株式会社ユーシン 2006年度の動向

ハイライト

業績

単位: 
百万円
2006
年度
2005
年度
増減率 要因
全社
売上高 70,016 62,834 +11.4% グループ全体で売上拡大基調が続く
営業利益 1,405 1,167 +20.4% 全部門で増益達成
経常利益 1,729 2,323 (25.5%) 為替差益が7億3000万円減
当期純利益 (594) 940 - 役員退職金等の計上による
 
自動車部門
売上高 49,279 43,751 +12.6% 主力製品のシェア拡大、電子複合製品の受注増加
営業利益 167 (414) - 米国工場の混乱は収まったものの、原材料価格上昇で増益幅は限定的

自動車部門 / 国内向け

売上高 36,457 33,763 +8.0% マツダ、スズキ、三菱自動車向け等が増収
自動車部門 / 海外向け
売上高 12,822 9,988 +28.4% GM/スズキグループ、フォード(米/欧)向け等が増収

自動車部門
1)売上高

マツダ/フォードのグローバルカー共通化が進み、マツダブランドに加えてフォードブランドの受注も確定、飛躍的に受注量が拡大。

スズキ/GMも後継の開発車種に共通展開され、シェア拡大が続き、増収を達成。

マツダ、スズキ、三菱向けのキーセット、マツダ、スズキ向けのドアラッチの開発車種は100%受注。
特にラッチの受注量が飛躍的に増大。

オートエアコン、スマートエントリーシステム、電動ステアリングロックの受注など、電子複合部品の成約も続く。
→広島工場に電子部品専用工場増設。
→詳細は設備投資を参照。

海外では、タイ工場34.7%、中国工場が21.4%、米国工場が30.8%の増収達成。
特に、タイ生産逆輸入によりコスト競争力があるメカヒーコンの引合が自動車メーカー各社より集中。

2)営業利益
前年度発生の米国工場の巨額赤字が解消。
自動車部門として黒字化したものの、亜鉛を始めとする原材料価格高騰等により増益幅は限定的。

受注
いすゞ自動車が今秋にも日本とタイで発売する小型トラック「エルフ」および来年発売予定の中型トラック「フォワード」向けキーセットを全量受注した。両国向けともにタイの現地生産拠点から供給する。いすゞへのキーセット供給、エルフ・フォワード向け部品供給はいずれも初めて。これまでいすゞ車のキーセットはトヨタ系で施錠部品最大手の東海理化が供給してきたが、タイ製の価格競争力でいすゞの最量販車種からの受注を獲得した。供給するのはスマートキーではない通常のキーセットながら、エルフは国内年販5万台規模、KD輸出と完成車を合わせ海外で同15万台規模を誇る世界トップシェアの小型トラック。フォワードも国内外合わせ、年販2万から2万5千台を販売する。ユーシン・タイでは、06年11月期中に増産対応を整え、いすゞのタイ工場および藤沢工場への出荷を始める。初年度は17万台分を供給する模様。(2006年4月26日付日刊自動車新聞より)

スマートキーが好調を維持しており、05年前半には国内外の自動車メーカー向けOEM供給で年間1万セットを想定していたが、設定車種の販売好調やライン装着オプションとしての装着率が予想外に伸び、現在では月間2万セット規模に拡大している。同社では国内外の3工場で急ピッチの増産体制を構築している。(2006年1月16日付日刊自動車新聞より)


企業買収
株式会社アンセイとの業務提携解消に伴い、2006年6月16日付けにて大和精工株式会社(本社:広島県呉市)の全株式を取得し子会社化した。子会社は現行の商号を維持、ドアラッチ他の自動車部品の製造販売を行う。資本金は7500万円、従業員は91名。(2006年6月16日付け同社プレスリリースより)

当面の課題
(1)中期経営計画の達成状況

-2006年度に行なった(株)アンセイとのラッチ事業提携解消、ユーシンUSAの合理化により、売上高は一時的に減少するが、順調な受注実績を背景に、中期的な拡大基調は維持される見通し。

-原材料価格高騰の煽りを受け、これまで二期続けて低収益を余儀なくされた。今後は高付加価値の次世代商品導入を拡大する等、収益構造の抜本改革を行ない、中期的には営業利益率5%達成を目指す。

