Brembo S.p.A. 2019年12月期の動向

業績

(単位: 百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 2,591.7 2,640.0 (1.8) 1)
営業利益 318.5 345.1 (7.7) -
部門別売上高
-乗用車用製品事業 1,943.3 2,018.4 (3.7) 2)
-商用車用製品事業 259.5 255.2 1.7 3)

 

要因

1) 売上高
-2019年12月期の売上高は、前年比1.8%減の2,591.7百万ユーロ。他事業で一部相殺したものの、乗用車用製品事業での売上減が主要因となり減収。また、Brembo Argentina S.A.の事業廃止に関連する数値の再分類によるマイナス影響も売上減に響いた。

2) 乗用車用製品事業
-2019年12月期の売上高は、前年比3.7%減の1,943.3百万ユーロ。自動車市場 (特に中国) における全体的な減速により減収となった。

3) 商用車用製品事業
-2019年12月期の売上高は、前年比1.7%増の259.5百万ユーロ。同社の主要市場である欧州での商用車登録数が2.5%増加したことが同部門の増収に寄与した。中大型商用車が0.9%減少した一方、小型商用車が2.8%増加した。

受注

-同社は直近数年で、ブレーキリングに鋳鉄を使用し、ディスクハットに薄型スチールラミネートに活用した軽量ブレーキディスクを開発した。軽量ブレーキディスクは最終的に標準ブレーキディスクから最大15%の軽量を達成した。軽量ディスクブレーキの開発に伴い、メルセデス・ベンツのSクラス、Eクラス、Cクラスモデルを含むMRAプラットフォームの全領域にブレーキディスクを供給するサプライヤーに選定された。メルセデス・ベンツは2020年に投入が開始されるMRAプラットフォーム下の次世代モデルに対しても同社の軽量ブレーキディスクを採用する。ディスクサイズやジオメトリーに数カ所の修正や最適化を行うことで、高性能車にも適用できる。

-2020年型シボレー新型「コルベット スティングレイ(Corvette Stingray)」にブレーキ部品が採用されたと発表した。同社はアルミニウム製の4ピストンキャリパー、銅を含まないノンアスベストオーガニック (NAO) 材のブレーキパッド、鋳鉄ディスク、電動パーキングブレーキ (EPB) を供給する。ブレーキキャリパーは19もしくは20インチに採用され4色から選択が可能。また、「コルベット スティングレイ」のZ51パフォーマンスパッケージには制動力を向上させたブレーキシステムが搭載される。そのほか、EPBは「コルベット」の歴史で第8世代となる当該車両で初採用となり、パーキングブレーキのペダル、レバー、ケーブルを不要にし、部品点数を削減する。(2019年7月26日付プレスリリースより)

研究開発拠点

-同社は、米国、メキシコ、ポーランド、インド、中国に研究開発拠点を保有している。

研究開発体制

-約10%の従業員は、研究開発部門に従事するエンジニアや製品の専門家。

研究開発活動

-同社は2019年度においても、ブレーキシステムによって快適性能を向上するパラメーターの特定および定量化を目的に、シミュレーション手法の開発と統合を継続して行った。また、システムの快適性とディスク流体力学に関連するシミュレーション手法についても注力している。

-鋳鉄ブレーキディスクについては、同社はディスクの軽量化、ディスクのジオメトリーの変更、ディスクの冷却・換気性能向上などの研究開発活動を行っている。

-将来のEV車両の要求に応えるためのブレーキディスクの形状、素材、技術、表面処理についての様々なソリューションの研究を継続して行っている。

-同社は、摩擦材に使用されるフェノール系バインダーの置き換えとなるセメントベース素材を研究するプロジェクトAFFIDAに参画している。現在プロジェクトは、試作開発および試験のフェーズにある。新素材は、従来素材の標準を満たす必要があるほか、環境負荷や粒子物質の排出を抑えることが求められる。セメントベースのバインダーは、揮発性有機化合物の排出抑制に寄与する。

-同社は2015年以来、ブレーキパッドの鉄製バックプレートを高性能複合材に置き換えるLIBRAプロジェクトを行っている。LIBRAブレーキパッドを製造するプレス機は2019年末に導入され、生産開始の準備を行っている。このプロジェクトは、2020年にLIBRAから得た技術をリアブレーキパッドに移管することを目的としている。

製品開発

分散機構付きブレーキバイワイヤーシステム
-同社は、分散機構に焦点を当てた新しいブレーキバイワイヤーシステムの開発を継続している。この機構では、各ホイールがそれぞれの電子機械式アクチュエーターを持ち、ブレーキフォースの創出と制御を行う。これにより、自動運転システムでの応用可能性を持ったより優れた車両ダイナミクス制御が可能になる。また、同社のブレーキバイワイヤーシステムなどの将来のブレーキシステムで高い性能を保証する、永久磁石をベースにしたブラシレスモーターを製造するために複数の企業グループと協業している。

摩擦材・複合材一体成型のブレーキパッド
-ブレーキパッド製造の新技術を開発したと発表した。同社は新たな機械とツールを導入し、摩擦材料と複合材料の一体成形により1ステップでブレーキパッドを製造する新手法を開発した。新しい生産設備が開発されて自動化が進み、製造時間が短縮された。この結果、最大60%の軽量化を達成し、キャリパーハウジングの腐食を防ぎ、熱伝導率を低下させる新型パッド生産を実現化したという。同社はこの製品によってあらゆる道路状況において駐車時および緊急ブレーキ時の安全性を高めることができるとしている。(2019年9月10日付プレスリリースより)

先進ブレーキキャリパー「Dyadema」
-先進ブレーキキャリパー「Dyadema」をフランクフルト・モーターショーに出展すると発表した。Dyademaは鋳造プロセスによって製造し、革新的な空冷技術を取り入れた革新的なモノブロック6ピストンアルミニウムキャリパー。キャリパーには先駆的な冷却ダクトが組み込まれており、ブレーキパッドの周りの空気の流れを増し、この換気によってキャリパーが低い温度で動作するため、高性能かつ安定した性能を発揮する。エアフローの増加により、標準のキャリパーと比較してブレーキ液の温度が最大15%低下し、システムは最大のブレーキ効率を維持できるという。(2019年9月10日付プレスリリースより)

設備投資

(単位: 百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
全社 247.3 285.6 356.2


-2019年12月期、同社は172.3百万ユーロを有形固定資産へ、38.1百万ユーロを無形資産へ、36.9百万ユーロをリース資産へ投じた。


-2019年12月期、同社の投資は主に欧州拠点に向けたものが主となった。特にイタリア、ポーランド、チェコへの投資が全投資に対して、それぞれ35.7%、20.0%、14.6%となった。その他の地域では、北米が16.9%、中国が8.5%となった。
 

海外投資

<中国>
-中国の南京にアルミブレーキキャリパーの生産拠点を開設したと発表した。ブレーキディスクを製造する既存拠点に隣接する広さ約40,000平方メートルの新工場は原材料の納入から完成品の出荷まで、全バリューチェーンが統合されている。100百万ユーロを投じた新工場では、中国で事業を展開する欧州、アジア、米州の顧客向けにアルミキャリパーとナックルを供給する予定。(2019年4月3日付プレスリリースより)