NTN (株) 2019年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2019年 3月期 |
2018年 3月期 |
増減率 (%) | |
全社 | |||
売上高 | 733,569 | 744,372 | (1.5) |
営業利益 | 26,945 | 39,608 | (32.0) |
経常利益 | 22,231 | 31,250 | (28.9) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | (6,958) | 20,373 | (134.2) |
自動車市場向け | |||
売上高 | 491,322 | 508,592 | (3.4) |
利益 | 8,655 | 21,803 | (60.3) |
要因
ー2019年3月期における同社売上高は前年比1.5%減の733,569百万円、当期純利益は134.2%減のー6,958百万円となった。産業機械部門及びアフターマーケット部門が堅調に推移したものの、自動車部門における需要減少、鋼材高等、また追加関税等の影響を受けた影響により減収減益となった。
<自動車部門>
ー自動車事業は同社売上高の約70%を占める。同事業部門における2019年3月期売上高は前年比3.4%減の491,322百万円。主に中国経済の減速やWLTP・米国のイラン制裁等による欧州の販売減により減収となった。
中期経営計画「DRIVE NTN 100」
ー同社は2018年4月から2021年3月の3年間における取り組みを「DRIVE NTN 100」として策定。2021年3月期売上高8,000億円、営業利益570億円、営業利益率7.1%、当期純利益300億円を目標とする。うち自動車事業は売上高5,500億円、営業利益300億円。
<自動車事業>
米国による追加関税等の対策として、調達のグローバル化 (現地化) を強化するとともに、EV・電動化などの高付加価値案件での利益確保を強化。
1.基盤技術及び基盤商品の強化として「低フリクションハブベアリングⅢ」を開発
「低フリクションハブベアリングⅢ」
同製品は低フリクション化を実現した新開発のグリースにより、回転フリクションを従来品比62%低減し、車両燃費を0.53%改善するという。また、ハブベアリング内部の予圧を最適化することで軸受の性能を維持したまま、軸受自体の回転フリクションも低減したという。(2019年5月22日付プレスリリースより)
2.新たな領域:電動化・EV化への対応として「eHUB」「sHUB」「電動モーター・アクチュエーター」「インホイールモーター」の開発・研究に注力。また、EV向け製品を拡大する。
ステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」
業界初となる前輪に搭載可能なステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」を開発したと発表した。ハブベアリングにタイヤの転舵角度を調整する機構を組み合わせたもので、ステアリング装置を変更することなく車両の前輪転舵・懸架装置への取り付けが可能で、左右各輪の転舵角度を個別に補正できる。運転時のハンドル操作量を最大4割低減できるほか、車両の応答性を約5割改善できるという。2027年に年間25億円の販売を目指す。(2018年5月24日付日刊自動車新聞より)
「人とくるまのテクノロジー展2019横浜」
同社は上記の展示会において車両の低燃費化や電動化、走行安定性の向上などの自動車市場の様々なニーズに対応する製品を展示すると発表。展示品としては、ベアリングやドライブシャフトのほか、ステアリング補助機能付きハブベアリング「sHUB」、モータージェネレーター機能付きハブベアリング「eHUB」、電動モーターアクチュエーターシリーズを展示するという。(2019年5月10日付プレスリリースより)
インホイールモーター (IWM) 駆動システム技術供与契約
中国の長春富晟汽車創新技術 (FSAT) に、インホイールモーター (IWM) 駆動システムを技術供与する契約を締結したと発表した。NTNが開発した空冷式のIWM駆動システムと車両運動制御技術を使ったものがFSATの電気自動車 (EV) に搭載される。IWMタイプの量産EVの市販は乗用車では世界初となる見通し。 (2018年4月20日付日刊自動車新聞より)
研究開発拠点
施設名称 | 所在地 |
総合研究開発センター | 静岡県磐田市 |
商品開発研究所 | 静岡県磐田市 |
生産技術研究所 | 静岡県磐田市 |
CVJ・アクスルユニット技術開発センター | 静岡県磐田市 |
CAE開発研究所 | 静岡県磐田市 |
産業機械技術開発センター | 三重県桑名市 |
先端技術研究所 | 三重県桑名市 |
NTN次世代協働研究所 | 大阪府吹田市 |
NTN Bearing Corp. of America - Industrial Engineering Dept. |
米国、イリノイ州 |
NTN Bearing Corp. of America - NTN Automotive Center |
米国、ミシガン州 |
NTN Waelzlager (Europe) G.m.b.H. - Engineering Dept. |
ドイツ、Erkrath |
NTN Transmissions Europe - Research and Development Dept. |
フランス、Allonnes |
NTN-SNR Roulements S.A. | フランス、Annecy |
NTN China Technical Center | 中国、上海市 |
技術供与契約 |
(2019年3月31日現在) |
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期限 |
National Engineering Industries Ltd. | インド | ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 | 2011年11月2日から 2020年12月31日まで |
台惟工業股份有限公司 [Taiway Industry Co., Ltd.] |
台湾 | 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 | 2003年3月26日から 2022年2月27日まで |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 21,661 | 21,007 | 19,196 |
