NTN (株) 2016年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2016年 3月期 |
2015年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 716,996 | 701,900 | 2.2 | -為替の影響による増収分は12,275百万円。 -海外売上高は527,439百万円、全社売上高の73.6%を占める。 |
営業利益 | 47,770 | 43,850 | 8.9 | - |
経常利益 | 38,211 | 38,868 | (1.7) | - |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 15,037 | 23,352 | (35.6) | - |
自動車市場向け | ||||
売上高 | 499,258 | 480,473 | 3.9 | -欧州および中国での客先需要の拡大、為替の影響などにより増収。 -日本:軽自動車増税の影響による減少を北米向け輸出需要でカバー -米州:北米の堅調な需要も、一部新車の立ち上げ遅れや南米市場の低迷で微減 |
営業利益 | 24,448 | 18,351 | 33.2 | -販売増加の効果、為替の影響などにより増益。 |
中期経営計画 「NTN100」 (2016年3月期 -2018年3月期)
-「NTN100」は、「NTN Transformation for Next 100 (次の100年に向けたNTNの変革)」。2018年3月に迎える創業100周年と、次の100年の持続的成長に向け、3つの基本方針を掲げている。自動車事業に関連する主な内容は以下のとおり。
攻める経営: 新たな領域での事業展開
-EV事業では小型・軽量化を実現した 「新インホイールモーターシステム」 を開発。
-次世代自動車用商品の早期事業化に向け、「電動モジュール商品事業部」 を新設。「電動モーター・アクチュエーター」を発売予定。
-先端技術研究所 (三重県桑名市) 内に 「グリーンパワーパーク」 を設立。風力、水力、太陽光などの自然エネルギーを電気自動車等へ循環させる実証実験を行う。
稼ぐ経営: ドライブシャフト事業の構造改革
-「アドバンスドドライブシャフト (ADS) モジュール」 で軽量化と部品の共通化を推進。
-プレミアムカー向け 「リア用軽量ドライブシャフト」 を発売、高付加価値商品の市場展開を開始。
-中国 (襄陽) とメキシコの新工場立ち上げでグローバル供給体制を強化。
-米国にNTN Driveshaft Anderson, Inc. (NDA) を設立。2017年4月量産開始予定。
築く経営: 財務基盤の強化
-設備投資: 1,350億円 (3年間)
-ROE: 14%超 (2018年3月期目標)、6.3% (2016年3月期実績)
-営業利益率: 8.8% (2018年3月期目標)、6.7% (2016年3月期実績)
海外事業
<米国>
-2015年11月、米インディアナ州アンダーソン市にドライブシャフトの新工場を建設すると発表した。同製品の米国工場としては3拠点目。2017年4月から量産を開始し、2018年度に220億円の売上高を目指す。新工場は敷地面積が約16万2千平方メートル、延べ床面積が3万8千平方メートル。従業員は2017年までに280人体制とし、順次拡大する計画。(2015年11月19日付日刊自動車新聞より)
研究開発活動
基盤事業
-自動車事業: 転がり軸受、ドライブシャフトの低トルク化、小型・軽量化等の高機能化開発とともに、軸受の周辺部品を融合させたモジュール・ユニット製品の開発を推進
- アドバンスドドライブシャフト (ADS) モジュール: 等速ジョイント (CVJ) とハブベアリングをプレスコネクト方式で接合することで軽量化と高性能化を実現。
- 2モーターオンボード駆動システム: 電気自動車 (EV) 向け駆動システムとして、左右の車輪をそれぞれ専用のモーターで駆動する。1モーター式EVに比較して、左右の駆動力を適正に制御することができ、旋回性能やスリップ路面での走行性能、安全性等が大きく向上する。
-軸受・磁性製品: 焼結材料、樹脂材料からなるすべり軸受、磁性材料からなる磁性製品の開発・製造・販売
- 早期異常検知機能付き円すいころ軸受: 転がり軸受に樹脂製のフィルターと鉄粉を検出するセンサーを設置。
- アモルファスコア: EVの電源装置用に大電流・高周波に対応できる磁性材料。
新事業展開
-EV事業: 電動モジュール商品事業部を新設
- インホイールモーターシステム
- 電動モーター・アクチュエーター
製品開発
