クラリオン株式会社 2009年3月期の動向

ハイライト

業績 (単位:百万円)
- 2009年
3月期
2008年
3月期
増減率 要因
全社
売上高 181,554 246,806 (26.4) 上半期は北米OEM市場での販売が振るわなかったものの、国内カーディーラー向けオプション市場におけるカーナビゲーション の販売を中心に全体として堅調さを維持。
下半期は景気後退による世界規模での車両買い控えにともなう国内外自動車メーカーの減産影響、国内カーディーラー向けオプション市場における販売の落ち込み、国内外市販市場での販売価格の低下、販売数量の減少により減収。
営業利益 (12,449) 5,465 - 固定費の削減や設備投資の抑制等により販売費及び一般管理費の低減効果はあったが、原材料価格の高騰、商品ミックスの変化、車両減産にともなう在庫調整に起因する原価率の悪化等により損失計上。
経常利益 (14,619) 4,986 - 急激な円高影響による大幅な為替差損の計上。
当期純利益 (19,987) 1,378 - -
自動車機器事業
売上高 157,552 217,522 (27.6) 米州での新規商権獲得による売上増、上半期における国内カーディーラー向けオプション市場での販売増があったが、自動車市場の大幅な縮小により減収。
営業利益 (14,491) 4,330 - 販売価格の低下、車両減産にともなう在庫調整による生産所要量の減少、高止まりした原材料価格等による原価率悪化により損失を計上。

合併

同社とザナヴィ・インフォマティクスは、2009年4月1日に合併することで基本合意したと発表。クラリオンは日立製作所が63%あまりの株式を保有しており、ザナヴィを合併することで日立グループ内における車載機器事業を強化する狙いがあるものと見られる。合併方式はクラリオンを存続会社とする吸収合併方式。クラリオンは2007年1月にザナヴィを 100%子会社化。車載情報技術の急速な発展と、グローバル化が進む市場の中で事業拡大を目的とした相乗効果の最大化に向けて取り組んできた。今後は保有する商品、技術力を融合しカーナビを中心とする既存商圏の維持、新規商圏の拡大を図る。また、ITSや車両制御と連携した事業領域の拡大を目指すとともに 市販、特機においてもナビゲーションの共通技術を有効活用し、ソリューションビジネスなど新たな事業の発掘にも挑戦するという。(2008年9月25日付日刊自動車新聞より)

受注

-三菱自動車

2009年2月、三菱自動車が高度道路高速システム(ITS)実験用車両として開発した「iスマートウェイ」と「デリカD:5」に、ITS対応カーナビゲーションと車載カメラシステムを供給したと発表。iスマートウェイは三菱自動車が 官民合同のITS実証実験「ITS―Safety2010」用に開発した。同社が供給するカーナビは無線通信規格DSRCに対応した「ITS車載器」と連動。画像と音声によりドライバーに運転支援情報を提供する。デリカD:5の実験車両に供給するのは車載用CCDカメラと画像処理システム。CCD カメラは25万画素で前後左右計4カ所に搭載する。接近車検知機能付きの画像処理コントロールユニット(ECU)により、全周囲俯瞰映像の表示も可能と なっている。リアルタイムの接近車検知技術は三菱自動車がアルゴリズムを開発し、クラリオンがECUへの実装を実現した。(2009年2月27日付日刊自動車新聞よ り)

-富士重工業

2008年7月、富士重工業が中国市場に投入するスバルフォレスターに、カーナビゲーションのOEM供給を始めたと発表。2008年6月から供給を開始しており、納入台数は2008年度が1500台、2009年度以降は年間3-4千台を見込む。OEM供給するカーナビは2DINタイプのAV一体型ナビゲーション。中国向けスバルフォレスターに採用されたカーナビは、6.5インチモニターを搭載しDVD、CD、MP3 などの再生に対応。タッチパネル方式で、自車位置の測位システムにはGPSとジャイロセンサー、車速センサーを利用する。(2008年7月9日付日刊自動車新聞よ り)

