NTN (株) 2013年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2013年
3月期
2012年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 539,594 543,468 (0.7) 1)
営業利益 7,278 20,723 (64.9)
経常利益 2,512 18,691 (86.6)
当期純利益 (14,195) 5,993 -
自動車市場向け
売上高 356,626 342,888 4.0 -欧州における客先需要の減少はあったが、米州、その他アジア地域で販売が増加した。
営業利益 (8,981) (3,180) - -米州での販売増加に伴う生産ラインの負荷増による一時費用の増加など。

要因
1)
<日本>
-自動車市場向けの販売は、東日本大震災の影響による減産からの回復が見られたものの、客先の輸出向け需要の減少により、全般的に減少。

<米州>
-自動車市場向けの販売は、客先の需要拡大により、全般的に増加。
-自動車市場向けの営業利益は、生産ラインの負荷増による一時費用の増加などにより減益。

<欧州>
-販売は、財政不安を背景とした域内経済の回復の遅れにより、大幅減。

<アジア他>
-自動車市場向けの販売は、中国で日系自動車メーカー向けが減少したが、その他アジア地域ではタイ洪水の影響による減産からの回復および客先の需要拡大などにより、増加した。

海外事業

<欧州>
-自動車向け製品で欧州の生産体制の整備を急ぐ。2008年に子会社化したフランスに本拠を置くNTN-SNR Roulementsのルーマニア拠点を活用、従来の生産の中心であるベアリング製品のほか、等速ジョイントの生産を開始するなど自動車向け製品の生産体制を拡充する。フランスからも一部の生産を移管し、コスト競争力を高める。日系を含む西欧の自動車メーカー向けのほか、今後、自動車生産の増加が見込まれる東欧やロシア向けの需要拡大に対応する。 (2013年3月14日付日刊自動車新聞より)

<部材の現地調達率をアップ>
-自動車部品の海外生産で一貫生産体制を促進するとともに、2014年度にも海外全拠点で部材の現地調達率90%を目指す。軸受やハブベアリング、等速ジョイントなどの生産で日系協力メーカーとの協業を強化、製品の前工程となる半製品の製造を合弁化し外部調達率を高める。日本からの輸出分を海外拠点に移管すると同時に、部材や鋼材などの海外調達も積極化し、一部は日本国内にも供給する。同社では円高基調による為替リスクが拡大し収益を圧迫。このため、これまで日本から供給していた部品や半製品の輸出を削減し、現地での一貫生産に注力する。合弁事業が本格化するタイ拠点では部材の現地調達を加速させるほか、第三国への半製品や完成品の供給を促進する。為替変動リスクを抑えるとともに、自由貿易協定 (FTA) をフル活用し韓国やインドから部材を調達、原価低減を進め営業利益率の向上を図る。

<現地生産比率をアップ>
-海外での現地生産比率を2013年度に45%まで引き上げる。収益力向上を狙いに、10年度実績の36%から毎年2~3%ずつ引き上げる。特にアジア地域ではタイを中心に生産能力を増強。2012年5月には、タイの第2生産拠点のピントン工場で等速ジョイント製造がスタートした。インドでは等速ジョイントと第3世代ハブベアリングを製造する第2拠点が稼働する。

新会社

-岡山県赤磐市において、自動車および産業機械用各種ベアリング (軸受) を生産する「NTN赤磐製作所」が竣工したと発表。資本金は12.5億円。敷地面積は約66,000平方メートルで、延床面積は約16,000平方メートルとなる。2014年の従業員数は約160名を見込んでいる。 (2012年8月28日付プレスリリースより)

中期経営計画「復活2014」 (2014年3月期 -2015年3月期)

-「利益を造る企業体質への変革」を基本方針とする。
1. 販売関連の施策 -成長市場の地域統括機能である、「ASEAN・太平洋・インド・西アジア事業本部」を新設。
-「中国事業本部」を中心に、中国における事業拡大。
2. 生産関連の施策 -中国現地自動車メーカー向けに、現地で材料から一貫生産開始。
-タイのピントン工場で等速ジョイントの生産開始。
-インドのチェンナイ工場で等速ジョイントの生産開始。
3. 研究開発の施策 -モジュール商品・システム商品の開発強化。
-電気自動車 (EV) システム商品の事業本格化。
-複合材料商品の開発と市場展開。

