Robert Bosch GmbH 2006年度の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万ユーロ)
*2006
年度
*2005
年度
増減率
(%)
要因、背景
グループ全体
売上高 43,684 41,461 5.4% (1)
営業利益 2,416 2,493 (3.1%) (2)
自動車技術部門
売上高 27,220 26,313 3.4% (3)

*2005年度、2006年度はIFRS基準による。非継続事業を含まず。

(1).
-2006年度の売上は5.4%伸びて、437億ユーロとなり、グループの当初目標を達成。為替レートによる影響はほぼ無し。新規に連結された事業の影響も1%ポイント以下。
‐アジア太平洋地域では、経済成長に乗り12%の伸び。2006年度の売上増の約3分の1がこの地域の増による。北米及び南米では、2005年度が11%の増であったのに対し、主に米国自動車メーカーの不調により6%の増に留まった。欧州では、東欧で14%伸び、全体では3.8%の伸びであった。
‐消費財及び建設技術部門は、ここ数年大幅増が続いている。産業技術分野もこれに続いており、自動車技術部門の低い伸びを補完している形。消費財及び建設技術部門の売上はほぼ11%の伸びで110億ユーロに達し、グループ全体の売上の25%となった。
‐産業技術部門の売上は、55億ユーロ。主にブレーキディスク事業の自動車技術部門への移管により、最終的な対前年伸び率は5.1%に留まったが、これを除けば7.1%の伸びであった。

(2)
-営業利益は、前年の25億ユーロから、24億ユーロに減少。これは、自動車技術部門の営業利益の減少に加え、研究開発費が前年に続き更に増加し、対売上高比7.7%の33億ユーロと言うハイレベルになったことによる。購買価格の引き下げ、及び保証費の減少があったが、上記減益要因を全て補填するには至らなかった。
‐同社の3部門で収益に大きな開きが出た。自動車技術部門の営業利益は11億ユーロで、売上の4.0%に留まった。価格値下げ圧力が強く、約3.5%の値下げ、一方原材料の大幅なコストアップが収益圧迫要因となった。北米での主要納入先の生産減による工場稼働率の低下により更に悪化。
‐自動車技術部門のエネルギー及び車体システム分野では、85百万ユーロの不良資産償却が発生。近年の高いレベルの資本投下により資産工場設備の償却費も増加、更に収益を圧迫した。従来型のユニットインジェクターの段階的廃止とその供給義務に関連し引当金も計上。コスト削減、生産性の向上、保証費の減少と言った対策では吸収仕切れなかった。
‐産業技術部門では、営業利益は改善し、ほぼ430百万ユーロ、売上高比は7.8%となった。
‐消費財及び建設技術部門では、営業利益は900百万ユーロ、売上高比は8.2%に改善した。

(3)
‐自動車技術部門の売上は、産業技術部門から移管されたブレーキディスク事業を含めて、272億ユーロ、対前年3.4%の伸び。2006年度当初は好調だったが、下半期に欧米、特にアメリカの主要自動車メーカーの悪化の影響が強くなった。
‐更に好調を維持していた欧州のディーゼル市場が減速、主要顧客が従来型のユニットインジェクションからコモンレールにここ数年中に移行することを決定したこと(将来的には、はるかに影響が大きい)が更に追い討ちを掛けた。2006年度にはこの影響を受け初め、コモンレールシステムの市場競争は更に激しくなった。2006年度自動車技術分野で同社は約3.5%の価格値下げを行わざるを得ない結果となった。
‐環境問題、燃費改善の更なる要請、二酸化炭素排ガス規制の高まりを受けて、同社は、同社のディーゼル及びガソリン直噴システムの今後は更に明るいと見ている。これは欧州、アジア太平洋、及び米州全てに当てはまる。
‐このディーゼルのポートフォリオを完璧にするため、同社はDensoとデイーゼル粉塵用フィルターの合弁会社を設立。2009年から、コーディエライト・セラミックスをベースとした高性能で費用効率の高いディーゼル粉塵フィルターの協同生産を立ち上げ、販売は別個に行っていく計画。
‐2006年度、同社は自動車部品メーカーとしてナンバーワンの地位を維持、ガソリンエンジンのインジェクター、ABS&ESPブレーキ技術、自動車用エレクトロニクス、及びステアリングシステム等が貢献した。