アドバンスドドライブシャフト (ADS) モジュール
-2015年10月、ハブと等速ジョイント (CVJ) をモジュール化して一体提案する 「アドバンスドドライブシャフトモジュール」 (ADSモジュール) を開発したと発表した。ハブの接合やドライブシャフトの溶接の新技術を組み合わせて構成部品の共通化を進めることで、開発リードタイムを半減し、12%の軽量化を可能とした。同製品の提案活動を積極化することでハブおよびCVJ事業の売上高で2018年度に15年度比15%増を目指す。(2015年10月27日付日刊自動車新聞より)
2モータオンボード駆動システム
-2015年10月、次世代電気自動車 (EV) 向け駆動システムとして、左右の車輪それぞれが専用モーターで駆動する 「2モータオンボード駆動システム」 を開発したと発表した。車両の走行状態に応じて左右の駆動力を適正に制御することで、旋回性能やスリップ路面の走破性などの走行性能が大きく向上する。ハブベアリングとドライブシャフトを同システムと組み合わせ、モジュール商品として一括提供する。EV、ハイブリッド自動車、燃料電池車などの前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動すべてに適用可能とし、2025年度には年間15億円の販売を目指す。(2015年10月23日付日刊自動車新聞より)
リア用軽量ドライブシャフト
-2015年10月、後輪駆動 (FR) 車用に 「リア用軽量ドライブシャフト」 を開発したと発表した。これまでFR車のリア用ドライブシャフトには前輪駆動 (FF) 車の前輪への適用を前提とした等速ジョイント (CVJ) を兼用していた。リア専用にCVJを新設計し、従来比で30%軽量化した。(2015年10月28日付日刊自動車新聞より)
電動モーター・アクチュエーター
-電気信号によりブレーキやシフトチェンジなどを制御する 「バイワイヤー制御」 に適応する汎用性が高い 「電動モーター・アクチュエーター」 シリーズを開発した。モーターの軸配列別に 「同軸直列タイプ」 「同軸中空タイプ」 「平行軸タイプ」 の3種類を用意、小型から大型まで3サイズをラインアップした。2018年に量産を開始する予定で、2025年度には300億円の売り上げを見込んでいる。(2016年5月31日付日刊自動車新聞より)
小型軽量化した後輪独立転舵システム
-2013年に発表した 「後輪独立転舵システム」 を改良し、より優れた応答性能と小型軽量化を実現した。このシステムは、操舵システムの電子制御を可能にするステアバイワイヤー操舵システムの技術を応用したもの。タイヤの最大転舵速度を10度/秒 (従来品:6度/秒) に向上させ、高速走行時や緊急回避を必要とする場面などにおいて、車両挙動の応答性能を改善した。また、タイヤの最大転舵角を±2.5度と広い転舵領域を実現したことで最小回転半径が小さくなり、駐車時などの運転負荷軽減や将来の自動運転技術にも寄与するという。さらに、従来品と同等の剛性を維持しながら、体積を約60%削減することで、質量も約30%の軽量化を達成した。(2015年5月20日付プレスリリースより)
ISG搭載エンジン用可変ダンパ式オートテンショナー
-2015年10月、アイドリングストップ車用にエンジンの状態に応じて補機ベルトの張りを自動的に調整する 「ISG搭載エンジン用可変ダンパ式オートテンショナー」 を開発したと発表した。従来のオートテンショナーは、アイドルストップ状態からエンジンを再始動する時に必要なベルト張力を確保する設定か、車両走行時の燃費を向上させるためにベルト張力を低く維持する設定のどちらかを選択する必要があった。開発品はテンショナーの設定を自動で最適化でき、エンジン再始動時の安定性と走行時の燃費向上の両立を実現した。(2015年10月28日付日刊自動車新聞より)
摩擦低減AT用シールリング
-従来製品に比べて摩擦抵抗を6割削減したオートマチックトランスミッション (AT) 用シールリングを開発した。日系の自動車及び部品メーカーから受注した。摩擦を低減しながら、シールリングの摩耗量も10分の1に抑えた。日系以外の欧米メーカーなどにも幅広く提案し、2020年度に15億円の売上高を目指す。今回受注した 「低トルクシールリング」 は、特殊充填材を配合したポリエーテルエーテルケトン (PEEK) 樹脂を採用。側面にV字状の潤滑溝を設けることで、低トルク化と高いシール特性を両立し、シールリングの摩耗量を大幅に抑えた。シールリング幅も30%低減し、小型化を図った。(2016年3月28日付日刊自動車新聞より)
研究開発体制
-世界4極体制 (日本、欧州、米州、中国) で研究開発を実施。
