Fiat/Chrysler グループの中国事業 (2): 完成車とエンジンの生産能力増強計画

2014年に完成車生産能力を 60万台規模へ、エンジン/変速機の能力も増強

2012/01/19

要 約

Fiat は、2008年2月に南京汽車集団と提携解消して乗用車の中国生産を中止。2012年1月時点では少量の輸入販売にとどまっている。また、傘下の Chrysler も2009年1月に北京汽車集団との合弁生産から撤退し、現在は東南 (福建) 汽車における極わずかの (委託) 生産のみとなっている。
Fiat/Chrysler グループは、2014年中国乗用車市場シェア 2%を目指し、広汽 Fiat (広汽菲亜特汽車有限公司) の湖南省長沙工場を2012年7月に稼働させ、2014年には 30~33万台の年産体制を整備する。

一方、商用車については、2010年合計 14.6万台であった中国生産 (シャシー、「躍進 (Yuejin)」「紅岩 (Hongyan)」 等合弁会社自主ブランド車を含む) を、2014年には 23.5万台以上に拡大する目標を掲げている。

これに併せ、2014~2015年までに、乗用車のエンジンについては、湖南省の長沙エンジン工場を 30万基、変速機については広汽 Fiat の長沙変速機工場を 20万基、杭州 Iveco 工場を 52万基にそれぞれ増強する。

以下は、Fiat/Chrysler グループの中国における完成車とエンジンの生産能力増強計画等に関する最新動向である。
なお、Fiat/Chrysler グループの中国における最新の中期事業計画、モデル計画および販売体制などについては、2011年 12月掲載済みの 「Fiat/Chrysler グループの中国事業 (1): 中期事業計画、販売体制とモデル計画」を参照方。

関連レポートChrysler: Fiatのプラットフォームと省燃費技術を大幅に採用 (2011年10月掲載)
Chrysler: 2011年第1四半期に最終黒字、年内にFiatが51%出資へ (2011年5月掲載)
Fiatの乗用車事業: 2011年の世界販売目標は5-10%増の220-230万台 (2011年4月掲載)

    Fiat/Chrysler グループの中国事業計画

    概要
    方針 ・中国市場をグループ最重要な戦略市場と位置づける
      Fiat ブランドを中心に、Chrysler (含む Jeep) /Alfa Romeo/Lancia を展開していく
    ・中国におけるグループ部品共同調達の推進 (グループ平均調達コストより 3~4割低減)
      ・広汽 Fiat (GAC Fiat Motor):
      Fiat/Alfa Romeoを含む、複数ブランドモデル戦略を展開していく
      Chrysler についても、Jeep の生産を検討中
      生産車種はすべてFiatの最先端エンジンおよび変速機を搭載
    ・南京 Iveco (NAVECO):
      2015年に、中国軽型トラックメーカートップ 5入りを目指す
      2020年までに、重型トラックおよび pickup 以外の商用車すべてのセグメントに参入
    ・上汽 Iveco 紅岩商用車 (SIH):
      2015年までに、重型商用車分野での競争優位性を確立する
    生産
    販売
    目標
    ・Fiat/Chrysler グループ: 2014年までに乗用車 30万台強、中国市場シェア 2%を目指す
      ・広汽 Fiat: 2014年 約30万台 →  2015年 50万台
    ・商用車 (提携先ブランドを含む): 2014年 23.5万台、2015年 45~55万台
      ・南京 Iveco:
      2011年 15万台 (内訳:  躍進ブランド11.5万台、Iveco 3.5万台)、売上100億元
      2015年 30~40万台  (内訳: 躍進ブランド 25万台以上、 Iveco 5万台以上)、売上 220億元
      中国軽型トラック市場シェア 11%
      2015年に EV/HV 等環境対応車 3万台年産体制を構築
    ・上汽 Iveco 紅岩商用車:
      2011年 4.3~4.5万台、売上 100億元
      2015年 15万台 (うち、輸出1万台超)、売上 250億元
    ・杭州 Iveco (HAVECO):  (注)
      MT と DDCT (Dry Dual Clutch Transmission) との合計販売目標は、2012年 23.5万基、2013年 36.8万基
    モデル
    計画
    ・2012年の New Fiat C-Medium 投入をはじめ、Fiat Compact platform を採用する車種を中心に新型車を投入
      ・広汽 Fiat:
      小型、中高級クラス、SUV をカバーするモデルラインナップを構築
      2012年~2015年には、年に 1車種以上の新型車を投入
    ・南京 Iveco:
      主に軽型商用車に注力して事業を拡大していく
      2011年に躍進自主ブランド向け斬新なシャシーを開発
      2020年までに、既存モデルすべてをモデルチェンジ
      パワートレイン戦略として、躍進自主ブランド商用車に Iveco Sofim ディーゼルエンジンの搭載拡大を始めとして、Iveco の技術を積極的に採用していく
      さらに、長期的には、中型トラック、中高級軽型トラック、ローエンド軽型・微型トラックも更にカバーするラインナップを構築していく模様
    ・上汽 Iveco 紅岩商用車:
      2015年までに、やや幅狭の重型トラックおよび架装車を追加投入

     出所:   MarkLines 取材、Fiat/Iveco 広報資料 (2010.04.21)、「広汽 Fiat 戦略発展計画」 (2010年9月19日発表)、毎日経済新聞 (2011.01.19)、ほかの各種報道
    注:
       杭州Iveco (HAVECO: 杭州 Iveco 汽車傳動技術) は現在、Fiatと、広州汽車集団の部品子会社「広州汽車集団零部件公司」および杭州地場部品メーカー「杭州前進歯輪箱」と、三分の一ずつ出資。

    このレポートは有料会員限定です。 残り 4 章
    無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。