受注
‐2006年3月、同社は、Mercedes-Benzの新型CLS 350 CGIに、スプレーガイデッド燃焼プロセスとして知られる新しいガソリン直噴技術を供給すると発表した。この新しいガソリン燃費向上技術では、非常にすばやく切り替わるピエゾインジェクターが大きな特徴となっている。燃焼室に噴霧した燃料が非常に細かい霧状になるので、燃料室内で混ぜ合わせることなく直ちに点火できる--これを専門家はスプレーガイデッド成層燃焼と呼ぶ。同社によると、ピエゾ式インジェクターを使ったガソリン直噴は、現状のポート燃料噴射方式と比べて燃費が15%向上するという。この仕様のために同社では、第2世代DI-Motronicを開発した。これはピエゾシステムのように最高200バーの噴射圧を供給するがソレノイド制御インジェクションバルブと同等の信頼性を確保できる。

‐2006年10月、同社はGMの主催する3日間のフォーラムTechWorldに於いて、GMよりブレーキ・コーナー・モジュールを受注した。 同社は、2007年型Saturn Outlook及びGMC Acadiaに採用されるGMの新しい中型車の汎用アーキテクチャーから、ツインピストン、鋳鉄キャリパー及びローターを供給する。

合弁会社
-2006年10月、同社及びDENSOは、東欧でディーゼル・パーティキュレート用のフィルターを開発・製造するため、50:50の合弁会社を設立することに合意した。この合弁会社は2007年初めに設立する計画である。 2009年以降、両社とも高性能でコスト効率の高いコージライトを原料とするディーゼル・パーティキュレート・フィルター(DPF)を生産し、それぞれ別個に販売する予定だった。自動車に対するEuro5の排気規制の導入により、両社はパーティキュレート・フィルターが欧州のすべてのディーゼルエンジン搭載の新車に標準装着となると期待、またパーティキュレート・フィルターの市場が大きく拡大すると予想。 PDFは、ディーゼル・システム部品としては必須であり、両社のディーゼル・システム技術を合せて、競合力のあるコージライトのPDFを開発・市場化することを計画するに至った。他の材料によりPDFに比べ、コージライトのPDFは軽量で排気ガス圧の低下が少なく、高いエンジン性能と効率的な浄化が可能。DENSOは2003年よりコージライトのPDFを生産・供給しており、その技術と経験が合弁会社にも生かされる。

企業買収
‐ 同社とMANN+HUMMELは、2006年4月1日付でArvinMeritorから北米のPurolatorフィルター事業を買収した。この事業は同日から両社の50:50の合弁会社として継続される。買収は全てのPurolatorのオイル、エアー、フューエル、キャビンフィルターが対象。同社の従業員数は約1,000名。ノースカロライナ州Fayettevilleで、OE用、アフターマーケット用双方のフィルターを製造し、ユタ州Salt Lake Cityに小型の配送センターを有する。主な販売先は北米市場。2005年の売上は267百万米ドル。この事業買収は関連当局の承認を必要とする。

‐2006年10月、同社は、オーストラリアのMelbourneにあるPacifica Group Ltd.の公開買い付けを行う意向を表明した。Pacificaの株主に一株当たり1.92豪ドルを提示する。Pacifica Groupの主な株主は機関投資家である。このオファーは、Pacificaの現在の純負債額を含め、総計約300百万ユーロ(約495百万豪ドル)となる見込み。一株あたり1.92豪ドルは2006年8月29日からの加重平均価格である1.57豪ドルから見ると、22%のプレミアムが乗っていることになる。この買収は独占禁止に係わる関係当局の承認を含めて多くの条件が残されている。このほか、同社が50%以上のPacificaの発行済み株式を取得できるかに掛かっている。この買い付けの意向はオーストラリアの安全及び投資に係わる委員会に2週間以内に送付されると予想されている。

