Lear Corporation 2016年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2016年
12月期
2015年
12月期
増減率
(%)
要因
売上高 18,557.6 18,211.4 1.9 1)
純利益 1,040.5 795.8 30.7 -
部門別売上高
シート 14,356.7 14,098.5 1.8 2)
Eシステム 4,200.9 4,112.9 2.1 3)


要因
1) 売上高
-2016年12月期の売上高は、前年比1.9%増の18,557.6百万ドル。アジア、欧州、南米市場での新規受注による増収が845百万ドル、欧州、アジアにおける生産台数の増加による増収が139百万ドルであった。一方、主要通貨に対するドル高や販売価格の低下が602百万ドルの減収につながり、増収分の一部が相殺された。

2) シート部門
-2016年12月期の部門売上高は、前年比1.8%増の14,356.7百万ドル。新規受注による増収が656百万ドルであったが、為替の影響や販売価格の低下による減収が427百万ドルに達し、増収分の一部を相殺した。

3) Eシステム部門
-2016年12月期の部門売上高は、前年比2.1%増の4,200.9百万ドル。新規受注による増収が179百万ドル、生産台数の増加による増収分が71百万ドル。一方、販売価格の低下および為替の影響による減収が175百万ドルに達し、増収分の一部を相殺した。

再編

-2016年8月、電装部品 (Electrical) 部門の名称を、Eシステム (E-Systems) 部門に変更すると発表した。自動車電子システムが多様化し、同社が取り扱う電装部品と車両のコネクティビティ機能が拡大していることを反映した措置。「E-Systems」が取り扱う製品は、ワイヤーハーネス、端子・コネクター、電子モジュール、パワーコンバーター、パワーインバーター、バッテリー充電器、48Vシステム、ワイヤレス機能、ソフトウェア、サイバーセキュリティ、照明モジュール、オーディオ部品。同社は近年、Arada Systemsを買収し、Autonet Mobileから知的財産および技術を取得した。これにより、車載電子システムを車外のネットワークやデバイスに安全に接続させるソフトウェア・ハードウェア製品を追加し、同社は車両内外の信号やデータを処理することが可能になる。(2016年8月9日付プレスリリースより)

買収

-2017年2月、Grupo Antolinの自動車シート事業を買収する合意文書に正式に署名したと発表した。買収額は286百万ユーロで、手続きは2017年上期に完了する予定。Grupo Antolinのシート事業は本部をフランスに置き、欧州5カ国で事業を展開。シートの組立、構造・機構部品、トリムを手掛ける。シート事業の年間売上は約300百万ユーロで、12生産拠点と2技術センターを保有し、従業員2,273人を雇用している。顧客はPSA、Daimler、Renault Nissan、Volkswagenなど。(2017年2月6日付プレスリリースより)

-2016年12月、特殊ファブリック開発・製造会社であるAccuMED Holdings Corp.を買収した。これにより自動車ファブリックの革新的加工技術を取得し、自動車用途以外のファブリック分野でも競争力強化を図る。

海外事業

<ハンガリー>
-2016年4月、ハンガリーのSzolnokにレザー裁断工場を開設したと発表した。新工場は、Szolnok工業団地に2015年12月に完成した。2004年に建設された既存のレザー工場に向かい合っている。面積は16,000平方メートルで、これにより生産スペースが2倍となった。Lear傘下のEagle Ottawaが運営する同拠点では、欧州の多数の高級自動車メーカーにレザー部品を納入している。この2工場には、合わせて2,000名超の従業員が勤務する。(2016年4月21日付プレスリリースより)

<中国>
-2016年8月、中国の江蘇省揚州 (Yangzhou) においてレザー加工工場を建設することで、揚州経済技術開発区管理委員会と合意したと発表した。新工場の敷地面積は56,700平方メートルで、建物面積は32,000平方メートル。中国における売上急増と事業拡大をサポートする。新工場の従業員数は2018年には約300名となり、生産能力の拡大に合わせて約700名まで増員する見込み。今後の拡張に向けて、隣接する28,000平方メートルの土地も確保している。(2016年8月23日付プレスリリースより)

-2016年6月、中国の上海楊浦区にアジア太平洋部門の新本社ビルを建設することに合意したと発表した。新拠点の延床面積は約28,000平方メートル。新ビル建設により管理部門を拡大する他、最新の研究開発・試験設備を有する新製品・技術開発センターを開設する予定で、Learアジア部門の技術革新本部としての役割も担う。Learはこの建設プロジェクトにより、中国及び他アジア地域での事業拡大を一層加速するとしている。(2016年6月7日プレスリリースより)

国内事業

-同社CEOであるMatt Simoncini氏は、メキシコから米国デトロイトへ最大5,000名の雇用を移管する可能性について検討しているとコメントした。8月はじめにはConrad Mallett取締役が、デトロイトへ1,500~5,000名の雇用を移管する計画について議論したと話している。Learは現在、デトロイトにおいて自動車シートの生産・組立を行う合弁会社Integrated Manufacturing and Assemblyを運営しており、約1,000名の従業員を雇用している。一方、メキシコでは約45,000名を雇用しているという。(2016年10月18日付Detroit Newsより)

-2016年7月、米国アラバマ州のVance拠点を拡張すると発表した。今後数年間で500名を新たに雇用する計画。同社は現在、Mercedes-Benz 「C-Class」向けにシートを生産している。拡張が完了する2019年には、MercedesのSUV 「GLE」 や 「GLS」 向けにも納入する計画。同拠点には現在約140名が勤務しているが、SUV向けシートの生産開始時には535名まで増員されるとみられる。(2016年7月28日付 Economic Development Partnership of Alabamaの発表より)

