日本精工株式会社 2009年3月期の動向
ハイライト
業績 | ( 単位:百万円 ) |
- | 2009年 3月期 |
2008年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 |
全社 | ||||
売上高 | 647,593 | 772,036 | (16.1) | - 年度前半は、自動車向け、産業機械向けとも受注は高水準であった。しかし、年度後半は、自動車メーカーの減産、設備投資需要の急激な減少によりエネルギー・インフラ関連など産業機械軸受の一部を除き、自動車向け、電機向け、工作機械向けなどの受注が減少して売上高減少。 |
営業利益 | 22,106 | 69,343 | (68.1) | - |
経常利益 | 16,964 | 64,854 | (73.8) | - |
当期純利益 | 4,561 | 42,613 | (89.3) | - |
自動車関連製品 | ||||
売上高 | 352,453 | 435,705 | (19.1) | <自動車軸受> - 度前半は欧州、中国のハブユニット軸受が好調。年度後半は、中国では堅調であったが、その他の地域では自動車メーカーの急激な減産の影響を受けて売上高減少。 <自動車部品> |
営業利益 | 6,812 | 30,660 | (77.8) | - 外部調達コストや人件費の削減に努めたが、物量減や円高による輸出採算の悪化、原材料コストアップにより減益。 |
事業戦略
- 自動車メーカー各社が新興国を含むグローバル戦略車として開発を活発化しているコンパクトカー“Aセグメント車”を対象に、電動パワーステアリング(EPS)の提案を強化する。新開発した小型・高出力タイプのEPSを軸に、日欧やBRICsにおける新規ニーズの吸収を目指す。新車市場は世界的に落ち込んでいるが、手ごろで燃費性能に優れるコンパクトカーには堅調な需要が見込める。こうした分野を重点に置いた製品戦略、受注活動を展開して、2010年までに新型EPSで年販50万台分以上を目指す。新型EPSは、ステアリングコラム内にモーターを内蔵するコラムアシスト式で、全長を世界最短におさえるなどして搭載性を高めた。熱対策の問題で難しかった電子制御ユニットとギアボックスの一体化を実現し、コンパクト化につなげた。(2009年2月17日付日刊自動車新聞より)
- ハイブリッド車(HV)および電気自動車(EV)向けでの採用拡大が見込まれる電動ブレーキシステムの信頼性、性能を向上する新技術の提案を活発化する。モーターの動きをボールねじによって直線運動に変換し、ブレーキ油圧を制御するシステムで、複雑なギア機構が不要になりシステムが小型化できるほか、耐久性、応答性の向上に結びつく。こうしたメリットを訴求してボールねじの受注を新規開拓し、2012年に四輪車などのブレーキ用で15億円の売上高を目指す。同社は、このほどブレーキシステム用のボールねじを初めて実用化、電動ブレーキを採用するホンダの高性能スポーツバイクに搭載された。ねじ本体の溝の深さを部位によって微妙に調整してボールが適正な位置から全くずれないように工夫、信頼性を高めるとともに、本体重量を70グラムに抑えるなど小型軽量化を実現することによって、ブレーキ分野におけるボールねじの活用につなげた。(2009年3月6日付日刊自動車新聞より)
2010年3月期重点施策
事業基板の強化・再構築 | ||||
施策 | 目的 | 具体策 | ||
グローバル生産体制の再編(軸受) | 生産拠点の再編・集中による収益力向上 | グローバル:最適地生産によるコストダウン | 小径軸受 | NSK福島(日本)からNSKインドネシアへ移管 |
並径軸受 | 米国クラリンダ工場からNSKインドネシアと昆山NSK(中国)へ移管 | |||
自動車軸受 | 英国ピータリー工場から石部工場(日本)へ移管 | |||
タベットローラー | NSKニードリベアリングから常熟NSK(中国)へ移管 | |||
日本:ころ軸受の生産力強化 | 品種移管 | 藤沢工場から埼玉工場、NSK福島へ移管 | ||
中国研究開発法人(NSK (China) Research and Development Co., Ltd.,)新拠点での活動開始 | 成長する中国事業の強化・拡大を支える技術基盤 | - 中国内での自己完結体制(開発設計から顧客への技術サポートまでカバー) - 全セグメントをカバー(自動車/産業機械軸受/精機製品) - 売る技術の強化 |
開発動向
研究開発費 | ( 単位:百万円 ) |
2009年3月期 | 2008年3月期 | 2007年3月期 | |
全社 | 10,691 | 10,240 | 10,100 |
自動車関連製品 | 5,778 | 5,994 | 6,013 |
研究開発体制(自動車関連製品)
- 中国・昆山の研究開発拠点、恩斯克(中国)研究開発有限公司の新社屋の起工式を実施した。竣工は2009年夏の予定で、これを機として2011年をめどに現地開発スタッフを約5倍の300人規模に増員、中国事業の強化に結びつける。現地向け製品の開発やサービス体制の拡充を狙い、44億円を投資して研究開発設備を増強する。(2008年7月9日付日刊自動車新聞より)
主な研究成果(自動車関連製品)
- ブレーキキャリパ取付ブラケット一体型ハブユニット軸受
車輪のハブ軸受とディスクブレーキを組み合わせたアクスルユニットの重量を、1輪当たり250グラム超削減する技術を実用化した。これまで別体だったハブ軸受とディスクブレーキのキャリパー装着用のブラケットを、独自の生産技術により初めて一体化し実現した。軽量化のほか、装着部の精度を5~10倍改善できるため制動時に発生するジャダー(微小振動)を軽減、ブレーキフィーリングを向上できるほか、組付工数の合理化といったメリットがある。すでに欧州車の後輪に採用された。今後は日系を初めとした自動車メーカーに新手法を提案することなどによって、2013年にハブユニット軸受のグローバル売上高を現状の37.5%増となる1,100億円に拡大する計画だ。(2008年8月6日付日刊自動車新聞より)
- 小型・高信頼性駆動輪用ABSセンサ内蔵ハブユニット軸受
BRICs市場向けに耐環境特性を改善するとともに、小型化を実現した駆動輪向けのABSセンサー内蔵ハブユニット軸受を開発した。新興国では路面整備の問題で泥水の上を走行する頻度が多く、センサーの測定感度の劣化が想定されるため独自のシール部品を実用化、信頼性の確保につなげた。同時に、搭載性では優位なセンサー別体ハブユニットと同等のスペースに収まるようセンサーの設置を工夫、小型車に最適なサイズにコンパクト化した。新製品の投入などによって、ハブユニットの全世界売上高を、2013年に現状の約1.4倍となる1100億円に引き上げる計画。(2008年9月25日付日刊自動車新聞より)
- BRICs市場向けハブユニット軸受
新興国での生産を前提に開発した乗用車用の新タイプの「ハブユニット軸受」に使用する鋼材について日本製よりも不純物の含有が多い現地製を活用可能とする工法を確立した。同軸受はタイヤホイールとドライブシャフトをつなぐハブおよびベアリングを一体化した駆動系部品で、本体はバー状の鋼材を鍛造で加工し生産される。その加工の際、不純物の“濃度”が高い鋼材中心部がベアリング球と接する軌道面に流出しないよう鍛造の力の加え方を工夫、品質悪化の防止につなげた。日本製よりも割安な現地製鋼材を使えるようにして機能向上とコストダウンを両立した。(2009年3月9日付日刊自動車新聞より)