-日本・欧州: 要素技術をはじめとする基礎研究や最先端技術の研究。
-中国: 産学官の連携による開発や、現地の自然環境にあわせた実証試験を行い、顧客対応力を強化。
-各地域で顧客ニーズに迅速に対応すべく、個々の商品開発や認定評価・調査・分析といった技術サービスを「現地完結型」で展開。
研究開発拠点
施設名称 | 所在地 |
産業機械技術開発センター | 三重県桑名市 |
先端技術研究所 | 三重県桑名市 |
総合研究開発センター | 静岡県磐田市 |
商品開発研究所 | 静岡県磐田市 |
生産技術研究所 | 静岡県磐田市 |
CVJ・アクスルユニット技術開発センター | 静岡県磐田市 |
NTN Bearing Corp. of America - Industrial Engineering Dept. |
米国、イリノイ州 |
NTN Bearing Corp. of America - NTN Automotive Center |
米国、ミシガン州 |
NTN Waelzlager (Europe) G.m.b.H. - Engineering Dept. |
ドイツ、Erkrath |
NTN Transmissions Europe - Research and Development Dept. |
フランス、Allonnes |
NTN-SNR Roulements S.A. | フランス、Annecy |
NTN China Technical Center | 中国、上海市 |
技術供与契約 |
(2016年3月31日現在) |
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期限 |
National Engineering Industries Ltd. | インド | ボールベアリング等の製造に関する技術の供与 | 2011年11月2日から 2017年12月31日まで |
台惟工業股份有限公司 [Taiway Industry Co., Ltd.] |
台湾 | 等速ジョイントの製造に関する技術の供与 | 2003年3月26日から 2021年11月23日まで |
Unidrive Pty. Limited | オーストラリア | 等速ジョイントの組立に関する技術の供与 | 1983年2月15日から 2017年12月31日まで |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 18,480 | 18,088 | 17,820 |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2016年3月期 | 2015年3月期 | 2014年3月期 | |
全社 | 36,300 | 31,266 | 33,162 |
-2017年3月期見通しは40,000百万円。
2016年3月期の主な設備投資
地域 | 会社名/事業所 | 内容 | 総額 (百万円) |
日本 | (株) NTN袋井製作所 | 等速ジョイント製造設備の増設 | 13,039 |
同社岡山製作所 | 軸受製造設備の増設 | ||
米州 | NTN Manufacturing de Mexico, S.A. de C.V. | 軸受製造設備および等速ジョイント製造設備の設置 | 7,445 |
NTN Driveshaft Anderson, Inc. | 工場新設による建屋新築 | ||
欧州 | NTN-SNR Roulements S.A. | 軸受製造設備の増設 | 8,274 |
NTN Kugellagerfabric (Deutschland) G.m.b.H. | 軸受製造設備の増設 | ||
アジア他 | 南京恩梯恩精密機電有限公司 [Nanjing NTN Corporation] |
軸受製造設備の増設 | 7,725 |
襄陽恩梯恩裕隆傳動系統有限公司 [Xiangyang NTN-Yulon Drivetrain Co., Ltd.] |
等速ジョイント製造設備の増設 | ||
上海恩梯恩精密機電有限公司 [Shanghai NTN Corporation] |
軸受製造設備および等速ジョイント製造設備の増設 | ||
NTN Manufacturing (Thailand) Co., Ltd. | 軸受製造設備の増設 | ||
NTN NEI Manufacturing India Private Limited | 軸受製造設備の増設 |
設備の新設計画 |
(2016年3月31日現在) |
会社名/事業所 (所在地) |
内容 | 総額 (百万円) |
着手 | 完了 | 目的 |
同社 | |||||
