(株) デンソー 2020年3月期の動向

業績

(IFRS基準、単位:百万円)
2020年
3月期
2019年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 5,153,476 5,362,772 (3.9) -⾞両⽣産の減少、コロナウイルスの影響等
営業利益 61,078 316,196 (80.7) -品質費⽤の引当や売上減に伴う操業度差損等
税引前利益 89,631 356,031 (74.8) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 68,099 254,524 (73.2) -

 

事業動向

-事業方針説明会を都内で開き、2025年度には電動化や自動運転関連部品の売上高が全体の過半を占める見通しを明らかにした。特に電動化部品の売上高は18年度実績の8千億円から2兆円超へと倍以上に増え、全体をけん引する。 (2019年5月25日付日刊自動車新聞より)

 

車載注力分野別の取り組み

 

1)電動化

BluE Nexusを設立
-電動化のための駆動モジュールの開発および販売を行う合弁会社「BluE Nexus (ブルーイー ネクサス)は電動化における両社(デンソー、アイシン精機)の強みを結集し、国内外の自動車メーカー向けに駆動モジュールを開発する。さらに、ハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)など、求められる性能、地域事情等に合わせた適合までを含めて対応できる体制を構築することで、世界各地域への幅広い普及を目指すとしている。(20181226日付プレスリリースより)

広瀬工場の集約
-2020年4月にトヨタ自動車株式会社の広瀬工場が合流し、「デンソー広瀬製作所」としての活動を開始。今後、安城製作所とともに電動化領域のグローバルマザーとして、開発、生産工程を確立し、競争力のある電動化製品を世界各地域へ幅広く普及させる。

「電動開発センター」の開設
-400億円を投じてPCUなどを生産する安城製作所(愛知県安城市)内に電動開発センターを設け、205月から稼働させる。デンソー本社やトヨタから出向するエンジニア、約2千人が勤務する開発棟のほか、試験設備や試作ラインなどを設ける。米国や中国のPCU生産拠点にも増産投資を振り向けるほか、米中以外での生産も検討する。 (201946日付日刊自動車新聞より)

2)先進安全・自動運転

Uber Advanced Technologies Groupに出資
-トヨタ、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド (SVF) は、自動運転ライドシェア車両の開発と実用化を加速するため、UberのAdvanced Technologies Group (Uber-ATG) へ合計10億ドルの出資を行うと発表。自動運転ライドシェア車両の開発を継続するとともに、次世代自動運転キットの設計と開発を共同で行い、本格的な自動運転ライドシェアサービス車両の量産化とサービス実用化に目処をつけることを狙う。(2019年4月19日付プレスリリースより)

「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッド ダイナミクス)」の設立
-アイシン精機アドヴィックスジェイテクトと、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社。出資4社からの委託を受けて、国内外の自動車メーカー向けに車両統合制御システム開発を加速するためのソフトウェア開発、エンジニアリングサービスを行う。(20181226日付プレスリリースより)

東京の先行開発拠点の開設
-2020年7月、羽田空港跡地にテスト路を備えた試験車両の整備棟とオフィスの開設を予定しており、実車による公道実証も含めた研究開発体制を構築し、一層の開発加速を実現。

「MIRISE Technologies (ミライズテクノロジーズ) 」の設立
-トヨタとデンソーが2020年4月に設立した、次世代の車載半導体の研究及び先行開発を行う合弁会社。トヨタの持つモビリティ視点、デンソーが培ってきた車載視点での知見を掛け合わせることで、電動化や自動運転の技術革新の鍵となる次世代の車載半導体をより早期に開発していく。

ミリ波レーダー・データ通信アンテナ開発企業「Metawave Corporation」への出資
-Metawaveの技術を活用して自動運転車向けのスマートレーダーシステムを開発する。Metawaveの最先端のアナログレーダーは、従来のレーダーと比較して、より長い距離、より高い解像度、より優れた角度精度、インテリジェントなオブジェクト分類を提供するという。(2019年11月5日付プレスリリースより)

