曙ブレーキ工業 (株) 2015年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万円) |
2015年 3月期 |
2014年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
売上高 | 254,157 | 236,665 | 7.4 | 1) |
営業利益 | 4,004 | 8,084 | (50.5) | 2) |
経常利益 | 2,833 | 7,269 | (61.0) | - |
当期純利益 | (6,095) | 2,423 | (351.5) | 3) |
部門別売上 | ||||
-日本 | 76,759 | 80,356 | (4.5) | 4) |
-北米 | 137,228 | 119,572 | 14.8 | 5) |
-欧州 | 6,745 | 5,284 | 27.6 | 6) |
-中国 | 13,934 | 10,775 | 29.3 | 7) |
-タイ | 5,138 | 5,908 | (13.0) | 8) |
-インドネシア | 14,352 | 14,771 | (2.8) | 9) |
要因
1) 売上高
-売上高は過去最高の254,157百万円 (前年比7.4%増) を記録した。
-北米や中国での好調な需要を背景に自動車販売が拡大した上、為替換算の影響などが主な要因。
2) 営業利益
-アジアでの堅調な収益拡大や生産合理化などの効果もあったが、北米の想定を上回る市場の拡大に伴う増産への対応や、新規受注製品の立上げの時期が集中したことによる想定外のコスト発生の影響が大きく、前年比50.5%減となった。
3) 当期純利益
-日本において、余剰生産設備や土地、建物・構造物などの減損処理33億円を行ったこと等。
4) <日本>
-2015年3月期の売上高は、前年比4.5%減。完成車メーカーの海外生産移管による国内生産の減少に加え、消費税増税前の駆け込み需要の反動減による新車販売不振の影響。
5) <北米>
-同売上高は、前年比14.8%増。自動車販売が好調なことや為替換算の円安による影響が主な要因。
6) <欧州>
-同売上高は、前年比27.6%増。グローバルプラットフォームに対応したブレーキ製品の取引が増加したことが寄与した。
7) <中国>
-同売上高は、前年比29.3%増。新規ビジネスを含む受注の拡大や日系完成車メーカーからの受注の増加、為替換算の円安による影響などが寄与した。
8) <タイ>
-同売上高は、前年比13.0%減。年初からの政情混乱による景気減速なども影響し、新車販売が落ち込んだ。
9) <インドネシア>
-同売上高は、前年比2.8%減。自動車販売は微減。日系四輪自動車メーカーからの受注の減少や二輪車販売の減少、為替換算による影響などがマイナス要因。
子会社化
-子会社の曙ブレーキ山陽製造(岡山県総社市、以下山陽製造)を8月1日付で完全子会社化すると発表。同子会社は西日本地区で唯一の生産拠点で、乗用車用、大型車用のドラムブレーキを生産している。これまで三菱自動車や三菱系部品メーカーなどとの共同出資だったが、完全子会社化により事業体制を強化し、国内のドラムブレーキの主要拠点に位置付ける。 (2014年8月1日付日刊自動車新聞より)
リコール実施
-ゼネラル・モーターズ (GM) のピックアップトラック向けに納入しているブレーキキャリパーに不具合が発生し、GMが米国でリコールを実施すると発表。同社が新車向け部品のリコールに関する発表を行うのは今回が初めて。対象台数は1万4838台。2014年1月6日から12月24日まで生産したGMのピックアップトラック 「Chevrolet Colorado」 および 「GMC Canyon」 の2015年モデル。タカタのエアバッグ問題により米国市場では、部品メーカーが関連するリコールに対する不安が広まっている。同社では積極的な情報開示によりリコール発生に関する不安を払拭することで、事業への影響の抑制につなげる。 (2015年6月16日付日刊自動車新聞より)
2016年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2016年3月期 (予想) |
2015年3月期 (実績) |
増減率 (%) |
|
売上高 | 288,000 | 254,157 | 13.3 |
営業利益 | 6,500 | 4,004 | 62.3 |
経常利益 | 4,800 | 2,833 | 69.5 |
当期純利益 | 1,500 | (6,095) | - |
中期経営計画
