曙ブレーキ工業 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
売上高 209,584 216,574 (3.2) 1)
営業利益 3,835 11,392 (66.3) 2)
経常利益 2,097 9,783 (78.6)
当期純利益 (3,215) 5,265 -

要因
1)
-年度後半にかけて生産水準の回復がある一方で、震災後の完成車メーカーの生産低迷、円高による為替換算の影響を受けた。

2)
-震災およびタイでの洪水災害による生産拠点の稼働率低下および代替部品の調達などのコストの発生、原材料費の高騰、人件費の増加、北米での不採算ビジネスの受注増加等。
-北米での減損損失の計上、日本での税制改正に伴う繰延税金資産の取崩影響、北米で繰延税金資産を一部計上できないこと等。

<日本>
-売上面では、震災後の完成車メーカーの生産低迷およびタイでの洪水影響による減産があった一方で、生産が早期に復旧し、年度後半にかけて受注が回復したため売上高は962億円(前年同期比3.2%増)となった。
-利益面では、原材料費の高騰、人件費の増加、グローバル体制構築費用、自家発電費用などの震災および原発事故による費用増加の発生等により、営業利益は59億円(前年同期比16.7%減)となった。

<北米>
-円高による為替換算の影響および日本での震災の影響による日系完成車メーカーの減産に伴う受注減少により売上高は963億円(前年同期比10.0%減)となった。
-利益面では、ロバートボッシュL.L.C.から引き継いだ不採算ビジネスの受注量の増加、および鋳物とベアリングを中心とした原材料費の高騰等による損失が、「在外子会社の事業譲受に係る特定勘定」取崩益(17億円)を上回ったため営業損失は54億円(前年同期は営業利益4億円)となった。

<欧州>
-欧米系の完成車メーカーからの新規受注獲得により売上高は50億円(前年同期比11.9%増)となった。
-原材料費の高騰、生産能力を上回る受注に対応するため一部の生産の日本および欧州の委託会社に移管したことに係る費用の増加等により営業損失を4億円(前年同期は営業損失0.3億円)計上した。

<インドネシア>
-日系の二輪車および四輪車メーカーからの受注が引き続き堅調に推移しが、タイ洪水に伴う減産や為替換算の影響があり売上高は140億円(前年同期比1.6%減)、営業利益は25億円(前年同期比1.5%減)となった。

<中国>
-日系完成車メーカーの受注が好調に推移したことから売上高は53億円(前年同期比3.2%増)となったが、人件費の増加等により営業利益は8億円(前年同期比2.8%減)となった。

<タイ>
-日本での震災影響による一時的な受注減少および洪水災害の影響による操業度の大幅な低下により売上高は28億円(前年同期比13.0%減)、営業利益は2億円(前年同期比51.3%減)となった。

新会社

-メキシコに自動車用ブレーキの製造子会社を設立すると発表した。日米欧の完成車メーカーの現地生産増強や新規進出計画に対応する。また、メキシコ向け輸出を現地生産にシフトし「地産地消」型事業展開することでニーズ充足を図るとしている。新会社は「アケボノブレーキメキシコS.A.」で、グループが100%出資しグアナファト州に2012年4月1日設立する予定。工場は約10万平方メートルの敷地面積を持ち、2013年6月に生産を開始する。15年度に約45億円の売り上げを目指す。(2012年2月9日付日刊自動車新聞より)

-インドネシアのアストラグループと共同でベトナムのハノイ市近郊に新会社を2011年11月に設立すると発表した。これまでベトナム向け部品は、インドネシアやタイなどのグループ会社から輸出していたが、設備をベトナムに移管し現地向け部品の組立てを来年7月にも開始する。15年に売上高12億円をめざす。新会社の名称は「アケボノブレーキ・アストラ・ベトナム」。設立当初は、現地のヤマハ工場向けに、二輪車用ディスクブレーキやパッド、マスターシリンダーなどの組立てを始めるが、今後は二輪用部品の加工や将来的には四輪用ブレーキ部品の生産も視野に生産規模拡大をめざす。(2011年8月9日付日刊自動車新聞より)

