Leoni AG 2019年12月期の動向

業績

 (単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 増減率 (%)
全社
売上高 4,845.7 5,101.1 (5.0)
EBIT (383.9) 144.3 -
ワイヤリングシステム部門
売上高 3,027.5 3,167.5 (4.4)
EBIT (370.5) 80.2 -
ワイヤー・ケーブル部門
売上高 1,818.3 1,933.6 (6.0)
EBIT (14.0) 65.8 -

要因
1) 売上高
-2019年12月期の売上高は、前年比5.0%減の4,845.7百万ユーロ。自動車産業における需要弱体化により、ワイヤリングシステムおよび自動車用ケーブルの売上が減少した。また、産業向け特殊ケーブルやケーブルシステムの売上も減少した。為替影響が若干売上高にプラス影響を与えた一方で、銅単価の変動や企業連結範囲の変更によるマイナスで相殺された。

2) EBIT
-2019年12月期のEBITは、前年の144.3百万ユーロから下落して、383.9百万ユーロの損失となった。売上高の減少に加えて、メキシコのMeridaの生産施設で立ち上げ問題が響いた。例外的な項目として、主に偶発損失引当金の119百万ユーロ、減損費用の77百万ユーロなど、合計233百万ユーロの損失が発生した。その他、「VALUE 21」戦略プロジェクトで、主にコンサルティングおよびリストラ費用として86百万ユーロの支出が発生した。

3) ワイヤリングシステム部門
-2019年12月期の売上高は前年比4.4%減の3,027.5百万ユーロ。自動車市場の弱体化が売上減の主要因。売上が減少したため、同社は特に中国や欧州での生産量も減少させた。

4) ワイヤー・ケーブル部門
-2019年12月期の売上高は、前年比6.0%減の1,818.3百万ユーロ。自動車産業向けケーブルなどを含む製品では約7%減少した。高速データケーブルの需要は堅調であった一方、標準ケーブルの需要は減少した。為替影響はプラスに働いたものの、銅価格の変動による損失で相殺された。

再編

VALUE 21
-戦略強化プログラム「VALUE 21」を発表した。同社は、メキシコのメリダ(Merida)工場の立ち上げが困難であること、ワイヤーシステム事業部の継続的な業績不振、市場の低迷などにより大幅にコストが増加したため、事業安定に向けた早急な措置を講じるとしている。「VALUE 21」では、2022年には2018年と比較して年間約500百万ユーロの構造的節約を計画する。2019-2020年度には約120百万ユーロの構造改革費用を計上する見込みで、うち半分は人員に関連するものとなるという。また、年間500百万ユーロの売上高を有する事業を特定するアクティブポートフォリオ管理や、企業構造を独立運営の2つの部門を持つ持株会社に転換する計画などもあわせて発表した。(2019年3月17日付プレスリリースより)


-グループ構造と戦略の見直しを実施したと発表した。この見直しにはワイヤー・ケーブル (WCS) 部門とワイヤリングシステム (WSD) 部門の所有構造の再構築も含まれる。同社の取締役会は、両部門間のシナジー効果には懐疑的で、経営の分離を図ろうとしていた。このような背景から、LeoniはWCS部門の部分的な売却も含め、WCS部門の上場もしくは売却を準備中。最終判断は未確定だが、分離後は同社の主要事業はWSD部門となる。同社は今後WSD部門に注力することで、リソースを自動車業界向けのグローバルソリューション提供に集中させ、エネルギーとデータ面での新たなビジネスチャンス獲得を目指す。一方WCS部門は注力した分野にて、ケーブルとインターコネクトソリューションのリーディングプロバイダーとしての地位を狙う。(2019年7月10日付プレスリリースより)


-戦略プログラム「VALUE 21」の進行状況について発表した。「VALUE 21」は順調に進んでおり、2019年9月30日の時点で計画の35%が実行済だという。既に実施されたイニシアチブは年間150百万ユーロのコスト削減につながるといい、「VALUE 21」の全プログラムの実施に伴い2022年から年間500百万ユーロのコスト削減を達成できると見込んでいる。同社は「VALUE 21」の実施により、2019年第3四半期に約53百万ユーロを費やし、2019年1-9月の費用は72百万ユーロに達した。費用の大半は、高賃金国で500名超の人員削減を開始したことによるものだという。同社は引き続き、ワイヤー・ケーブル部門のカーブアウトを推進し、2020年度に同部門を分離する予定。(2019年11月13日付プレスリリースより)

提携

-インテリジェント・ケーブルと自動車運転システムをIoTと結び付ける事業を進めるため、工業分野においてIoTによるソリューション提供を行うrelayrと戦略的パートナーになることを発表した。間もなく展開される事業では、カーメーカーやサプライヤー工場での自動製造ライン上の予期しない機械停止時間を削減させ、生産効率性を改善することを目標としている。このパートナーシップを通して、両社はLEONiQテクノロジーとrelayr社のIoTポートフォリオを基に、自動車工場の生産ロボットラインにおいて、予知保全やモニタリングを行うためのインテリジェント・ソリューションを開発・提供する。また、両社は2020年からの本格的な提供を目指すべく、自動車製造ラインで最初のテストを早ければ2019年に実現させるつもりであるという。(2019年4月4日付プレスリリースより)

