エヌティエヌ株式会社 2006年度の事業動向

ハイライト

業績
単位:百万円

2007
年3月期

2006
年3月期
増減率(%) 要因
全社
売上高 483,817 434,836 11.3 -
営業利益 46,792 37,645 24.3 -
経常利益 42,210 32,816 28.6
当期純利益 27,014 19,550 38.2 -
軸受部門
売上高 307,249 276,694 11.0 自動車向けでは、北米、欧州地域でアクスルベアリングやニードルローラベアリングが好調に推移。日本、中国、アジア他地域でもアクスルベアリングが増加。
等速ジョイント部門
売上高 147,463 131,327 12.3 北米地域では、米国自動車メーカ向けの新規受注案件の量産開始が寄与。アジア他地域では、韓国、タイでの量産開始が寄与し、マレーシアでは小型車の需要が増加。また、日本でも小型車を中心に堅調に推移。

企業買収 
ドイツの等速ジョイント(CVJ)メーカーのIFAアントリーブステヒニックに資本参加したと発表した。ア社の株式25%を取得、今後、段階的に出資比率を引き上げて、数年後に買収する予定。ア社は、主にフォルクスワーゲン(VW)、アウディ向けにCVJを生産しており、同社は従来、取引のなかったVWとの関係を強化することを狙いに資本参加を決めた。(2006年4月22日付同社プレスリリースより)

2007年3月、フランスの大手ベアリングメーカーSNR Roulementsへ資本参加

新会社設立
等速ジョイント(CVJ)のグローバル需要の拡大に対応し、地域リスクの回避を狙って、CVJ完成品と基幹部品の製造を行う全額出資の子会社、NTN袋井製作所(静岡県袋井市)を設立したと発表した。2006年11月から生産を開始し、09年度には売上高で100億円を見込む。資本金は30億円、従業員数は09年度末に150人体制とする。新会社の設立で、同社系列のCVJの国内生産拠点は3カ所となった。海外を含めた製造拠点は、14カ所となっている。これら生産拠点の増強により急拡大するCVJの需要に対応し、現在は月産200万本の生産体制を2年後には月300万本にまで高める計画を持つ。(2006年7月14日付日刊自動車新聞より)

韓国フランジ工業(KOFCO)グループと合弁で、米アラバマ州に駆動系部品である等速ジョイント(CVJ)の生産販売会社を設立すると発表した。操業は2008年2月の予定で、現代自動車グループの米国拠点に納入する。資本金は600万ドル。KOFCOグループが51%、同社が49%出資する。売上高は08年度が25億円、10年度に2倍の50億円を計画する。新会社は「瑞韓―NTNドライブシャフトUSAコーポレーション」。09年までの累計投資額は700万ドル、従業員数は当初30人、10年に50人を予定する。同社の米国のCVJ生産拠点はインディアナ州の工場に続く2カ所目。(2007年3月1日付日刊自動車新聞より)

2007年度の課題
2007年4月より2010年3月までの3年間で新たな中期経営計画「創成21」を実施する。

・営業・技術関連の施策
フォルクスワーゲングループと強固な取引関係を有するドイツのIFA-AT社や、欧州の大手軸受メーカーであるSNR社への資本参加によるシナジー効果により、等速ジョイントとアクスルベアリングで世界ナンバーワンを目指す。

・生産関連の施策
等速ジョイントでは、2006年11月より株式会社NTN袋井製作所の操業を開始し一層の事業拡大および今後新拠点それぞれで早期の安定稼動を図る。海外ではBRICs諸国をはじめとする新興市場で積極的に事業強化を行う。2006年に設立したNTN Manufacturing India Private Limitedでは、2007年4月より等速ジョイントの生産を開始。またSNR社のルーマニア工場から東欧・ロシア地域への販売拡大、同ブラジル工場を活用した自動車需要への対応を強化していく。

・収益体質の強化施策
グローバルな事業拡大に伴いVA・VEの推進及びグローバル調達や現地調達の拡大によるコスト削減と棚卸資産回転率・設備稼働率などの資産効率の向上を推進する。