PiNTeam Holdingへの出資
-ドイツのミュンヘンに本拠を置く欧州顧客を中心とした車載向け組み込みソフトウエア技術のスタートアップ企業PiNTeam Holdingへの出資を発表した。出資比率は49%。デンソーは車載電子システム制御を司るベーシックソフトウエアの開発スピードを加速させる。出資を通じてデンソーがこれまで培ってきた車載電子システム制御の基盤技術、および量産に求められる品質等の知見と、PiNTeamが持つ欧州標準に合わせた先進的な組み込みソフトウエア技術を組み合わせることにより、グローバル視点でベーシックソフトウエア開発体制を強化するという。(2019年12月17日付プレスリリースより)

3)コネクティッド

Bliqとの提携
-リアルタイム駐車とラストマイルルートアシストサービス強化でドイツのBliqと提携。デンソーのセンサーシステムとBliqのリアルタイム駐車用クラウドサービスを組み合わせることで、コネクテッドカーは内蔵センサーを使用して空き駐車スペースを検出し、情報を他のドライバーと共有できるようになる。デンソーは大量のデータを提供することで、リアルタイムで高品質の駐車スポット検出機能を備えた高解像度のマップ生成を実現するとしている。(2020年3月16日付プレスリリースより)

Qualcommの子会社と次世代コックピットシステムの共同開発を開始
-協業により、Qualcomm Technologiesの通信技術や情報技術と、デンソーのヒューマン・マシン・インターフェース (HMI) 製品に関する車載用件、機能安全、品質、セキュリティ技術の知見を組み合わせることで、次世代コックピットシステムの開発を加速させる。具体的には、統合コックピットシステム「Harmony Core」をベースに、次世代のコックピットシステムのアーキテクチャを開発し、コネクテッドカーを想定した外部クラウドサービスやドライバーステータスモニターなどのHMI製品との連携、ドライバーと乗員の個人認証、ディスプレイの操作性向上などを可能にして、ユーザーの利便性向上を目指す。(2020年1月7日付プレスリリースより)

NTTコミュニケーションズとの共同開発
-車両をセキュリティ面で見守る「車両向けセキュリティオペレーションセンター」(SOC) を実現する技術の実用化を目指し、実験環境での車両SOC技術の検証を2020年1月から開始すると発表。デンソーは、車載システム、車両サイバーセキュリティ、コネクテッドカー、MaaS開発などで培った情報セキュリティ・通信・データ解析などに関する技術を担当する。NTTコミュニケーションズは、ネットワーク、クラウド、マネージドセキュリティに関する技術を担当するほか、NTTグループの最新セキュリティ技術も活用する。(2019年12月16日付プレスリリースより)

車両遠隔操作技術開発会社「Ottopia」との協業
-イスラエルに本拠地を置く、自動車の遠隔操作技術を開発するOttopiaは、デンソーと遠隔操作ソリューションの分野で協業すると発表した。自動車の遠隔操作は、自動運転車がセルラー接続を失った時や悪天候の時などの複雑な状況に入った際に必要になるとされており、Ottopiaのプラットフォーム「Advanced Teleoperation」はこのような場合に人間と人工知能 (AI) による遠隔操作により、安全・スケーラブル・サイバーセキュアなソリューションとなる。(2019年6月18日付プレスリリースより)

テキサスにイノベーションコネクティッドセンターを新設
-最先端の研究開発ラボを使用して、コネクテッド技術と車両サービスソリューションを開発する。新拠点はDenso International Americaの販売およびエンジニアリング事業部門、Denso Products and Services Americas、デンソーテンのグループ3社の従業員が従事する予定。(2019年9月17日付プレスリリースより)

IVADOへの参画
-モントリオールのデータ解析機関Institute for Data Valorization (IVADO) に加入した。当該機関はデータサイエンスやオペレーションリサーチ、人工知能 (AI) などの最先端分野の専門知識を育成するために、民間研究者と学術研究者の共同活動を促進する役割を果たす。デンソーはこの中でIVADOの研究能力を活用することで、ディープラーニングやデータマイニング、サイバーセキュリティなどの研究をより深める狙い。(2019年7月11日付プレスリリースより)

