MICHELIN (Compagnie Generale des Establissements Michelin S.C.A.) 2018年12月期の動向
業績 |
(単位:百万ユーロ) |
2018年12月期 | 2017年12月期 | 増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 22,028 | 21,960 | 0.3 | 1) |
営業利益 | 2,775 | 2,742 | 1.2 | 2) |
自動車用タイヤおよび物流事業部門 | ||||
売上高 | 11,340 | 11,953 | (5.1) | 3) |
営業利益 | 1,314 | 1,465 | (10.3) | |
輸送用タイヤおよび物流事業部門 | ||||
売上高 | 5,852 | 5,946 | (1.6) | 4) |
営業利益 | 513 | 483 | 6.2 |
要因
1) 全社売上高
-2018年12月期の売上高は前年比0.3%増の22,028百万ユーロ。販売本数の伸びにより195百万ユーロの増収、またFennerの買収およびTCiの連結解除により267百万ユーロの増収。さらに価格ミックスの影響で444百万ユーロの増収、為替差損により838百万ユーロの減収となった。
2) 営業利益
-2018年12月期の営業利益は前年比1.2%増の2,775百万ユーロ。好調の要因はFennerの買収、販売量の増加、価格攻勢、連結範囲の拡大など。また、原材料費の上昇により一部相殺された。
3) 自動車用タイヤ事業部門
-2018年12月期の自動車用タイヤ部門および物流事業の売上高は、前年比5.1%減の11,340百万ユーロ。TCiの連結除外および為替差損により、売上高が減少した。
4) 輸送用タイヤ事業部門
-2018年12月期の輸送用タイヤ事業部門および関連物流事業の売上高は、前年比1.6%減の5,852百万ユーロ。為替差損の影響により売上高が減少した。
事業再編
-16インチ以下の高級タイヤの需要が減少し、アジア製の低価格タイヤの需要が高まっていることを受け、英国Dundee工場が深刻な困難に直面していると発表した。同工場は市場の変化に不適当であり、工場転換も経済的に不可能であるとし、Michelin Group は2020年中頃までにDundee工場を閉鎖する意向を表明した。現在の優先事項は同工場の845名の従業員への効果的支援であるとしている。また、同社のトラックタイヤ再生事業ならびに英国におけるすべての製品およびサービスの販売、流通は継続される予定。(2018年11月5日付プレスリリースより)
合弁事業
-同社とインドネシアのChandra Asri Petrochemicalの合弁会社であるSynthetic Rubber Indonesia (SRI) は、インドネシア初となる合成ゴム工場をバンテン州Cilegonに開設した。新工場では、ポリブタジエンラバーと溶液重合スチレンブタジエンゴムを主に輸出向けに生産する。年産能力は12万トン。Chandra Petrochemicalから石油化学原料を調達し、製品の合成ゴムはMichelinのフランス、ドイツ、スペイン、米国にある工場などに輸出する。Cilegonの新工場は、フランス、米国に続くMichelinの3番目の合成ゴム工場。(2018年11月29日付 Republikaより)
-CFAOと提携してケニアとウガンダで高級タイヤを販売することに合意したと発表した。両社は合弁会社を設立し、CFAOが51%、同社が49%の株式を保有する。新会社は人口9,000万人超の2カ国で乗用車、小型トラック、重工車、二輪車、土木・農業用車両向けタイヤを販売する。Michelinは好調な経済成長を遂げる両国で市場を開拓し、高品質な製品とサービスの提供に注力するという。(2018年3月21日付プレスリリースより)
-Mobiviaとの協業により自動車サービスのA.T.U(Auto-Teile-Unger)の事業展開を支援すると発表した。A.T.Uは1985年設立、ドイツ最大のネットワークを有するオートセンター。ドイツ577カ所のほか、オーストリア25カ所、スイス6カ所でも事業を展開する。A.T.Uは2016年12月にMobiviaグループ傘下に入っており、以降MobiviaはNorauto、Midas、Carter-Cashなどマルチブランドのサービス強化を図っている。Mobiviaは2,030店を超えるワークショップと小売店を有する企業で、従業員数は20,000人超、年間売上高は27億ユーロ規模。(2018年2月12日付プレスリリースより)
最近の動向
-各種報道は、同社がブラジルItatiaia工場で高性能タイヤ「Primacy 4」の生産を開始したと報じた。生産するタイヤサイズは15インチと17インチで、濡れた路面状況で30%の耐久性とグリップ性を向上するという。同社は水の流出スペースを22%増加し、グリップに大きな利点をもたらす新タイヤ用のパターンを開発した。「Primacy 4」は、当初はアフターマーケット向けとして供給される。また、今後は自動車メーカーの標準装備用タイヤとしての供給も目指すとしている。(2018年10月11日付各種報道より)
-10百万ドルを投資して、メキシコ中部Queretaroに新拠点を開設すると発表した。同社は、近隣州Guanajuatoでも、510百万ドルを投資して高性能車やトラック向けのタイヤ工場を建設中。メキシコ中部には、Michelinの潜在顧客であるOEMメーカーの工場が18ある。(2018年1月2日付 Mexico-Nowより)
業務提携