受賞

-Fordより2015年「Supplier Diversity Development Corporation of the Year」を受賞。(2016年5月23日付プレスリリースより)

技術提携

-Volkswagenは、「Volkswagen Future Automotive Supply Tracks (FAST)」プログラムの戦略的パートナーとして、61分野から合計55社を選出。LearはシートASSY分野で選出された。(2016年5月23日付プレスリリースより)

-2016年9月、米国アリゾナ州のTucsonを本拠とするTempronicsと戦略的提携契約を締結したと発表した。これにより、LearはTempronicsの少数株主となるほか、Tempronicsの自動車シート用冷暖房技術について独占ライセンスを取得する。Tempronicsは、2006年に設立されたベンチャー企業で、加熱・冷却・発電が可能なソリッドステートの熱電装置を開発している。(2016年9月8日付プレスリリースより)

-同社は内部投資や企業買収・提携を通じて技術力を強化しており、車載電子システムとクラウドベースのアプリケーションを直接接続する技術を取得。5.9GHzのDSRC (専用狭域通信) やGPS通信等の無線通信プロトコル技術、および移動体通信ネットワークやV2X通信 (車車間・路車間通信システム) 用ハードウェアやソフトウェアを用い、安全なデータ通信を実現。

研究開発活動

シート
-電子センサーや電動アジャスターシステム、独自開発したアルゴリズムを活用し、アクティブセンシングシステムや快適シートシステムを開発した。乗員のシートポジションに合わせ、シートのクッション、サポート圧を常時自動的に最適化する。さらに、シートセンサーを使った生体情報モニタリング技術も開発した。

-インテリジェントシート 「INTU Seating」 シリーズは、運転者や搭乗者の特徴を検知し、その情報を車内外の通信ネットワークを用いてユーザーや自動車メーカーに供給する次世代シートシステム。乗員の座り方のニーズや好みを、姿勢、健康面、快適性、安全性に配慮しながら直感的に予測し調整することができるという。

-「ProActive Posture」 シートは、TheraMetric分析メソッドを採用した「MySeat by Lear」技術を活用したシートで、より良い姿勢と体に優しいシートポジションを提案する。「Lear Crafted Comfort Connect」 および 「Advanced Comfort Systems」 は、クッション、シートバック、サイドボルスターを調整することにより、姿勢を正しく補正するとともに、高水準の快適性およびデザイン性を提供する。

Eシステム
-ソリッドステートスマートジャンクションボックス (Solid State Smart Junction Box)」 の生産を開始した。同製品は、2016年にAutomotive News PACE Awardを受賞している。アルミ基板の開発などを通じ、より高性能なスマートジャンクションボックス技術の実現を目指す。

-照明分野でも高度な電子制御技術を開発。「Matrix LED Control System」 は、最大100個のLEDの明るさを調整したり、オン・オフ切り替えを可能にする。

-11kWのEV用ワイヤレス充電システムを開発。プラグを使わずに、高出力で安全にEVを充電することがことできる。

-車載診断ポートより侵入するサイバー攻撃から車両を保護するファイヤーウォールモジュール (専用ソフトウェア含む) を開発。また、OTA (無線ソフトウェア更新) システムを加えたことにより、V2X製品ラインナップを増強した。

研究開発拠点

-2016年10月、米国ミシガン州Detroitにイノベーションセンターを開設した。面積は35,000平方フィート。新たな自動車部品・技術の開発や非自動車向け事業の開拓を行う。また、次世代自動車シートや内装部品の開発でCollege for Creative Studies (CCS) と、コネクテッドカーや代替エネルギー車向けの製品開発でウェイン州立大学とそれぞれ提携する。(2016年10月18日付プレスリリースより)

研究開発体制

-世界6カ所の先端技術センターおよび製品エンジニアリングセンターで製品開発を実施。米国ミシガン州Southfieldのグローバルイノベーション・テクノロジーセンターが同社の研究開発の中核拠点。

Eシステム部門
-14カ国で2,200名以上のエンジニアが研究開発に従事
-グローバルテクノロジーセンターは5拠点 (ベルギー、中国、ドイツ、スペイン、米国)

-米国ミシガン州Southfieldが先端技術システム (高出力製品、ハイブリッドシステム) 研究開発の中核拠点。スペインVallsにも総合研究開発拠点を有する。

-電子製品の研究開発は、米国ミシガン州Southfield、カリフォルニア州Santa Rosaの他、スペイン、ドイツ、中国、インドで行っている。

-約600名の技術者がソフトウェア開発に携わっており、自動車ネットワーキング、暗号化、サイバーセキュリティ、コネクティビティプロトコル分野の技術力強化を図っている。ワイヤレス・コミュニケーションソフトウェアやサイバーセキュリティ分野の専門知識、またアーキテクチャマネジメント、パワーマネジメント関連の開発力を活用しながら、買収、内部投資、戦略的雇用等を通じてソフトウェア開発力を強化した。

特許

-2016年12月末現在、特許および出願数は約2,100件。

-先端技術システム分野の特許取得および出願数は619件。

研究開発費

(単位:百万ドル)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
全社 144 127 102

設備投資額

(単位:百万ドル)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
シート部門 341.6 317.2 268.9
Eシステム部門 162.4 134.4 138.4
その他 24.3 34.2 17.4
合計 528.3 485.8 424.7


-2017年12月期の設備投資額は550百万ドルと予想。

2017年12月期の見通し

-同社は2017年12月期の見通しについて、売上高 195億ドル、純利益 11億ドルと予想している。