-同社は、長期ビジョンとして2020年度 (2021年3月期) を期限とする成長目標 「Global 30」を策定。OEM向けディスクブレーキパッドの世界市場シェア30%の獲得を目指す。
-「Global 30」の達成に向け、最終年度を2015年度 (2016年3月期) とする新中期経営計画 「akebono New Frontier 30 - 2013」を継続。重点施策は以下の通り:
1) 将来に向けた技術の差別化
- コスト面での圧倒的な強さ (共通化/標準化・低コストブレーキ等)
- 地球環境面で他社が追随できないような製品技術 (軽量化・電動化・EV/HV車対応・環境負荷軽減製品の開発等)
- 地球環境に優しくコスト競争力の高い次世代生産設備の開発等
- 高性能車に装着される製品
- 新興国で求められる小型・低価格車市場でも大きなシェアを取るための技術
2) 革命的な原価低減に向けた努力と海外への展開
- 事業のあらゆる面での「共通化・標準化」、個別のニーズには「特性」を組み合わせる
- 現地調達化
- グローバル最適生産
3) 日米中心から日米欧アジアへのグローバル化の加速
- 日本は技術・ものづくりの情報発信基地
- 最大の事業規模となった北米事業のさらなる拡大・強化
- 欧州における高性能ブレーキによるビジネス拡大
- アジアを中心とした新興国ビジネスの強化
- グローバル供給網・開発体制の拡充
- 拡大が続くグローバルプラットフォーム車への対応
-数値目標 | (単位:億円) |
- | 中期経営計画 | 長期ビジョン | ||
2014年3月期 (実績) |
2015年3月期 (実績) |
2016年3月期 (目標) |
2021年3月期 (目標) |
|
売上高 | 2,367 | 2,542 | 2,500 | 3,000 |
営業利益 | 81 | 400 | 200 | 360 |
営業利益率 | 3% | 15.7% | 8% | 12% |
グローバルOEMディスクブレーキパッドの市場シェア | 19% | - | 20% | 30% |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2015年3月期 | 2014年3月期 | 2013年3月期 | |
全社 | 1,615 | 2,338 | 2,304 |
研究開発体制
拠点名 | 所在地 | 備考 |
日本 | ||
開発部門 | 埼玉県 羽生市 |
- |
テストコース 「Ai-Ring」 | 福島県 いわき市 |
-自動車部品メーカーとして国内最大規模 -テストコースを使ったブレーキ関連の試験・評価受託など |
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所 | 埼玉県 羽生市 |
-素材開発:摩擦特性制御、低環境負荷、脱石油資源 -次世代摩擦材の開発:小型、軽量化、高性能化 -摩擦現象の研究:摩擦挙動メカニズム -次世代コンセプトブレーキの開発:自働化、軽量化、低環境負荷 |
(株) 曙アドバンスドエンジニアリング | 埼玉県 羽生市 |
-高性能ブレーキシステムの研究開発 |
北米 | ||
Akebono Engineering Center | 米国 ミシガン州 |
- |
欧州 | ||
Akebono Europe S.A.S. | フランス ゴネス市 |
- |
Akebono Engineering Center, Europe S.A.S. | フランス ランス市 |
-ファウンデーションブレーキの研究・開発 -2013年8月登記 |
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd. | 英国 ウォーキングハム市 |
-モータースポーツ用および高性能車両用ディスクブレーキ開発 |
Akebono Europe GmbH | ドイツ ヘッセン州 |
-ディスクブレーキ開発 |
中国 | ||
中国開発センター | - | -2011年1月設立 |
タイ | ||
タイブレーキ開発拠点 | - | -2014年1月設立 -ASEAN諸国向けのブレーキ開発 |
研究開発活動
<全社>
-コア技術である「摩擦と振動、その制御と解析」技術を活かし、各種ブレーキ製品を担う新摩擦材・次世代型のブレーキの開発を推進。
-音・振動に対する知見をさらに深化させ、共通化/標準化の思想に基づいて、低引き摺り化・軽量化・グリーン材料化などの環境対応技術開発、低コストブレーキ開発、ブレーキ電動化開発を推進。
<日本>
ブレーキ摩擦材
-乗用車用高性能パッドと低コストパッドを中心に、高性能で音・振動特性に優れ、かつ最近着目されているホイールダストを低減させた、環境に配慮した安全な摩擦材原材料を使用した高品質な製品の開発。