受注

-欧州メーカーから摩擦材とキャリパーを合わせたディスクブレーキシステムを初受注した。欧州メーカーとは独ダイムラーなど5社と取引しているが、ブレーキ摩擦材のみの供給にとどまっていた。「新たに取引先2社を開拓し、ディスクブレーキシステム全体を納入することが決まった」(同社幹部)。供給は2012年から開始する。13年度までに11年度計画比2割増の年60億円を目指していた欧州事業の売り上げ規模も、目標達成が確実な情勢となった。(2011年12月7日付日刊自動車新聞より)

事業再編

-米国の連結子会社8社を合併し、商号を変更すると発表した。経営効率向上が狙いで、同時に北米事業の財務基盤強化を目的に連結子会社を完全子会社化した上で、増資する。子会社合併では来年1月1日付で「アケボノ・コーポレーション(ノースアメリカ)」(宮嶋寛二社長)を存続会社とし、他の7社を清算会社とする。合併後は社名を「アケボノ・ブレーキ・コーポレーション」に変更する。また、12月28日付で9979万ドル余り(約77億8千万円)を増資、これにより増資後の資本金および資本準備金は約2億5000万ドル(約195億円)となる。(2011年12月22日付日刊自動車新聞より)

-同社は赤字経営が続く北米事業の立て直しを急ぐ。同事業の収益は、リーマンショック後に徐々に回復していたものの、独ロバート・ボッシュから買収したブレーキ事業が足かせとなって、2010年以降、営業利益率の悪化が続いている。譲り受けた事業に不採算部門が多数あったことなどが原因だ。今後は旧ボッシュの2工場を含めた四つの生産拠点の役割分担の明確化やコスト対応の徹底などで事業基盤を強化、来年中にも黒字転換を図る考えだ。(2011年11月12日付日刊自動車新聞より)

経営計画

-欧州事業拡大の一環として設置を検討しているブレーキキャリパー工場の建設地について、東欧諸国を軸に選定する方針を固めた。9月までに最終決定する。また、ドイツにキャリパー開発を主体とした研究開発拠点を新設する。欧州でブレーキの基幹部品の開発・生産体制を拡充し、ドイツを中心とする欧州自動車メーカーへの対応力を強化する。(2011年6月24日付日刊自動車新聞より)

-2013年度を最終年度とした中期経営計画「akebono New Frontier(アケボノニューフロンティア)30ローリングプラン2011」を発表した。昨年5月に策定した中期計画を市場環境の変化を踏まえて数値目標と取り組みを一部修正した。13年度に売上高を10年度比6.1%増の2300億円。営業利益を同57%増の180億円の実現を柱に国内では3月の東日本大震災の発生を踏まえて新たなリスク対応策に取り組む。海外市場では北米事業で13年度の黒字化実現を目指す。また、欧州では開発機能の強化やキャリパー工場の新設を検討する。今後大きな成長が見込まれるアジアではベトナム、インドなどへの生産進出を検討する。(2011年6月16日付日刊自動車新聞より)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

2013年3月期の見通し

(単位:億円)
  2013年3月期 2012年3月期 増減
売上高 2,138 2,096 42
営業利益 85 38 47
経常利益 70 21 49
当期純利益 65 3 62
設備投資額 30 (32) 62

地域別売上高

(単位:億円)
2013年3月期 2012年3月期 増減
日本 922 962 (40)
北米 995 963 32
欧州 52 50 2
中国 72 53 19
タイ 49 28 21
インドネシア 158 140 18
アジア 279 221 59
連結消去 (110) (99) (11)
全社 2,138 2,096 42

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 1,747 1,256 1,129

研究開発活動

<日本>
-乗用車用高性能パッドと低コストパッドを中心に、高性能で音・振動特性に優れ、且つ最近着目されてきているホイールダストについても低減させるとともに、環境に配慮した安全な摩擦材原材料を使用した高品質な製品の開発に取組んでいる。

-ディスクブレーキ・ドラムブレーキの開発では、高性能化と低コスト化の二極化に対応した活動に注力。高性能車対応のアルミ合金を使用した対向型ブレーキが高い評価を得ている。

