MICHELIN (Compagnie Generale des Etablissements Michelin S.C.A.) 2019年12月期の動向
業績 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年12月期 | 2018年12月期 | 増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 24,135 | 22,028 | 9.6 | 1) |
営業利益 | 3,009 | 2,775 | 8.4 | 2) |
自動車用タイヤおよび物流事業部門 | ||||
売上高 | 11,851 | 11,332 | 4.6 | 3) |
営業利益 | 1,321 | 1,295 | 2.0 | |
輸送用タイヤおよび物流事業部門 | ||||
売上高 | 6,448 | 6,378 | 1.1 | 4) |
営業利益 | 597 | 612 | (2.5) |
要因
1) 全社売上高
-2019年12月期の全社売上高は、前年比9.6%増の24,135百万ユーロ。乗用車用タイヤ、小型トラック用タイヤ、トラック用タイヤの販売減による減収要因(前年比1.2%減)を、同社プレミアムタイヤ戦略による価格ミックスの効果(前年比2.2%増)、為替差益(前年比1.8%増)、Fenner、Camso、Multistrada、Masternautの買収に伴う連結範囲の変更(前年比6.8%増)などの増収要因が上回った。
2) 営業利益
-2019年12月期の営業利益は、前年比8.4%増の3,009百万ユーロ。Fenner、Camso、Multistrada、Masternautの買収による連結範囲の拡大、価格ミックス効果、競争力の強化、為替差益といった増益要因が、販売減、コスト増、償却費増といった減益要因を上回った。
3) 自動車用タイヤ事業部門
-2019年12月期の自動車用タイヤ事業部門の売上高は、前年比4.6%増の11,851百万ユーロ。販売量の減少や原材料価格増といった減収要因があったものの、価格ミックスやMultistradaの買収といった増収要因がそれを上回った。特に、18インチ以上のタイヤの販売比率が高まったことが、このセグメントの増収に繋がった。
4) 輸送用タイヤ事業部門
-2019年12月期の輸送用タイヤ事業部門の売上高は、前年比1.1%増の6,448百万ユーロ。価格ミックス効果と連結範囲の変更による増収要因が、販売減による減収を相殺した。
買収
Multistradaの買収
-インドネシアのタイヤメーカーPT Multistrada Arah Sarana TBK (Multistrada)の株式80%を439百万ドルで取得することに合意したと発表した。Multistradaの生産能力は18万トン(乗用車向けタイヤ1,100万本、二輪車向けタイヤ900万本、トラック用タイヤ25万本)で、2017年の売上高は約281百万ドル。また、今回の取引を通じてMichelinは小売業者Penta Artha Impressiの20%の株式も取得することとなり、インドネシアにおけるマーケティングと販売強化も促進するという。(2019年1月22日付プレスリリースより)
-PT Multistrada Arah Sarana TBK(Multistrada)の株式88%を480百万ドルで取得したと発表した。今回の取引は2019年1月22日に発表された条件に沿って完了した。Multistradaの生産能力は18万トン超で、2017年の売上高は281百万ドル。またこの取引でMichelinは小売業者Penta Artha Impressiの株式20%と50ヘクタールの土地も取得し、AchilesとCorsaという2つの地元ブランドを得たことでインドネシアでのプレゼンス強化を図るという。同社は限られた新規投資で技術的専門知識を活用して、Tier 3乗用車用タイヤからTier 2 Michelinブランドへ生産転換を推進し、他のアジア工場でより多くのTier 1生産を可能にし、欧州、北米、アジアにおけるTier 2の需要増をサポートするとしている。(2019年3月8日付プレスリリースより)
-PT Multistrada Arah Sarana TBK (Multistrada)の株式を追加取得したと発表した。Michelinは2019年3月8日にMultistradaの87.59%の株式を取得。今回も同価格にて公開買い付けを行い、12.05%を追加購入した。これにより、同社は総額545百万ドルにてMultistradaの株式保有率を99.64%に引き上げたという。(2019年6月19日付プレスリリースより)
その他
-欧州大手テレマティクスプロバイダーのMasternautの全株式を取得する契約を締結したと発表した。Masternautは主にフランスと英国で操業しており、最新の技術を搭載した技術プラットフォームと、車両のフリート管理と監視を最適化するためのオンボードテレマティックスソリューションを供給している。買収により、Michelinは欧州全域でのライトビークル向けサービス&ソリューション事業の推進と、急成長するフリート市場のサポート強化を図る。(2019年5月16日付プレスリリースより)