-米国ワシントン州を含む、複数の州で条例化された摩擦材の環境規制に対応するため、銅フリー摩擦材の適用開発。
ディスクブレーキ・ドラムブレーキ
-高性能化と低コスト化の両面からアルミ合金製対向型ブレーキを開発。
電動化技術
-ブレーキに小型電気モーターを搭載し、電気信号で制動可能な電動ブレーキ。
-パーキング機能のみを電動化した電動パーキングに関する技術開発。
<北米>
摩擦材
-高性能で音振特性に優れ、かつ摩擦材の新環境規制に対応した材料開発
ブレーキ機構開発
-軽量アルミ合金製のディスクブレーキの開発
<欧州>
-環境規制の厳しい欧州市場に適合する摩擦材、日米市場向け輸出欧州車に適合する摩擦材の開発
<中国>
摩擦材
-部品・原材料の現地調達化と現地の環境に適したつくり方により、新興国市場で通用するコストと性能特性を有する製品開発
ディスクブレーキ
-中国市場のニーズや使われ方を調査・分析し、必要な機能・性能を低コストで提供できる製品の開発
<タイ>
-ASEAN諸国のニーズに合わせ、現地開発・現地調達を更に促進した開発を行う。
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2015年3月期 | 2014年3月期 | 2013年3月期 | |
全社 | 20,800 | 21,800 | 19,800 |
-設備投資の内訳は、日本64億円、北米84億円、欧州19億円、インドネシア7億円、中国29億円、タイ5億円。
-主な投資案件は以下の通り:
- 日本:高性能量販車 (ハイパフォーマンス車) 用の生産設備
- 北米:次期モデルおよび受注拡大に伴う増産対応投資
- 欧州:スロバキアの土地・建物への投資
- インドネシア、中国、タイ:受注拡大に伴う増産対応投資
海外投資
<スロバキア>
-スロバキアのTrencinに設立したブレーキキャリパーの製造子会社Akebono Brake Slovakia の開所式を行ったと発表。量産開始は2015年8月を予定しており、当面は鋳鉄製ブレーキキャリパーの組み立てを行う。将来的には、高性能車向けアルミ製ブレーキキャリパーの生産設備も備える計画。2017年までに欧州自動車メーカーを対象に5800万ユーロ程度の売り上げを見込む。敷地面積は約42,000平方メートルで、建屋面積は約12,000平方メートル。同社は現在、欧州ではフランス子会社Akebono Europeでディスクブレーキパッドを製造しており、このスロバキア拠点が加わることで欧州での一貫生産供給体制を確立するとしている。 (2015年6月24日付プレスリリースより)
<フランス>
-フランスのブレーキ摩擦材の工場 Akebono Europe S.A.S. (Arras) を増強する。建屋を増築して生産スペースを1.5倍に拡張し、2015年夏にディスクブレーキパッドの生産能力を3割高める。新車装着用、補修用ともに、欧州域内での販売が増加することに対応するもので、欧州事業強化の一環として取り組む。建屋の増築と生産ラインの増設に総額7~8億円かけ、ブレーキパッドの生産能力を、現状の月産60万個から同80万個に増強する。同社は欧州自動車メーカーとの取引拡大を目指し、2015年に同国に研究開発拠点を新設するほか、キャリパーの工場の開設も検討している。 (2014年1月7日付日刊自動車新聞より)
<中国>
-中国のブレーキ関連部品の生産能力を増強する。パッドは2015年初頭までに現状の2倍以上に拡大するほか、キャリパーは同年夏までに8割増やす。投資額は2工場で17億円。中国では主要取引先の日産自動車向けに加えて、ゼネラル・モーターズ (GM) や日系メーカーなどから新規受注を獲得しており、生産能力がひっ迫している。設備を増強することで安定した供給体制を整える。キャリパーの工場は現在4ライン稼働しており、生産能力は月20万個となっている。これを2014年夏と同年年末に1ラインずつ、さらに2015年夏に1ライン追加して7ライン体制まで増強し、生産能力を月35万個まで高める。 (2014年5月12日付日刊自動車新聞より)
<タイ>
-真岡製作所 (栃木県真岡市) との共同出資でタイに鋳鉄部品を製造する新会社を設立したと発表。ブレーキキャリパー用を中心に2016年8月に生産を開始し、2018年以降は生産量を月間1300トンに拡大する。新会社「A&Mキャスティング(タイランド)」を、バンコクの西方100キロメートルのラチャブリ県ラチャブリ工業団地内に設立した。曙ブレーキが74.9%、真岡製作所が25.1%を出資した。約3万7千平方メートルの敷地に建屋面積5千平方メートルの工場を建設する。投資額は22億円を予定している。2017年までは曙ブレーキのタイ工場向けに月産600トンを生産する。その後は2018年以降の市場動向を見ながら生産量を拡大し、他社への販売も検討していく。 (2014年10月31日付日刊自動車新聞より)
