Cummins 2006年度の動向

ハイライト

業績
エンジン事業部門

(単位:百万ドル) 2006年度 2005年度 変動率 要因
売上高 7,511 6,657 12.8% 要因1を参照。
EBIT 733 582 25.9% 要因2を参照。

要因
1. エンジン事業部門の売上高増加は、ほぼ全ての市場で需要が増加したことが主な要因。特に堅調な産業市場での販売と相まって、北米の大型トラック市場における需要増と、定置式発電機の需要増による発電事業部門の好調な業績が寄与。 2005年度および2006年度のオンハイウェイ車両関連の総売上高は、エンジン事業部門の総売上高の63%を占める。

2.EBITは前年度比で改善。要因としては、全主要市場でエンジン生産量が増加し、それに伴う粗利益の増加が固定製造原価を吸収したことや、価格および製造効率が改善したことが挙げられる。その結果、粗利率は前年度比で約1%改善した。 粗利益は前年度比221百万ドル(18%)増加した。 販売費および一般管理費は、61百万ドル(11%)増加したが、売上高比率ではわずかに減少した。 研究開発費は、対前年度比で24百万ドル(12%)増加したが、売上高比率は前年度と同等の水準にとどまった。

2006年12月期エンジン部門の市場別要約は以下のとおり。

大型トラック向け

大型トラック市場における売上高は増加。北米のトラック市場での売上高が増加したことが主な要因。これは、2007年度に予定されている排気ガス基準の変更に先駆けてトラック運送業者からのトラック代替需要増に対応するために、OEMが増産を図ったことによる。 大型トラック用エンジンの全世界での出荷台数は前年度比17%増加。北米 向けの出荷台数が18 %増加したのに対し、米国以外への出荷台数は11%増加。

中型トラック・バス向け
中型トラックおよびバス向けの売上高は増加。これは、2007年の排ガス規制に先行して需要が増大していること、および中型トラックおよびバス市場において北米のOEM での市場シェアが増大していることが要因。 中型トラック用エンジンの出荷台数は、前年度比で、北米のOEM 向けが36%増加し、米国外のOEM向けが20%減少。 バス用エンジンの出荷台数は、前年度比で、北米のOEM向けが56%増加したのに対し、米国外のOEM向けは10%減少。
北米向けの中型トラックおよびバス用エンジンの出荷台数は増加。この市場において普及率が上昇したことと、排ガス規制に先行して全体的な需要が増加したことが主な要因。 米国外の中型トラックOEMへの出荷台数は減少。主な要因としては、2006年1月1日からブラジルにおける排ガス基準がユーロIIIに変更されたことが挙げられる。 米国外向けバス用エンジンの出荷台数は、前年度比で減少。これは、2005年度に中国の顧客で大口受注が発生し、2006年度の出荷台数が相対的に減少したことによる。

小型自動車
小型自動車用エンジンの売上高は、販売台数が増加した結果増加した。 2006年度全体の小型車自動車向け出荷台数は約196,000台で、前年度比5%増加。 小型自動車およびRV車用エンジン出荷台数 の大半は、DaimlerChrysler向けの出荷台数が占め、この出荷台数が前年度比で約1%の増加して162,000台に達した。 RV車メーカー向けエンジンの出荷台数は、前年度比で33%増加。新製品の導入および、主要OEMでの製品普及率上昇が要因。


全世界の小型自動車およびRV車市場向けエンジンの出荷台数は、新製品の導入や、主要OEMで搭載車両が増加することにより、2007年度ではおよそ5%増加すると見込んでいる。

コンポーネント事業部門(Components Segment)

(単位:百万ドル) 2006年度 2005年度 変動率 要因
売上高 2,281 2,000 14.1% 要因3を参照。
EBIT 107 89 20.2% 要因4を参照。

要因
3. コンポーネント事業部門の売上高は、各事業および世界の各市場において増加。ターボチャージャーおよび燃料システム事業での堅調な需要が主な要因。 北米および欧州では、アフターマーケットおよびOEM向け出荷台数が高い伸びを示す。

4.EBI は、販売量増加により、前年度比で改善。 また、売上高EBIT率でも若干の増加。 2006年度の粗利益は、前年度比56百万ドル(17%)増加し、粗利益率も販売量増加と価格改善により、0.5%近く改善した。 販売費および一般管理費は、前年度比で23百万ドル(12%)増加したが、売上高比率ではわずかに減少した。 研究開発費は、2007年以降に着手する多くの新製品および重要技術の開発における追加投資により、 前年度比で12百万ドル(21%)増加し、売上高比率もわずかに増加した。