修正中期経営計画(連結)

単位:  億円 2005年
11月期
2006年
11月期
2007年
11月期
2008年
11月期
2009年
11月期
売上高 628 700 680 766 850
営業利益 11 14 18 37 42
営業利益率(%) 1.8 2.0 2.6 4.8 4.9

(2)グローバルサプライヤーとしての生産供給体制強化

-ユーシンタイランドと中国の有信制造(中山)有限公司を日本への輸出供給拠点として、世界同一の品質と生産性を実現。日本サイドに最大の逆輸入メリットと価格競争力を提供する。

-開発、品質育成、サービスを提供するマザー工場の機能・パワーを強化するとともに、最適地生産供給のネットワークを再構築する。


各生産拠点における現状と課題

拠点 現状 課題
米国工場
(ユーシンUSA)
前年度の巨額赤字を解消する再建プロジェクトチームにより、期末単月ベースでの営業利益黒字化を達成。 中国工場への生産移行による生産縮小、現場改善による生産性向上、品質不良撲滅、人員半減のダウンサイジング等、米国工場の成功を今後他の海外生産拠点の改善に活かしていく。
ハンガリー工場
(ユーシン・ヨーロッパ)
マツダ/フォード共同開発のグローバルカー、スズキ/GM/フィアットの世界戦略車向け部品共通化で受注拡大中。 ハンガリーのEU加盟で賃金が高騰しており、更なる生産性の向上が求められる。また、中国工場、タイ工場との部品相互補完が必要。
中国工場
(有信(中山)有限公司)
低コストを活かし、ドアラッチ、キーセットなど生産の90%超を日本とアメリカ向けに輸出中。 課税強化、元高、人件費増加、材料費高騰により、更なるコスト低減が求められる。また、日本の自動車メーカー各社の中国進出に伴い、輸出に加えて中国国内向けが大きな収益源となると思われるため、現地調達の推進、調達・物流コストの低減、生産性向上等の原価低減を推進する。
タイ工場
(ユーシン・タイランド)
ヒーターコントロールパネルの生産供給基地。日本の自動車メーカーからの受注集中で月産20万台に迫る。日本向け輸出でコストダウンに貢献、収益率の高い直販製品増加で、来期は黒字転換の見込み。キーセットも月産6万台のフル生産体制に突入。 生産技術、品質管理、生産管理、原価管理、情報管理等の技術移転と人材補強が最重要課題。

開発動向

研究開発
  2006年度 2005年度 2004年度 2003年度
研究開発費用(百万円) 1,880 1,837 1,832 1,093
売上高比 2.7% 2.9% 3.4% 2.1%

開発体制

-国内関連会社ほか北米と欧州の開発拠点において、車両開発各国の要求に迅速に対応すると同時に、自社の海外生産工場とも密接に連携した商品開発が出来る体制をとる。

-先行開発室及び開発本部を中核として研究開発に取り組み、自動車部品の開発で生まれた技術を基に、産業機器や住宅機器に応用した商品開発も同時に進めている。

新製品開発(自動車部門)
スマートエントリーシステム
電子制御式ステアリングロックの次の世代となる電動式ステアリングロックの量産に向けて育成中。

キーセット
ドアー閉め音、ロック強度、盗難防止性を改良した新型ドアーラッチの開発を完了し、現在量産に向けて最終育成を行うと同時に、ドアーハンドルやキーセットを含めた総合的なドアー開閉システムを顧客に提案。

技術供与(2006年11月現在)
相手先 国名 契約内容等 契約期間
儒億科技股份有限公司
(ELITECH Technology Co., Ltd..)
台湾 自動車用キーセットに関するノウハウ・工業所有権の実施権の許諾 2004年6月13日~
製造・販売終了
Donnelly Corporation 米国 自動車用アウターハンドルに関する製造技術情報の供与 2002年2月1日~
製造・販売終了
三龍産業股份有限公司
(SAN LONG INDUSTRIAL Co.,Ltd.)
台湾 自動車用アウターハンドルに関する製造技術情報の供与 2003年10月31日~
製造・販売終了
三龍産業股份有限公司
(SAN LONG INDUSTRIAL Co.,Ltd.)
台湾 自動車用アウターハンドル・インナーハンドルに関する製造技術情報の供与 2005年2月1日~
製造販売終了
信昌機械廠股份有限公司
(Xinchang Machinery Co., Ltd.)
台湾 自動車用ラッチに関する製造技術情報の供与 2006年6月30日~
製造販売終了

