Grupo Antolin-Irausa, S.A. 2019年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)

2019年12月期 2018年12月期 増減率(%) 要因
売上高 5,214.2 5,424.6 (3.9) 1)
EBITDA 434.9 355.9 22.2 2)
事業別売上
ヘッドライナー 1,921.2 2,060.5 (6.8) 3)
ドア 1,975.8 1,886.5 4.7 4)
コックピット 974.7 1,125.5 (13.4) 5)
ライティング 334.1 349.1 (4.3) 6)


要因
1) 売上高
-2019年12月期の売上高は、前年比3.9%減の5,214.2百万ユーロ。アジア太平洋と欧州での減収が、同社の全社売上高減の主要因となった。為替差益による増収効果は、全社売上高の減少を一部相殺するに留まった。事業別ではドア事業部門のみが前年比増となったが、ヘッドライナー、コックピット、ライティング各部門がいずれも売上減のため、全体としては減収。

2) EBITDA
-2019年12月期のEBITDAは前年比22.2%増の434.9百万ユーロ。IFRS16号適用による効果を除いたベースのEBITDAは356.0百万ユーロとなり、前年の362.0百万ユーロから減少。中国やメキシコ、英国で減益となるも、米国やドイツ、チェコでの販売増ならびに製品立ち上げにより全社としては増益。

3) ヘッドライナー (Headliners)
-2019年12月期の同事業の売上高は、前年比6.8%減の1,921.2百万ユーロ。米国 (Kentucky)、ハンガリー、英国、ドイツでの減収が、Alabama、Wayne、Spartanburg (米国)やメキシコ、スロバキアでの増収を上回り、全体としては減収。

4) ドア (Doors)
-2019年12月期の同事業の売上高は、前年比4.7%増の1,975.8百万ユーロ。Kentucky、Shelby両工場でDodge Ram向け製品、サウスカロライナ州Spartanburg工場でBMW向け製品をそれぞれ生産開始したことによる北米市場での販売増が増収に寄与。

5) コックピット・コンソール (Cockpiits & Consoles)
-2019年12月期の同事業の売上高は前年比13.4%減の974.7百万ユーロ。減収の主な要因は、中国常熟工場、および英国Redditch工場でのJaguar Land Roverモデル関連の販売減。天津工場の不振もまた影響を及ぼした。ドイツStraubing工場、チェコLibanでは売上増となり為替差益によるプラス影響もあった一方、上記の減収要因が上回った。

6) ライティング (Lighting)
-2019年12月期の同事業の売上高は、前年比4.3%減の334.1百万ユーロ。フランスBesancon工場、中国蘇州工場での売上減が主な要因。

 

事業動向

ー2020年の新戦略計画を発表した。この戦略計画により、内装部品メーカーとしてのプレゼンスを強化し、新モビリティをリードするとともに自動車メーカーの車両開発をサポートする。新計画は、取り組んできたスマートインテグレーター戦略の進展を継続する。より複雑で付加価値の高いシステム開発をベースとし、多くの技術、電子機器、照明ソリューションを提供する。Hi-RainやWalter Packなどとの提携により、エレクトロニクス、照明ソリューション、内装装飾部品事業などの強化を図るという。(2019年11月28日付プレスリリースより)

-装飾品と組み合わせることができる電子機器に重点を置いた新しい照明ソリューションへの投資を発表した。照明事業は、より多くの技術と電子機器を含み、さらなる機能を提供する統合製品を開発するという戦略の鍵で、2019年は世界中で約30件の照明事業プロジェクトを立ち上げる予定。2018年に中国市場に特化した広州の新工場を発表し、世界最大の自動車市場向けの革新的な照明ソリューションを開発するために、中国のHiRainグループと提携した。(2019年10月21日付プレスリリースより)

 

受注

-2019年、同社は製品ポートフォリオ全体で計413のプロジェクトを進行中であり、そのうち120は新規に開始した案件。

-VWの電気自動車 (EV)「ID.3」およびアウディ「eトロン (e-tron)」向けにインストルメントパネル、車内アンビエント照明システム、装飾フィルム、ドアパネルの供給を開始したと発表した。また、Byton「M-Byte」、Aiways「U5」、Nevs「9-3」、ボルボ「XC40」などのEVにストレージシステムを供給することもあわせて発表した。同社史上最大規模のプログラム投入で競争力の強化を図っており、現在は合計約420件のプロジェクトが進行中だという。(2019年11月28日付プレスリリースより)

-現在進行中の419件のプロジェクトについて発表した。67件が電動化モデルのプロジェクトで、そのうち37件が電気自動車(EV)(半数以上がまだ市場に投入されていないモデル)、30件が内燃エンジン車の電動バージョンだという。より多くの技術と電子機器を含む統合製品の開発に焦点を当て、更なる機能と照明ソリューションを提供する。(2019年9月12日付プレスリリースより)

