Webasto SE 2019年12月期の動向

業績

-2019年12月期の売上高は前年比9.2%増の3,749百万ユーロ。売上高の増加は、主に合弁会社であるWebasto Dongheeの買収によるもの。連結範囲の変更を除くと、売上高は前年比でほぼ横ばいとなった。

-2019年12月期のEBITは前年比47.0%減の107百万ユーロ。この減益は、新技術への投資やプロジェクトの立ち上げ、合弁会社Webasto Donghee買収に伴う費用増、自動車市場の下降トレンドや貿易摩擦による利益率の低下などによるもの。

-2019年12月期のルーフ&部品部門、エネルギー&部品部門、カスタマイズソリューション部門は、それぞれ全社売上高の84% (3,100百万ユーロ)、15% (575百万ユーロ)、1% (43百万ユーロ)となった。

 

買収

-韓国の合弁会社Webasto Dongheeの買収を発表した。1987年設立のWebasto Dongheeは同社とDongheeが折半出資する合弁会社。今回の買収は同社史上最大のもので、これまでパノラマルーフの製造・販売に注力していたWebasto Dongheeは、今後Webastoの世界的な開発および生産ネットワークの一部となる。Webasto Dongheeは韓国自動車メーカー向けにルーフシステムを提供しており、将来的にはバッテリーシステム、充電ソリューション、電気暖房システムなどの全ポートフォリオの提供が可能になるという。(2019年4月10日付プレスリリースより)

 

事業再編

-将来の方向性強化のための新組織を発表した。2019年初めから、同社グループの事業構成は以下3つのユニットに変更された。

  • ルーフ&部品部門 (Roof & Components):サンルーフ、パノラマルーフ、コンバーチブルルーフの開発、製造
  • エネルギー&部品部門 (Energy & Components):バッテリーシステム、充電ソリューション、電気および燃料ヒートシステムの開発、製造
  • カスタマイズソリューション部門 (Customized Solutions):顧客、貿易パートナー、特殊車両メーカー向けのカスタマイズソリューション部門

-同社は、今後数年間で車両制御ユニットの需要が飛躍的に増加すると見込んでおり、全分野にわたるメカトロニクスの専門知識の強化を図るという。(2019年5月21日付プレスリリースより)

 

最近の動向

-2020年には約230名の増員を計画しており、バッテリーシステムや充電ソリューションの分野に注力する。

 

受注

-2029年までに少なくとも220億ユーロの受注残が予想され、これら受注のうち新技術にかかわるものは約11%を占める見込み。

-Volkswagen T-Roc コンバーチブル用のソフトトップルーフやChevrolet Corvette用の格納式ハードトップルーフを受注した。

 

受賞

<欧州>
-BMW i8 Roadster向けルーフコンセプト:「BMW Supplier Innovation Award 2018」Efficient Dynamics部門
-イタリアVenaria工場:「General Motors Supplier Quality Excellence Award 2017」
-ドイツHengersberg工場:「Jaguar Land Rover Quality Award 2017」
-スウェーデン工場:「KGK Knutsson Supplier Award 2017」

<米州>
-Mustang Lithium向けデザイン:「Ford Best of Show Award 2019 at SEMA」
-「Ford World Excellence Award 2019」
-「FCA Innovation Supplier of the Year 2018」
-米国ミシガン州Plymouth工場「General Motors Supplier Quality Excellence Award 2017」

<アジア>
-中国河北省保定工場:「Great Wall Motors Sincere Partner Award」
-「SAIC-VW Excellence Cooperation Performance Award 2019」
-中国重慶市の同社拠点:「Changan Auto Supplier of the Year 2017」
-「SAIC-GM 2017 Best Technology Supplier」
-「Dongfeng Liuzhou Motor Excellent Supplier of 2017」
-「FAW-VW 2017 Excellent Development Supplier」
-中国重慶工場:「Changan-Ford Annual Top Supplier Award 2017」
-中国武漢工場:「GAC-Fiat 2017 Excellent Delivery Supplier」
-中国広州工場「Guangqi Honda Excellent Supplier 2017」
-中国長春工場「FAW-VW Excellent Partners 2017」

 

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
合計 318 271 233
売上に占める割合 (%) 8.5 7.9 6.6

