エヌティエヌ株式会社 2008年度の事業動向
ハイライト
単位:百万円 | 2009年 3月期 |
2008年 3月期 |
増減率(%) | 要因 |
全社 | ||||
売上高 | 527,099 | 533,984 | (1.3) | -自動車メーカ向けの需要減退や為替の影響により減収。 |
営業利益 | 9,478 | 49,611 | (80.9) | - |
経常利益 | 8,731 | 43,231 | (79.8) | |
当期純利益 | (8,985) | 27,431 | - | - |
軸受部門 | ||||
売上高 | 376,381 | 338,452 | 11.2 | -中国で主に日系自動車メーカ向けに新規案件の量産開始が寄与したことによりアクスルベアリングやニードルローラベアリングが好調。 - S.N.R. ROULEMENTS及びその子会社の連結子会社化による販売増。 -その他地域の需要減退や為替の影響による減収があったが、部門としては増収。 |
等速ジョイント部門 | ||||
売上高 | 124,445 | 165,071 | (24.6) | 中国では、主に新規案件の量産開始が寄与したことにより増加したが、その他地域での自動車メーカ向けの需要減退や為替の影響により、部門として減収。 |
企業買収
SNR Roulements (SNR)買収に関連し、2008年4月7日付けで、SNRへの出資比率を51%まで引き上げた。同社ではSNRを傘下とし、両社の持つ技術力、生産力、市場開拓力を融合させることで、特に欧州での事業基盤強化を目指す(2008年4月16日付プレスリリースより)
同社の欧州地域における製造会社のNTNトランスミッションズ・ヨーロッパ(NTE)が、鍛造品の主要取引先でありフランス最大の鍛造メーカーであるセットフォージ・グループのクレザンシー工場を、約4億円で2008年6月1日に買収。買収するクレザンシー工場は、NTEの鍛造品調達の約半数を占める需要サプライヤーであり、自ら金型設計や製作を行うなど、高いCVJ部品用鍛造技術を持つ。買収後はクレザンシー工場を別会社化し、新会社の名称はNTNトランスミッションズ・ヨーロッパ クレザンシーとする。事業内容はCVJ外輪鍛造品の開発、製造、販売とし、本社所在地はフランス・エヌ県クレザンシー市に置く。売上高は約20億円。従業員数は2007年末時点で約100人。(2008年6月1日付日刊自動車新聞より)
2010年3月期 業績見通し
地域別・部門別売上高見通し | ( 単位:百万円 ) |
地域 | 部門 | 2010年3月期 見通し |
2009年3月期 実績 |
増減率 (%) |
日本 | 軸受 | 112,700 | 125,400 | (10.1) |
等速ジョイント | 41,600 | 48,100 | (13.5) | |
精密機器商品等 | 17,800 | 21,100 | (15.6) | |
SNR | 100 | 200 | (50.0) | |
合計 | 172,100 | 194,800 | (11.7) | |
米州 | 軸受 | 61,500 | 62,600 | (1.8) |
等速ジョイント | 32,200 | 40,200 | (19.9) | |
精密機器商品等 | 1,400 | 900 | 55.6 | |
SNR | 3,900 | 5,600 | (30.4) | |
合計 | 99,000 | 109,300 | (9.4) | |
欧州 | 軸受 | 32,500 | 43,200 | (24.8) |
等速ジョイント | 20,300 | 23,100 | (12.1) | |
精密機器商品等 | 3,600 | 2,600 | 38.5 | |
SNR | 69,100 | 72,800 | (5.1) | |
合計 | 125,400 | 141,700 | (11.5) | |
アジア他 | 軸受 | 52,000 | 59,800 | (13.0) |
等速ジョイント | 11,300 | 13,100 | (13.7) | |
精密機器商品等 | 600 | 1,700 | (64.7) | |