開発動向

中期経営計画「飛躍21」の最終年度の目標達成のため、戦略商品(等速ジョイント、アクスルベアリング、ニードルローラベアリング、クラッチ、精密ベアリング等)への経営資源の集中を一層強化。また、研究・開発の24時間体制を強化し、開発期間短縮化の取組みを継続。

2007年3月期のグループ全体の研究開発費は14,221百万円。

軸受
・ピックアップトラックやSUV系車種用として、長寿命と高剛性を実現した「高負荷容量テーパハブベアリングユニット」を開発したと発表。2010年には年間10億円の売上高を目指す。新製品では内部設計仕様を抜本的に見直し、同一寸法のテーパハブベアリング内で保持器を外輪側に近付け、ころ間すきまを小さくすることに成功。保持器の強度を低下させずに、本数を極限まで増加することを可能とした。新設計仕様により、軸受けサイズを変更することなく20%の寿命向上と7%の高剛性化を実現。(2006年4月5日付日刊自動車新聞より)

・自動車の低燃費化要求に応え、同時にメンテナンスフリーも実現した乗用車用の「高密封・低トルクシール内蔵ハブベアリング」を開発したと発表した。シール材質と形状を最適化することで、高い密封性と低トルク化を両立することが可能になった。グローバル展開製品と位置付け、09年には年間30億円の売上高を計画する。(2006年5月31日付日刊自動車新聞より)

・駆動輪用ハブベアリングの外輪端部に速度センサーを一体化したユニット製品「駆動輪用センサ内蔵ハブベアリング」を開発した、と発表した。等速ジョイント外輪に干渉しない形状の工夫により、ナックルと等速ジョイント外輪間の狭い隙間にセンサーを配置。センサー内蔵型の乗用車用ハブベアリングとして、2010年には年間20億円の売り上げを目指す。(2006年6月20日付日刊自動車新聞より)

・自動車用エンジンのクランクシャフト及びカムシャフトの支持(サポート)部用として、従来の滑り軸受けに比べ大幅なトルク低減を実現した「低フリクション対応ニードル軸受け」を開発したと発表した。新開発の製品では、滑り軸受けに対して軸受け起動トルクを約90%低減、軸受け回転トルクも約50%低減している。車両の燃費も机上検討だが、10・15モードで約3%向上が見込める。2010年にはクランクとカムシャフトの両軸受けを合わせて、年間15億円の売り上げを目指す。(2006年10月6日付日刊自動車新聞より)

・軸受け内径が直径5ミリメートルという世界最小径の「円すいころ軸受」を開発したと発表した。同サイズの市場では現在、ミニチュア玉軸受けが多用されているが、寿命や剛性不足などが指摘されていた。今回、同社が開発した「円すいころ軸受」は、負担容量や剛性を高めたほか、長超寿命でコンパクト設計が可能になった。(2006年12月13日付日刊自動車新聞より)

・駆動輪ハブベアリングの外輪端部の回転センサーをコンパクトに一体化し、同時に完全密封した「密封型センサー内蔵ハブベアリング(駆動輪用)」を開発したと発表した。従来の駆動輪用回転センサー対応ハブベアリングは、センサー部が密封されていない構造のため、外部からの泥水などの異物で、センサー検知部や着磁エンコーダーが損傷するケースもあった。新製品の同ハブベアリングは外側にシールを設けた密封構造であるため、外部からの異物侵入を防ぎ、信頼性が大幅に向上した。同社では自動車の信頼性向上に貢献できる部品として広く市場展開を図り、10年には年間20億円の販売を目指す。(2007年1月9日付日刊自動車新聞より)

・ベアリングの性能を示すdmn値で150万を可能とする世界最高速の「高速スラストニードル軸受」を開発したと発表した。ハイブリッド車用モーターユニットの高出力化や、オートマチックトランスミッション(AT)の多段化による高速化に対応したもので、従来製品のdmn値の90万に比べ、7割近く回転速度を引き上げ、高速運転時の軸受け上昇温度も従来比で35%低減した。同社では、ハイブリッドモーターユニットを始め、ATやCVT用のほか、産業機械向けに売り込みを図り、2010年度に年間5億円の販売を目指す。(2007年3月20日付日刊自動車新聞より)