研究部門 | 研究用設備等 | 8,432 | 2015年04月 | 2018年03月 | 研究開発等 |
桑名製作所 (三重県桑名市) |
軸受用建屋および設備 | 7,240 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
岡山製作所 (岡山県備前市) |
軸受・等速ジョイント用設備 | 5,975 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
磐田製作所 (静岡県磐田市) |
軸受・等速ジョイント・精密機器商品等用設備 | 3,575 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
子会社・関連会社 | |||||
NTN三重製作所 (三重県桑名市) |
軸受用建屋および設備 | 6,500 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
NTN能登製作所 (石川県志賀町) |
軸受用建屋および設備 | 4,994 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
NTN Manufacturing de Mexico, S.A. de C.V. (メキシコ、アグアスカリエンテス州) |
軸受・等速ジョイント用建屋および設備 | 7,715 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産 |
NTN-Bower Corp. (米国、イリノイ州) |
軸受用設備・等速ジョイント部品用設備 | 4,170 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
NTN Driveshaft Anderson, Inc. (米国、インディアナ州) |
等速ジョイント用建屋および設備 | 11,657 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産 |
NTN-SNR Roulements S.A. (フランス、Annecy) |
軸受用建屋および設備 | 11,775 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
NTN-SNR Rulmenti S.R.L. (ルーマニア、Sibiu) |
軸受用建屋および設備 | 4,530 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
NTN Manufacturing (Thailand) Co., Ltd. (タイ、Rayong) |
軸受・等速ジョイント・ 精密機器商品等用設備 | 4,536 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産および合理化 |
襄陽恩梯恩裕隆傳動系統有限公司 [Xiangyang NTN-Yulon Drivetrain Co., Ltd.] (中国襄陽市) |
等速ジョイント用設備 | 3,756 | 2015年04月 | 2018年03月 | 増産 |
2017年3月期の業績見通し |
(単位:百万円) |
2017年3月期 (予想) |
2016年3月期 (実績) |
増減率 (%) |
|
売上高 | 690,000 | 716,996 | (3.8) |
営業利益 | 35,000 | 47,770 | (26.7) |
経常利益 | 27,000 | 38,211 | (29.3) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 16,000 | 15,037 | 6.4 |
自動車市場向け | |||
売上高 | 486,500 | 499,258 | 2.6 |
営業利益 | 20,500 | 24,448 | 11.7 |
>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)
-2017年3月期は、円高の影響を受け前期比で減収減益の見通し。為替によるマイナス影響は144億円で、これを除けば増収増益。
-地域別の動向見通しは以下のとおり。
- 日本: 新モデル投入による新車販売の回復、九州地震や燃費不正問題の影響注視
- 米州: 原油安を背景に大型車の販売が好調、メキシコ製造の立ち上がりで販売増加
- 欧州: 東欧市場の低迷はあるが、全体では堅調な販売が続く
- アジア他: 中国の継続的な需要拡大、ASEANでドライブシャフトと二輪向けが増加