スマートモビリティ・エコシステムを設立
-このプロジェクトで、地方自治体、州、企業、教育機関のパートナーと連携して、インフラ技術の試験と導入、付加価値を持ったモビリティサービスの創出、路上および歩行者の安全と移動時間短縮に不可欠な未使用データの収集を行った。スマートモビリティ・エコシステムを導入するために、ダブリン市と協力してラウンドアバウトや信号機の設置された交差点などのベータテストを行うほか、米国オハイオ州立大学や、予測V2I技術を作成したConnected Signals、人工知能 (AI) プラットフォームを開発したDERQ USA、AIベース交通信号プラットフォームNo Trafficと協業する。(2019年8月14日付プレスリリースより)

シアトルにサテライトR&D拠点を新設
-2019年7月、「シアトル・イノベーション・ラボ」を開設した。デンソーが保有する多様な車両データを収集・解析するための車載コンピュータや、車両データをクラウドコンピュータと通信で連携させる技術と、先進的なIT技術の融合を進める。
 

CASEへの注力に向けた既存事業の効率化


愛三工業への出資拡大
-デンソーと愛三工業は、部品事業の一部譲渡やデンソーによる愛三工業への出資拡大について検討を始めるとことで合意したと発表。デンソーと愛三工業は、燃料ポンプモジュールやインジェクター、電子スロットルなどをともに手がけている。今回、こうした重複分野を統合して開発力やコスト競争力を高めるとともに、浮いた経営資源を電動化やコネクテッド技術などの成長領域にまわす。デンソーは現在、愛三工業に8.7%出資している。今後、トヨタ自動車が保有する愛三工業の全株(28.8%分)を取得する方向で協議に入る。(2019年5月21日付日刊自動車新聞より)

ASMO North Carolina (旧アスモ米国拠点) の事業統合
-2019年4月1日でASMO North CarolinaはDenso Manufacturing North Carolina (DMNC) と名称を変更し、デンソーの北米モーター事業グループ傘下となる。(2019年4月1日付プレスリリースより)

 

2021年3月期の見通し

-コロナウイルス拡⼤の影響により、国内および海外事業において現時点での合理的な算出が困難なため未定。

 

研究開発費

(単位:百万円)
2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
日本 450,096 438,879 395,053
北米 30,380 31,185 26,838
欧州 12,467 12,536 12,271
アジア 14,013 13,760 12,108
その他 871 1,057 1,108
合計 507,827 497,417 447,378


ソフトウェアの開発体制強化を発表
-現在、グループ企業や外注先を含めて9千人いるソフトウエアの技術者を2025年までに1万2千人へ約3割増やす。世界の開発拠点をつないで24時間体制で開発を進め、先端部品をいち早く自動車メーカーに提案できる体制を整える。(2019年10月25日付日刊自動車新聞より) 

訪日外国人向けのMaaS実証実験に参加
-サービス事業者のニーズや必要な技術を見極め、関連技術の開発に役立てるのが狙い。デンソーや同社が出資するスタートアップのアクティブスケーラ社(米カリフォルニア州)、奈良交通、電通の子会社らが「くるり奈良」サービスを10月から年末まで提供する。シンガポールからの訪日客を対象とし、SNS(交流サイト)上で配信されている奈良の画像や投稿を人工知能(AI)が抽出して配信するアプリと、シンガポールから奈良までのさまざまな交通機関の大半を検索・予約・決済できるスマートフォン向けアプリを用意し、訪日外国人の利便性を高める。アプリにより、訪日外国人の観光範囲が広がったり、滞在日数が増えるかなどを検証する。(2019年9月21日付日刊自動車新聞より)

 

国内研究開発拠点

名称 所在地 主な事業内容
日本
先端技術研究所 愛知県日進市 次世代半導体、先端機能材料、ヒューマンマシンインターフェース、バイオ等の研究
Global R&D Tokyo 東京都港区 高度運転支援および自動運転、コネクテッド分野の研究開発
額田テストセンター 愛知県岡崎市 実車走行試験
岩手事業所 岩手県胆沢郡 半導体製品の研究・開発
新横浜イノベーションラボ 神奈川県横浜市 MaaS領域の技術開発
秋葉原イノベーションラボ 東京都千代田区 コネクティッドサービスの技術開発
東京事業所 東京都港区 車載半導体回路の開発・設計

 