事業売却
‐2006年12月、同社及びトヨタ自動車とアイシン・エィ・ダブリュ(AW)は、同社とAWが折半出資するCVT用ベルトの生産会社、シーヴイテックについて、同社が保有する全株(30,000株)を、トヨタ自動車とAWが取得すると発表した。合弁解消により、AWはシーヴイテックを子会社化する。シーヴイテックの出資比率は、AWが66.6%、トヨタが33.4%となる。

環境活動
<環境保護でコストも削減>
‐環境保護のために低コストのソリューションを多く提供。例えばディーゼルエンジン用排ガス対策では、同社の第2世代NOx除去測定システムDenoxtronicは、商用車の排気ガスを抑制し、燃費を向上させ、2008年より発行するEuro5規制に適合することができる。SCR(Selective Catalytic Reduction: 選択的触媒還元)と共に用いれば、NOx排出を最大85%削減できる。
‐同社のDenoxtronicは、従来型に対し、燃費を5%下げることが可能。ディーゼル粉塵は最大で40%削減できる。これにより物流会社では、Euro5発効以前にEuro5に適合した最新の商用車に入れ替えることが無理なく議論できるようになったと言えよう。ドイツでは、Euro5適合トラックは、1キロメートルあたり2セントの道路使用料の割引を受けることができる。これは、保有のトラックが年間に台あたりハイウエイを100,000キロ走る物流会社であれば、年間に台あたり2,000ユーロの経費節減となる。更に、燃費も改善されているので、台あたり年間更に約2,300ユーロ節減ができる。

<資源保全のためのリサイクリング>
‐昨今、自動車メーカーにとり部品のリサイクリングは重要になりつつある。ドライバーにとっても、新品の部品を買うより安く、補修コストが車両の現在価値に見合った物となる。同時に、これは環境を保護し、資源を保全するのに役立つ。グローバルに資材の消費を14百万トン、エネルギーの消費を350億キロワット節減できる。同社は、この自動車部品のリサイクリングの大手企業の一つであり、2006年度世界中の10拠点で約160万個の自動車のリサイクリング部品を生産している。Bosch Exchangeと名付けられたこのプログラムで、ガソリン及びディーゼルインジェクション製品、ブレーキ部品、スターター、オルタネーター をリサイクル部品として生産している。

<2次部品メーカーにおける環境保護>
‐同社は、同社へのサプライヤーにも厳格な基準を設置、品質と環境に優しいソリューションを重視することを購買ガイドラインの中に定めている。サプライヤー選定に当たり、資源の有効利用とミニマムな社会規範を守っていることを重視している。ILOのコアとなる労働基準を守っていない会社とは取引をしない。これらは, 最近同社がサプライヤーと取り決めた契約の新しいフレームワークの骨子となっており、サプライヤーとプロセスの評価に於いてはこれらの原則を守っているかが監査される様になっている。同社は、労働者の安全と環境保護に関しサプライヤーの工場を査察する。遅くても2008年度までには約200社の優先サプライヤーが環境マネジメントシステムの認証を取得することを期待している。

<環境に関する受賞>
‐環境保護、資源保全に関し、World Wildlife Fund (世界自然保護基金)のドイツ支部及びCapital誌は、2006年11月ベルリンで同社に2006年度Eco‐Manager of the Year賞を贈った。同グループの環境保全に対する顕著で革新技術を持ったコミットメントに対するもので、自動車業界での受賞は初めて。同社を初めとする自動車業界の環境に対するコミットメントが評価された。