SNR | 4,600 | 6,,700 | (31.3) | |
合計 | 68,500 | 81300 | (15.7) | |
総計 | 軸受 | 258,600 | 291,100 | (11.2) |
等速ジョイント | 105,300 | 124,400 | (15.4) | |
精密機器商品等 | 23,500 | 26,300 | (10.6) | |
SNR | 77,600 | 85,300 | (9.0) | |
合計 | 465,000 | 527,100 | (11.8) |
新中期経営計画 「NTN次への2010」 (2009年4月~2011年3月)
・For New Technology Network (新しい技術で世界を結ぶ)の原点に立って起業体質強化
・長期ビジョンの実現に向け、新たな成長への原動力を強化する2年間
新中期経営計画の主要経営指標
2009年3月期 (実績) |
2010年3月期 (計画) |
2011年3月期 (計画) |
|
売上高(百万円) | 527,100 | 465,000 | 490,000 |
営業利益(百万円) | 9,500 | 7,500 | 19,000 |
営業利益率(%) | 1.8 | 1.6 | 3.9 |
経常利益(百万円) | 8,700 | 2,000 | 13,000 |
当期利益(百万円) | (9,000) | 500 | 6,500 |
設備投資額(百万円) | 49,600 | 18,000 | 18,000 |
<長期ビジョン(2013年度)>
・業種構成の改善: 5年後に非自動車 50%以上
・規模に依存しない経営の実現: 5年後に売上高20%減にも対応
・エコ・新エネ・新市場で新たなビジネスモデル
-EV市場向けモジュール商品を全面展開
-世界中で補修・MRO事業を拡大 (MRO: Maintemance, Repair and Operation)
-次世代技術の世界標準化
開発動向
2009年3月期 | 2008年3月期 | 2007年3月期 | |
軸受関連商品 | 12,010 | 9,085 | 8,551 |
等速ジョイント関連商品 | 4,500 | 5,039 | 4,893 |
精密機器関連商品 | 890 | 880 | 775 |
全社 | 17,401 | 15,005 | 14,221 |
研究開発成果
軸受- 自動車のトランスミッション用軸受として、回転トルクを従来品比80%低減した密封型深溝玉軸受を開発し、顧客で評価中。2012年には年間で10億円の販売を目指す。
- 2008年4月に連結子会社となったSNR社(フランス)と共同で、回転センサの出力が40倍の高分解能を持つ「高分解能回転センサ付軸受」を開発し、顧客へPR中。
- ニードルベアリングでは、薄板製造設備のテンションレベラを対象に、同社従来品に対し40%のトルク低減を実現した「超低トルクバックアップロールユニット」を開発し、顧客へPR中。
- アクスルベアリングでは、ハブベアリングと等速ジョイントを一体化したV(Value)シリーズ「一体型ハブジョイント」、「分離型ハブジョイント」を開発し顧客で評価中。
- 必要な強度を有しながら従来品よりも軽量で材料使用量を削減した「V(Value)シリーズ アンギュラユニット」を開発し顧客へPR中。2010年には年間で14億円の販売を目指す。
潤滑性に優れる硫化マンガン(MnS)を適量配合したステンレス系耐蝕・低摩擦焼結含油軸受を、名古屋市工業研究所(名古屋市熱田区)と共同で開発。新製品の「MnS配合ステンレス焼結含油軸受」は、耐焼付性と耐摩耗性に優れており、燃料ポンプ部品など、自動車分野向けの販路拡大を目指す。新製品は、母材をステンレス材とした硫化マンガン配合の低摩擦ステンレス焼結含油軸受で、摺動時に硫化マンガン中の硫黄分により、潤滑性・極圧性がある高皮膜を形成。耐焼付性と耐摩耗性の両面で優れているのが特徴。同時に、硫化マンガンは、ステンレス鋼中の酸化クロムによる不動態膜の形成を阻害しないため、耐蝕性にも効果を発揮する。(2008年4月9日付日刊自動車新聞より)
