Johnson Matthey Plc 2020年3月期の動向

業績

(単位:百万ポンド)
2020年
3月期
2019年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 14,577 10,745 35.7 1)
営業利益 388 531 (26.9) 2)
部門別売上高
クリーンエアー 2,618 2,720 (3.8) 3)
天然資源 1,079 991 8.9 4)
新規事業 389 362 7.5 5)


要因
1) 全社売上高
-2020年3月期の売上高は、前年比35.7%増の14,577百万ポンド。増収は主に貴金属価格の上昇によるもの。

2) 営業利益
-2020年3月期の営業利益は、前年比26.9%減の388百万ポンド。減益は構造改革並びに減損損失の費用140百万ポンド、および新型コロナウイルス感染症による影響60百万ポンド等によるもの。

3) クリーンエアー事業
-2020年3月期の売上高は、前年比3.8%減の2,618百万ポンド。

<ライトビークル用触媒事業ユニット>
-2020年3月期の売上高は、前年(1,738百万ポンド)並みの1,742百万ポンド。特にガソリン触媒は欧州・アジアでは規制強化により売上が増加したが、米州ではディーゼル車のプラットフォーム減少により売上減となった。

<大型ディーゼル触媒事業ユニット>
-2020年3月期の売上高は、前年比11.4%減の831百万ポンド。各市場で減収。米州クラス8トラック向け販売が下半期に急減したうえ、欧州とアジアでも売上減となった。

4) 天然資源事業
-2020年3月期の売上高は、前年比8.9%増の1,079百万ポンドとなった。

<先端ガラステクノロジー>
-グローバル乗用車生産の減速ならびに新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年3月期売上は前年比6.7%減の70百万ポンドとなった。

5) 新規事業
-2020年3月期の売上高は、前年比7.5%増の389百万ポンド。

<代替パワートレイン (Alternative Powertrain)>
-2020年3月期の売上高は、前年比15.0%増の237百万ポンド。燃料電池向けの需要拡大(約23%増)、および電動二輪車向けバッテリーシステムの販売増により増収。

 

最近の動向

-需要減と政府発令により多くの自動車メーカーが一時的に生産休止したことを受け、一部の拠点で生産を休止すると発表した。稼働を再開した中国を除き、新型コロナウイルスの影響を受けている各国の拠点を休止する。ワールドクラスのクリーンエア工場、バッテリー材料工場、貴金属精製所など戦略的な成長プロジェクトには引き続き投資を行うという。(2020年3月30日付プレスリリースより)

-2019年の自動車用プラチナの需要はトラックでのプラチナ使用量増により、3%増加すると発表した。中国の一部の省や市で厳格な排出規制が2019年7月から、またインドでも2020年にトラック向けの排ガス規制が強化されるため、大型車のプラチナ使用量は急激に増加する見込みだという。さらに、自動車触媒用パラジウムの使用量について、2019年は9%増加するという予測も発表された。(2019年5月13日付プレスリリースより)
 

研究開発費

(単位:百万ポンド)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 199 190 193

 

研究開発費内訳 (%)
部門 2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
クリーンエアー 45 44 41
天然資源 18 19 21
ヘルス事業 8 8 13
新規事業 12 11 9
本社研究 17 18 16
合計 100 100 100

 

研究開発体制

-2020年3月末現在、研究開発部門の従業員はおよそ1,552名。

研究開発人員割合 (%)
部門 2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
クリーンエアー 44 43 41
天然資源 21 20 22
ヘルス事業 5 9 6
新規事業 13 11 11
本社研究 17 17 20
合計 100 100 100

 

研究開発拠点

-クリーンエアー事業部門は国内外に9つ、天然資源部門は英国国内に6つのテクニカルセンターを保有。

-英国オックスフォードシャー州Milton Parkにバッテリーアプリケーションセンターを新設すると発表した。広さ2,123平方メートル、3階建ての建屋にオフィス、研究開発室などを備える。新センターでは科学と問題解決力を活用し、大手自動車メーカーと協力体制をとりながらアプリケーションにあわせたソリューションを開発する。同社はコバルトなどの高価で希少な原材料の使用を最小限に抑えながら、エネルギー密度、パルス電力、安全性を向上させる次世代バッテリー材料を開発する。同社の超高エネルギー電池正極材「eLNO」は、これらすべての性能分野において改善をもたらすという。(2019年10月15日付プレスリリースより)