ー2019年12月期の研究開発費は、前年比17.3%増の318百万ユーロ。同社の研究開発における重点分野は、エレクトロモビリティ、ルーフエンジニアリングシステム/技術、メカトロニクスなど。

 

研究開発拠点

ー米国子会社Webasto Roof Systemsが、ミシガン州Auburn Hillsに40百万ドルを投じて新施設を建設すると発表した。この施設では、エンジニアリングとテストの機能を拡張し、既存の従業員に加えて55名を新規雇用する見込み。Rochester Hillsの拠点は現在北米本社およびテストセンターとして機能しているが、今後はAuburn Hillsに本社機能を移管し、ミシガン州の拠点統合を行う計画。Webasto Roof Systemsは、サンルーフ、パノラマルーフ、コンバーチブルルーフなどのルーフシステムや、ヒートシステムなどを製造している。Webasto Groupは米国ではミシガン州Rochester Hills、Plymouth、Fenton、ケンタッキー州Lexington、カリフォルニア州Monroviaの5カ所に拠点を保有している。(2019年5月29日付 Michigan Economic Development Corporationリリースより)
 

製品開発

モバイルネットワーク充電ステーション「Webasto Live」
ーモバイルネットワークで制御可能な電気自動車 (EV)用インテリジェント充電ステーション「Webasto Live」の市場投入を発表した。G+D Mobile SecurityのeSIMソリューションは、デジタルサービスの安全な管理を保証し、POST Luxembourgが充電ステーションのグローバルなモバイル接続を提供する。「Webasto Live」の充電プロセスは、アプリまたは充電ポータルを介して制御でき、オンラインによるシステムのリモート操作と更新が可能となる。LANおよびWLANインターフェースに加えて、4Gモデムを介したインターネット接続もできるという。(2019年12月18日付プレスリリースより)

2019 SEMA exhibitionでの展示
-ラスベガスで開催された2019年SEMAショーで新しいモジュラーバッテリーシステム、熱管理および充電ソリューションを出展したと発表した。同社は拡張性と柔軟性を備えたCV標準バッテリーシステムを公開した。このシステムはバッテリーパック1個あたり35kWhで、最大10パックを組み合わせて350kWhで使用できる。400Vと800Vの2バージョンで利用でき、車両インターフェースボックス(VIB)を介してシステムを簡単に構成することが可能。また、フォード「マスタング リチウム (Mustang Lithium)」に採用されたカスタムエネルギー貯蔵ソリューションと既成のバッテリーパックも出展。さらにアクティブ・パッシブ冷却、電動流体ヒーター、ヒートポンプを組み合わせてバッテリーシステムを最適な温度に保つ熱管理ソリューションも発表した。このほかプラグインハイブリッド車 (PHV)と電気自動車 (EV)に互換性があり、家庭、会社、集合住宅での使用に適したレベル2充電ソリューション「TurboDX」や、ポータブル充電ソリューション「TurboCord」なども出展した。(20191120日付プレスリリースより)

ヒーター制御アプリケーション「ThermoConnect」
-複数のパーキングヒーターを制御できる多機能アプリケーション「ThermoConnect」を発表した。Webastoのヒーターを複数使用する所有者は、1つのアプリですべてのデバイスを制御できるようになる。「ThermoConnect」は「Thermo Top Evo」パーキングヒーター、「Air Top 2000 STC」および「Air Top Evo 40/55」エアヒーターの制御が可能。また、Alexaの新機能により、2020年第1四半期から音声コマンドを使用してWebastoのパーキングヒーターを制御することも可能になる。このための前提条件は、Amazonの音声アシスタントと「ThermoConnect」を使用することとなる。パーキングヒーターが自動車メーカーによって既にインストールされており、車のパネルから、または無線リモコンを介して制御されている場合、ヒーターのアプリ制御にアップグレードするにはアダプターケーブルを入手するだけでよいという。このケーブルは、工場で取り付けられた受信機に接続されている。 これは、ほぼすべての自動車メーカーの車両に適用される。「ThermoConnect」制御ユニットは車両の見えない位置に取り付けられる。SIMカードが含まれており無料アプリがダウンロードされると、距離に関係なく、スマートフォン、タブレットコンピューター、またはPCを使用してパーキングヒーターを操作することができる。(2019年11月12日付プレスリリースより)