設備投資

2006年度の設備投資費(取得ベース)は連結で5,381百万円(前年度は5,784百万円)。
うち、自動車部門は5,145百万円の投資。

国内4工場 : 投資額 2,746百万円
→ユーシン広島の電子組立新工場建設に加えて、金型と機械設備を取得。

海外5工場 : 投資額 2,354百万円
→タイ工場の増築に加えて、中国、ハンガリー、米国での金型と機械設備を取得。

国内投資
- 同社は、30億から40億円を投資して広島県に新工場を設立する。ニッパツの旧広島工場(広島県東広島市)の土地、建物を取得し、新工場として使う。土地面積は約5万平方メートル、建屋は2階建てで床面積は約1万6000平方メートル。キーセットやエアコン制御部品といった電装部品の生産を国内工場で最大規模となる新工場に集約、拡大する海外拠点に技術を展開するための中核拠点としても活用する。(2007年2月22日付けプレスリリースより)

- 2006年度、自動車部品の主力工場であるユーシン広島(安芸郡海田町)に新工場を増設する。建て屋の増築及び設備の新規導入・移転などに15億円を投じる。エアコン最大手のデンソーから、フルオートヒーターコントロールユニットを大量受注したのに対応。ユーシン広島は、同社の主力製品であるスマートキーなどの施錠部品に加え、ドアやリアハッチなどの機構部品やヒーコンパネルなども手がける総合工場。ユーシン東京(静岡県浜松市)と並び、自動車関連では国内向け出荷の中枢拠点となっている。建て屋の増築ほか、電子部品の実装ライン、金型及びアセンブリーライン、加工機なども新規導入。自動車部品を浜松と広島に集約する。(2006年4月11日付同社プレスリリースより)

海外投資
06年11月期中にも、タイ工場に約10億円規模の増産投資を行う。同工場の主力生産品目であるヒーターコントロールパネルで仏ヴァレオやカルソニックカンセイから新規受注を獲得したほか、いすゞ自動車などから大型受注があったキーセット、およびドアラッチ類がいずれも前年比2けた以上の増産が見込めるため。建屋を増設するほか、生産設備および新規受注分の金型投資に充当する。ユーシンのタイ工場は、00年8月に設立したユーシン・タイランド(ラヨン県イースタンシーボード工業団地)。マツダ―フォードの合弁会社オート・アライアンス・タイランド(AAT)、タイイスズ、タイホンダなど現地の日系メーカーに供給するほか、生産量の過半数を日米に出荷する。これらの増産投資により、07年度にはヒーコンパネルで前年比40%増、キーセット・ドアラッチともに25%増の能力増強となる。タイ工場の06年度の売上高は28億円強となる見通しだが、これらの増産が通年で寄与する07年度には約40%増の40億円を見込む。また従業員数も現在の500人弱から700人規模に増員する。(2006年5月10日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画
(自動車部門)
会社名 所在地 設備の内容 投資
予定額
(百万円)
着工
年月
完了予定
年月
技術センター 広島県安芸郡 開発部門の各種試験機等 183 2006年11月 2007年
11月
(株)ユーシン広島 広島県安芸郡 土地、建物、電子部品実装ライン、次期車の金型及び組立設備、加工機等 2,663 2006年11月 2007年
11月
(株)ユーシン東京 静岡県浜北市 次期車の金型及び組立設備、加工機等 651 2006年11月 2007年
11月
ユーシン・ヨーロッパ Ltd. ハンガリー
キスベル市
次期車の金型、組立設備及び加工機等 371 2006年11月 2007年
11月
ユーシン・タイランドCo., LTD. タイ
ラヨーン県
次期車の金型及び組立設備及び加工機等 458 2006年11月 2007年
11月
有信制造(中山)有限公司(U-SHIN Manufacturing (Zhongshan) CO., LTD.) 中国広東省 次期車の金型、組立設備及び加工機等 838 2006年11月 2007年
11月
大和精工 広島県呉市 各種金型、組立設備及び加工機等 705 2006年11月 2007年
11月
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