受注
2006年1月、CumminsとVolvo Trucks North Americaは、Volvo VN、Volvo VT両トラックにCummins ISXエンジンを供給する契約を延長したと発表した。

2006年3月、Cummins Westportは、ロシア・モスクワのバスメーカーRussian BusesからCummins Westport C Gas Plus天然ガス(CNG)エンジンを278基受注したと発表した。搭載されるのはLiAZ-5256(250馬力)とLiAZ-6212(連結型、合計280馬力)で、モスクワから1000km離れたSamara地区TogliattiのAutoVAZの自動車組立工場への従業員の送り迎え専用に使われる。(3月30日付同社プレスリリースより)

合弁事業
-2006年1月、B Seriesエンジン(120-275馬力)を生産する合弁会社をKAMAZと協同で、ZAO Cummins Kamaの名称で設立する契約に調印したと発表した。新会社の供給先は、KAMAZブランドのトラック・バス及びロシア、ベラルーシ、ウクライナのその他のトラック、バス、農業機械メーカー。B Seriesエンジンは、モスクワの東約700マイルのタタルスタン共和国Naberezhnye ChelnyにあるKAMAZと同じサイトにある合弁会社の工場で生産する。2006年初頭にエンジンの組み立てが開始される見込み。
-2006年1月、合弁会社であるTata Cummins Ltd. (TCL)が近い将来にISBエンジンの生産をTata Motorsと協同で開始することを内容とした協定に調印した。TCLは現在、Cummins Bシリーズエンジンを年間約6万9000基生産している。合意に基づき、TCLの生産能力は2年以内で10万基、その後は12万基に増強される。(1月27日同社プレスリリースより)

-2006年3月、主に商用車市場用途の小型車用ディーゼルエンジン2種類を生産するため、中国の北汽福田汽車(Beiqi Foton Motor Company)と折半出資による合弁会社設立のFSを行なう計画に調印したと発表した。新会社Beijing Foton Cummins Engine Companyは北京に本拠を置き、Cummins設計の2種類のエンジンを生産する。このFSは、Cumminsと北汽福田が合弁契約を締結する前の最終段階で、ここで協力関係の範囲の概略が示されることになる。合弁事業は2006年に開始される予定で、生産は早ければ2008年から始まる。(3月7日付同社プレスリリースより)

-2006年11月、北京に本拠を持つ Beiqi Foton Motor Compani (Beiqi Foton)と、50/50の合弁会社Beijing Foton Cummins Engine Company Limited (BFCEC)の設立契約に調印した。Cumminsの2タイプの高性能小型ディーゼルエンジンを北京で生産する。主に小型商用トラック、ピックアップ、多目的車及びスポーツユーティリティに搭載される。このエンジン系列はまた、マリン、及び小型建機その他産業用にも使用される。この合弁工場は年間400,000基の生産能力を持ち、ユーロ4及びそれ以上の規制値を含め、グローバルな公道及び公道外の排気規制に適合するCumminsの2.8L及び3.8Lのクリーンなディーゼルエンジン生産する。BFCECは2008年に生産を開始する予定。(10月19日付同社プレスリリースより)

事業売却
-2006年10月、ドイツのKempenにある子会社 SEG GmbHをWoodward Governor Company に売却することで合意に達したと発表した。当局の認可待ち。第4四半期には最終決着の見込みだが、買収条件については公開されていない。 Cumminsは2001年に初めてSEGに資本参加、2005年には51%の保有の多数株主となった。残り49%はSchmitz Beteiligungs GmbHが保有。 SEGは、Cumminsの発電機事業の一部で、発電システム、部品およびサービスのグローバル供給を急速に伸ばしている。同事業はCumminsにとり最大セグメントの一つで、Cummins Power Gereraitionは、2005年には2003年に対し50%増となる20億ドル近い売上を計上している。(9月21日付同社プレスリリースより)

2007年度の展望
エンジン事業部門
2007年度のエンジン事業部門の売上高は、オフハイウェイ、中型トラックおよびバス市場向けエンジン出荷台数が増加するものの、北米の大型トラック市場向け出荷台数が減少することにより相殺されるため、横ばいとなる見込み。 2007年度には、北米の大型クラス8トラックの販売台数が30~40%減少すると 予想されるが、北米の大型トラック向けエンジンの出荷台数は、トラックメーカーにおける2006年度のエンジン在庫量によっては、前年度比で約50%も減少する可能性がある。 2007年度下期に産業用エンジンの出荷台数が増加すると予想されることから、この落ち込みは2007年度上期に最も厳しいものとなる。 結果として、第1四半期では、OEMが、車両モデルの移行を管理するために、競合メーカーの2006年製エンジンをより多く搭載することにより、市場シェアは低下するものの、下半期には、新製品が競合エンジン技術に対する優位性を活かして急速かつ広範囲に採用されることが見込まれるため、市場シェアは急速に回復し、2006年度の水準、あるいはそれを上回ることが期待される。