事業再編
-La Roche-sur-Yon工場の閉鎖計画を発表した。「Skipper」プロジェクトの下、同工場に70百万ユーロを投資したが、欧州および海外の高級トラックタイヤ市場の構造的変化により、期待した結果を生み出すことができなかったという。グループ経営陣の優先事項は従業員619名の将来のキャリアサポートにあるといい、自発的な転職を望む従業員のための支援に関する合意交渉をできるだけ早く開始するとしている。交渉の一環として、同社は早期退職プログラムに加えて、保証された内外のモビリティスキームを提供する。同社は今後数週間で地域の利益に役立つ持続可能な活動の開発を可能にする革新的なイニシアチブを立ち上げる予定。この事業資金を調達するため、2019年12月期の連結財務諸表に臨時支出として約120百万ユーロの引当金を計上する。(2019年10月10日付プレスリリースより)
-ドイツBamberg工場の閉鎖を決定したと発表した。1971年開設のBamberg工場は主に乗用車用16インチ高級タイヤを製造してきた。2013年以降、市場の発展に対応するため60百万ユーロを投資してきたが、欧州乗用車用タイヤ市場の構造的変化を補完することができなかったという。現在の優先事項は同工場の858名の従業員にあるとしており、今後は転職、退職、異動など様々な可能性を含めて個別にサポートする予定。(2019年9月25日付プレスリリースより)
合弁事業
Faureciaとの合弁会社「Symbio」
-Faurecia (フォルシア)は、Michelinとの水素燃料電池関連事業の合弁会社設立に関する覚書に調印したと発表した。両社が折半出資する新会社「SYMBIO, A FAURECIA MICHELIN HYDROGEN COMPANY」は、Michelinの子会社Symbioの事業を統合することとなる。Symbioは2019年2月1日にMichelinが子会社化した水素燃料電池システムおよび関連デジタルサービスのサプライヤー。新会社はMichelinとFaureciaの既存および補完資産を組み合わせ、小型車両、ユーティリティビークル、トラックおよびその他車両向け水素燃料電池システムを開発、製造、販売する。(2019年3月11日付プレスリリースより)
-Symbioは、燃料電池「StackPack」の生産が2030年までに20万個に達する見込みであると発表した。MichelinのサポートとパイプラインでのFaureciaとの合弁事業によりSymbioは燃料電池生産を促進し、2025年に2万個、2030年に20万個の生産を目指す。「StackPack」は水素燃料電池と主要なコンポーネントで構成されており、電池の長寿命化、車両への適合性と統合の最適化に貢献するという。Symbioは標準化された製品、複数の自動車メーカーの生産を可能にする費用対効果の高い適合性、フランスおよび欧州全域での燃料電池開発の実績により、燃料電池車市場に参入するための準備が整っているとしている。(2019年9月10日付プレスリリースより)
-欧州委員会は、フランスを拠点とするFaurecia Exhaust InternationalとSpikaによるSymbioの共同支配権取得を承認したと発表した。Michelinの子会社Symbioは、水素燃料電池システムメーカー。SpikaもMichelinの完全子会社でFaurecia Exhaust InternationalはPSAのグループ企業。ECは、買収は市場に影響を与えず、競争上の懸念を生じさせないと結論付けた。またSymbioはすでにMichelinグループ傘下であるため、買収によるSymbioとMichelinの重複活動について変更はないとしている。(2019年11月13日付プレスリリースより)
-MichelinとFaureciaは、水素燃料電池に特化した合弁会社「SYMBIO, A FAURECIA MICHELIN HYDROGEN COMPANY」の設立を発表した。Symbioは、ライトビークル、商用車、トラック向け水素燃料電池システムの開発、生産、販売を展開する。MichelinとFaureciaは、次世代燃料電池の開発加速と量産、欧州、中国、米国での事業拡大を目指してSymbioに140百万ユーロを投資する。Symbioは25%の市場シェアを獲得し、2030年までに約15億ユーロの売上高を達成することを目指すという。(2019年11月21日付プレスリリースより)
その他の合弁事業