2014年3月期の業績見通し

(単位:百万円)
  2014年3月期
(予測)
2013年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 600,000 539,594 11.2
営業利益 30,000 7,278 312.2
経常利益 23,000 2,512 815.6
当期純利益 10,000 (14,195) -

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2013年3月期 2012年3月期 2011年3月期
全社 16,174 17,156 15,697

研究開発体制

-日本では最先端技術の研究開発を行い、グローバル市場に向けた研究開発活動をリードする。
-欧州では現地生産品に関する研究開発を独自に行っている。
-日本、米州、欧州、アジア他の各地域で市場拡販に即した技術サービスを提供。
-2011年5月にNTN中国技術センターが竣工。

研究開発拠点

施設名称 所在地
産業機械技術開発センター 三重県桑名市
先端技術研究所 三重県桑名市
総合研究開発センター 静岡県磐田市
商品開発研究所 静岡県磐田市
生産技術研究所 静岡県磐田市
CVJ・アクスルユニット技術開発センター 静岡県磐田市
NTN Bearing Corp. of America -
Industrial Engineering Dept.
米国、イリノイ州
NTN Bearing Corp. of America -
NTN Automotive Center
米国、ミシガン州
NTN Waelzlager (Europe) G.m.b.H. -
Engineering Dept.
ドイツ、Erkrath
NTN Transmissions Europe -
Research and Development Dept.
フランス、Allonnes
NTN-SNR Roulements フランス、Annecy
NTN China Technical Center 中国、上海市


電気自動車 (EV) の社会実証実験に参加

-2011年10月から静岡県磐田市と連携し実施した改造 (コンバート) 電気自動車 (EV) の世界初の社会実証実験を終了したと発表した。実験は同社のインホイールモーターシステムを組み込んだコンバートEV2台を磐田市の公用車として約1年間使用、市街地や高速道路でのデータ収集を行ってきた。先月17日には同市役所で走行結果の報告会を開催。それによると、総走行距離は1万1,104キロメートルで1充電による最高記録は95キロメートルだった。また、走行1キロメートルの当たりの費用は1.6円で、ガソリン車に比べ約5分の1だったことが報告された。 (2013年2月6日付日刊自動車新聞より)

-フランス・アヌシー市で、タイヤホイール内にモーターを組み込んだインホイールモーターを搭載した2人乗り小型電気自動車 (EV) の実証実験を開始する。EVの普及が進む欧州で実証実験を行うことで、グローバルに開発を加速させる。ハブベアリングと減速機、モーターをホイール内に組み込めるよう小型・軽量化し、「小型EV用インホイールモーターシステム」として開発。2人乗り小型EVに搭載し、早期普及に向けた活動を本格化させる。 (2012年7月13日付日刊自動車新聞より)