・駆動輪用ハブベアリングの外輪端部に速度センサをコンパクトに一体・密封化した「駆動輪用密封型センサ内蔵ハブベアリング」、自動車の低燃費化とメンテナンスフリーに貢献できる「高密封・低トルクシール内蔵ハブベアリング」を開発

・軸受関連商品に係る研究開発費は8,551百万円

等速ジョイント
・FF車や4WD車の転舵角度が大きくとれ、最小回転半径を小さくできる自動車用ドライブシャフト用として最大作動角54度の固定式等速ジョイント(TUJ)を開発した。従来の固定式等速ジョイント(CVJ)は、他社を含めて最大作動角は50度だったが、ボール軌道面の軸方向形状などの工夫で54度を実現した。08年から量産を開始し、10年には15億円の売上高を目指す。(2006年8月30日付日刊自動車新聞より)

・小型車、軽自動車をターゲットにした、最大動作角50℃対応品では世界最小レベルとなるコンパクト固定式等速ジョイント「CUJ」を開発

・等速ジョイント関連商品に係る研究開発費は4,893百万円


精密機器商品等 (自動車部品関連)
・小型軽量化、高性能化、低コスト化ニーズに対応したオートテンショナ・チェーンテンショナおよびクラッチの単体並びにシステム商品の開発を進めている。
・テンショナ関係では、従来品の全長を15%短縮化した「補機ベルト用ショート型オートテンショナ」を開発。
・クラッチ関係では、従来品に比べプーリ径を12%小型化した「小型クラッチ内蔵プーリ」を開発。

・精密機器関連商品に係る研究開発費は775百万円


技術供与契約(2007年3月現在)
相手先 国名 契約内容 契約期限
Unidrive Pty. Ltd. オーストラリア 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 1983.2.15-2008.6.9
台惟工業股份有限公司 (TUNG PEI INDUSTRIAL CO., LTD.) 台湾 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 2003.3.26-2008.3.25
National Engineering Industries Ltd. インド ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 1985.11.5-2011.11.1

設備投資

2007年3月期は59,347百万円の設備投資を実施。

-軸受部門:
NTN三重製作所の製造設備の増設、岡山製作所の製造設備の増設、桑名製作所の近代化による製造設備の増設および建屋増築、NTN MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD. の製造設備の増設等で39,176百万円の設備投資を実施。

-等速ジョイント部門:
NTN DRIVESHAFT,INC.や岡山製作所での製造設備の増設等で19,574百万円の設備投資を実施。


設備の新設・除去等
会社名事業所 内容 総額
(百万円)
着手 完了 目的
エヌティエヌ
-研究部門
研究用設備 3,703 2004年6月 2010年1月 研究開発等
-桑名製作所 軸受用設備 10,305 2005年2月 2009年8月 合理化
-磐田製作所 軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 5,069 2005年7月 2008年5月 増産及び合理化
-岡山製作所 軸受・等速ジョイント用設備 11,020 2004年8月 2008年5月 合理化
-長野製作所 軸受用設備 1,196 2005年11月 2008年6月 合理化
NTN三重製作所 軸受用設備 10,751 2005年4月 2010年3月 増産及び合理化
NTN上伊那製作所 軸受用建屋及び設備 6,321 2006年1月 2008年3月 増産
NTN袋井製作所 等速ジョイント用設備 2,882 2006年10月 2007年9月 増産及び合理化
NTN紀南製作所 軸受用建屋及び設備 2,516 2006年11月 2008年1月 増産
NTN DRIVESHAFT, INC. 等速ジョイント用設備 3,107 2006年10月 2007年11月 増産
NTK Precision Axle Corp. 軸受・等速ジョイント用建屋及び設備 3,782 2006年5月 2007年11月 増産
NTN Transmissions Europe
(Allonnes,France)
等速ジョイント用設備 1,791 2005年4月 2007年9月 増産
NTN MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD. 軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 2,021 2006年10月 2007年4月 増産
NTN-NIDEC(THAILAND) CO., LTD. 軸受用設備 2,361 2006年8月 2007年6月 増産
NTN Manufacturing India Private Limited 等速ジョイント用設備 1,320 2006年1月 2007年9月 新規設立
上海恩梯恩精密機電有限公司
[SHANGHAI NTN CORPORATION]
軸受・等速ジョイント用設備 7,377 2005年6月 2008年3月 増産