 

研究開発活動

-持続可能なバッテリーバリューチェーンの確立を支援する原則に同意し、41の企業・組織で構成されるグローバル・バッテリー・アライアンスへの参加を発表した。グローバル・バッテリー・アライアンスは2030年までに持続可能なバッテリーチェーンを構築するための10の指針を示している。コミットメントの実施は、経済協力開発機構(OECD)のデューデリジェンスガイダンスや、循環型低炭素経済に関する実行可能な考慮事項など既存の基準に基づいている。バッテリー市場の主要プレーヤーによるこの連携は明白なアカウンタビリティ・システムの基礎を確立するとしており、アライアンスでは「バッテリーパスポート」と呼ばれるグローバルなデジタルバッテリー情報開示システムの開発を先導する。このシステムは人権や環境負荷などを尊重して、透明性のあるバリューチェーンを実現するように設計されているという。(2020年1月24日付プレスリリースより)

-3Mからシリコン合金ベースのアノード材料のポートフォリオの知的財産を取得したと発表した。知的財産の取得により、自動車用バッテリーソリューションを開発する。これまでカソード材料に注力してきたが、次世代バッテリーアノード用技術をポートフォリオに追加することでバッテリー性能を向上させる補完的なソリューションの提供を目指すという。(2019年11月19日付プレスリリースより)
 

製品開発

SCR触媒用新開発小孔ゼオライト
-近年、ディーゼル車用新世代SCR触媒の開発に注力している。SCR触媒の材料はゼオライトであるが、この物質はケージ構造を有するがために金属触媒の働きを果たす。ゼオライトの小細孔特性は、特に活性、熱安定性および毒物耐性において、大細孔SCRゼオライト触媒とは異なる特性を有する。同社の研究者らは、高温でも高い活性を持つ新しい細孔金属ゼオライト触媒を発見し、実験室での試験から量産まで、ゼオライトの製造をスケールアップすることに成功。新触媒はフロースルーSCR触媒に使用されているほか、選択触媒還元フィルター (SCRF) にも組み込まれている。

設備投資額

(単位:百万ポンド)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
クリーンエアー 188 124 71
天然資源 76 53 49
ヘルス事業 32 29 40
新規事業 65 48 18
コーポレート 104 69 39
合計 465 323 217

 

-2020年3月期の設備投資465百万ポンドの主な内容は下記:

  • 生産能増を目的とする、欧州およびアジアにおけるクリーンエア関連工場への投資。この投資により、同地域での需要に効率的かつ柔軟に適応できると期待される。
  • 高密度バッテリー材料eLNOの開発および商品化への投資。ポーランドKoninにおける同社初となる量産工場の鍬入れを実施。同工場の生産能力は10万トンまで高めることが可能で、生産開始は2022年の予定。
  • 天然資源部門の白金族金属精製所の効率化および増強。

-2021年3月期の設備投資は、最大で約400百万ポンドとなる計画。その主な内容は下記:

  • 中国およびインドのクリーンエアー工場への継続的な投資。
  • eLNOへの継続投資

 

海外投資

<ポーランド>
-次世代の超高エネルギー電池正極材「eLNO」の商品化に向け大きく前進していると発表した。テスト後の顧客のフィードバック、特にカスタマイズされたソリューションの提供能力は引き続き順調であるといい、現在は顧客2社によるフルセルテスト段階に移行した。2022年には商品化に向けKonin工場が稼働を開始し、2024年には製品プラットフォームを供給する予定。eLNO」の商品化にあたって同社は総額350百万ポンドを投資する見込み。(2019年9月19日プレスリリースより)