-上海GM

2008年6月より、上海GMに後方確認カメラの供給開始したと発表。同社は今後も中国の自動車メーカーに対 し、後方確認カメラの提案を強化するとともに、DVDシステムなど周辺車載機器との互換性向上を図り、中国市場におけるブランドの認知度向上を目指す。上海GMに対しては、カメラ単品での供給とDVDシステムとの組み合わせによる供給を行い、2008年度の供給台数は約14万台となる見込み。(2008年7月4日付日刊自動車新聞より)

事業再編

2009年1月、世界的な自動車販売の減速を受けて経営環境の変化に対応するため、緊急構造改革を実施すると発表。具体的には、コモディティー化した製品の開発は中国などの海外拠点にシフトし、OEM事業の強化に向けて高付加価値製品の開発に経営資源を集約する。生産体制に関しては、売上減に伴いグローバルで生産能力を30%縮小する。2010年12月をめどに水戸生産拠点を郡山生産拠点に統合し国内生産拠点を1拠点とする。タイでは新工場の建設を延期し、既存海外生産拠点の閉鎖、再編を進める。グループ要員の適 正化にも取り組む。拠点再編に伴い、国内外の人員を現在の1万2千人規模から2010年3月末をめどに9千人以下に削減する。加えて役員報酬、管理職給与のカットを実施する。(2009年1月30日付日刊自動車新聞より)

事業計画

-ディスプレイ付きカーオーディオ事業

2009年度にもディスプレイ付きカーオーディオ事業を北米で展開する。北米では自動車の後方視界の確保について法制化が検討されている。法制化の動きに対し、後方視界を確保するリアカメラとその映像を表示するディスプレイ付きカーオーディオへの需要は高まる見込み。ディスプレイ付きカーオーディオは、リアカメラの映像表示とカーオーディオ操作に機能が絞り込まれている。機能を簡素化し、価格を抑えた製品で低価格車を中心に拡販を狙う。リアカメラとの連動が必要であることから自動車メーカーへのOEM製品となるが、供給先については明らかにされていない。(2008年11月17日付日刊自動車新聞より)

-車載カメラ事業 (CMOSセンサー型カメラ)

車載カメラ事業において低価格化と大量生産が可能なCMOSセンサー型カメラに本格参入する。日・中に持つ車載カメラの生産ラインのうち、中国工場をCMOS生産拠点に切り替える。現在はいずれのラインもCCDカメラの生産を行うが、欧米などで需要拡大が見込めるCMOSに参入し、車載カメラ事業を拡大する。CCDカメラに比べ生産工程が簡素であることから、コスト削減とともに新興国での高品質な量産に適していることなども背景にある。(2008年8月20日付日刊自動車新聞より)

-カーナビゲーション・システム事業

カーナビゲーション・システムでフォード・モーターのグローバル規模のメーンサプライヤーを目指す。2008年度、同社はフォードの北米向け車種のカーナビではメーンサプライヤーとなった。今後は欧州向け車種のメーンサプライヤーを目指し、メモリータイプの据え置き型ナビを中心とした積極的な提案活動を行う。(2008年7月10日付日刊自動車新聞より)

据え置き型カーナビゲーションの世界シェアを、現在の約10%から2010年度に15%へ引き上げる。主要取引先である日産自動車やホンダ、スズキなどへの供給も強化する方針。海外OEMを基盤とした事業拡大により、グローバルで安定した収益構造の構築を目指す。現在、売上高の約60%を占めるOEM事業は半数が日産向けで、これにホンダ、スズキが続く。これまでフォードへのOEMは軽微だったが、メーンサプライヤーとして製品を供給することで、2010年度には日産に次ぐ規模を見込む。ルノー向けの供給も拡大し、2010年度には日産、フォードに続きホンダ、スズキ、ルノーとグローバルでOEM事業を拡大する。(2008年5月27日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費 (単位:百万円)
- 2009年3月期 2008年3月期 2007年3月期
金額 1,596 2,255 975

