TPR (株) 2019年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2019年 3月期 |
2018年 3月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 192,619 | 187,398 | 2.8 | -国内での受注増加、また新規連結効果等により増収 |
営業利益 | 18,309 | 20,775 | (11.9) | -原材料高騰、中国における減速、新技術量産立上げコスト及び新商品の開発費用等により減少 |
経常利益 | 21,765 | 24,023 | (9.4) | |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 11,515 | 12,154 | (5.3) |
事業動向
非パワートレーン事業強化
2030年以降で非パワートレーン (パワトレ) 部品を主力事業へ育成する。内燃機関搭載車の成長は30年以降にピークを迎える見通し。同社はカーボンナノチューブ (CNT) やアルミブレーキドラムなどの新素材・製品を開発してきた。21年度から始まる次期中期経営計画にも具体的な数値目標を盛り込む考えだ。アルミブレーキドラムはすでにEVベンチャーから受注を獲得したほか「海外の自動車メーカーも興味を持つ」という。新素材・製品はすでに引き合いが強まっているが「価格面での競争力が追いついていない」。今後は性能だけではなく、価格面でも競争力を高めることでパワトレ部品に替わる主力事業に育てていく考えだ。(2019年3月12日付日刊自動車新聞より)
シリンダーライナー生産販売強化
シリンダーライナーの生産と販売を強化する。中国でディーゼルエンジン (DE) 用ライナーの生産を合理化して製品のコスト競争力を高める。また、インドでは日系自動車メーカーの生産能力の拡大に伴う受注増にも対応できるよう生産能力の拡大などを進める。設備投資による生産力の強化で主力のパワートレーン部品の拡販につなげる。中国のシリンダライナー工場に約10億円を投じて、DE用ライナーの生産ラインを効率的なラインに作り直す。長距離を走るトラックなど商用車は燃費などでDEに強みがある。中国の新車販売は一時低迷するものの、「商用車販売は悪くない」 (岸雅伸社長) と見ており、DE用ライナーの販売にはまだ伸ばせる余地があると判断。新ラインの稼働は19年半ばを予定する。一方、インドではシリンダーライナーを含めたパワートレーン部品の生産能力拡大などに取り組む。(2019年2月28日付日刊自動車新聞より)
「カーボンナノチューブ (CNT) 」市場参入
電動車両向けリチウムイオン電池などの性能を向上する電極材として「カーボンナノチューブ (CNT) 」市場に参入する。長野工場 (長野県岡谷市) に製造ラインを新設し、立ち上がり年産1~2トンのペースで年内に量産開始する予定。素材単体での供給に加え、グループが手がけるゴム、樹脂製品、キャパシタにもCNTを活用して競争力の高い製品を開発する。内燃機関用パワートレイン系部品が主力の同社は、電気自動車 (EV) シフトが本格化すると事業が縮小する懸念がある。CNTを活用して非パワートレイン事業を経営の第二の柱に育てる。
(2018年5月22日付日刊自動車新聞より)
中期経営計画
2020年度に売上高を17年度実績比5.6%増となる2058億円、営業利益を同7.1%増の240億円とする3カ年中期経営計画を発表した。新規事業分野を強化するとともに、超低摩擦表面処理 (DLC) の適用拡大や特殊形状オイルリングの量産を開始するなど、軽量化や低摩擦化のニーズに対応した製品に力を入れて事業の拡大を図る。地域別ではディーゼル用ライナーの需要拡大が進むアジアの売上高が17年度実績比25.2%増、トヨタ、マツダ向けの新規受注を獲得した日本が同18.1%増と高い伸び率を見込む。一方で、北米は同20.1%減と大幅に縮小する見通し。設備投資は3年間合計で前中期計画と比べて1%減の405億円とほぼ横ばい。中国でディーゼル用ライナーの増産や合理化設備に投資するほか、国内では研究開発や新事業展開の推進、原価低減や合理化に向けた設備の導入に投資する。(2018年6月15日付日刊自動車新聞より)
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
全社 | 6,008 | 5,566 | 5,335 |
-TPRグループ (ファルテック除く) | 3,390 | 3,192 | 2,770 |
