NTN (株) 2011年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万円) |
2011年 3月期 |
2010年 3月期 |
増減率(%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 530,055 | 452,745 | 17.1 | 世界的に客先需要の回復などにより増収増益。 |
営業利益 | 24,559 | 1,399 | 1655.5 | |
経常利益 | 21,096 | (647) | - | |
当期純利益 | 14,399 | (2,014) | - | |
自動車事業 | ||||
売上高 | 344,407 | 300,856 | 14.5 |
|
営業利益 | 3,546 |
(8,541) |
- |
合弁事業
同社と中国の軸受メーカー洛陽LYC軸承有限公司(Luoyang LYC Bearing Co., Ltd.)は、中国における自動車用軸受事業に関して合弁契約を締結した。両社は2011年2月、河南省洛陽市に「恩梯恩LYC(洛陽)精密軸承有限公司」(NTN-LYC (Luoyang) Bearing Corporation)を設立。ハブベアリングとニードルベアリングの製造・販売を行う。量産開始は2012年10月の予定。新会社の資本金は7,380万米ドルで、両社が50%ずつ出資。総額で9,350万米ドルを投資し、2015年度に約70-80億円の売上を目指す。なお、NTNはこの合弁事業も含め、2015年度に中国で売上高1,000億円を目標としている。(2010年10月12日付プレスリリースより)企業買収
フランスの連結子会社のSNR ROULEMENTS(ルルモン)が社名を「NTN―SNR ROULEMENTS」に変更すると発表した。開発・生産・販売における一層の連携強化を図るのが目的。23日(仏現地時間22日)開催のSNRの株主総会で決定した。SNRは自動車や鉄道・航空機など産業機械向け軸受を製造・販売する。NTNは2007年3月にSNRへ資本参加した。2008年4月に出資比率を51%に引き上げ、連結子会社化。2010年4月に出資比率を80%に高めた。(2010年7月26日付日刊自動車新聞より)オランダの自動車部品メーカーのティードライブのブラジル子会社であるティードライブブラジルの資産を購入し、ブラジルに等速ジョイント(CVJ)の製造・販売会社「NTNブラジルドライブシャフト製造」を6月に設立すると発表した。資本金は約17億円で、NTNが70%、NTN子会社のNTEが30%を出資する。所在地はサンパウロ州グアルーリョス市。2015年度には約70億円の売上高を目指す。 (2010年5月13日付日刊自動車新聞より)
中期経営計画
2011年4月から2014年3月までの三年間中期経営計画「躍進2013」に取り組む生産関連
- 中国では、ボールベアリング、ニードルローラベアリング、鉄道車両用軸受などの現地生産会社の生産能力を大幅に増強。洛陽LYC軸承有限公司との合弁会社恩梯恩LYC(洛陽)精密軸承有限公司を洛陽市に設立。主に現地自動車メーカ向けにハブベアリングやニードルローラベアリングの製造・販売を行う。2012年6月より量産を開始。
- インドでは南部のチェンナイ郊外に新工場を増設、2012年4月から等速ジョイント及びハブベアリングを製造・販売。
- ブラジルでは、2010年5月に設立したNTN do Brasil Produc,o de Semi-Eixos Ltda.で2011年6月より等速ジョイントの量産を開始。新規受注が増加しているハブベアリングと合わせ事業を拡大。
- 米国では、自動車需要の大幅な回復に応じて、米系自動車メーカ向けハブベアリング完成品の生産能力を増強。2010年12月に、製造前工程である鍛造・旋削・熱処理の一貫生産を行う合弁会社NTA PRECISION AXLE CORPORATIONを設立。2011年6月より生産を開始。
- 欧州では、今後需要の増加が見込まれる航空機用や風力発電機用など、NTN-SNR ROULEMENTSにおける産業機械市場向け軸受の生産能力を増強。
- 日本国内では、2010年12月に株式会社NTN能登製作所を石川県に設立。株式会社NTN羽咋製作所、株式会社NTN宝達志水製作所などと共に、産業機械用軸受の第2の生産拠点としてリスク分散と生産能力の強化を図る。
販売関連
- 2010年2月に販売、技術、生産部門が一体となった「自動車事業本部」と「産業機械事業本部」を設立。また産業機械や代理店向けに専門特化した業種別専任チームによる活動を強化。
- 2011年4月からは、両事業本部の企画機能と技術開発機能を強化すると共に、全ての生産子会社を事業本部の管轄とし、グローバルの事業推進体制を構築。