-アジアでの成長戦略の一環としてベトナム市場に参入することを決定したと発表した。2019年夏に発売予定のVinFastの2モデルにオーバーヘッドとサンバイザーを供給する。(2019年5月29日付プレスリリースより)

 

研究開発費

 (単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
プロジェクトに投じた費用 129.8 123.2 118.9
売上に占める割合 (%) 2.5 2.0 2.4

 

研究開発施設

-2019年12月末現在、24の技術事業所を保有。

  • 西欧:12拠点
  • 東欧:1拠点
  • アジア大洋州:7拠点
  • 北米:2拠点
  • その他:2拠点

-ドイツBambergに照明事業施設を開設したと発表した。11.5百万ユーロを投じた新施設は、製造工場に加えて新世代のダイナミックアンビエント照明製品のようなアンビエント照明事業の技術開発に焦点を当てる最新の技術センターを備えており、400名(うち80名は技術センター)を雇用する。この技術センターはメキシコ、米国、中国、インド、欧州拠点をサポートするという。(2019年5月16日付プレスリリースより)

 

研究開発体制

-2019年12月末現在、1,750名が研究開発に従事。
 

研究開発活動

-全開発工程にわたって新機能・新技術を取り入れ、効率化・競争力向上を目指す商品力強化プログラムに注力開始。主な取り組みは以下:

  • キャパシティブセンサーとバックライトソリューションを統合し、外観を向上させるスマートサーフェス
  • 繰り返し使用しても手入れが容易、かつ抗菌効果に優れたインテリアサーフェス
  • 快適性、安全性を高め、ダイナミックかつ機能面に優れたインテリアライティングソリューション
  • ヒートサーフェスにより乗員がどの程度快適性を感じるか、およびEVのエネルギーマネジメント効率をどの程度改善するかに関する研究
  • 従来型の電子回路に代わる導電性インクの開発
  • 作動性能の改善に資する部品モジュール化および電子制御技術の提案

-Centro Tecnologico de Automocion de Galicia(CTAG)およびその他の組織と提携し、e-SPACE研究プログラムへの参加を継続。この参加により、数々の製品開発プロジェクトにおいてエレクトロニクス分野の支援を受けられる。

ANTOLIN i.JUMPオープンイノベーションプログラム
-オープンイノベーションプログラム「ANTOLIN i.JUMP」の2番目の課題を開始したと発表した。このプログラムにより、電気自動車 (EV)とコネクテッドカーのトレンドとプロセスのデジタル化に従って、革新的なソリューションの開発を目指す。プログラムの最初の課題は、車内の快適性を改善する冷却ソリューションの開発に関するもの。2番目の課題は製品のトレーサビリティ関連で、信頼性が高く低コストのセンサー化と、高圧高温プロセスの任意の段階で製品の状態を監視するデータ収集ソリューションを開発することを目標としている。3番目の課題は、新タイプのモビリティのニーズを満たす、設計、制御、操作技術などすべての機能を備えた車内照明システムに焦点を当てている。(2019年11月4日付プレスリリースより)

-ennomotiveとの共同で設立したオープンイノベーションプログラムであるANTOLIN i.JUMPから初となる課題を3点公表したと発表した。このプログラムにより、自動車の電動化やコネクテッド化、プロセスのデジタル化が進む昨今の自動車産業の中で、革新的なソリューションを開発することで業界をリードしていくことを目的としている。1点目の課題は、ユーザーの介入無しで乗車時の快適性を向上させるようなインテリジェントシステムに基づいた新機能を発見することである。その場合、システムにはセンサーでのモニタリングと機能を制御するアクチュエータを組み合わせることが要求される。2点目は空調に関する課題であり、車内の空気を良いコンディションに保つための新システムを開発することである。この課題は、温度・二酸化炭素量・湿度などを測定し、効率的に制御しながら良い空気を再生産することで解決可能となる。3点目は、車両に搭載された電子機器の冷却に関する課題であり、具体的には容易に統合でき、電力消費やユーザーの操作なしで最適な温度条件を維持できるソリューションとしている。(2019年5月6日付プレスリリースより)

-Grupo Antolinは、オープンイノベーションイニシアティブであるANTOLIN i.JUMPを開設すると発表した。このプログラムでは、企業の研究・開発・イノベーションや技術発展を補強、加速させるクラウドソーシング環境を提供する。同社は、技術者やその他の科学・技術・工学・数学の専門家のほか、スタートアップ企業・中小企業・技術センターや大学などの全ての領域の人が参画し、アイディアや知識を共有できるようなオープンエコシステムを創設することを目標としている。また同社は課題解決のプログラムを開始する予定であり、それにより同社が設定した課題に対してエコシステム内でソリューションを発見することができる。なおプログラムは、世界中で15,000人以上もの技術者を含み技術的な課題解決を目的としたオープンイノベーションプラットフォームであるennomotiveと協業で遂行する予定である。同社最初の課題は次週に発表される予定であり、スマートシステムがベースの新機能に関連した乗車時の快適性を向上させるための技術的なソリューションの開拓を期待しているという。(2019年4月29日付プレスリリースより)