2007年度は、ブラジルの中型トラック市場が横ばいとなるが、欧州向け中型トラック用エンジンの出荷台数は日産との新規供給関係の恩恵を受けて増加すると見込まれる。 北米における大幅な市場シェア上昇と相まって、これらの市場での販売増により、2007年度における全世界の中型トラックおよびバス用エンジンの出荷台数は約25%増加すると予測される。

コンポーネント事業部門
2007年度の売上高は、主に排ガスソリューションおよびターボチャージャー事業における売上増により、およそ18~22%増加すると予想される。 2006年度下半期から実施された製造改善では、2007年度に排ガスソリューション事業の運営上の問題が修正されることが期待される。
ターボチャージャー事業では、新製品が増えるにつれて、原材料費および運営上の問題により、利益改善に遅れが生じると予想される。 第1四半期以降、この事業部門からの収益の継続的な改善を見込んでおり、2007年度末までに売上高比で7~9%の収益を達成することを目標とする。

開発動向

研究開発体制
2003年、Cummins Research and Technology India Private Ltd (CRTI)を設立。この部分所有子会社はインド、Pune に本拠を置き、構造力学、コンピュータ流体力学および設計などの解析サービスを各事業体に提供。
- 2006年8月、中国における初の技術センターを武漢市 (Wuhan City)に開設。
この施設の名称は、East Asia Technical Center で、Dongfeng Cummins Engine Company Limited(DCEC)との合弁事業(出資比率はCumminsが55%、DCECが45%)である。この施設では、ディーゼルエンジンおよび天然ガスエンジン、発電機、ターボチャージャーおよびフィルター製品など、中国で生産される製品全般のエンジニアリング及び技術開発サービスを提供する。 この技術センターでは、一連のプロジェクトがすでに開始されており、これらのプロジェクトには、DCECによって供給される、大型トラック市場向けの新13リッターエンジン プラットフォームの開発も含まれる。

研究開発費

 

2006年度

2005年度 2004年度 2003年度
単位:百万ドル

321

278 241 200

研究開発プログラムは、顧客のための製品改良、技術革新およびコスト低減に主眼を置く。 2006年度の研究開発費は、321百万ドル(2005年は278百万ドル)。 このうち、約62百万ドル(19%)が2007年の大型および中型エンジン排ガス規制適合に関連する設計・開発費用で、さらにこのうちの約10百万ドルが2010年の排気ガス基準適合に関連する設計・開発費用。
エンジン事業部門では、さらに厳しくなる排ガス基準に適合させるためのシステム統合および技術への投資を継続する。 4つの重要サブシステム(燃焼、エアハンドリング、電子制御および排気後処理装置)でのエンジンテクノロジーの開発に注力。
-2007年1月1日から実施されるEPA(米国環境保護庁)2007大型オンハイウェー車両排ガス規制に適合することが可能となった。また、2007年1月、Dodge Ram向けの6.7リッターターボディーゼルエンジンが、3年後に実施されるEPAの2010年排ガス規制の要件に適合したと発表。 さらに、EPA2007年ガソリン相当の"Tier II Bin 5"排ガスレベルに適合するディーゼルエンジンを搭載した試作車を発表した最初のメーカーとなった。

コンポーネント事業部門では、1つのエンジンサブシステムコンポーネントに複数のフィルター機能を統合するモジュールを開発するための設計統合能力を構築。 現在、新フィルター媒体および排気後処理システム、クランク室換気、燃料システム並びに遠心すす除去装置などの低排ガスエンジンに対応する技術を開発中。

製品開発
-2006年1月、Cummins Westport Inc. (CWI)とCummins India Limited (CIL)は、CWIのB Gas International (BGI)天然ガスエンジンのインドでの限定生産立ち上げに成功したと発表した。インド西部のDamanにあるCILの近代的工場で生産中。現地生産のBGI天然ガスエンジンは、Tata Motorsなどインドのカーメーカーに供給される。