-環境に配慮した製品開発に対しては、車の燃費向上の観点から革新的な軽量化と引き摺り低減に取組んでいる。

-電動化技術ではブレーキに小型電気モーターを搭載し、電気信号で制動を行える電動ブレーキ、パーキング機能のみを電動化した電動パーキングといった製品の技術開発を行っている。

-曙ブレーキ中央技術研究所では、
1) 素材開発(摩擦特性制御、低環境負荷、危機管理)
2) 次世代摩擦材の開発(小型、軽量化、高性能化)
3) 摩擦現象の研究(摩擦挙動メカニズム)
4) プロセス開発(生産性、低環境負荷)
を中心として研究開発に取り組んでいる。

<北米>
-米国のワシントン州を含む複数の州で条例化された摩擦材の新たな環境規制に対応する新摩擦材や次世代ブレーキの製品開発に取組んでいる。

-ブレーキの機構開発について、軽量アルミ合金によるディスクブレーキの開発。また、ディスクロータ/ドラムについても量産展開している。

<欧州>
-欧州においては、摩擦材開発に特化している。同材料開発では、要求性能が特有で、かつREACH(Registration,Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals:化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)の導入等、環境規制の厳しい欧州市場に適合する摩擦材から日米市場向け輸出欧州車に適合する摩擦材まで幅広いニーズに対応できる開発をおこなっている。

<中国>
-新興国市場のニーズに合わせた製品を提供するため、2011年に中国開発センターを設置し製品の開発・設計を進めている。

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 14,300 5,100 5,400

-設備投資の内訳は、日本71億円、北米49億円、欧州1億円、インドネシア8億円、中国11億円、タイ4億円。
-主に、日本では自家発電設備などの震災関連投資、北米では新規製品への開発投資、欧州では開発設備、インドネシア・中国・タイでは増産対応への投資。
-日本における設備投資に関連して、総額8億円の補助金を受けている。

設備投資

<国内>
-エネルギー効率を現状に比べ約50%向上した生産設備を開発し、国内のブレーキパッド生産拠点で8月から量産を始める。電力料金や他のエネルギーコストが上昇していくことを見込み、生産量に見合ったコンパクトな生産設備に入れ替え、エネルギーコストの上昇を抑える。埼玉県羽生市の開発施設に設置する試作ラインで最終確認ができ次第、子会社の曙ブレーキ山形製造(山形県寒河江市)に量産ラインを導入する。従来の設備は大量生産を前提に、生産の最少単位を4個、8個、16個などとしていた。新開発の設備は、生産の最少単位を1個として設計し、ブレーキパッドの生産に関わるムダなエネルギー消費を削減した。まず補修用のブレーキパッドの量産を開始し、将来は新車組み付け用にも納入したい考えだ。2008年9月のリーマンショックを受け、同社は09年度と10年度の設備投資を各50億円レベルへ大幅に圧縮した。11年度は震災関連を含め国内への投資が100億円に上り、総額で190億円に達する。12年度と13年度は、15年の長期ビジョン達成に向け、2年間で総額260億円を計画しており、国内への投資も高水準になる見通しだ。(2012年1月24日付日刊自動車新聞より)

