(ILAS)およびトレーラーシャーシーサスペンション制御(Colas)などの機能が追加された。

設備投資

設備投資額

(単位:百万スウェーデン・クローネ) 2007年
12月期
2006年
12月期
2005年
12月期
合計 259 228 191
商用車システム 89 61 57
油圧システム 20 75 77
Garphyttanワイヤ 95 55 33
トラクションシステム 463 420 357


設備投資額の地域別内訳

(単位:百万スウェーデン・クローネ)

2007年度 2006年度
北米 94 107
欧州 302 235

アジアおよび中東

58 74
南米 9 4
合計(グループ) 463 420


海外投資
-上海郊外の蘇州(中国)に新設された生産拠点の生産量は、2007年度に徐々に引き上げられた。同工場では自動ブレーキアジャスター、ブレーキシリンダ、ディスクブレーキの生産を行うほか、アジア市場向けABSシステムおよび同社のアジア以外の地域にある工場向けブレーキ構成部品の組み立てを行う。同年、将来の需要に対応するためにマーケティング営業拠点を設立。2007年度、中国の大手トレーラーメーカー、CIMCから受注。受注総額は20百万クローネ。中国市場におけるその他の主要納入先はYutong、Dongfeng、Fuwa Axle。
-2007年4月、インドで商用車の自動ブレーキ調整に関する新法が施行され 、自動ブレーキアジャスタに対する需要が増大した。従来使用されていたブレーキアジャスターでは、ブレーキ表面とブレーキドラム間の遊びを定期的に手動で調整する必要があった。
この自動ブレーキアジャスターにより、制動距離が縮まり、メインテナンスコストが低減される だけでなく、より滑らかで、安全な制動が確保される。2007年度、Haldex IndiaはTata MotorsやAshok Leylandなどの顧客に納入を開始した。新法が施行された結果、ブレーキアジャスターの年間納入数は約100万個レベルに達する見込み。

-第4世代4WDシステムの導入に伴い、Landskrona工場に組立ラインを新設。この4WDシステムはVW Tiguan向けに生産されている。
メキシコ Irapuato工場は、 計画どおりに2007年度に完成し、2007年度末に 生産を開始した。同工場では現在、GM向け4輪駆動カッ プリングを生産中。これは以前からの供給契約を継続して受注したもので、今回の受注総額は、同社において過去最高となる20億クローネ。