(株) 小糸製作所 2020年3月期の動向

業績

 (単位:百万円)
  2020年
3月期
2019年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 800,928 826,257 (3.1) -自動車照明関連事業において新規受注の拡大や自動車ランプのLED化進展等があったものの、世界自動車生産台数の減少により減収
営業利益 82,411 101,534 (18.8) -国内外における改善合理化を推進したものの、自動車減産に伴う売上の減少や研究開発の強化、及び新規受注対応の設備投資に伴う償却費負担の増等により減益
経常利益 85,264 105,494 (19.2) -
親会社株主に帰属する当期純利益 58,022 72,895 (20.4) -
自動車照明関連事業
売上高 738,451 762,943 (3.2)


自動運転・ADASへの取り組み

「しずおか自動運転ショーCASEプロジェクト」に参画

ー2020年1月、静岡県が手がける「しずおか自動運転ショーCASEプロジェクト」に参画すると発表した。車両位置情報を使った自動運転バスの優先信号制御による定刻運行支援を検証する「日本で初めて」 (同社) の実験となる。22日から31日まで沼津市内で実施する。小糸は昨年、信号機などの照明を手がけるKIホールディングスを子会社化するなど、インフラと連携した自動車用ランプの開発を進めている。今回の実証実験でも信号制御の領域を担う。実証した成果を、センサー類を搭載したランプやスマート信号機の開発に生かしていく考え。(2020年1月23日付日刊自動車新聞より) 

センシング事業を加速

-すでに開発を進めているLiDARに加え、赤外線カメラも数年以内に量産化を見込む。センサー類を一体化して提案し、2020年代後半からの収益化を目指す。自動運転車やコネクテッドカーが普及すれば、同社の主力製品であるヘッドランプの位置付けも変わってくる。カメラやセンサー類と組み合わせることで「照らす」以外の用途を加え、ヘッドランプの付加価値を高める。2~3年後をめどにLiDARの量産化に踏み切るほか、数年以内に赤外線カメラも製品化する。センサー類は、ヘッドランプへの内蔵や単品での提案など、顧客ニーズに応じてカスタマイズを進める。将来的には「複数のセンサー類をフュージョン (融合) して提案したい」 (三原弘志社長) 考え。(2020年1月6日付日刊自動車新聞より)

 

<ベンチャー企業への出資、子会社整理>

ADAS・自動運転向けにLiDARの開発を行う米国ベンチャー企業へ出資
-2020年2月、同社はADAS・自動運転向けにLiDARの開発を行う米Cepton社に対し50百万ドルを出資し、関係強化を図ると発表した。Cepton社のLiDARは遠方を高解像度でかつ広範囲を検知可能。量産に向け開発を加速させるとともに同社の自動車照明器技術とも連携したランプの実用化に向け共同開発を進めていく。(2020年2月5日付プレスリリースより)

 

自動運転領域の事業拡大等に向け完全子会社KIホールディングスを吸収合併
-完全子会社のKIホールディングス (横浜市戸塚区) を4月1日付で吸収合併すると発表した。自動運転領域における事業拡大や連携強化を図るほか、間接コストの削減、意思決定の迅速化を目指す。同社は2019年から資産および負債の一括管理による効率化や、経営体制の合理化を目的に、グループの再編を進めてきた。19年8月にはKIホールディングスを完全子会社化しており、今回の吸収合併でシナジーの実現をさらに加速させる。(2020年2月5日付日刊自動車新聞より)

 

イスラエルのBrightWay Vision (BWV) の株式を取得し、持分法適用会社へ
-BWVは先進運転支援システム (ADAS) のシステム開発を行うベンチャー企業。小糸製作所は、ADAS搭載車・自動運転車において必要となる高精度・悪天候にも対応、撮像可能なカメラシステムの研究開発の強化を目的に、同技術を保有するBWVへ出資したという。(2019年6月25日付プレスリリースより

 

事業動向

中国生産体制の見直し

-中国市場の開拓に向けた開発、生産体制の再構築に乗り出す。今年4月に「中国開発体制準備室」を設置し、中国国内に3拠点ある生産拠点の体制を来年早期までに見直す。生産工場には現在設計機能を持たせているが、今後は電子制御やスタイリングなどの機能も新たに付帯する。将来的には研究開発(R&D)拠点の新設も見込む。現地のニーズや市場環境を踏まえた開発、生産体制を整え、現在1割にとどまる同社の中国におけるヘッドランプのシェア拡大を目指す。小糸は、中国で広州湖北福州の3カ所に自動車照明機器の生産拠点を持ち、日系の自動車メーカーや中国のローカルメーカー向けに供給している。同社の中国シェアは約10%。「グローバルでのシェアを拡大していくには中国がさらに重要になってくる」(三原弘志社長)とし、体制の再構築を始める。(2019年9月17日付日刊自動車新聞より)

 

研究開発費

 (単位:百万円)
2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 36,100 34,000 36,100
-日本 22,200 21,300 19,000
-北米 10,000 9,200 8,700
-中国 1,000 1,100 6,000
-アジア 2,100 1,900 1,800
-欧州 500 300 300