<メキシコ>
-メキシコにブレーキ部品の製造工場を新設することを決定した。現地での同社製品のシェアの高まりへの対応や、コスト競争力を一層高めるのが狙い。すでに工場建設地の選定を進めており、年内にも決定する。ドラムブレーキや現地向けブレーキキャリパーの生産からスタートする予定で、2013年半ばの稼働を目指す。日米欧の完成車メーカーの増産が計画されているメキシコで、低コスト生産を促進、将来的には他国への輸出も検討していく。同社のメキシコ向けの部品供給では、米国拠点の売上げのうち10%弱がメキシコ向けとなっているほか、日本を含む他地域からのノックダウン用部品供給などを合わせ、30%強の現地シェアを持つ。完成車メーカーの更なる増産対応とシェア拡大を狙いに現地での工場建設を決定した。工場は13年の稼働を計画、当初は2000万〜3000万ドル(約150億〜230億円)を投資する予定で、順次、ブレーキローターや摩擦材など生産品目を増やすのに伴い工場拡張を行っていく考え。また、高いコスト競争力を武器に、早期に北米への供給を開始するほか、今後、完成車メーカーの増産が見込まれるブラジルへの輸出も視野に入れている。(2011年11月9日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-中国で四輪車用ブレーキ部品の生産能力を増強する。広東省広州市の工場にラインを増設し、2012年半ばまでに生産能力を倍増させる。中国では日系メーカーが12〜15年にかけて生産能力を引き上げる計画。ブレーキ部品の需要も増えるため、現地の供給能力を大幅に引き上げて需要を獲得する。中国に2カ所ある生産拠点のうち、ディスクブレーキやドラムブレーキを製造する広州曙光制動器有限公司(広東省広州市)にブレーキキャリパーのラインを増設する。現行の2ラインに加え、11年末に第3ラインを設置し、12年初めから量産を始める。さらに、13年に市場投入される日系メーカー車向けの受注獲得に合わせ、12年にも第4ラインを設置し、同年半ばまでに稼働する。投資額は2ライン合計で10億円を計画している。同社の中国でのブレーキキャリパーの生産能力は、年間85万台分。ラインの増設により、生産能力を2倍の170万台分に引き上げる。11年度の設備投資は前期比2倍の総額190億円を計画している。国内には次世代設備などに100億円を投資し、北米には55億円、アジアに33億円を投資する計画だ。中国には広州のほか、江蘇省蘇州市に摩擦材の生産会社、曙光制動器(蘇州)有限公司も持つ。同工場はフォルクスワーゲン(VW)やゼネラルモーターズ(GM)など、欧米メーカー向けを中心にブレーキパッドを生産している。広州の工場は日系メーカー向けに製品を納入しており、日本車の中国生産の拡大計画に合わせた能力拡大となる。(2011年11月9日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

会社/事業所
(所在地)
設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
本社他
(東京都中央区他)
鋳物製造設備、新工法設備、情報機器他 5,742 2012年4月 2013年3月
開発部門
(埼玉県羽生市)
試験・研究開発用設備、高性能ブレーキ開発設備 755 2012年4月 2013年3月
曙ブレーキ岩槻製造(株)
(埼玉県さいたま市岩槻区)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 1,274 2012年4月 2013年3月
曙ブレーキ福島製造(株)
(福島県桑折町)
ブレーキライニング、産業機械・鉄道製品の製造設備 244 2012年4月 2013年3月
曙ブレーキ山形製造(株)
(山形県寒河江市)
ディスクブレーキパッドの製造設備 541 2012年4月 2013年3月
曙ブレーキ山陽製造(株)
(岡山県総社市)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 200 2012年4月 2013年3月
(株)曙ブレーキ中央技術研究所他
(埼玉県羽生市)
試験・研究開発用設備他 444 2012年4月 2013年3月
Akebono Brake Corporation
(米国ケンタッキー州他)
研究開発用設備、ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッドの製造設備 6,000 2012年1月 2012年12月
Akebono Brake Mexico S.A. de C.V.
(メキシコ グアナフアト州)
ドラムブレーキ製造工場 700 2012年4月 2012年12月
Akebono Europe S.A.S.
(フランス ゴネス市)
研究開発設備、ディスクブレーキパッドの製造設備 70 2012年4月 2013年3月
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd.
(イギリス ウォーキングハム市)
高性能ブレーキ開発用設備 330 2012年4月 2013年3月
曙光制動器(蘇州)有限公司
(中国蘇州市)
ディスクブレーキパッドの製造設備 603 2012年1月 2012年12月
広州曙光制動器有限公司
(中国広州市)
ディスクブレーキ・ドラムブレーキの製造設備 797 2012年1月 2012年12月
PT. Akebono Brake Astra Indonesia (インドネシア ジャカルタ市) ディスクブレーキ・ブレーキ用部品の製造設備 1,200 2012年1月 2012年12月
Akebono Brake Astra Vietnam Co., Ltd.
(ベトナム ハノイ市)
ディスクブレーキ・マスターシンダーの製造設備 300 2012年1月 2012年12月
Akebono Brake Thailand Co., Ltd.
(タイ チョンブリ県)
ディスクブレーキの製造設備 800 2012年1月 2012年12月