-2006年1月、性能と燃費を向上させた2007年式ISLエンジンを発表した。2007年ISLは、同クラスの最軽量エンジンで、重量出力比が最も高い。最高出力 365馬力、最高トルク 1250 lb-ftを実現。クラスベストの低いライフサイクルコストと長寿命耐久性を持つ。メンテナンスのインターバルは不変で、新たなオプション機能として、ミキサーの操作者が運転席の中からエンジンオイルのレベルを監視できる。また、高圧噴射によってエミッションを低減するCummins High Pressure Common Rail (HPCR)燃料システムも装備している。

-2006年2月、米国環境保護庁(EPA)およびカリフォルニア州大気資源委員会(CARB)の2007年排出規制に適合するオンハイウェイエンジン製品群の製造準備が整ったと発表した。2007年規制向け製品群は、排気を大幅に削減することに成功した技術が目玉となっている。これらエンジン群は、改良を積み重ねることで、2007年規制の認証取得、適合を実現した。この技術は、同社の北米市場向けオンハイウェイディーゼルエンジン全機種に採用可能。(2月13日付同社プレスリリースより)

-2006年6月、1.1メガワットのSCR Drill Moduleの生産開始を発表した。同社はKTA50エンジンにより、パワー・モジュール及びハイ・パワー・ディーゼル・エンジンの設計、生産の経験を、ボーリング市場のSCRパワー・モジュールン用ターンキーの動力ソリューションに提供する。Cummins の製品は初期投資・運転費用・維持費用とも低く、保有のトータル・コストの低い製品を提供している。1571-kVA/600ボルトパワーユニットは、1200rpmで1470馬力(1096kW)の出力を持つCummins KTA50エンジンが、Cummins AVK DSG86L 1.6 ジェネレーターと一体となって構成されており、SCR パワー・モジュールの耐久性、信頼性と出力密度要件を満たすのに最適である。KTA50の燃料コストは競合製品に比べて3~5%低いと想定されており、全世界で5万件を越す用途に使用されてきた実績により揺るぎない信頼性を保っている。(6月16日付同社プレスリリースより)

-2006年10月、2007年1月より導入される2007年型Dodge Ram 2500及び3500向けの、牽引力、運転性能を向上jさせたディーゼル・ターボ・エンジンのラインアップを発表した。新開発のディーゼル・ターボは6.7L に排気量アップし、馬力・トルクともに向上。トルクは650lb-ftで、オーバーホールまで350,000マイル走行可能、競合より100,000マイル以上の有利性を持っている。(9月28日付同社プレスリリースより)

-2006年11月、新型ComfortGuard APUを発表。これはエンジン製造会社として初の長距離輸送トラック用補助電源システムである。このシステムは、同社のOnanブランドの発電機技術と、快適かつ便利に過ごすための冷暖房(HVAC)を組み合わせている。静かでコンパクトかつ信頼性も高く、アイドリング規制及び、負担の大きいディーゼル燃料のコスト高、への有効な解決法となる。導入は2007年1月初。(11月1日付同社プレスリリースより)

-2006年11月、Cummins Emission Solutions (CES)は、北米の排気ガス後処理対応製品の生産工場が、2007年米国環境庁の排気規制への対応の鍵となる、ディーゼル粉塵用フィルター(DPF)の生産を開始したと発表した。このDPFは、ディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼルフィルターを使ってディーゼル粉塵の微粒子を捕らえディーゼル粉塵を90%カットすると共に、炭化水素及び一酸化炭素の排出も低下させる。DOCは、フィルターの能力を再活性化し、競合力のある燃費を実現する。(11月9日付同社プレスリリースより)

設備投資

海外投資
-2006年7月、Holset Turbochargers としても知られるCummins Turbo Technologies は、新工場をCharleston に開設。 Cummins Turbo Technologiesは、ディーゼルエンジン用ターボチャージャーの世界有数のメーカーであるCummins(ニューヨーク証券取引所上場)の事業部門である。 (7月21日付同社プレスリリースより)

-2006年10月、新型の小型クリーン・ディーゼルエンジンの生産工場としてColumbus Engine Plant (CEP)を選定したと発表。遅くとも2010年までに生産を開始する。製造ラインの準備は2007年中頃開始の計画、年末までには200人の雇用増をもたらす。Cumminsは、新ラインでは生産開始から2年以内に、最低600~800人を雇用すると見込み。主な顧客はDaimlerChryslerで、このエンジンは車両総重量 8,500ポンド以下の様々な車両に搭載されるよう設計されている。(10月11日付同社プレスリリースより)