超高性能EVコンセプトカー「Ford Mustang Lithium」
-フォードと「マスタング (Mustang)」のファストバック・プロトタイプとなる超高性能電気自動車 (EV)バージョンの「マスタング リチウム (Mustang Lithium)」を発表した。「マスタング リチウム」は最高出力900hp超、最大トルク1,000 lb-ft超で、GetragのMT82 6速マニュアルトランスミッションを組み合わせた超高性能モデル。一度限りのプロトタイプではなく、フォードと取り組むeモビリティのバッテリーおよび熱管理技術のテストベッドでもあるという。「マスタング リチウム」はPhi-Powerデュアルコア電気モーターとデュアルパワーインバーターを使用する。これらはすべて、メガワット級の電気エネルギーを放電できるEVDrive技術を備えた800VのWebastoのバッテリーシステムで駆動する。Ford Performanceのハーフシャフトとトルセンディファレンシャルは、Michelinのスポーツタイヤ「Michelin Pilot Sport 4S」を装着した軽量のForgelineホイールを介して動力を供給する。. (2019年11月5日付Fordプレスリリースより)

EV向け熱管理システム
-電気自動車 (EV)向け熱管理システムをブリュッセルで開催のBusworldで初公開すると発表した。キャビンの暖房とヒートポンプの動作を補完する廃熱回収原理をベースとするアプローチにより、バッテリーレンジを約25%拡張する。このシステムは95%の効率を実現する高電圧ヒーターHVH 100で構成され、Cronus Smartがシステムを制御する中央ユニットとして機能する。同社のCV標準バッテリーは、ブリュッセルのI SEE Electric Bussesに初搭載されている。またBusworldでは、タイプ2プラグを備えるすべての電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHV)と互換性があり、3.7-22kWの電力を供給する充電ソリューション「Webasto Pure」や、中型バス用モジュール式ルーフトップエアコンシステム「Cool Top 220 RT-C」、コントロールユニット「Thermal Management Control Plus」なども出展する。(2019年10月17日付プレスリリースより)

eMove360°での展示
-eモビリティソリューションをミュンヘンで開催のeMove360°に出展すると発表した。同社は快適な室内温度を作り出し、バッテリーを最適な温度に保つ高電圧ヒーター(HVH)を公開する。効率的なコーティング加熱技術により、HVHは蓄積された電気エネルギーをほとんど損失なく熱に変換し、95%超の効率を実現する。この高電圧ヒーターは250Vから870Vまでの車載電源用に設計されており、5kW、7kW、10kWの電力レベルで使用できる。また、個別に構成可能でコスト効率が高く、さまざまな車両セグメントに適した「Webasto Standard Battery System」も発表する。このほか、Webasto LiveAppを介してモバイルネットワークで制御可能なインテリジェント充電ステーション「Webasto Live」や、タイプ2プラグを備えるすべての電気自動車(EV)と互換性があり、充電容量11kWまたは22kWで利用可能な「Webasto Pure」も出展予定。(2019年10月15日付プレスリリースより)

IAA 2019での展示
-センサーと関連機能を自動運転車のルーフシステムに統合したルーフセンサーモジュールをフランクフルト・モーターショーで初公開すると発表した。この製品は理想的なセンサー配置により、あらゆる気象条件で環境を捕捉する。また、一体型センサーと高い剛性を備えた透明で開閉可能なルーフシステムも同時に実装できるという。このほか車両インターフェースボックス、ルーフシステム、電気ヒーター、充電ソリューションなどを備えた標準バッテリーシステムや、音声制御システム「Alexa-Skill」、アンビエントライトなども出展する。(2019年9月10日付プレスリリースより)

Caravan Salonでの展示
-キャンピングカー向けソリューションをドイツDusseldorfで開催のCaravan Salonに出展すると発表した。同社はバッテリーシステム「Webasto CV Standard Battery System」を初公開する。また、タイプ2プラグを備える電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHV)に対応する充電容量最大22kWの充電ステーション「Webasto Pure」や高電圧ヒーター(HVH)も出展予定。このほか、軽量かつ省スペースのエアヒーター「Heat Air」やフラットでコンパクトなデザインが特徴のルーフトップエアコン「Cool Top Trail」、省スペースでクレバーな設置が可能な冷蔵庫なども発表する。(2019年8月31日付プレスリリースより)

