ZF Friedrichshafen AG 2010年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2010年
12月期
2009年
12月期
増減率(%) 要因
グループ
売上高 12,907 9,371 38 -
部門別売上(自動車関連)
乗用車ドライブライン部門 2,254 1,647 37 -
シャシー部門 2,705 1,624 39 -
商用車・特殊ドライブライン部門 1,676 1,166 44 -
オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門 1,693 1,128 50 -
パワートレーン・
サスペンション部品部門
2,564 1,832 40 -
ラバー・メタルユニット - 378 - -
電子部品部門 266 208 28 -
ステアリング部門
(ZF Lenksysteme GmbH)
1,501 1,099 37 -

事業概況

乗用車ドライブライン部門
-Saarbrucken工場は売上で最大の伸長、前年比41%増となった。同拠点は、1.3百万機の乗用車用トランスミッションを製造。
-SaarbruckenのZF Getriebe GmbH工場は、1,055,000機のATを販売。1,937百万ユーロに相当。
-Brandenburg工場は、181,000機のMTおよびデュアルクラッチトランスミッションを製造。前年比15%増を記録。
-上海工場は、100,000機の5速および6速ATを製造した模様で、前年比8%増。

シャシー部門
-中国ChangchunおよびShenyang工場、米Alabama州Tuscaloosa工場、Illinois州Chicago工場の各拠点で予測を大幅に上回る売上を記録した。米South Carolina州Duncan工場、オーストリアLebring工場、中国Shenyang工場、タイRayong工場においてアクスル製品の立ち上げに成功。
-2010年ラバーメタル部門の統合に成功。同製品群は予想以上の急速な市況回復の影響を受けた。前年比29%増の507百万ユーロを達成。
-電子切り替え機能付きサスペンションマウントの需要が小型高出力ディーゼルエンジン用で増加。
-2010年、プラスチックペダルの新規受注が急増。

商用車・特殊ドライブライン部門
-2010年同部門は、期待を上回る市況の回復による影響を受けた。特に欧州以外の市場の回復が大きかった。部門全体で売上高は前年比44%増の1,676百万ユーロ。

オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門
-2009年の大幅な市況の低迷から一転、同部門は期待以上の回復をみせた。2010年売上高は前年比50%増の1,693百万ユーロとなった。
-建設用機械システム売上は531百万ユーロ。トランスミッションおよびアクスルの両方で市場シェアを伸長させた。
-農業用機械システムの事業ユニット売上高は、前年比9%増の295百万ユーロ。

パワートレーン・サスペンション部品部門
-同部門2010年売上高は前年比40%増の2,564百万ユーロ。不況の中、同部門ではプロセスの向上やコスト削減に取り組み、市況回復にともない売上増にこれら方策が寄与。
-パワートレーン事業は、前年比46%増の1,356百万ユーロ。乗用車および商業車とも市場平均以上の回復および売り上げ増を達成した。
-NAFTA地域では、特に重要な顧客の売り上げ増にともない市場平均以上の伸び率で成長。
-アジア市場は予測通りの拡大。中国は、同部門のクラッチ製造で最大の拠点となっており、年に300万機以上が製造される。
-新型トルクコンバーターを発表。8速ATの普及で市場に受け入れられた。
 
ZF Lenksysteme GmbH
-2010年は同合弁会社設立から12年で最も成功した年となった。売上高は前年比37%増の3,002百万ユーロとなり、不況前と比較しても14%増という大幅な増加となった。
-市場シェアの増加により、市場平均より高い成長を達成。
-同社の全事業ユニットおよび地域で売上高が増加。特に海外市場の勢いが大きかった。
-中国、ブラジル、米国の市況が好調に推移。
-電子パワーステアリングシステム「Servolectric」の高い需要に応えるため、米国および中国の生産ラインでの製造を開始、同社の世界市場での地位を向上させる。

受注

-2010年のプレスリリースによる主な受注は以下の通り。
メーカー・モデル 搭載部品
Cadillac 「CTS Coupe」、Chevrolet 「Cruze」、Chevrolet 「Traverse」 シャシー部品
Mercedes-Benz 「E-Class T-Model」

ZF Sachsの可変ダンパー、ラック&ピニオン式のパワーステアリング「Servotronic」、ZF Lenksystemeのステアリングポンプ

BMW 5シリーズ Gran Turismo

8速AT、油圧式アクティブロールスタビライザー「ARS」、連続可変ダンパー「CDC」(Continuous Damping Control)、パワーステアリング「Servotronic」、アクティブステアリング