設備の新設計画 |
(2015年3月31日現在) |
会社/事業所 (所在地) |
設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了 |
本社他 (東京都中央区他) |
鋳物製造設備、新工法設備、情報システム他 | 1,100 | 2015年4月 | 2016年3月 |
開発部門 (埼玉県羽生市) |
試験・研究開発用設備、高性能ブレーキ開発設備 | 1,640 | 2015年4月 | 2016年3月 |
曙ブレーキ岩槻製造 (株) (埼玉県さいたま市) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 1,640 | 2015年4月 | 2016年3月 |
曙ブレーキ福島製造 (株) (福島県桑折町) |
ブレーキライニング、産業機械・鉄道用製品の製造設備 | 440 | 2015年4月 | 2016年3月 |
曙ブレーキ山形製造 (株) (山形県寒河江市) |
ディスクブレーキパッドの製造設備 | 780 | 2015年4月 | 2016年3月 |
曙ブレーキ山陽製造 (株) (岡山県総社市) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 140 | 2015年4月 | 2016年3月 |
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所他 (埼玉県羽生市) |
試験・研究開発用設備他 | 50 | 2015年4月 | 2016年3月 |
Akebono Brake Corporation (米国ミシガン州他) |
研究開発用設備、ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッドの製造設備 | 6,190 | 2015年1月 | 2015年12月 |
Akebono Brake Mexico S.A. de C.V. (メキシコ グアナファト州) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 180 | 2015年1月 | 2015年12月 |
Akebono Europe S.A.S. (フランス ゴネス市他) |
研究開発設備、ディスクブレーキパッドの製造設備 | 530 | 2015年4月 | 2016年3月 |
Akebono Engineering Center, Europe S.A.S. (フランス ランス市) |
研究開発設備 | 300 | 2015年4月 | 2016年3月 |
Akebono Brake Slovakia s.r.o. (スロバキア トレンチーン市) |
ディスクブレーキ製造工場 | 1,350 | 2015年4月 | 2016年3月 |
曙光制動器 (蘇州) 有限公司 [Akebono Corporation (Suzhou)] (中国蘇州市) |
ディスクブレーキパッドの製造設備 | 530 | 2015年1月 | 2015年12月 |
広州曙光制動器有限公司 [Akebono Corporation (Guangzhou)] (中国広州市) |
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 | 430 | 2015年1月 | 2015年12月 |
PT. Akebono Brake Astra Indonesia (インドネシア ジャカルタ市) |
ディスクブレーキ・ブレーキ用部品の製造設備 | 960 | 2015年1月 | 2015年12月 |
Akebono Brake Astra Vietnam Co., Ltd. (ベトナム ハノイ市) |
ディスクブレーキ・マスターシリンダーの製造設備 | 150 | 2015年1月 | 2015年12月 |
Akebono Brake (Thailand) Co., Ltd. (タイ チョンブリ県) |
ディスクブレーキの製造設備 | 1,130 | 2015年1月 | 2015年12月 |
A&M Casting (Thailand) Co., Ltd. (タイ ラチャブリ県) |
自動車用鋳鉄部品の製造設備 | 1,460 | 2015年1月 | 2015年12月 |