- 「インホイールモータシステム」や「ワンモータEV駆動システム」などの電気自動車(EV)向け商品の早期事業化を目指し、2011年4月に「EVシステム事業部」を新設。
- 中国においては現地の有力代理店との提携を進めると共に、恩梯恩(中国)投資有限公司の新たな販売拠点として、2010年10月に南京市に南京支店を設立。今後さらに内陸部の支店や代理店数を拡大する。
研究開発関連
- 2011年4月に研究・開発体制を改革。「要素技術研究所」は「先端技術研究所」と改称し、将来の市場を創造するテーマを重点的に研究。また粉末合金やエンジニアリングプラスチックなどの材料技術の連携を強めるために「複合材料商品事業部」を新設。
グローバル事業の拡大
- 中国では、本年5月に「NTN中国技術センター」(上海市)が稼働し、設計や評価試験などの技術対応力を強化。インド、ブラジルなどの開発体制も強化する。
収益体質の強化
- 自動車事業の収益改善のため、設計、材料、生産工程などの見直しによる原価低減を推進。また収益性が高い産業機械や、補修・市販向けの販売拡大を図り、利益率を向上させる。現地生産やグローバル調達、現地生産品の輸入など、為替に左右されない体制作りを進める。
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2011年3月期 | 2010年3月期 | 2009年3月期 | |
軸受関連商品 | N.A. |
10,410 | 12,010 |
等速ジョイント関連商品 | N.A. | 3,537 | 4,500 |
精密機器関連商品 | N.A. | 739 | 890 |
全社 | 15,697 |
14,687 | 17,401 |
研究開発成果
ワンモータ駆動システムワンモータ電気自動車(ワンモータEV)の軽量化、高効率化に貢献する自動変速機付「ワンモータEV駆動システム」を開発した。従来の固定変速式に変わる新たな自動2段変速機を用いた小型軽量な駆動モータ、ディファレンシャル、インバータから構成されるシステム。変速機構には独自の変速用アクチュエータを採用した自動2段変速機構を開発した。同社はワンモータEV駆動システムに、等速ジョイントや多軸荷重センサ内蔵ハブベアリングなどを加え、「NTN-ワンモータEVパワートレイン」としての提案・提供も行っていく計画。(2011年3月11日付プレスリリースより)
インホイールモータシステム
次世代の電気自動車(EV)実用化に向け、これまで開発してきたインホイールモータに、センサ情報に連動した制御システム(インバータ含む)を組み入れた「インホイールモータシステム」を開発した。インホイールモータ方式はモータや減速機構を直接ホイール内に取り付ける方式で、主流の方式である内燃機関車と比べるとエンジンやトランスミッション、ギア、駆動軸などが不要となる。電池を除く車両重量が軽量化され、1充電走行距離(電費)が向上。(2011年3月11日付プレスリリースより)
二人乗りなどの電動コミュータや、一人乗りの電動ミニカーの機能・用途に合わせた「電動コミュータ用インホイールモータシステム」を開発した。このシステムは、既に開発済みの「インホイールモータシステム」の構成部品であるハブベアリング、減速機、モータの機構を変更することで、電動コミュータに適用できる小型・軽量化を実現した。(2011年3月11日付プレスリリースより)
ステアバイワイヤ操舵システム
次世代の車両操舵システムとしてハンドル操作を電気信号で伝える「ステアバイワイヤ操舵システム」を開発した。このシステムは、転舵操作用メインモータに加え左右独立転舵操作用のサブモータを装備。メインモータの焼付などの故障に対してもサブモータを瞬時に転舵機能に切り替えることで、安全性を確保する。(2011年3月11日付プレスリリースより)
動力学解析システム
玉軸受やころ軸受に対応した業界最高級の「動力学解析システム」(IBDAS)を開発したと発表した。従来の解析や評価試験では不可能だった軸受回転時の転動体や保持器の挙動や応力などを算出できる。顧客要求に応じた軸受仕様を従来以上に高精度かつ迅速に解析し、設計や提案のスピードを向上する。NTNはすでに各種遊星減速機やエンジンなど、保持器に大きな接触力が作用する軸受用途でIBDASを活用している。今後も高負荷容量や長寿命・高信頼性、低トルク、コンパクト化など、顧客ニーズに応じた軸受仕様を、より高精度で迅速に解析するとともに、設計や提案のスピード向上を図る。(2011年2月28日付日刊自動車新聞より)
セルフマウント式チェーンテンショナ