Ford「Explorer」 シャシー部品
Cadillac 「SRX」、Buick「Lacrosse」、「Regal」 連続可変ダンパー「CDC」
Jaguar XJ

6速AT、パワーステアリング「Servotronic」、V8ガソリンエンジン用ステアリングポンプ、ZF Lenksystemの電子アジャスタブルステアリングコラム

Volkswagen 「Golf/Golf GTI」

ツインチューブダンパー、クラッチ板、デュアルマス・フライホイール、電子制御パワーステアリング「Servotronic」

BMW X5 M/X6 M

ベクタードライブ・リアドライブユニット、6速AT、電子制御パワーステアリング「Servotronic」、連続可変ダンパー「CDC」、電子部品/シャシー部品、油圧式アクティブロールスタビライザー「ARS」

Porsche「Panamera」 7速デュアルクラッチトランスミッション、連続可変ダンパー「CDC」、油圧式アクティブロールスタビライザー「ARS」、電子制御パワーステアリング「Servotronic」、可変容量ベーンポンプ「Varioserv」、プラスチックペダル
Volkswagen「Amarok」 ラック&ピニオン式ステアリングシステム、6速MT「Ecolite」、フロントアクスルドライブユニット
Hyundai Motor Company「Equus」 ATおよび主要サスペンションパーツ
Alfa Romeo 「Giulietta」 ツインチューブダンパー、スプリングストラット、サスペンションおよび電子部品、電子制御パワーステアリング「Servotronic」
Aston Martin Rapide 6速AT、電子制御パワーステアリング「Servotronic」、ステアリングポンプ
Audi A1 ギアシフトシステム、サスペンションおよび電子部品、エンジンマウント、クラッチ部品、デュアルマス・フライホイール
Audi A8 8速AT、連続可変ダンパー「CDC」、サスペンションおよび電子部品、シフトバイワイヤー・ギアシフトシステム、電子制御パワーステアリング「Servotronic」、アクティブステアリングシステム、制御ベーンポンプ、可変容量ポンプ「Varioserv」(オプション)
BMW 5シリーズ
6速MT、8速AT
BMW 7シリーズ ActiveHybrid 8速AT、モーター「DynaStart」、サスペンションおよび電子部品、電子制御パワーステアリング「Servotronic」、連続可変ダンパー「CDC」、油圧式アクティブロールスタビライザー「ARS」
Mercedes-Benz E-Class Convertible 可変ダンパー
MINI Countryman アクスルモジュール、サスペンション部品、ハイドロダンピング・コントロールアームマウント
Porsche 「Cayenne」/Volkswagen 「Touareg」 アクスルドライブ、電子制御連続可変ダンパー「CDC」、サスペンション、電子部品、プラスチックペダル、連続可変ダンパー「CDC」
Volkswagen 「Sharan」 デュアルマス・フライホイール、クラッチ板
BMW 3シリーズ
6速MT、6速AT(オプション)、ZF Sachs振動ダンパー、電子制御パワーステアリング「Servotronic」
Beiqi Foton Motor 「Aumark」 5S 400 MT
Iveco 「Daily 35S11 AGile vans」 6速ATトランスミッション「eTronic」
Land Rover 8速AT
Jeep 「Grand Cherokee」 ZF Sachsのセルフレベリングダンパー「Nivomat」
VDL Bus & Coach 「Citea CLF 120」 6速AT、アクスル、サスペンション
Saab 9-5 連続可変ダンパー「CDC」

事業再編

-2011年初頭に組織再編。現在の5部門体制から4部門に改編する。これに伴い、同社はドイツ子会社の大部分を吸収合併する。これには、ZF Getriebe GmbH、ZF Lemforder GmbH、ZF Passau GmbH、ZF Sachs AGが含まれる。(2010年12月9日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2010年12月期 2009年12月期 2008年12月期

合計

646 663 697

研究開発体制

-ZF R&D部門には、世界で約5,400名が所属。そのうち、エンジニア/技術者760名が独FriedrichshafenのR&D拠点にいる。さらに、チェコPilsen、中国上海、東京に160名を有している。また、同社では、将来の研究開発要求に応えるため、海外のR&D要員を積極的に増強していくとしている。2010年は、R&D部門に全社売上の5%あたる646百万ユーロを投じた。