製品開発

製品名 特徴 説明
「中空ボールねじユニット」 車載用各種アクチュエーターの電動化に対応する薄肉かつ軽量 -転がり抵抗の少ないボールねじを採用することで、すべりねじに対して2倍の推力変換効率を実現。また、またねじ軸を中空にすることで無段変速機構 (CVT) のプーリー駆動機構との同軸配置が可能になる。
「自己潤滑性焼結軸受」 特殊黒鉛を固形潤滑剤として使用することで、潤滑油が不要 -潤滑油を使用しないため、潤滑油が蒸発する高温環境や、周辺部品への油の付着が装置の性能低下を引き起こす部位など、油が使用できない環境下でも使用できる。
「高機能センサー内蔵ハブジョイント」
>>> 製品画像
ハブベアリングと等速ジョイント (CVJ) を独自の接合技術で一体化 -一体化することで従来品と比べて12%の軽量化と高いトルク伝達効率を実現、燃費改善とばね下重量の軽減による乗り心地向上に貢献する。同社では電気自動車 (EV) やハイブリッド車 (HV) など次世代自動車の機能向上を支えるモジュラー部品としてグローバルで拡販する。
耐腐蚀性烧结轴承” ガソリンの中など軸受の腐食が進みやすい環境で使用可能 -材料にアルミニウム青銅を採用し、ニッケルを使用することなく優れた耐腐食性を実現したもの。すでに自動車関連メーカに向けた提案を開始しており、今後は塩水をはじめとする腐食環境で使用される産業機械分野への採用も目指す。
「複層焼結含油軸受」 新開発の焼結成形方法を使用 -焼結含油軸受につき、内層部と外層部で異なる材料を組み合わせ一体成形する新開発の二色成形技術を世界で初めて使用し、高強度で優れた耐摩耗性を実現した。建設機械など高い負荷が求められる用途向けに展開する。さらに今後は同技術を歯車などの焼結機械部品に適用し、自動車関連業界などへも広く用途展開を図る。
リアクトルやチョークコイルのコア部品:
「アモルファスコア」
>>> 製品画像
アモルファス粉末と樹脂を混ぜ合わせた磁性材料を使い射出成型が可能。 -電気自動車 (EV) やハイブリッド車 (HV) 、太陽光の発電・蓄電設備など大電流、高駆動周波数の厳しい環境下で高い信頼性を発揮する。さらに射出成型が可能で形状の自由度が高く、多様なコイル形状や大型化のニーズにも対応する。
EV・HEVに搭載されるモーターや減速機用:
「高速・低トルク深溝玉軸受」
>>> 製品画像
これまで以上の高速回転でも使用可能で高効率化に貢献 -油潤滑下で高速回転時でも低トルク性能を安定して維持できる「高速対応低トルク樹脂保持器」を採用。この新型保持器は、同型2個の保持器を組み合わせ、互いの保持器が遠心力による変形を抑制し合う構造で、最大dn値120万の高速回転が可能となった。また、保持器の側面をシールド形状とすることで軸受内部に流入する油量を制限し、攪拌抵抗を大幅に低減する。さらに、軸受内部の設計を最適化し転がり粘性抵抗も低減することで、従来の深溝玉軸受に対して50%以上の低トルク化が実現した。
「プレスカットスプライン・ハブジョイント」
>>> 製品画像
ハブベアリングと等速ジョイント(CVJ) を独自の方式で結合することにより、軽量化と接合部のガタ "ゼロ"を実現 -ハブベアリングの内径に、プレ・スプライン (小サイズのスプライン) を施す独自のプレスカットスプライン接合を適用することで、接合に必要な荷重を軽減し、ハブベアリングとCVJの接合をボルトで締結する構造とした。これにより、自動車メーカーの車両組立ラインにおいて、現行3世代ハブベアリングとCVJの組立工程を変更することなく、本開発品を組み付けることが可能となる。
トランスミッション用:
「自己形成シール付低トルク玉軸受」
>>> 製品画像
各部品の力の伝達効率を改善し、自動車の燃費性能を改善 -従来のシール付玉軸受と比較して回転トルクを最大80%低減した。トランスミッション用の軸受には異物侵入による寿命低下を防ぐ目的でシールを付けた玉軸受が採用されるが、シールを付けないタイプと比較して回転トルクが大きくなる課題があった。この課題克服のために同社が新開発した「自己形成シール」は、運転開始直後に軸受の内輪とシールの間にわずかなすきまを自己形成する「非接触タイプ」のシールのため、回転トルクを抑えることができる。
トランスミッション用:
「次世代高効率固定式等速ジョイントCFJ」
>>> 製品画像
各部品の力の伝達効率を改善し、自動車の燃費性能を改善 -摩擦抵抗によるトルク損失率を従来品と比べ50%以上低減した。通常、等速ジョイントは作動角度が広がるとトルク損失率も大きくなる構造となっているが、新製品は独自の構造を採用し、広範囲の作動角度でもトルク損失率を低減できる。作動角度の大きいSUVなどの車両に適用することで燃費低減に大きく寄与する。