四輪車および二輪車のタイミングチェーン用「セルフマウント式チェーンテンショナ」を発表した。エンジンカバー外側から脱着可能で、取り付け用ボルトが不要。アルミダイカスト製ハウジングを採用する。従来品に比べ部品点数の削減やエンジンカバー内のコンパクト設計が可能で、車両の軽量化に伴う燃費向上のほか、生産時やメンテナンス時の作業工数の削減も図れる。2012年に年間5億円の販売を目指す。 (2010年10月2日付日刊自動車新聞より)
シートリフター(座面昇降機構)用の薄型トルクダイオード
自動車シートリフター(座面昇降機構)用の薄型トルクダイオードを発表した。新製品はシロキ工業と共同開発。構成部品設計の改良による薄型化で、ドアとシートリフターレバー間の空間が広がり、レバー配置などのデザイン性が向上。構成部品の高強度化により、シートを特定位置に保持する力(静的トルク容量)が向上し、トルクダイオードで乗員の体重をより多く保持できるようになった。従来必要だった荷重伝達機構が簡素化でき、シートの軽量化が可能になる。2013年に年間12億円の販売を目指す。(2010年6月3日付日刊自動車新聞より)
インテリジェント・インホイール
それぞれのホイールにモーターを内蔵するインホイールモーター式の電気自動車(EV)向けに「インテリジェント・インホイール」を開発したと発表した。インホイール型モーター内蔵アクスルユニットと電動ブレーキ、多軸荷重センサーを組み合わせたもので、2012年の市場投入を目指す。新製品は、多軸荷重センサーからの情報により、高精度磁気式角度センサーを内蔵したインホイールモーターと電動ブレーキを制御することで、最適な回生制御や車両安定制御が可能となり、燃費と運転時の安全性が向上する。 (2010年5月24日付日刊自動車新聞より)
軽量・高効率ドライブシャフト
後輪駆動(FR)車専用の軽量・高効率ドライブシャフトを発表した。FRを採用する高級車の低燃費化と乗り心地向上の需要に対応したもので、欧州や日本の高級車市場を中心に事業展開する。2013年に年5億円の売上高を目指す。(2010年5月20日付日刊自動車新聞より)
低トルクローラリフタユニット
自動車直噴エンジンの燃料ポンプ駆動部に使用する「低トルクローラリフタユニット」を発表した。ころ同士の接触を防止する保持器付仕様の採用で、軸受部の回転トルクを従来品比で最大30%低減するとともに高速対応を実現。独自の長寿命化技術やFEM(有限要素法) などの解析技術でリフタの必要強度を確保しつつ、同10%の軽量化を図った。自動車やポンプメーカー向けに提案し、2013年度に2億円の販売を目指す。リフタは直噴エンジンの燃料ポンプ駆動部において、ローラーがカムとプランジャの間で回転することで摩擦抵抗を低減し、スムーズな動作を実現する部品。従来はカムとの接触部がすべりのタイプが主流だったが、自動車メーカーでは摩擦損失低減のためローラを転がり軸受(総ころ仕様)としたタイプの採用が増加している。しかし総ころ仕様の転がり軸受は、ころ同士の接触による発熱や回転トルクの増大などの課題があった。(2010年4月30日付日刊自動車新聞より)
磁気式角度センサー
磁気エンコーダと磁気センサーを組み合わせ、回転軸の回転位置を高精度で検出できる磁気式の角度センサーを発表した。磁気エンコーダを軸受と一体化することで設置スペースのコンパクト化が図れ、磁気センサーの取り付けも容易となる。主に自動車用モーター向けに広く市場展開する。新製品は磁気エンコーダを軸受の回転輪に一体化した。軸受に隣接した8ミリメートル以下の軸方向スペースにセンサー部全体をコンパクトに配置できるため、モーターの小型・軽量化につながる。磁気センサーには磁気パターンを正確に読み取る性能が必要で、仏SNR社との共同開発による高分解能磁気センサー技術を応用した。(2010年4月20日付日刊自動車新聞より)
技術供与契約
(2011年3月31日現在)
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期限 |
National Engineering Industries Ltd. | インド | ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 | 1985.11.5-2011.11.1 |
台惟工業股份有限公司 (Tung Pei Industrial Co., Ltd.) |
台湾 | 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 | 2003.3.26-2013.3.25 |
Unidrive Pty. Ltd. | オーストラリア | 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 | 1983.2.15-2013.6.9 |
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2011年3月期 | 2010年3月期 | 2009年3月期 | |