受賞

-2019年5月、Jaguar Land Rover (JLR) より柔軟性と信頼性が評価され「Automotive Supplier Excellence Award」を受賞したと発表した。同社はJLRの様々なモデルにケーブルハーネスやワイヤリングシステム部品を供給している。同社はこれらの部品をエジプトのCairo、セルビアのMalosiste、ルーマニアのAradの工場で生産している。JLRの同賞は、毎年3,500社のサプライヤーの中からたった15社に与えられる。(2019年6月6日付プレスリリースより)

研究開発費

 (単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
ワイヤリングシステム部門 144 133 113
ワイヤー・ケーブル部門 15 19 17
その他 2 (2) 4
合計 161 150 134

 

研究開発人員

  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
ワイヤリングシステム部門 1,565 1,844 1,278
ワイヤー・ケーブル部門 296 415 420
合計 1,861 2,259 1,698

 

研究開発活動

-主にワイヤリングシステム部門では、コネクテッドモビリティ、自動運転モビリティ、生産性や自動化の向上、電動化モビリティ、インテリジェント・ソリューションやサービスに注力している。同部門では、ワイヤリングシステムのカスタマイズや高電圧バッテリーシステムに注力している。

-ワイヤー・ケーブル部門では、特に冷却充電ケーブルや高電圧ケーブル分野といった電動モビリティでの研究開発に注力している。同部門はデータ通信用の自動車向けイーサネットシステムの開発を継続しているほか、電磁誘導充電の開発に乗り出した。

製品開発

フェイルセーフ・電源配線システム向け部品
-ワイヤリングシステム部門は、フェイルセーフ・電源配線システム向けに設計された部品を追加して製品ポートフォリオを拡大させた。フェイルセーフ機能が付いた電源配線システムは、自動運転では必要なものとなる。同社はこれらの部品の試作品を様々な使用ケースに適用させている。

高電圧ワイヤリングシステム向け部品
-ワイヤリングシステム部門は、高電圧ワイヤリングシステムや高電圧蓄電向けの部品開発をさらに進めている。開発製品にはセンサーケーブルやインターコネクターモジュールなどがある。また、将来的には高電圧ジャンクションボックスもポートフォリオに組み込む予定。

車両コンセプトの共同開発
-ワイヤリングシステム部門は、特に電源配線システム分野の顧客と車両コンセプトの開発を行った。同社は2025年に生産開始予定のモデルに、プロジェクトから得た知見を取り入れたい考え。

EV向けハイパワー充電ケーブル
-ワイヤー・ケーブル部門は、EV向けのハイパワー充電ケーブルを開発した。既に顧客や事業者テスト向けのサンプル品も製造済み。その他、高電圧シリコンケーブルも開発した。

Electric & Hybrid Vehicle Technology Expoでの出展技術
-エレクトロモビリティ向けの新たな技術を展示すると発表した。同社は幅広い種類のケーブルやソリューションを、特に急速充電技術や高電圧ケーブルによる電源供給、デジタルケーブル技術の「LEONiQ」を披露する。水冷式充電システム向けのハイパワー充電ケーブルにより、ケーブルとコネクターの温度は設定された制限を超過しないように制御可能となる。同社の「Hivocar」高電圧ケーブルは、電気自動車に使用される多数の部品とパワートレインを接続するワイヤーにおいて大きな効果を発揮し、それらのケーブルはインバーターや電動モーター、エアコンコンプレッサー、電気ヒーターを経由しながら安定的な電流をHVバッテリーまで流す。これらの技術をグローバルに提供するために、同社は顧客に近い様々な地域で各国の許可を取得しながら開発していくとしている。(2019年4月29日付プレスリリースより)

 

特許

-2019年、同社は45件の特許と実用新案を保有しており、そのうち21件はワイヤリングシステム部門で、24件はワイヤー・ケーブル部門となっている。

  

設備投資額

 (単位:百万ユーロ)
  2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
ワイヤリングシステム部門 244.2 204.7 163.9
ワイヤー・ケーブル部門 106.8 114.0 107.8
その他 6.1 24.0 9.7
合計 357.1 343.0 281.4

-2019年12月期のワイヤリングシステム部門の設備投資は、主に東欧および北米での新施設の建設と工場拡張に向けられた。

-ワイヤー・ケーブル部門の設備投資は、主にドイツRothの「Factory of the Future」の建設ならびにアジア、米国、東欧の工場での生産能力拡充に向けたものであった。データケーブル、センサーケーブル、高電圧ケーブル、充電ケーブルの生産拡充に向けられたものであった。

  

海外投資

<メキシコ>
-同社は、ワイヤー・ケーブル部門のメキシコCuauhtemoc工場の拡張に向けた基礎敷設工事開始の式典を開いた。初回は、施設を7,000平方メートル拡張する予定で、続いて3,000平方メートルの拡張も将来的に行われる。これにより、EVの充電ケーブルや代替パワートレインを搭載した「Hivocar」高電圧ケーブルの生産能力が増大する。拡張後は、28,792平方メートルの生産エリアを持つこととなり、100名の追加雇用を創出する。同社はこの拡張に約25百万ドルを投資するという。(2019年8月15日付プレスリリースより)