-アルゼンチン国内の120カ所の販売代理店でMonroeおよびFric-Rotブランドのショックアブソーバーとサスペンション部品を独占的に販売する契約を締結したと発表した。Tennecoが保有する2ブランドは、自動車メーカーとアフターマーケット市場の両方に販売している。アルゼンチン国内ではFric-RotがFric-RotとMonroeブランドのショックアブソーバーやWalkerの排気システムを供給している。製品ラインナップは、ライトビークル向けのFric-RotおよびMonroe、オフロード車両向けのRanchとAdventure & Monroe Dakar、ハイエンド輸入車向けのMonroe ReflexとOspectrum、大型車両向けのMonroe Magnumなどがある。ショックアブソーバー部品はRosario工場で、排気システム製品はSan Martin工場で製造している。(2018年5月18日付各種報道より)
受注
-同社は、同社はタイに6工場を持ち、生産能力の内訳は乗用車・ピックアップが45%、トラック35%、航空機10%、2輪車10%で、年間投資額は100百万ユーロ以上。タイのマーケットシェアは30%だが、年率8%の成長により、5年以内にアセアン地域におけるシェア20%の獲得を目指す。同社はOEM市場でのシェア拡大を視野に、トヨタの新型「Altis」向けタイヤの製造をまもなく開始し、トヨタ「Camry」、ホンダ「Accord」、BMW「3シリーズ」「5シリーズ」、Mercedes-Benz「E-Class」「C-Class」向けに新製品を投入。(2018年8月16日付 Thansettakijより)
2019年12月期の見通し
-2019年12月期は、各市場の成長幅に応じて販売量が拡大すると期待。営業利益は為替レート変動による影響を除き2018年12月期実績と同水準またはそれ以上になると予測している。
研究開発費 |
(単位:百万ユーロ) |
2018年12月期 | 2017年12月期 | 2016年12月期 | |
合計 | 648 | 641 | 718 |
研究開発体制
-2018年12月期、研究開発人員は約6,000名。
-同社の研究開発戦略として下記3分野に焦点を当てている。
- 未来の車両: 燃料電池や自律走行車プロジェクトなど
- 未来のモビリティ: 高度道路交通システム (ITS) や相乗り、カーシェアリングなど、新たな利用トレンド支援とタイヤソリューションの統合
- 都市部のモビリティ改革
研究開発拠点
- リサーチセンター: Ladoux (フランス)、群馬県太田市 (日本)、Greenville (米国)
- 試験場: Almeria (スペイン)
製品開発
小型トラック用タイヤ「CrossClimate Agilis」
-2018年、同社は小型トラック用タイヤ「Michelin CrossClimate Agilis」を投入した。「CrossClimate Agilis」は、新型ゴムコンパウンド、あらゆる路面状況でのグリップを強化したトレッドパターン、EverGrip自己再生トレッド技術など、デザイン全体にわたる高度な技術を特徴としている。高性能が認められたことにより、「CrossClimate Agilis」の売上は予想を上回った。
中距離輸送向けタイヤ「X Multi Energy」
-耐久性と燃費性能に優れた中距離輸送向け新タイヤ「X Multi Energy」を発表した。「X Multi」は、「X Multiway 3D」の後継シリーズで、新タイヤには、同社の3つの最新技術「Infinicoil」、「Regenion」、「Powercoil」が採用されているという。(2018年4月10日付プレスリリースより)
特許
-2018年12月末時点、2,000件以上の特許を保有している。
設備投資費 |
(単位:百万ユーロ) |
2018年12月期 | 2017年12月期 | |
自動車用タイヤおよび物流事業 | 879 | 1,024 |
輸送用タイヤおよび物流事業 | 440 | 461 |
特殊事業および物流事業 | 349 | 286 |
合計 | 1,668 | 1,771 |
-2018年12月期の設備投資プロジェクトは以下の通り。
- 生産能力拡大、生産性向上、自動車用タイヤ製品ラインナップの刷新 (メキシコLeon、フランスRoanne、中国瀋陽、セルビアPirot、タイLaem Chabang)。
- 生産能力拡大、生産性向上、輸送用タイヤ製品ラインナップの刷新 (ルーマニア、タイ、ポーランド、インド)。
-同社の設備投資戦略は、その買収戦略と合わせて、以下の目的を達成するよう設計されている:
- 北米、アジア市場の高級乗用車および小型トラック用タイヤセグメントを含む急成長市場における生産能力増強
- 製品開発の維持およびの競争力改善のための成熟市場における工場調整
- サプライチェーン情報システムと物流拠点の最適化
- デジタルサービスの開発
- 流通チャンネルの拡張
- 原材料およびハイテク半製品のプロジェクト推進
-2018年は3つの新工場での生産能力拡大。2020年までに下記3工場の合計年間生産量は400,000トンに達する見通し。
- Itatiaia (ブラジル) 乗用車・小型トラックタイヤ
- Chennai (インド) トラックタイヤ
- 瀋陽第2工場 (中国) 現地での乗用車・トラックタイヤ生産能力の大幅な拡充
-2020年までに主要な乗用車・トラックタイヤ工場の年間生産能力を平均96,000トンに引き上げる見通し。
海外投資
<メキシコ>
-2018年、メキシコLeonで乗用車および小型トラック用タイヤ工場の操業を開始した。同工場は年間500万本のタイヤを生産するよう設計されており、2023年までに最大生産能力に達する見込み。
<タイ>
-同社グループ傘下のMichelin Siam GroupがBFGoodrichブランドのタイヤ生産を米国からタイChonburi県Laem Chabang工場に移管すると報じた。Laem Chabang工場では2019年1月から生産開始を予定し、特に人気のある「BFGoodrich All-Terrain T/A KO2」を現地販売のみでなく、アフリカ、中東、アジア・オセアニア市場への輸出も予定する。同工場ではGM、いすゞ、マツダ、トヨタなどに製品を供給する見込み。(2018年12月26日付 Thansettakijより)