展望
‐2007年度は、前年が予想外に好調だったのに対し、アジアの成長市場は他地域よりは成長が早いにしても、全世界的に成長のモメンタムがやや失われると考えている。世界の株式市場は修正局面に入るものの、大きな下落の危険性は少ないと考えている。原材料価格は高止まりし、グローバリゼーションは継続、投資は高いレベルを維持し、当面雇用も多くの国で増加している。
‐収支の地域格差、国際的な金の流れにおける大きな偏りと、アジアの主要通貨が明らかに過小評価されているところにリスクがあるが、同社はこれらのリスクは国際的な協調が更に進むことにより限定的なものになると考えている。
‐世界の自動車生産は、経済新興国が引き続き牽引し、2007年度も比較的高い3%と言う成長を維持する。主にアジアの自動車メーカーのプレッシャーにより、北米の主要自動車メーカーは、更なる生産減と、生産能力縮小を余儀なくされる。
‐一方欧州の生産は、2006年度に続き2~3%の増加し、特に中東欧に成長の焦点が当てられる。乗用車の二酸化炭素排気規制の強化が発表されており、この点がリスクになって、販売の車両ミックスにも影響を与える可能性がある。
‐こういった中、2007年度同社は、これ以上大幅なユーロ高とならないと言う前提の下、グループの継続事業の売上で2006年度並みの成長を目標としている。特に消費財及び産業技術の分野で、2007年度初が引き続き好調であることから、目標達成のための条件は整っていると考えており、年後半には自動車技術分野でも、特に欧州の主要顧客が回復し始めており、大幅な成長を期待している。特に、二酸化炭素排ガス規制強化の観点からも、欧州のみならず、乗用車のディーゼルの市場シェアが引き続き高まると予想している。
‐低価格化へのプレッシャーは依然衰えず、売上増へのブレーキとなると考えられる。この影響を排除するため、同社はあらゆる分野でコスト削減の努力を続けなければならないが、同社は2007年度にグループの前年並み利益を確保し、更に2008年度以降にはこれを改善して行くことに自信を持っている。同社は世界の主要市場で更なる成長のために投資し、継続的に革新技術を保持し続け、グローバルに雇用を安定確保して行くことができると考えている。

開発動向

研究開発費
(単位:百万ユーロ) *2006年度 *2005年度 *2004年度 2003年度 2002年度
R&D費用
3,348 3,073 2,715 2,650 2,487
売上高に対する割合(%) 7.7 7.4 7.0 7.3 7.1

*2004年度、2005年度、2006年度はIFRS基準、それ以前はドイツ会計基準による。

‐2006年度同社は、売上の7.7%に当たる33億ユーロを研究・開発に投資。グローバルに3,000以上の特許を登記。
-自動車技術部門での研究開発費は、2005年度の25億ユーロ(部門売上の9.6%)に対し、2006年度は27億ユーロ(部門売上の10.1%)。

研究開発体制
‐グローバルに25,000人を越える研究開発員がおり、先進技術の開発に取り組む。うち1,300人は全社的研究及び先進技術部門に属する。
‐グローバルな技術動向にいち早く対応するため、同社は欧州のみならず米国、日本、及び中国でも採用活動を展開。一方ドイツには16,200人の研究開発者がおり、現在でもキーとなる研究開発センターとなっている。

‐2006年10月、同社は日系自動車メーカーの開発支援業務の強化に向けてエンジニアリングサービス会社を11月1日付で設立すると発表した。日系自動車メーカーの海外展開や派生モデル投入、研究プロジェクトの活発化に伴い、需要の増加した電子制御システムなどの開発支援への対応が狙い。こうしたサービス体制を生かして、部品の拡販に結びつける。新会社は「日本ボッシュエンジニアリングサービス(BEG)」の名称で、資本金は1億円、同社が全額出資する。当初の従業員数は16人。自動車部品の開発やアプリケーション(適合)開発を請け負う。売上高は2007年度に6億円、2009年度に12億円を計画している。