自動車のトランスミッションやデファレンシャルギア向けに、高負荷容量と高剛性を図った「超高負荷容量円すいころ軸受」を開発。新開発した製品はさらに内輪の小つばを廃止し、ころのバラケ防止機能を持った新型樹脂保持器を採用して、ころ長さの最大化を図った。長寿命化技術であるFA熱処理も適用している。販売目標は14年に年間10億円。(2008年5月23日付日刊自動車新聞より)
車輪用軸受(ハブベアリング)に装着するABSセンサー用の「車輪回転センサ用高磁力ゴムエンコーダ」を開発。2012年にはこのエンコーダーを装置した自動車用ハブベアリングで50億円の売上高を目指す。新製品は、ゴム材中のフェライト粒子の向きを最適な方向にそろえる(配向)ことで、磁気エンコーダーの磁力を強くした。加熱成形の際に成形型全体に磁力を与え、ゴムが固まる前の段階でフェライト粒子を磁力の方向にそろえる新たなゴム成形法も開発。ゴム材料の配合を工夫することでより多くのフェライト粒子を混ぜ込むことを可能にし、従来品と比較して25%の磁力の向上を達成。これらの手法を活用することで、センサー取付時の位置精度の緩和や従来品より小型のエンコーダーで同等の出力を出すことを可能にしている。(2008年5月31日付日刊自動車新聞より)
等速ジョイント
- 新興市場向け車両用のV (Value)シリーズ等速ジョイント「VBJ」、「VDJ」、「VTJ」を開発し、顧客へPR中。
- 従来の高作動角(50°)対応等速ジョイント「EUJ」に対し、トルク伝達ロスを約30%低減した固定式等速ジョイント「EUJ-S」を開発し、顧客へPR中。2011年から量産を開始し13年に年間で50億円の売上高を目指す。
FR車や4WD車のプロペラシャフト用「高効率・低発熱10個ボール等速ジョイント(HELJ)」を開発。現行品のHLJに対してボール径を小径化し、ボール数を10個(HLJは6個)として軸線に対するボール転動溝傾斜角を低角度化した。現行品との比較ではトルク損失率を50%低減、温度上昇も50%低減、重量は5%の軽量化を実現。2011年から量産化を開始し、13年には年間10億円の売上高を目指す。(2008年12月12日付日刊自動車新聞より)
精密機器商品等 (自動車部品関連)
- 小型軽量化、高性能化のニーズに対応したオートテンショナ・チェーンテンショナ、クラッチ及びボールねじを開発中。
- テンショナ関係では、自動車用タイミングベルトの張力を適正に調整し、静粛性とベルト寿命向上に寄与する「高応答型 油圧式オートテンショナ」を開発し、量産を開始。
- ボールねじ関係では、自動車の電動化に対応した「電動アクチュエータユニット」を電動パーキングシフト機構用として開発し、量産を開始。
エンジンの補機ベルトに使用するアイドラプーリーとして、軽量かつ長寿命の「補機用高温樹脂プーリユニット」を開発。従来の鉄プーリーユニットに比べ、重量で65%の低減を実現。従来の樹脂プーリーユニットと比較しても軸受寿命で2倍以上、クリープ耐力で2・2倍の性能向上を図った。2010年に年間で4億円の販売を目指す。新プーリーユニットは、従来品から軸受外輪の放熱面積を拡大し、軸受外輪温度を低下させた。また長寿命グリースの開発により、従来の樹脂プーリーユニットや鉄プーリーユニットからの性能向上を実現した。軸受外輪挿入部の樹脂容積の増加及び軸受外輪に施したクリープ防止溝の形状を見直すことで、外輪とプーリーの間に起こるクリープ耐力の向上を果した。(2008年6月13日付日刊自動車新聞より)
自動車に搭載するエンジン制御やトランスミッションなどの各種電動アクチュエーター用「長寿命ボールねじ」を開発。2011年には年間5億円の売上高を目指す。開発したボールねじは、リード(ボールねじが1回転する時に進む距離)を超えるボールサイズの採用や、ねじ溝諸元の最適化によって耐久性を向上。同一寸法の場合、寿命は6倍の向上で、同等寿命では軸方向で7%の小型化と30%の軽量化が可能となった。(2008年10月29日付日刊自動車新聞より)
技術供与契約(2009年3月現在)
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期限 |
National Engineering Industries Ltd. | インド | ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 | 1985.11.5-2011.11.1 |