-上海に建設した新しいアジア本部及びR&Dセンターは2010年6月8日から正式に業務を開始した。本部オフィスビルの広さは6000平方メートル。 R&Dセンターは4000平方メートル。将来第2期工事としてさらに2万平方メートル拡張する計画。現在の従業員数は合計250名で、今後は500名 まで増員する。このうちR&Dセンターのスタッフは100名で、2013年までにこれを300名まで増員する予定。

研究開発拠点

主要エンジニアリングセンター ドイツFriedrichshafen
エンジニアリングセンター チェコPlzen
中国上海
東京

特許

-前年同様、2010年に同社はドイツでトップレベルの特許出願数を達成。その数は900以上となり、前年比で増加となっている。特にトランスミッションおよびハイブリッド技術の開発に注力している。

研究開発活動

-ZF、Continental、ads-tecの3社は、ハイブリッド商用車用リチウムイオン電池を共同開発する。ドイツ連邦教育研究省による研究開発プ ロジェクト「Future goes Electric (FUEL)」の一環。プロジェクトの期間は2011年夏までの予定。Continentalはリチウム電池の開発・生産において主導的な役割を担う。ま た、ZFはハイブリッドシステムへのエネルギー貯蔵システムの統合を担当。ads-tecは生産自動化および試験技術を提供する。(2010年5月10日 付プレスリリースより)

技術提携

-米国Intel Corp.との間で戦略的提携を締結し、車載テレマティクス市場に参入する。まず両社は、全バスメーカーの市内バスを対象として、ハードウェアおよびソフ トウェアのプラットフォーム「openmatics」を共同開発する計画。2011年の搭載開始を目指している。(2010年3月1日付プレスリリースよ り)

-同社とFunkwerk eurotelematik GmbH(ドイツ)は、車載テレマティクス「Openmatics」用アプリケーションの開発に関して提携する。両社は最初のフリート管理アプリケーショ ンとして、運行データ収集用電子タコグラフとオーダートラッキングシステムを開発済み。なお、「Openmatics」はZFとIntel Corp.(米国)が共同開発したテレマティクスシステム。(2010年8月31日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2010年12月期 2009年12月期 2008年12月期
グループ 582 516 939
乗用車ドライブライン部門 164 136 187
シャーシー部門  77
64 71
商用車・特殊ドライブライン部門 45 87 258
オフロード車両用ドライブライン・アクスルシステム部門 79 42 89
パワートレーン・サスペンション部品部門 87 60 168
ラバー・メタルユニット   - 7 18
電子部品部門 4 7 2
ステアリングシステム部門
(ZF Lenksysteme GmbH)
84 52 82

設備投資

-インドのPuneのインダストリアルセンターに組立て工場を開設。年間約1万基の建機用アクスルとトランスミッションを生産する。さら に、2010年内には、Puneに新たな工場を開設し、トラック用トランスミッションの組立てを開始する。現在、同グループはDelhi、Uttaranchal、Chennaiで自動車用シャシーを生産しているSona Somic Lemforder Ltd.に29%、Puneで商用車用ステアリングシステムを生産しているZF Steering Gear (India) Ltd.に26%、Maduraiで電子部品を生産しているZF Electronics TVS (India) Private Ltd.に50%をそれぞれ出資している。過去3年間では、Puneに本社をおくZF Lenksysteme India Private Ltd.、Raipur、Bangalore、Puneにサービス拠点を置くZF Services GmbH、同じくPuneにあるZF India Private Ltd.を開設している。現在、オフロード車両用ドライブライン及びアクスルシステム部門の工場(生産スペース約2,400平方メートル)と商用車及び特 殊ドライブライン部門の工場(生産スペース約5,000平方メートル)も建設。(2010年1月19日付プレスリリースより)

-インドのPuneに大型トラック用トランスミッションの新工場を開設。中期的に「Ecomid」9速トランスミッションを年間で約25,000基生産する計画。(2010年10月13日付プレスリリースより)

-ドイツのSaarbrucken工場の生産能力を拡大。8速オートマチックトランスミッション(AT)への強い需要に対応するもの。約1000万ユーロを 投入して生産棟を建設、これにより150~200人の増員が見込まれる。2012年春よりAT用のトリガーボックスを生産。この部品は、 Saarbruckenだけでなく米国や中国のZFトランスミッション工場においても使用される計画。面積約800平方メートルのこの新工場は、年内に着工。(2010年11月5日付プレスリリースより)