製品開発

オルタネーター (発電器) の発電効率を約6%高めるダイオードを日立パワーデバイスと共同開発
-同社が生産するオルタネーターに順次、搭載していく。デンソーは世界10カ国以上で年間2500万個のオルタネーターを生産しており、すべてを新型ダイオードに切り替えると年間30トンの二酸化炭素 (CO2) 削減効果が見込めるという。まず、今年度中に発売される欧州車向けのオルタネーターから切り替えを始め、順次、世界の生産拠点にも導入していく。 (2019年5月24日付日刊自動車新聞より)

双方向給電装置「V2H-充放電器」
-電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド(PHV)向けの双方向給電装置である「V2H-充放電器」を開発したと発表した。当該製品は、EVやPHVを充電するほか、車両に貯めた電気を住宅に活用できるという。また倍速充電機能による充電時間の短縮や同社製の「HEMS」との連携による電力マネジメントも可能であるとしている。(2019年5月10日付プレスリリースより

 

設備投資額

(単位:百万円)
2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
日本 277,522 258,192 217,682
北米 46,086 60,270 43,778
欧州 26,121 25,506 30,772
アジア 84,225 69,456 52,749
その他 2,498 3,379 2,187
合計 436,452 416,803 347,168

-2020年3月期は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替および新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進。

 

設備投資額 2021年3月期の見通し

-コロナウイルス拡大の影響により、連結会社において2021年3月期の設備投資計画(新設・拡充、除却等)は決定していない。

 

国内投資

半導体センサー生産強化のため北海道子会社工場を拡張
-完全子会社のデンソー北海道(北海道千歳市)の工場を拡張し、自動車のエンジンやエアコン、ブレーキなどのシステムに使用される半導体センサーの生産体制を強化する。2025年までに約110億円を投じ、今後予想される自動車の電動化の進展と安全ニーズの高まりに伴うセンサー需要の拡大に向け、グループ競争力を強化するための生産体制を整える。拡張工事は20年7月に着工し、21年6月に完成させ、同年10月から順次生産を開始する計画。これにより、工場の延べ床面積は拡張前の約3万4300平方メートルから約5万2650平方メートルへ拡大し、従業員数も25年には現在の約1千人から約1150人へ増やす見込み。(2019年9月27日付日刊自動車新聞より)

 

海外投資

<インド>
-インド・グジャラート州政府と、スズキ、東芝、
デンソーの3社が共同で設立したAutomotive Electronics Power Private Limited (AEPPL)は10月14日、リチウムイオン電池の生産工場を拡張するための覚書を締結したと発表した。 AEPPLはベチャラジ (Bacharaji)拠点で2段階の投資を行う。第1段階では125億ルピー (約190億円)を投じて2020年末までにバッテリーパックとモジュール製造施設を建設し、約1,000名の現地従業員を雇用する。第2段階では372億ルピー (約570億円)を投資して2025年までに年間3,000万個のバッテリーセルを生産する計画。

<メキシコ>
-Mexico-Nowは、デンソーが6.7百万ドルを投じてメキシコFrontera工場で15,000平方メートルの拡張を行うと報じた。拡張工事は2019年8月初旬に開始され、2020年夏の稼働開始を目標に8~12カ月で完了させる予定。2001年に設立され現在975名の従業員を抱えるFrontera 工場は、今回の拡張で500名の新規雇用を予定している。(2019年7月23日付Mexico-Nowより

-メキシコの各種報道は、デンソーApodaca工場を拡張して500名を新規雇用し、従業員数を5,000名に増員すると報じた。Apodaca工場は、自動車用エアコンパネルやダッシュボードなどを製造し、VW、トヨタなどに製品を供給している。同社はApodaca工場のほか、従業員数750名のGuadeloupe工場と従業員数1,400名のSilaoの倉庫も保有している。(2019411日付各種報道より)

<中国>
-2019年5月24日、広州南沙経済技術開発区管理委員会と電装(広州南沙)有限公司[Denso (Guangzhou Nansha) Co., Ltd.](デンソー広州)は投資協定書に調印した。デンソー広州は少なくとも20億元を投資し、南沙に10万平方メートルの華南新工場を建設する。6月28日の着工予定で、自動車部品生産工場棟、品質測定センター、倉庫・物流センター、駐車場、オフィスエリアなどを建設する。新工場では車載コンピューターなどの自動車用電子製品を生産する。2021年稼働開始、2022年量産開始を目指す。(2019年5月28日付け複数メディア報道より)