新製品開発
<多様化の進展>
-ディーゼル車の需要は、引き続き堅調。欧州では新車登録の半分がディーゼルエンジン車。高トルク、低燃費で選ばれている。これは同社が先行開発し、今後も改良し続けているハイプレッシャーの直噴技術に負う所が大きい。2006年度には、乗用車用コモンレールシステムの最高直噴プレッシャーを1,600バールから1,800バールに増加させ、2007年度には更に2,000バールに引き上げる計画。商用車生産メーカーもコモンレール技術を採用するところが増加してきている。
‐同社は、米国及びアジアでもディーゼルインジェクションシステムの市場は明るいと見ている。ここ数年のうちに、北米の自動車メーカーはディーゼル車を市場に提供し、消費者はディーゼルエンジンの優位性を理解すると考えている。2006年度には、米国では小型車でディーゼルエンジンを搭載する車はハイブリッド車の3倍ある。インドでは同社はコモンレールシステムのインジェクションポンプ及びインジェクターの生産を開始、今後同地で投資を強化して行く方針である。

<次世代高出力ガソリンエンジン>
‐同社は、欧州でも今後数年ガソリンエンジンがディーゼルの代替として残ると見ている。ターボチャージャー、及び直噴と言う効率的なディーゼルを生み出した、その同じ技術を採用。幾つかの自動車メーカーは、既にそういったエンジンの生産を開始し、同社はそれらにインジェクション技術使った部品を納入している。パワーを生み出すのに大きな排気量を必要としたこれまでのエンジンと比べ、これらの新モデルは燃費を改善し、二酸化炭素の排出量を約15%減少させる。ある自動車会社と協力し、噴射ガイドつきの非常に効率の良い省燃費のシステムを初めて実用化。同社の圧電点火システムを使ったインジェクションバルブの採用がキーとなって、このガソリンエンジンの技術革新がもたらされた。

<ハイブリッドの実用化>
‐ガソリン、ディーゼルに次ぐ第3の動力システムはハイブリッド。電動モーターが内燃機関エンジンを補完する。同社は、約250人の専任からなるプロジェクトを保有。2006年度、幾つかのハイブリッド車向けにキーとなる部品の開発と製造を受注した。欧州の新基準に基づけば、同等の走行でガソリンエンジンに比べ最大25%燃費が改善する。2008年度に生産開始を予定している。

<安全及び快適性>
‐同社のアクティブナイトビジョンシステムは2005年末に生産開始。人間の目には見えない赤外線ヘッドライトで道路を照らす。同時に赤外線カメラが150メートル以上先の障害物を察知し、ダッシュボードに表示する。現在このシステムは上級車にオプション設定されているが、普及しつつある。将来は、駐車にも利用することができる。2006年末には、同社は駐車の空きスペース測定システムの生産を開始した。近い将来、自動操縦することのできる、このシステムの強化バージョンの生産を開始する予定。同社の超音波による駐車アシストのシステムであるParkpilotについても改良を進めている。車内電子システムをネットワークすることにより、安全性の最大限の確保を追求している。同社は、車両の外部状況認識システムと、能動的/受動的安全システム、及び車内コミュニケーションシステムを一体化させた安全システム・モジュールであるCAPS(Combined active & Passive Safty)の開発に力を入れている。
‐2006年度には、この一環として、同社の安全予知システムの第2世代が生産開始された。レーダーに基づくACC(Active Cruise Control)装置が危険を察知し、それに一定時間内でドライバーが反応しないと、システムがブレーキを瞬間急作動させ、危険をドライバーに知らせる。このほかCAPS機能の一つとして、転倒予知システムを改良し、これも2006年度に生産開始した。車両転倒事故の際に、エアバッグをより早く確実に機能させ、またシートベルトのプリテンショナーを作動させることができる。