台惟工業股份有限公司 (Tung Pei Industrial Co., Ltd.) |
台湾 | 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 | 2003.3.26-2013.3.25 |
Unidrive Pty. Ltd. | オーストラリア | 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 | 1983.2.15-2013.6.9 |
設備投資
設備投資額 | ( 単位:百万円 ) |
2009年3月期 | 2008年3月期 | 2007年3月期 | |
全社 | 49,594 | 59,504 | 59,347 |
-軸受部門:
同社桑名製作所、株式会社NTN三重製作所での生産再編成による製造設備の増設及び建屋増築、American NTN Bearing Mfg. Corp. での製造設備の増設及び建屋の増築、S.N.R. Roulements、NTN-Bower Corp..、同社岡山製作所での製造設備の増設等により 39,325百万円の設備投資を実施。
円すいころ軸受の製造・販売を行う全額出資の生産子会社の「NTN赤磐製作所」を岡山県赤磐市に設立。2008年12月から建屋の建設を開始し、2009年9月から操業を開始する計画。総投資額は135億円、従業員数は約70人で、5年後には180人まで増員する予定。10年度末には月産70万個、13年度末には月産200万個まで生産能力を拡充していく。工場の敷地面積は約6万6千平方メートル、建物延べ床面積は約2万2千平方メートルの規模。(2008年9月18日付日刊自動車新聞より)
-等速ジョイント部門:
NTN Driveshaft, Inc.での製造設備の増設等で 9,616百万円の設備投資を実施。
設備の新設・除去等
会社名/事業所 (所在地) |
内容 | 総額 (百万円) |
着手 | 完了 | 目的 |
同社 | |||||
桑名製作所 (三重県桑名市) |
軸受用設備 | 12,823 | 2005年11月 | 2010年06月 | 増産及び合理化 |
磐田製作所 (静岡県磐田市) |
軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 | 3,274 | 2006年04月 | 2009年10月 | 合理化 |
岡山製作所 (岡山県備前市) |
軸受・等速ジョイント用設備 | 12,173 | 2005年08月 | 2009年12月 | 合理化 |
長野製作所 (長野県箕輪町) |
軸受用設備 | 1,225 | 2005年11月 | 2009年09月 | 合理化 |
子会社・関連会社 | |||||
NTN三重製作所 (三重県桑名市) |
軸受用設備 | 6,330 | 2007年04月 | 2010年04月 | 増産 |
NTN上伊那製作所 (長野県上伊那郡) |
軸受用建屋及び設備 | 3,240 | 2007年03月 | 2009年12月 | 増産 |
株式会社NTN宝達志水製作所 (石川県宝達志水町) |
軸受用建屋及び設備 | 7,523 | 2008年09月 | 2011年09月 | 新規設立 |
NTN Driveshaft, Inc. (Columbus, Indiana, USA) |
等速ジョイント用設備 | 2,082 | 2007年06月 | 2010年09月 | 増産 |
NTN-Bower Corp. (Macomb, Illinois, USA) |
軸受け用設備 | 1,634 | 2008年08月 | 2009年04月 | 増産 |
NTN Transmissions Europe (Allonnes,France) |
等速ジョイント用設備 | 2,738 | 2007年11月 | 2009年9月 | 増産 |
SNR Roulements (Annecy, France) |
軸受用建屋及び設備 | 1,252 | 2008年04月 | 2009年9月 | 増産 |