 

技術提携

-2019年、複数の企業および機関と連携や契約を取り交わした。

  • Walter Pack:内装装飾技術の開発、および先進技術を取り入れた製品の開発に関する提携
  • Eyesight Technologies:AIベースの乗員監視ソリューションを採用したビジョンシステムの開発に関する提携

北京経緯恒潤科技有限公司[Beijing Jingwei HiRain Technologies Co., Ltd.]
-2019年2月20日、中国の自動車エレクトロニクスサプライヤー北京経緯恒潤科技有限公司[Beijing Jingwei HiRain Technologies Co., Ltd.](恒潤科技)と上海で戦略提携パートナーシップを結んだと発表した。両社は自動車内外装の革新的照明システムソリューションの開発で協力する。Grupo Antolinは未来に向けた自動車照明、電子部品、センサー、カメラとモニターなどの製品インテグレーションを通して自動車内装部品のスマート化を目指すスマートインテグレーター戦略を展開している。恒潤科技は中国の大手自動車電子部品企業で、北京に本社を置く。電子エンジニアリング、電子部品の製造を手掛け、全国で事業展開しているほか、ドイツ、米国に支社を置いている。Grupo Antolinと恒潤科技はダイナミックアンビエントライトの共同開発をすでに進めており、エンドユーザーが求める新しいインテリア照明の機能を取り入れた最新版は2019年中に中国市場に投入される予定。(2019年2月20日付け複数メディア報道より)

 

製品開発

Walter Packとの協業による「Automotive Interiors Expo」での出展
-戦略パートナーのWalter Packと共同で、米国ミシガン州で開催の「Automotive Interiors Expo」に出展すると発表した。両社は、柔軟性のあるエレクトロニクスと触覚フィードバックを取り込み、ユーザーとの対話を促進する「DOOR CAPACITIVE PAD」を展示する。この製品はバックライト付きフィルムの様々な仕上げにより、快適な外観と感触をもたらす。また、触覚フィードバック、ジェスチャー認識、環境センサー、マトリックスイルミネーション、ダイナミック照明などを融合し、乗客のニーズに応じて様々な照明効果を与える「PREMIUM OVERHEAD CONSOLE」も出展する。このほか、コルク、皮革、天然席などの選択が可能な特有の内装材料「NATURAL DECORATIVE INSERTS」も公開予定。(2019年10月21日付プレスリリースより)

 

特許

-2014年1月1日から2018年12月31日までに、214件の特許を取得(内、168件が現在有効)。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
全社 301.4 320.4 333.4


-2019年12月期は以下拠点において設備投資を行った。

  • Besancon (フランス)
  • Silesia (ポーランド)
  • Bamberg (ドイツ)
  • Turnov (チェコ)
  • Liban (チェコ)
  • Kentucky (米国)
  • Toluca (メキシコ)
  • Cuautitlan (メキシコ)

-2020年12月期の設備投資は、前期に比べて減少する見込み。メキシコCuautitlanに、フォードの新型電気自動車(Ford Mustang Mach-e)のドアシステム生産を支援するための新設備投資を2020年半ばから実施する見込み。また、COVID19流行の影響により、第1四半期の投資の20%を延期し、2020年第2四半期および第3四半期の投資を予定。

 

海外投資

<ベトナム>
-アジアでの成長戦略の一環としてベトナム市場に参入することを決定したと発表した。2019年夏に発売予定のVinFastの2モデルにオーバーヘッドとサンバイザーを供給する。製品供給にあたり、ベトナムHaiphongのVinFastの工業団地内にジャストインタイムセンターを開設した。また、中国の電気自動車 (EV)14モデル向けに部品を供給するプロジェクトの継続もあわせて発表した。(2019年5月29日付プレスリリースより)

<ドイツ>
-Bambergに照明事業施設を開設したと発表した。11.5百万ユーロを投じた新施設は、製造工場に加えて新世代のダイナミックアンビエント照明製品のようなアンビエント照明事業の技術開発に焦点を当てる最新の技術センターを備える。(2019年5月16日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-プログラムの一環としてメキシコのCuautitlanに新工場を開設して100名超を雇用し、フォードにドアパネルとインストルメントパネルを供給する。また、ArteagaおよびToluca工場でもフォード向け製品を製造する計画。(2019年4月4日付プレスリリースより)