-2006年6月、同社はコネクティング・プランジャーで84%のコストダウンを達成したと発表した。素材としてRyton PPSを使うことにより、これまで付加していた33gのスチール部品が不要になり、重量も78%減の7gとすることが出来た。 同社は、SUV車のバキューム・ブレーキ・ブースターのコネクティング・プランジャーを設計するに当たり、プラスティックの成形が有利と判断。精密鋳造スティールは機械加工の後処理が多く必要であり、コストが掛かる。同社はChevron Phillips Chemical Company LP(Chevron Phillips Chemical)の、高度工業用プラスティックであるRytonポリフェニレン・サルファイド樹脂 (PPS)を用いることにより、コネクティング・プランジャーの重量とコストを削減した。同社のバキューム・ブースターのコネクティングプランジャーは、油圧ブレーキ・システムに於いて、ブレーキの踏力を増幅する。このため、ドライバーはあまり力を入れなくても車を安全に停止させることが出来る。

‐2006年7月、同グループは、ESC(横滑り防止装置)を始めブレーキ系を利用した走行制御システムのバリエーション展開を本格化すると発表。2006年中には、油圧の作動力、応答性を高めて制御の応用範囲を広げた最上級タイプのESCユニット及び、スモールカー向けにコストを抑えたABSユニットをそれぞれ投入する。さらに、ESCには2009年までをめどにハイブリッド車専用タイプやほかの走行制御機構の協調制御の効果を最大限に引き出すタイプを設定する。仕様を細分化することでモデルごとに異なる性能とコストの最適化を図り、拡販に結びつける。

‐ディーゼルエンジン(DE)車のクリーン性能の高度化に向け、排ガス後処理装置の量産体制整備が急ピッチで進んでいる(2006年10月)。DE車は近い将来、ガソリンエンジン同様の排ガス性能確保が不可欠とされ、これには後処理装置の進化が重要。同グループは、尿素を添加してNOX浄化を図る「尿素SCR触媒システム」について、来年から乗用車用の供給を開始する。また、デンソーと独ボッシュ・グループは、PMの浄化装置であるDPF(ディーゼル微粒子除去フィルター)事業で協力する。デンソーとロバートボッシュの折半出資で開発・生産合弁会社を2007年初めに設立、2009年から生産を開始する。欧州で2008年中に施行が見込まれる次期排ガス規制「ユーロ5」をにらみ、燃料噴射系大手の2社がノウハウを共同活用する。

開発提携
-2006年1月、同社とKnorr Bremseは、運転補助システム分野で提携すると発表した。第1段階では、同社がアダプティブクルーズコントロール(ACC)の部品及びソフトウェアとそれぞれについてのノウハウをKnorr Bremseに提供する。Knorr Bremseは、エアブレーキ搭載の商用車用にシステムを適合開発し、OEM、アフターマーケット、補修部品用として「Bendix」「Knorr Bremse」ブランドで世界に販売する。同社は2000年以降、ACCを乗用車用として実用化している。Knorr Bremseでは、同社がもつノウハウや部品を使い商用車用の予防安全システムPSS(Predictive Safety Systems)の開発、生産、販売を行う計画。

‐2006年6月、同社及びGetragはハイブリッド・システムに付き、共同で取り組むことに合意した。この合意は、パラレル・ハイブリッド・システムのデュアル・クラッチ・トランスミッションとエレクトリカル・ファイナル・ドライブ・ユニットに関連する部分の開発及びマーケティングをカバーするものである。

‐2006年6月、同グループは、変速機メーカーの独ゲトラグ社とハイブリッドシステムの開発協力について合意したと発表した。手動変速装置(MT)と同等以上の伝達効率を確保可能な次世代変速機構「デュアルクラッチ・トランスミッション」にモーターなどを組み合わせたシステムで、モーターと内燃機関を駆動に併用する「パラレル式」とする。二つの省燃費技術の相乗効果を引き出す統合制御手法の確立を目指し、共同開発を展開する。パラレル式ハイブリッドのトルクコントロール機構としては、トヨタ自動車が「プリウス」で遊星歯車を活用したシステムなどを実用化している。ボッシュとゲトラグの新システムが新たなハイブリッド機構として浸透するかが注目される。