-ファルテックグループ | 2,618 | 2,374 | 2,564 |
主要研究開発拠点
-技術センター (長野工場内、長野県岡谷市)
研究開発活動
-低フリクション化、熱制御、軽量化への取り組みに加え、排気ガスクリーン化、代替燃料 (バイオ、CNG) 使用に対応した新製品の開発を推進している。
-製品の高精度化に対応したインラインでの計測自動化、革新的コストダウン、生産エネルギーの極小化へ対応した新工法の開発を進めている。
-海外拠点への新技術の移転構築、海外提携会社との協業による世界同一品質の実現、海外顧客への新製品および新技術PRを積極的に行っている。
-急速なEV化に対応し、非パワートレイン部品への取り組みを強化。アルミ、樹脂を中心とした軽量化複合製品とゴムを中心としたシール製品への新技術導入を積極的に実施している。
開発の主な成果
<パワートレイン部品>
- ピストンリング
-超低フリクション & 低オイル消費リングの製品化 (低燃費対応)
-高耐摩耗DLC(Diamond Like Carbon)被膜の製品化 (信頼性向上)
-ピストンリング革新的コストダウン製造ラインの構築 (低価格対応) - シリンダーライナー
-小型エンジン用小径薄肉、高熱伝導ライナーの製品化 (低燃費対応、信頼性向上)
-熱制御ライナーの製品化 (低フリクション対応)
-低フリクション内周面性状の確立 (信頼性向上)
-重力鋳造用アズロックライナーの製品化 - バルブシート、バルブガイド
-高耐摩耗バルブシート材料の製品化 (代替燃料対応)
-バルブシート革新的コストダウン製造ラインの構築 (低価格対応)
-高熱伝導バルブの製品化
<非パワートレイン部品>
- 樹脂、ゴム製品
-変速機用樹脂シールリングの製品化
-自動車用ゴムシール部品の高精度化 - 鋳造応用製品
-アズロックライナーの技術を応用したブレーキドラム用インサートの製品化
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2019年3月期 | 2018年3月期 | 2017年3月期 | |
日本 | 4,477 | 4,103 | 3,986 |
アジア | 3,152 | 2,057 | 4,585 |
北米 | 655 | 559 | 378 |
その他 | 33 | 23 | 144 |
ファルテックグループ | 5,597 | 6,330 | 4,446 |
合計 | 13,916 | 13,074 | 13,541 |
設備の新設計画 (自動車関連製品事業) |
(2019年3月31日現在) |
会社名 事業所名 |
所在地 | 設備の内容・目的 | 投資予定金額 (百万円) |
着手予定 | 完了予定 | 完成後の増加能力 |
同社 長野工場 |
長野県 岡谷市 |
研究開発・工場再配置、ピストンリング生産設備等 | 4,300 | 2019年4月 | 2020年3月 | 3%増加 |
Faltec Europe Ltd. | 英国 テインアンドウィア州 |
自動車部品生産設備等 | 2,400 | 2019年4月 | 2020年1月 | 25%増加 |
安慶帝伯格茨缸套有限公司 [Anqing TP Goetze Liner Co., Ltd.] |
中国 安徽省 |
シリンダーライナー生産設備等 | 1,600 | 2018年10月 | 2019年12月 | 生産能力に影響を及ぼさない |
TPR工業 (株) | 山形県 寒河江市 |
シリンダーライナー生産設備等 | 1,300 | 2019年4月 | 2020年3月 | 生産能力に影響を及ぼさない |
ファルテック | 神奈川県 川崎市 |
自動車部品生産設備等 | 900 | 2019年4月 | 2020年8月 | 15%増加 |
-2年以内をめどに中国・安徽省に自動変速機 (AT) 用樹脂シールリングの工場を新設する。投資額は土地や建物、生産設備を含めて約10億円を見込む。また、中期的にはゴム製品の生産も視野に入れる。環境規制の強化を見据え、都市部に工場があるゴム製品の生産移管を検討する。中国の樹脂製品事業は、2014年に安徽省安慶環新集団と合弁会社を設立して開始した。ATの回転軸からオイルや空気が漏れるのを防ぐシールリングを生産する。主要取引先のアイシン精機子会社のアイシン・エィ・ダブリュ (愛知県安城市) が進める生産能力の増強に対応するため、20年頃の新工場設立に向けて検討を始めた。(2019年2月21日付日刊自動車新聞より)