AB SKF 2019年12月期の動向
業績 |
(単位:百万スウェーデンクローナ) |
2019年12月期 | 2018年12月期 | 増減率(%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 86,013 | 85,713 | 0.4 | 1) |
営業利益 | 9,395 | 11,049 | (15.0) | 2) |
-自動車部門 | ||||
-売上高 | 24,416 | 25,009 | (2.4) | - |
-営業利益 | 731 | 1,584 | (53.9) | - |
要因
1) 全社売上高
-2019年12月期の売上高は、前年比0.4%増の86,013百万クローナ。スウェーデンクローナの為替変動により4.7%のプラス要因となったが、組織変更による2.3%のマイナス、および売上高減少による2.0%のマイナスの影響を受けた。北米、欧州での売上高は減少し、一方南米およびアジア太平洋地域、中東アフリカでは増加となった。
2) 全社営業利益
-2019年12月期の営業利益は、前年比15.0%減の9,395百万スウェーデンクローナ。営業利益は、売上高および生産の減少、インフレ、原材料価格の上昇及び企業売却の影響を受けた。
企業買収
-同社は、イスラエルHaifaに本拠を置き、人工知能(AI)ベースのメンテナンス予測ソフトウェアを開発するPresensoを買収する契約を締結したと発表した。PresensoのAI機能により、生産工場はこれまで検出が困難であった異常を自動的に検出し、データサイエンティストを雇用する必要なく対処することができ、SKFの回転装置の性能を強化するという。今回の買収は、当局の審査を経て2019年第4四半期に完了する見込み。(2019年10月7日付プレスリリースより)
研究開発費 |
(単位:百万スウェーデンクローナ) |
2019年12月期 | 2018年12月期 | 2017年12月期 | |
全社 | 2,691 | 2,591 | 2,395 |
売上に占める割合 (%) | 3.1 | 3.0 | 3.1 |
研究開発拠点
-テクニカルセンター15拠点を保有。
研究開発活動
-ポリマーケージ、転動部品などを再設計し、特殊な潤滑グリースを使用して電気自動車 (EV)の信頼性を高めるハイブリッドベアリングを開発したと発表した。放電については電気絶縁材料であるセラミックを使用することで課題に対応する。現在、セラミックを使用したEV用ベアリングは約5%程度だが、信頼性と長寿命化が認識されることにより変化しつつあるという。また、ベアリングが汚染または潤滑にさらされるアプリケーション向けのベアリング窒化処理を浸炭窒化することで別の解決策を探求している。浸炭窒化は表面の硬度を高め、その結果セラミックと同様に製品寿命を延ばす。さらにより高い速度と温度で安定した粘度を維持する特殊なグリースなど、EV市場の拡大に伴い必要なすべての特定条件に対処するためのより高度な方法も開発している。(2020年1月23日付プレスリリースより)
-従来比50%の電力損失を削減するギアボックス、減速ギア、ディファレンシャル用の低摩擦テーパーローラーベアリングの開発を発表した。同社は電気自動車(EV)用として、モーターで発生する速度、加速度、温度に耐えられるベアリングおよび関連するポリマーケージと潤滑剤を開発している。また、自動車メーカーが電力損失を減らすために、粘度の低いオイルと特殊な添加剤の開発に取り組んでいるため、同社はこれらの潤滑剤がベアリングに与える影響についても研究を行っている。解決策の一つとしてベアリングの浸炭窒化処理があり、この技術により汚染された環境や劣悪な潤滑剤にさらされるベアリングの寿命を延ばすことができるという。(2019年9月30日付プレスリリースより)
-欧州自動車メーカーとの協業で、バランスシャフトやカムシャフトでの摩擦から生じるエネルギーロスを大幅に削減する新型軸受パッケージを開発したと発表した。このパッケージにより、自動車メーカーはバランスシャフトにおいて、既存のジャーナル軸受からSKFの転がり軸受への置き換えが可能となり、パワートレインの摩擦を削減、CO2排出量を1%超減少させたほか、浸炭窒化熱処理により軸受を大型化させずに製品寿命を延長させた。他の自動車メーカーもカムシャフトにおいて、SKFの薄肉形玉軸受への置き換えを行い、欧州のCO2排出基準をクリアしたという。(2019年7月2日付プレスリリースより)
-電気自動車(EV)およびハイブリッド車用高速電気モーターに対応するセラミックボールベアリングを開発したと発表した。電気モーターは、インバーターと組み合わせることで高効率が保証されるが、表面の孔食や漏電などを引き起こす場合がある。セラミックボールは絶縁性があるため、従来のスチール製のものと取り換えることでそれらの問題を解決するという。セラミックボールは従来より40%密度が低く、最大10倍の平均余命を持つなどの利点があり、軽量で高硬度のため、さらなる効率化が期待できるとしている。また、セラミックボールは漏電に関する問題を完全には解決できないため、現在はセラミックボールを使用せずに電気的損傷に対処する方法も開発中。(2019年5月17日付プレスリリースより)
-最新電動パワートレインソリューションをフランスLyonで開催される32nd International Electric Vehicle Symposium (EVS 32)に出展すると発表した。同社はより速い速度、電気モーターによって発生する加速度と温度に対する耐久性に優れたベアリングおよびポリマーケージと、それらの条件下で有効性を維持することができる潤滑剤を公開する。また、電気モーターが高速で回転しているときに発生する、インバーターの高周波電圧スイッチングによる漏洩電流の影響を受けにくい絶縁ソリューションも発表予定。このほか、従来と比較して摩擦による動力損失を約50%削減するパワートレイン用低摩擦テーパーローラーベアリング(TRB)なども出展する。(2019年5月14日付プレスリリースより)
特許
-2019年、201件の先願特許を申請。
設備投資額 |
(単位:百万スウェーデンクローナ) |
2019年12月期 | 2018年12月期 | 2017年12月期 | |
全社 | 4,183 | 2,831 | 2,408 |
-自動車部門 | 647 | 527 | 632 |
-約450百万スウェーデンクローナを投じて、深溝球軸受の競争力強化を行っていると発表した。その中で約370百万スウェーデンクローナは、中国の新昌 (Xinchang) に新設される深溝玉軸受の工場に割り当てられている。この工場は2020年上半期に稼働開始となり、アジア圏での競争力を高める。また約50百万スウェーデンクローナは、イタリアのバーリ (Bari) 工場に投資され、自動化や生産ラインの柔軟化・効率化の促進に割り当てられる。この刷新工事は2020年下半期に完了する見込み。残りの30百万スウェーデンクローナは、同社のアジアと東欧の既存工場でのアップグレード工事に割り当てられている。なお、これら競争力向上の一環として、一部製品をバーリ工場からアジアや東欧の工場へ生産移管するという。(2019年6月19日付プレスリリースより)
海外投資
〈中国常山〉円錐ころ軸受工場
-SKFは、中国の常山(Changshan)に円錐ころ軸受の工場を開設すると発表した。投資額としては200百万スウェーデンクローナとなり、この新規工場によって同社グループは、中国での工業用駆動装置や自動車セグメントでの競争力を強化する狙いだ。なお、常山工場には600名の従業員が配置される予定である。これまでに同社は、中国では3都市での研究開発を行ってきたが、SKF・PEER・GBCブランドを近代的かつ効率的な立地に集約しているところであるという。(2019年4月17日付プレスリリースより)