 

研究開発体制

-2020年3月末時点のグループ全体の研究開発人員は3,131名。

-世界5極体制で展開。

  • 小糸製作所 技術センター (日本)
  • North American Lighting, Inc. 技術センター (米国)
  • Koito Czech s. r. o. 技術セクション (チェコ)
  • 広州小糸車灯有限公司 技術セクション (中国)
  • Thai Koito Company Limited 技術センター (タイ)

 

研究開発活動

<日本>

  • 自動車照明器のコア技術 (光学、電子、機構、構造等) 
  • 新光源 (レーザー、OLEDなど)
  • 自動運転関連技術
  • ITS関連システム

<北米、中国、アジアおよび欧州>

  • 自動車照明器のコア技術 (光学、電子、機構、構造等)  等

電気自動車(EV)のコンセプトカー「GaNビークル」にランプ製品採用

-名古屋大学が世界で初めて開発した、窒化ガリウム(GaN)デバイスを活用した電気自動車(EV)のコンセプトカー「GaNビークル」に、同社のランプ製品が採用されたと発表した。今回採用された製品はレーザーハイビーム、LEDソケットを使用したランプ(ロービーム、ポジション、フロントターンシグナル、バックアップ)、リアターンシグナルランプ、カメラ一体サイドターンシグナルランプGaNデバイスは、従来の半導体に比べて高効率・高出力という特長を有し、これらのランプは小型・軽量・省電力化されている。同社の製品が搭載された「GaNビークル」は、東京モーターショーに出展中。(20191024日付プレスリリースより) 

東京モーターショー2019に出展

-ヘッドランプの照射範囲を拡大させた「ブレードスキャンADB (Adaptive Driving Beam)」を世界初披露。また、自動運転に必要なセンサーをランプに一体化することで、自動車のスタイリングを損なうことなく360度のセンシングを可能にした自動運転コンセプトモデルも展示。そのほか、周囲監視センサーと路面描写による警告機能等を街路灯に搭載する、スマート街路灯コンセプトモデルも紹介した。(2019年10月15日付プレスリリースより 

「ブレードスキャンADB (Adaptive Driving Beam)」

-新たなヘッドランプシステム「ブレードスキャンADB (アダプティブドライビングビーム) 」を実用化したと発表した。ハイビームの照射範囲を走行状況に応じて自動制御する。「世界初」 (同社) のシステムで、トヨタ自動車「レクサスRX」への搭載を皮切りに、普及拡大を目指す。新システムは、高速回転する2枚のブレードミラー (リフレクター) にLEDの光を照射し、光の残像効果を用いて前方を照射する方式。ブレードミラーの回転に合わせて12個のLED点消灯を制御することで、300個のLED使用相当の配光を実現する。また、対向車や前走車に対する遮光範囲を小さくすることも可能とした。(2019年9月11日付日刊自動車新聞より)

独ブリックフェルド社とLiDARを内蔵したヘッドランプの搭載について検討を開始

-小糸製作所の自動車照明器技術とブリックフェルド社のLiDAR技術を組み合わせる。これにより、自動車メーカーはLiDARをランプに組み込んだ一つの統合部品として搭載することが可能となるため、先進運転支援システム (ADAS) や自動運転システムでの採用を見込む。(2019年5月23日付日刊自動車新聞より)

 

技術供与契約 (自動車照明器)

 (2020年3月31日現在)
相手方の名称 契約内容 契約期間
Hella Automotive Mexico S.A. de C.V.
(メキシコ)
技術情報の提携
製造、販売権の許諾
1992年4月22日から28年間
Industrias Arteb S.A
(ブラジル)
技術情報の提供
製造、販売権の許諾
2017年10月4日から5年間
Farba Otomotiv Aydinlatma ve Plastik Fabrikalari A.S.
(トルコ)
技術情報の提供
製造、販売権の許諾
1997年10月24日から24年間
Lumotech (Pty.) Ltd.
(南アフリカ)
技術情報の提供
製造、販売権の許諾
2006年5月4日から15年間
EP Polymers (M) Sdn. Bhd.
(マレーシア)
技術情報の提供
製造、販売権の許諾
1995年4月29日から25年間
AuVitronics Ltd.
(パキスタン)
技術情報の提供
製造、販売権の許諾
2005年3月7日から20年間
AMS Co., Ltd.
(韓国)
技術情報の提携
製造、販売権の許諾
2013年1月16日から8年間
AVTOSVET Limited Liability Company
(ロシア)
技術情報の提携
製造、販売権の許諾
2013年3月21日から8年間

 

設備投資額

 (単位:百万円)
2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
日本 24,800 21,800 14,000
アジア 12,100 7,700 6,100
中国 3,500 8,600 5,800
北米 10,200 9,300 5,600
欧州 5,000 1,500 1,900
その他 900 4,700 -
合計 56,700 54,000 33,700

  

設備の新設計画

 (2020年3月31日現在)

-設備の新設計画については、新型コロナウイルスの影響により現時点では適正かつ合理的な算出ができないことから、未定。