主として要素技術開発や各セグメントにまたがる複合領域に投資しているため、各セグメントに区分されていない。

研究開発活動

(1)車載カメラによる駐車支援および走行支援の高度化

駐車および走行を支援するための画像処理技術ならびに画像認識技術の開発に取り組んでいる。

また、車載カメラの応用技術として、俯瞰映像などの画像処理技術を既に構築。全周囲俯瞰映像(OVM : Overhead View Monitor)を実現するASIC(Applicaiton Specific Integrated Circuit)を開発し、保有している。

新しいタイプの車載カメラとして、水平画角が190度を超える超広角カメラの開発を行い、見通しの悪い交差点での安全運転に貢献するよう接近物体検知技術の開発を行っている。

今後は、車載カメラのCMOS化・小型化・低価格化を行い、日立製作所が保有する画像認識技術を組み合わせて、駐車時および走行時の安全をサポートするITS技術の高度化に取り組む。

(2)車室内音響技術への取り組み

以下の技術を開発

-最適な音量レベルを自動的に設定するオートボリュームコントロール

-圧縮オーディオの再生音質を改善する音質補完技術

-スピーカーの特性や人間の聴覚特性に最適な音量や周波数補正を提供するチューニング技術

(3)ディスプレイオーディオの製品化および開発

2010年3月期中にディスプレイオーディオの市場導入を予定。ディスプレイオーディオは、LCDパネルを装備し、CDに記録された圧縮オーディオの再生、デジタルラジオの受信、各種ポータブルオーディオプレーヤーやUSBメモリーとの接続並びに車載カメラの映像処理等の機能を有する、新たなオーディオ機器。

(4)モバイル・インターネット・ナビゲーション・デバイスの展開

車室内外をシームレスに繋ぐデバイスとして、2008年の秋にClarionMiND(Mobile Internet Navigation Device)を北米市販市場に導入。今後は欧州市販市場においても導入する予定。

研究開発動向 (2009年3月期)

2009年春のカーナビゲーション新製品がプローブ情報に対応することを明 らかにした。日立グループ傘下の同社は、日立製作所が収集しているプローブ情報をカーナビ向けに活用する。対応機種は新製品を始め、インターネット連携 サービスを利用できる機種を中心に順次拡大する方針。カーナビメーカーとしてはパイオニアに次いで国内市販製品で本格的にプローブ情報対応機種をライン アップすることになる。(2009年2月23日付日刊自動車新聞より)

ザナヴィ・インフォマティクスと共同開発する新型カーナビゲーションを2010年度に市場投入する。同社はザナヴィを2009年4月1日付で吸収合併するため、相乗効果を反映した新型カーナビの開発が急務となっ ている。新たな製品カテゴリーに位置づける新型カーナビは、量産化をにらみ普及価格帯の製品として展開する。メモリー機能を内蔵するソリッド・ステート・ ドライブ(SSD)型とし、基本ソフト(OS)にはグローバル展開が容易なウィンドウズ・オートモーティブを搭載する。製品開発費の低減と市場競争力の向 上を両立し、新型カーナビを世界戦略製品として収益の柱に育てる。(2009年2月18日付日刊自動車新聞より)

技術導入契約 (2009年3月31日現在)
相手先 国名 内容 契約期間
ディスコビジョン・アソシエイト
(Discovision Associate)
米国 光学系ディスクプレーヤーの製造技術

1994年12月01日~
許諾特許権満了日

財団法人 道路交通情報通信システムセンター 日本 VICS技術情報の使用に関する契約 1995年11月28日~
両当事者での
終了確認日

設備投資

設備投資額 (単位:百万円)
  2009年3月期 2008年3月期 2007年3月期
全社 18,586 14,892 12,640
MT事業 4,557 2,330 2,352
AT事業 11,155 10,970 9,477

MT事業
-本社およびアジア子会社での合理化及び増産対応等による投資。

AT事業
-本社および国内子会社での増産対応等による投資。


設備投資計画
-2010年3月期、同社グループは12,000百万円の設備投資を計画。このうち、MT事業に2,000百万円、AT事業に8,300百万円を投資する。