-Continental、Smagとともに天然ゴムの技術ソリューション「Rubberway」を開発する合弁会社設立を発表した。新会社は2019年末までに操業開始予定。「Rubberway」は下流のゴム加工工場から上流のプランテーションまで、天然ゴム産業全体の環境問題、社会問題、企業の社会的責任に関する慣行とリスクをマッピングおよび評価する技術ソリューションで、タイヤメーカーにデータを提供し、天然ゴムのサプライチェーンの持続可能性改善を目指す。新会社で、Michelinは使用権を保有してユーザー体験を提供し、Continentalは他のタイヤメーカーや自動車部品メーカーによるアプリケーションの幅広い使用促進を図る。またSmagは、農業向けデジタルソリューション技術開発に貢献するという。(2019年9月12日付プレスリリースより)
最近の動向
-フォードとWebastoは11月5日、 「マスタング (Mustang)」のファストバック・プロトタイプとなる超高性能電気自動車 (EV)バージョンの「マスタング リチウム (Mustang Lithium)」を発表した。「マスタング リチウム」は最高出力900hp超、最大トルク1,000 lb-ft超で、GetragのMT82 6速マニュアルトランスミッションを組み合わせた超高性能モデル。一度限りのプロトタイプではなく、フォードとWebastoが取り組むeモビリティのバッテリーおよび熱管理技術のテストベッドでもあるという。「マスタング リチウム」はPhi-Powerデュアルコア電気モーターとデュアルパワーインバーターを使用する。これらはすべて、メガワット級の電気エネルギーを放電できるEVDrive技術を備えた800VのWebastoのバッテリーシステムで駆動する。Ford Performanceのハーフシャフトとトルセンディファレンシャルは、Michelinのスポーツタイヤ「Michelin Pilot Sport 4S」を装着した軽量のForgelineホイールを介して動力を供給する。
受注
-BMWは、Michelin Pilot Sport 4SタイヤをBMW X3 MおよびX4 Mモデルの記者発表用車両に選択したことを発表した。 Pilot Sport 4Sタイヤには、マルチコンパウンドのトレッドやアラミド繊維強化ケーシングなどの技術が採用されている。
-日本ミシュランタイヤ (東京都新宿区) は20日、乗用車用タイヤ「ミシュランパイロットスポーツ4S」がトヨタ自動車のレクサス「RC F」の新車装着用タイヤに採用されたと発表した。パイロットスポーツ4Sは、スポーツカーや高性能車両向けに開発されたパイロットスポーツシリーズのフラッグシップモデル。安定した接地面と密着性や、最新金型加工によるプレミアムタッチデザインが特徴。 (2019年5月22日付日刊自動車新聞より)
-フォードは、2020年新型「エクスプローラー プラチナム(Explorer Platinum)」および「エクスプローラー リミテッド ハイブリッド(Explorer Limited Hybrid)」四輪駆動モデルにMichelinのセルフシールタイヤをSUVとして初めて標準装着すると発表した。タイヤサイズは255/55R 20。また、「エクスプローラー リミテッド(Explorer Limited)」の二輪駆動と四輪駆動モデルにも同タイヤをオプション採用する。ミシュランのセルフシールタイヤは環境に優しいゴムシーラント剤を使用しており、釘やネジによるトレッドパンクの90%を最大直径1/4インチまでシールする。内部分析テストの結果によると、1週間に1平方インチあたり15ポンド以下の空気圧の漏れを遅らせたという。(2019年3月12日付プレスリリースより)
受賞
-2019年3月8日にドイツで開催されたTire Technology Expo 2019にて、同社は環境への取り組み、製品の革新、中古タイヤのパフォーマンス向上を理由に、31名のタイヤ業界エキスパートから成るグローバルパネルよりTire Manufacturer of the Yearに選ばれた。
研究開発費 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年12月期 | 2018年12月期 | 2017年12月期 | |
合計 | 687 | 648 | 641 |
研究開発体制
-2019年12月期、研究開発人員は約6,000名。
-同社の研究開発戦略として下記3分野に焦点を当てている。
- 未来の車両: 燃料電池や自律走行車プロジェクトなど
- 未来のモビリティ: 高度道路交通システム (ITS) や相乗り、カーシェアリングなど、新たな利用トレンド支援とタイヤソリューションの統合
- 都市部のモビリティ改革
研究開発動向
-2019年9月26日、同社、IFP Energies nouvelles、およびAxenは、バイオエタノールからブタジエンを生産する初の試作工場を建設すると発表した。同工場は、3社による合成ゴム製造過程での環境負荷低減の取組みを示すものである。