技術供与契約

(2013年3月31日現在)
相手先 国名 契約内容 契約期限
National Engineering Industries Ltd. インド ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 2011年11月2日から
2014年11月1日まで
台惟工業股份有限公司
[Tung Pei Industrial Co., Ltd.]
台湾 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 2003年3月26日から
2018年3月25日まで
Unidrive Pty. Limited オーストラリア 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 1983年2月15日から
2013年6月9日まで

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2013年3月期 2012年3月期 2011年3月期
全社 48,979 54,440 29,700
 

2013年3月期の主な設備投資

地域 会社名/事業所 内容 総額
(百万円)
日本 (株) NTN赤磐製作所 建屋新築による軸受製造設備装置など。 13,321
米州 American NTN Bearing Mfg. Corp. 軸受製造設備増設など。 14,665
NTN-Bower Corp. 建屋増築および軸受製造設備増設など。
欧州 NTN-SNR Roulements 軸受製造設備増設など。 7,168
中国 南京恩梯恩精密機電有限公司
[Nanjing NTN Corporation]
建屋新築および軸受製造設備増設など。 13,927
恩梯恩LYC (洛陽) 精密軸承有限公司
[NTN-LYC (Luoyang) Bearing Corporation]

設備の新設

(2013年3月31日現在)
会社名/事業所
(所在地)
内容 総額
(百万円)
着手 完了 目的
同社
研究部門 研究用設備等 4,036 2013年04月 2015年03月 研究開発等
桑名製作所
(三重県桑名市)
軸受用設備 2,129 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
磐田製作所
(静岡県磐田市)
軸受・等速ジョイント・ 精密機器商品等用設備 1,953 2013年04月 2015年03月 合理化
岡山製作所
(岡山県備前市)
軸受・等速ジョイント用設備 1,937 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
長野製作所
(長野県箕輪町)
軸受用設備 279 2013年04月 2015年03月 合理化
子会社・関連会社
NTN赤磐製作所
(岡山県赤磐市)
軸受用設備 1,243 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN-Bower Corp.
(米国、イリノイ州)
軸受用建屋および設備 3,782 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
American NTN Bearing Mfg. Corp.
(米国、イリノイ州)
軸受用設備 2,828 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN Driveshaft, Inc.
(米国、インディアナ州)
等速ジョイント用設備 2,203 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTA Precision Axle Corp.
(米国、イリノイ州)
軸受用設備 1,320 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN do Brasil Producao de Semi-Eixos Ltda.
(ブラジル、Guarulhos)
等速ジョイント用設備 1,365 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN-SNR Roulements
(フランス、Annecy)
軸受用建屋および設備 7,558 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN-SNR Rulmenti
(ルーマニア、Sibiu)
軸受用建屋および設備 2,435 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN Transmissions Europe
(フランス、Allonnes)
等速ジョイント用設備 2,896 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTN Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.
(タイ、Rayong)
軸受・等速ジョイント用設備 3,994 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
NTPT Co., Ltd.
(タイ、Chonburi)
等速ジョイント用設備 1,163 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
上海恩梯恩精密機電有限公司
[Shanghai NTN Corporation]
(中国上海市)
軸受用設備 3,656 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
廣州恩梯恩裕隆傳動系統有限公司
[Guangzhou NTN-Yulon Drivetrain Co., Ltd.]
(中国広州市)
等速ジョイント用設備 2,516 2013年04月 2015年03月 増産および合理化
南京恩梯恩精密機電有限公司
[Nanjing NTN Corporation]
(中国南京市)
軸受用設備 1,140 2013年04月 2015年03月 増産
恩梯恩LYC (洛陽) 精密軸承有限公司
[NTN-LYC (Luoyang) Bearing Corporation]
(中国洛陽市)
軸受用設備 1,036 2013年04月 2015年03月 増産