‐2006年10月、デンソーは同社とディーゼル車の排ガス後処理装置であるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の合弁開発・生産会社を東欧に折半出資で設立することについて合意したと発表した。設立は2007年初頭、2009年にコージェライト製DPFの生産を開始する予定。欧州では2008年中に施行が見込まれる次期排ガス規制「ユーロ5」に伴い、PM(粒子状物質)を浄化するDPFの新車装着が事実上、標準化する見通し。燃料噴射装置を始めとしたディーゼルエンジン用ユニットの世界大手である両社は、早期にDPFの性能、コストを両立するためにアライアンスを結び、技術、生産ノウハウを共同活用する。

設備投資

設備投資費用

(単位:百万ユーロ) *2006年度 *2005年度 *2004年度 2003年度

設備投資費用

2,670 2,923 2,377 2,028

*2004年度、2005年度、2006年度はIFRS基準、それ以前はドイツ会計基準による。

‐同社は2006年度、資産、工場、設備に売上高比6.1%に当たる約27億ユーロを投資、23億ユーロの減価償却を大幅に上回っている。
‐この設備投資費用中、約4分の3が、2006年度も自動車技術部門に投資された。主な投資先は、コモンレールのディーゼルインジェクションシステムの能力拡張、半導体及びセンサー、ガソリンインジェクションシステム、及びBosch Rexrothの油圧技術製造。
‐世界の主要成長地域での事業拡張のため、同社はアジアに約450百万ユーロ、東欧に約400百万ユーロを投資。また現在でも総投資額の約40%に当たる10億ユーロはドイツの工場に投資されている。
‐同社は、2007年度及び2008年度も同規模の投資を計画している。主要投資の一つとしては、Retlingenでの8インチ半導体生産工場の建設があげられる。Reutlingenには同社は、総計550百万ユーロの投資を行う。
‐2007年度及び2008年度の主要投資は、引き続き自動車技術分野となる。世界の3地域への投資配分にも大きな変化はない。

国内投資
‐2006年6月、同グループは、Stuttgart近郊にあるReutlingenの自社工場敷地に、200mm(8インチ)の半導体生産用の新設備を、約550百万ユーロを投資して建設する。建設は2007年秋に始まり、2009年中ごろに生産開始を予定している。日産最大1,000のシリコン・ウエハー生産能力を持ち、これは日産最大マイクロチップ百万個の生産量にあたる。同社は、10年間に亘り150mm(6インチ)の半導体をReutlingeで既に生産している。したがって、ここには既に十分な専門技能と、インフラを持っている。 Reutlinge製の半導体とマイクロチップは、まず第一に自動車産業向けであり、例えば、ABS, ESP, エアバッグなどの電子系安全システム、電子エンジン制御の燃焼効率の良いエンジン、あるいはドライバー・サポート・システムなどの制御用の部品に使用される。

海外投資
<インド>
‐2006年6月、同グループはインドでのプレゼンスを更に拡大すると発表。既存のBangaloreのサイトに、同社にとってインドで初めてのコモンレールの高圧ポンプの製造設備を開設した。この新しい設備は同社の2005年から2008年における約325百万ユーロに上るインドへの資本投資計画の一貫。ディーゼル関係の生産の開始・拡張のために約100百万ユーロの投資が予算計上された。この生産ラインは最大日産1,000個のコモンレールのポンプを生産する能力をもつ。同社はディーゼルシステム用インジェクター部品を2005年末よりNashik地区で生産してきたが、2007年Nashikで、コモンレールのインジェクターの生産を開始する計画である。

<中国>
-2006年度、同社は中国のスターターモーターとオルタネーターの生産能力を増強。