-2019年5月20日、同社はAuvergne-Rhone-Alpes地域で再生可能エネルギーによるモビリティを創出すべく、Hympulsionの株式22.8%を取得し、官民パートナーシップを構築した。買収の結果、Hympulsionは49%がAuvergne-Rhone-Alpes地域とBanque des Territoires、51%が同社とENGIE、およびCredit Agricoleによって所有される。Hympulsionは、ゼロエミッションバレープロジェクトの促進をめざす。このプロジェクトでは、1,000台の車両と20の燃料補給ステーションをそなえ、法人向けに再生可能水素モビリティを提供する。
技術提携
-同社研究パートナーシップの半数以上は、材料開発に焦点を当てたもの。
-インド自動車調査協会(ARAI)はMichelin Indiaと覚書を締結し、技術の共有や自動車産業に関する知見の拡大、インドの自動車技術プロジェクトにおける協業を進めると発表した。この戦略的パートナーシップでは、ビークルダイナミクス、タイヤ技術、標準化と規制、技術者育成など、様々な分野での協業が含まれる。(2019年12月18日付プレスリリースより)
製品開発
電気バス用タイヤ「Michelin X-Incity Energy Z tires」
-ブリュッセルで開催のBusworldに「MICHELIN X-Incity Energy Z」を出展すると発表した。タイヤサイズは275/70R 22.5で8トンの車軸荷重を持ち、電気バスでの使用に適している。駆動アクスルまたはステアリングアクスルに取り付けることができ、カーカスは特殊ケーブルで強化されている。またトレッドとサイドウォールのの設計は都市交通の需要に耐えるように最適化され、騒音と転がり抵抗を低減するという。さらにREGENION技術を採用することで、グリップ性能を強化している。(2019年10月17日付プレスリリースより)
Michelin Road 5 GTタイヤ
-2019年9月、同社はMichelin Road 5 GT tireを発売。これは、特に濡れた路面での高性能、安定性、および効率的なブレーキを確保するために開発された。付加金属製造技術を使用して設計されており、タイヤのライフサイクルを通じて変化するサイプを備えることで水処理能力を維持する。
IAA 2019における展示
-エアレス・コンセプトタイヤ「Michelin Uptis」をフランクフルト・モーターショーに出展すると発表した。2024年市場投入予定の「Michelin Uptis」は優れた走行性能を持つパンクしないタイヤ。また、「Michelin Uptis」をベースとしたリサイクル可能な3Dプリンタービジョンコンセプトの研究も発表する。「Michelin Uptis」はアルミニウム製の固定ユニット、複合材料、ゴム製トレッドで構成されており、軽量アルミニウムリムは、柔軟な樹脂スポークを介してプロファイルトレッドに分離不可能に接続されている。このタイヤは空気圧なしで完全に管理できるため、従来のタイヤよりも耐パンク性があり、特に高度な機動性と信頼性を提供するという。(2019年9月2日付プレスリリースより)
Michelin Uptis エアレスコンセプトタイヤ
-MichelinとGMは、パンクしない新世代のエアレスホイール技術「Michelin Unique Puncture-proof Tire System (Uptis) 」のプロトタイプを共同開発したと発表した。両社はこの乗用車用新型タイヤを2024年に市場投入する計画。GMは2019年後半に米国ミシガン州でシボレー「ボルト EV (Bolt EV)」にこのタイヤを装着し、実地テストと検証を開始するという。エアレス技術を採用した「Uptis」プロトタイプはパンクや破裂をなくすことで、原材料や廃棄物の削減に大きな可能性をもたらすとしている。(2019年6月4日付プレスリリースより)
特許
-2019年、同社は247件の特許を申請。
設備投資費 |
(単位:百万ユーロ) |
2019年12月期 | 2018年12月期(※) | 2017年12月期 | |
自動車用タイヤおよび物流事業 | 897 | 882 | 1,024 |
輸送用タイヤおよび物流事業 | 492 | 457 | 461 |
特殊事業および物流事業 | 412 | 329 | 286 |
合計 | 1,801 | 1,669 | 1,771 |
※2018年12月期の数値は修正済みのため、2017年12月期との単純比較は不可
-2019年12月期の設備投資プロジェクトは以下の通り。
- 生産能力拡大、生産性向上、自動車用タイヤ製品ラインナップの刷新 (メキシコ、中国、タイ)。
- 生産能力拡大、生産性向上、輸送用タイヤ製品ラインナップの刷新 (ルーマニア、タイ)。
海外投資
-MichelinとFaureciaの合弁会社Symbioは、2020年3月10日にフランス工場の建設を開始すると発表した。Symbioは燃料電池スタック「StackPack」を2030年に年間20万個生産する計画。工場はAuvergne-Rhone-Alpes地域に建設予定で、LyonとAuvergne-Rhone Alpesの地方自治体がプロジェクトを支援する。(2019年12月19日付プレスリリースより)