全社 | 29,700 |
21,504 | 49,594 |
2010年度の投資
日本株式会社NTN宝達志水製作所の工場新設による軸受製造設備設置、本社桑名製作所の軸受製造設備増設などにより11,534百万円の設備投資を行った。
米州
NTA PRECISION AXLE CORP.の工場新設による建屋新築、AMERICAN NTN BEARING MFG. CORP.及びNTN-BOWER CORP.の軸受製造設備増設、NTN DRIVESHAFT, INC.の等速ジョイント製造設備増設などにより8,097百万円の設備投資を行った。
欧州
NTN-SNR ROULEMENTSの軸受製造設備増設などにより4,570百万円の設備投資を行った。
アジア他地域
上海恩梯恩精密機電有限公司 (Shanghai NTN Corporation)の建屋増築及び軸受製造設備増設などにより5,552百万円を行った。
-インドで2番目の生産拠点を設立すると発表した。NTNの子会社「NTN NEI マニュファクチュアリング インディア」(NNMI)のチェンナイ工場を設立する。所在地はチェンナイ市近郊のマヒンドラ・ワールドシティ工業団地。敷地面積は約4万1千平方メートルで、延床面積は約1万1千平方メートル。12年4月から等速ジョイントと第3世代ハブベアリングの量産を開始し、南部の日系および欧米系の自動車メーカーに供給する。インドでは北部のNNMIバワール工場で、07年6月から等速ジョイントを量産している。インド事業全体の売上高は現在40億円規模だが、15年度には200億円を目指す。(2011年3月1日付日刊自動車新聞より)
設備の新設・除去等
会社名/事業所 (所在地) |
内容 | 総額 (百万円) |
着手 | 完了 | 目的 |
同社 | |||||
研究部門 | 研究用設備等 | 3,186 | 2006年06月 | 2012年07月 | 研究開発等 |
桑名製作所 (三重県桑名市) |
軸受用設備 | 5,575 | 2007年04月 | 2012年02月 | 増産及び合理化 |
磐田製作所 (静岡県磐田市) |
軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 | 3,348 | 2007年05月 | 2012年01月 | 増産及び合理化 |
岡山製作所 (岡山県備前市) |
軸受・等速ジョイント用設備 | 1,418 | 2007年04月 | 2012年03月 | 増産及び合理化 |
長野製作所 (長野県箕輪町) |
軸受用設備 | 416 | 2007年05月 | 2012年03月 | 合理化 |
子会社・関連会社 | |||||
NTN Driveshaft, Inc. (Indiana, USA) |
等速ジョイント用設備 | 1,210 | 2010年05月 | 2012年01月 | 増産 |
American NTN Bearing Mfg. Corp. (Illinois, USA) |
軸受用設備 | 1,092 | 2010年09月 | 2011年06月 | 増産 |
NTA Precision Axle Corporation (Illinois, USA) |
軸受用建屋及び設備 | 5,446 | 2010年11月 | 2012年07月 | 新規設立 |
SNR Rolamentos Do Brasil Ltda. (Parana, Brasil) |
軸受用建屋及び設備 | 1,626 | 2010年10月 | 2012年12月 | 増産 |
NTN-SNR Roulements (Annecy, France) |
軸受用建屋及び設備 | 4,561 | 2008年04月 | 2013年09月 | 増産 |
NTN-SNR Rulmenti (Sibiu, Romania) |
軸受用建屋及び設備 | 1,207 | 2010年08月 | 2012年01月 | 増産 |
NTN Transmissions Europe Crezancy (Crezancy, France) |
等速ジョイント用設備等 | 1,140 | 2010年06月 | 2012年03月 | 合理化 |
上海恩梯恩精密機電有限公司 [Shanghai NTN Corporation] (中国 上海市) |
軸受用建屋及び設備 | 7,437 | 2010年06月 | 2013年02月 | 増産 |
NTN NEI Manufacturing India Private Limited (Rewari, India) |
軸受・等速ジョイント用建屋及び設備 | 1,096 | 2009年12月 | 2012年04月 | 増産 |