製品開発
固定式等速ジョイント「CFJ-W」
ー自動車の前輪用ドライブシャフトとして世界最高の最大作動角55度となる固定式等速ジョイント「CFJ-W」を開発した。トルク損失も低減できる。自動車の最小回転半径の縮小や低燃費などの効果が見込まれる製品で、今後、グローバルに提案していく。米国や中国など、グローバルで市場が拡大しているSUVや四輪駆動モデルでの最大作動角拡大と高効率化のニーズに対応する製品として市場投入する。(2018年6月5日付日刊自動車新聞より)
プロペラシャフト用小型しゅう動式等速ジョイント「HEDJ-P」
ーNVH(騒音、振動、乗り心地)を重視するSUV向けに提案し、2021年度に売上高18億円を目指す。新製品は従来品の「HEDJ」をプロペラシャフト専用に再設計し、外輪の小径化や内輪を薄肉化した。従来品と同等性能を確保しながら、17%の軽量化と、外径を6%コンパクト化した。NVHに配慮したほか、スライド量と作動角が大きく取れるため、車両搭載性に優位性があり、使用角度が大きいSUVに適している。小型・軽量化を実現した新製品をグローバルに展開し、車両設計の自由度向上や低燃費化、高速化に貢献する。(2018年5月14日付日刊自動車新聞より)
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 45,172 | 37,589 | 35,398 |
-2019年3月期見通しは55,000 百万円。
設備の新設計画
(2019年3月31日現在)
会社名/事業所 (所在地) |
内容 | 総額 (百万円) |
着手 | 完了 | 目的 |
同社 | |||||
研究部門 | 研究用設備等 | 11,061 | 2018年04月 | 2021年03月 | 研究開発等 |
桑名製作所 (三重県桑名市) |
軸受用建屋および設備 | 6,401 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
岡山製作所 (岡山県備前市) |
軸受・等速ジョイント用設備 | 7,496 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
磐田製作所 (静岡県磐田市) |
軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 | 6,153 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
子会社・関連会社 | |||||
NTN-Bower Corp. (米国、イリノイ州) |
軸受用設備・等速ジョイント部品用設備 | 11,742 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN Driveshaft Anderson, Inc. (米国、インディアナ州) |
等速ジョイント用設備 | 9,482 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産 |
NTK Precision Axle Corp. (米国、インディアナ州 Frankfort) |
等速ジョイント用建屋および設備 | 8,709 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN Driveshaft, Inc. (米国、インディアナ州 Columbus) |
等速ジョイント用建屋および設備 | 7,290 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN-SNR Roulements S.A. (フランス、Annecy) |
軸受用建屋および設備 | 9,168 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN Transmissions Europe (フランス、Allonnes) |
等速ジョイント用設備 | 4,600 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN-SNR Rulmenti S.R.L. (ルーマニア、Sibiu) |
軸受用建屋および設備 | 3,516 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
NTN Mettmann (Deutschland) G.m.b.H. (ドイツ、Mettmann) |
軸受用設備 | 2,880 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産 |
NTN Manufacturing (Thailand) Co., Ltd. (タイ、Rayong) |
軸受・等速ジョイント・ 精密機器商品等用設備 | 3,593 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
南京恩梯恩精密機電有限公司 [Nanjing NTN Corporation] (中国南京市) |
軸受用設備 | 5,004 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
上海恩梯恩精密機電有限公司 [Shanghai NTN Corporation] (中国上海市) |
軸受・等速ジョイント用設備 | 2,873 | 2018年04月 | 2021年03月 | 増産および合理化 |
-ハブベアリングを生産する中国・江蘇省南京市の子会社に等速ジョイントの生産ラインを新設する。南京市を本拠地とする主要電気自動車 (EV) ベンチャーからの新規受注にめどがついたため。2019年内にも生産を開始し、中期的には新規受注先1社分で年間30万台規模の供給量に拡大する可能性も見込む。等速ジョイントの生産ラインを新設するのは11年に設立した生産子会社「南京恩梯恩精密機電」。新規受注先のEVメーカーが19年内にも生産開始する予定のモデルに等速ジョイントとハブベアリングを供給する。NTNは、新規受注した企業のほか、新興EV専業メーカーの開拓を進めている。上海のEV専業メーカー「蔚来 (ウェイライ) 汽車」 (NIO) には17年から等速ジョイントを供給。18年には「長春富晟汽車創新技術」 (FSAT) が量産するEVにインホイールモーター技術を供与するライセンス契約を締結した。FSATは19年にインホイールモーターを搭載したEVの量産を開始する計画だ。(2019年3月8日付日刊自動車新聞より)