日産の新中期計画:2016年度に世界シェア8%、営業利益率8%を目指す

ルノーと共同でロシア最大手アフトワズを買収、ブラジルに年産20万台の工場を新設

2011/07/12

要 約

 日産は2011年6月27日、2011~2016年度6カ年中期経営計画「日産パワー88(エイティエイト)」を発表した。2016年度までに、世界シェアと売上高営業利益率をそれぞれ8%に伸ばすことを目指す。日産の世界販売台数は720万台以上となり、6年間で300万台の拡販を目指している。

 日産は、シェア・販売台数と営業利益率を同時に高めるために、販売台数増を効率的に進める仕組みを発表した。

 販売台数増の大部分は、BRICs諸国やアセアン5カ国をはじめとする新興国市場で見込む。ロシアではルノーと共同で最大手のアフトワズを買収。ブラジルに年産20万台の新工場を建設する。中国ではシェア10%を目指し、生産能力を増強する。また先進国地域でも、米国は回復の余地があるとし、メキシコを含む北米の生産を170万台規模に拡大する。

 これらの地域を中心に、効率の高いVプラットフォーム車の販売を100万台規模に拡大し、エントリー・プライスのセグメントも投入する。また日産は、ロシアのアフトワズ、インドのアショック・レイランド、先進国ではダイムラーなどと広範囲に戦略的な協力関係を構築しており、日産の競争優位性を支えるとしている。

 6カ年間で合計51車種の新型車を投入する一方、車種統合等により、6年間に13車種を削減して、2016年度の車種数は、2010年度比2車種プラスの66車種にとどめ、1ボディータイプ当りの販売台数を2007年度の5.5万台から15万台に引き上げ、効率をアップする方針。

 コスト面では、研究開発から車両輸送までのトータルコストを毎年5%低減する。為替影響を回避するため、LCC部品活用を促進し、円建てコストを2011年度の1兆8,000億円から2016年度8,000億円に低減する。

 また、九州工場を分社化して人件費を抑え、アジア製部品の調達を拡大するなどに努め、国内生産の5割強を九州地区に集中させて、日本国内生産100万台を維持するとしている。

中国で、2011年1月に発売した「サニーセダン」
中国で、2011年1月に発売した「サニーセダン」
(Vプラットフォームベースの第2弾、北米で「ヴァーサセダン」として発売するのを始め世界170カ国で販売する)

新中期計画「日産パワー88」の目標と背景

世界シェア  2016年度までに、世界シェア8%を目指す(2010年度実績は5.8%)。販売台数の目標は発表していないが、2016年度の世界需要は9,000万台以上と予測し、シェア8%は720万台相当で、2010年度実績419万台から300万台増となる。
営業利益率  安定的に営業利益率8%を目指す(2010年度実績は6.1%)。基本的には販売台数増加が営業利益率向上に大きく貢献するとし、その上で外部要因によるコストアップや固定費増を毎年のコスト削減で吸収する。
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注) 1. ルノー・日産アライアンスは、ロシア・アフトワズ株式の50%超を買収する意向を表明しており、アライアンスの2010年グローバル販売台数を、アフトワズの"LADA"ブランド57万台を含め7,276,398台と発表した。VWの小売販売台数 720.3万台を超え、2010年実績で世界第3位であったことになる。
2. グローバル全需は、2007年度には先進国市場が60%、新興国市場が40%であったが、日産は、2016年度には40%、60%に逆転すると予測している。新中期計画の成長は大部分を新興国市場で想定し、そうした地域で生産能力を拡充する。
3. 新中期計画期間中の為替レート見通しは、2011年度は80円/ドル、2012~2016年度は85円/ドル。
4. ゴーン社長は、「日産パワー88」は、初めてハンディキャップなしでスタートできる中期計画であり、手元資金、技術、商品計画に弱点はなく、最初から攻勢をかけることができるとしている。

新車投入計画

(括弧内はインフィニティ・ブランド車で内数)
  2011年度 2012年度 2013~2014年度 2015~2016年度 合計
米国 1 (1) 2 9 (4) 18 (5) 51 (13)
日本 1 1 2
中国 1 2 (1) 1
欧州 2 3 5 (2)
その他   1 2
合計 5 9 19
資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注) 1. 6カ年で新型車合計51車種は、平均6週間に1車種の割合で投入することになり、販売をリードする。また中国、北米、ブラジルを中心とした生産能力拡大への投資が、販売増を支えるとしている。
2. 6カ年の間に、各年15、合計90の先進技術を採用する。
商品ラインアップとセグメントカバー率
  1999年度 2010年度 2016年度
車種数 49 64 (+15)
(-13)
66
セグメントカバー率 77% 80% 92%

資料:日産の新中期計画発表 (2011.6.27)
(注)2011~2016年度の"マイナス13車種"は、重複する車種を統合する等により車種数を削減する。例として、次期型クエストと次期型エルグランドを統合(両モデルは既に2010年からDプラットフォームを共有)、同じくアルティマとティアナを統合する。

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