- 機電一体コラムタイプ電動パワーステアリング
低燃費車両の小型化に貢献する短く、軽量・コンパクトな電動パワーステアリング(EPS)を開発。
設備投資
設備投資額 |
( 単位:百万円 )
|
2009年3月期 | 2008年3月期 | 2007年3月期 | |
全社 | 44,138 | 53,905 | 37,689 |
自動車関連製品事業 | 18,679 | 22,982 | 19,550 |
- 主な投資内容は、大形・超大形軸受、自動車用軸受への投資。
自動車関連製品事業
- 自動車変速機用ニードル軸受の増強投資や、オーバーホール投資、合理化投資を中心に実施。
<軸受工場>
- 中国では前工程内製化の為の増強投資、インド、タイでは自動車軸受ラインの増強投資を実施。
印ハリアナ州で合弁会社のラニーNSKステアリングシステムズ社が電動パワーステアリング(EPS)の生産を開始した。年産能力は20万台分、2010年度までに20億ルピー(約44億円)超の販売を計画。自動車産業セクターのラニーグループと、1997年に設立したステアリングシステムの合弁会社の生産品目をEPSに拡大する。2012年に現地でEPS市場のトップシェアを目指す。EPS工場の規模は敷地面積が2万平方メートル、建屋面積が3,600平方メートル、従業員数は100人。投資額は3億7700万ルピー(約8億円)。(2008年5月16日付日刊自動車新聞より)
<ステアリング製造工場>
- 欧州・米州拠点では製造ラインの増強投資、アジア各拠点においては部品内製化投資を実施。
自動車関連製品の主な設備の新設
設備の内容 | 投資予定 金額 (百万円) |
着手 | 完了 | 目的 |
大津工場 (滋賀県大津市) | ||||
一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 1,085 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び増強・合理化対策 |
石部工場 (滋賀県湖南市) | ||||
自動車用軸受生産設備等 | 2,106 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
埼玉工場 (埼玉県羽生市) | ||||
自動車用軸受生産設備等 | 1,774 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK ステアリングシステムズ(株) (群馬県前橋市) | ||||
ステアリング生産設備 | 2,041 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK ニードルベアリング(株) (群馬県高崎市) | ||||
ニードル軸受生産設備 | 2,409 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK Corporation (米国 ミシガン州) | ||||
自動車用軸受生産設備等 | 1,134 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産再編成及び合理化対策 |
NSK Steeling Systems America. Inc. (米国 バーモント州) | ||||
ステアリング生産設備 | 786 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |
NSK Brazil LTDA. (ブラジル Suzano) | ||||
一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 954 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK Bearings Europe Ltd. (英国 バークシャー) | ||||
一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 921 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK Steering Systems Europe (Polska) Sp.Zo.o (ポーランド Walbrzych) | ||||
ステアリング生産設備 | 994 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |
NSK Bearings Manufacturing (Thailand) Co., Ltd. (タイ チョンブリ) | ||||
自動車用軸受生産設備等 | 566 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産合理化対策 |
Siam NSK Steering Systems Co., Ltd. (タイ チャチョエンサオ) | ||||
ステアリング生産設備 | 1,230 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |
昆山恩斯克有限公司 [Kunshan NSK Co., Ltd.] (中国 昆山市) |
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一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 2,243 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産合理化対策 |
常熟恩斯克軸承有限公司 [Changshu NSK Needle Bearing Co., Ltd.] (中国 常熟市) |
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ニードル軸受生産設備 | 851 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |
張家港恩斯克精密機械有限公司 [Zhangjiagang NSK Precision Machinery Co., Ltd.] (中国 張家港市) |
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一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 1,052 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |
NSK 韓国 [NSK Korea Co., Ltd] (韓国 Changwon-Do) |
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一般玉軸受、自動車用軸受生産設備等 | 443 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産基盤整備及び合理化対策 |
NSK-ABC BEARINGS Ltd. (インド タミル・ナードゥ州) | ||||
自動車用軸受生産設備等 | 1,010 | 2008年4月 | 2010年3月 | 生産能力増強対策 |