Power2Driveでの展示
-電動モビリティ向けソリューションをドイツMunichで開催されるPower2Driveに出展すると発表した。同社は、Webasto LiveAppを介してモバイルネットワークまたはBluetoothによって接続できるスマート充電器「Webasto Live」を公開する。「Webasto Live」は、LANやWLANなどにより複数の充電器に接続でき、動的負荷管理を可能にする。また、自動車メーカーに関係なく、タイプ2プラグを備えるすべての電気自動車(EV)と互換性があり、充電容量11kWまたは22kWで利用可能なベーシックタイプの「Webasto Pure」も展示する。さらに、ハイブリッド車およびEV向け高性能ヒートシステムを高電圧ヒーター(HVH)の形で出展する。HVHは車内の温度を快適にすると同時にバッテリーの温度調整も行うことで、バッテリー性能をフルに引き出すという。(2019年5月15日付プレスリリースより)

Technologies shown at 2019 Shanghai Auto Show
-上海モーターショーでモビリティーの大きな潮流に対する革新的なソリューションを公開すると発表した。モジュラー設計に有利な高電圧の標準バッテリーのほか、バッテリーシステムと車両間のインターフェイスとして開発され、ユーザー独自でシステム設定やプログラミングが行えるビークル・インターフェイス・ボックス(VIB)を展示する。またハイブリッド車や電気自動車向けで、車内温度とバッテリーの状態をモニタリングしながら最適な稼働を行うことが可能な暖房システムであるハイ・ボルテージ・ヒーター(HVH)も展示されるという。(2019年4月17日付プレスリリースより)

 

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
合計 405 248 176
売上に占める割合 (%) 10.8 7.2 5.0


-2019年12月期の設備投資額は前年比63.3%増の405百万ユーロ。そのうちWebasto Donghee買収に伴う設備投資額は127百万ユーロ。新規事業分野の拡大、中国、韓国および米州における生産能力の増強に資本支出を集中した。

 

国内投資

-ドイツで電気自動車(EV)用バッテリーの生産を開始したと発表した。すでにRegensburgのSchierling工場で欧州バスメーカー向けバッテリーパックの製造を開始しており、2020年初頭から商用車向けに自社開発の標準バッテリーシステムを製造する。生産に向け、同社は複数の製品ラインに11百万ユーロを投資、さらに18百万ユーロがHengersbergの試作品製造・検証センター設立に投じられた。Hengersbergの拠点ではバッテリーシステム用のアルミボックスも製造し、製品はSchierling工場へと送られる。なお標準バッテリーのセルは、2018年以来バッテリーシステムの分野でのパートナーであるSamsung SDIから供給されている。(2019年9月30日付プレスリリースより)
 

海外投資

<中国>
-上海近郊の嘉興にルーフ工場とバッテリーセンターを開設したと発表した。同社は2019年秋以降、武漢工場でルーフに加えて電気ヒーターと充電ステーションを製造している。約36,000平方メートルの新工場は年間150万個のルーフの生産能力を持つ。バッテリーセンターではバッテリーシステムのテスト、プロトタイピング、生産を行う。9,600平方メートルのセンターは、極端な温度と強い動きの下でセル、モジュールおよびバッテリーパック全体の性能をテストする設備を有する。生産および試験エリアは、合計で約44,000平方メートルとなる。現在の従業員数は約200名で、2020年内に460名に増強する予定。(2020年1月13日付プレスリリースより)

-中国の武漢の新工場を開設したと発表した。50百万ユーロを投じた41,000平方メートルの新工場は、現在同社グループ最大の生産拠点で、サンルーフ、パノラマルーフ、電動ヒーター、電気自動車(EV)用充電器などを製造する。同工場の年間生産能力は、ルーフシステム200万個、電動ヒーター120万個、充電ステーション60万基。(2019年9月7日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-グアナファト州Irapuatoに新工場を開設したと発表した。同工場はメキシコでは3番目、Irapuatoでは2番目の拠点となり、2018年3月の着工から15カ月間の工事を経て2019年7月に竣工した。近年の需要増に対応するために28百万ドルを投じて設立された同拠点は、2008年に開設した既存工場の約3倍となる35,000平方メートルの広さを持ち、約460名の従業員を今後数か月で約580名まで増員する予定。また、サンルーフやパノラマルーフの生産能力拡張だけではなく、地域に特化した製品開発を行う機能も追加する。(2019年8月20日付プレスリリースより)