曙ブレーキ工業 (株) 2020年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2020年 3月期 2019年 3月期 増減率 (%) 要因
売上高 193,317 243,668 (20.7) -北米での412億円の減収、および中国での57億円の減収等
営業利益 3,707 215 - -北米や中国での大幅な減収に対して、固定費削減・人員適正化・経費削減の施策が大きく寄与
経常利益 1,121 (2,808) -
親会社株主に帰属する当期純利益 24,855 (18,264) - -日本橋本店ビルの売却等による固定資産売却益59億円や、取引金融機関からの債務免除益560億円等の特別利益を計上


地域セグメント別業績

<日本>
ーOEMの主力車種の販売不振や補修品事業でのスペアパーツ等の売上減により、売上高は721億円 (前年比6.6%減)。利益面では、受注減による影響はあった一方、事業再生に向けた施策として、労務費や経費削減に加え、開発テーマ絞り込みによる効率化での固定費削減、年度後半からの原材料市況価格の下落、生産性向上、材料スクラップ率改善等の生産や調達の合理化効果があり、27億円の営業利益 (前年は営業損失6億円)。

<北米>
-OEMの新車販売不振に加え、主要車種の新規モデルへの切り換えに伴い受注を逃したことが大きく影響し、売上高は783億円 (前年比34.5%減)。利益面では、大幅な受注の減少による影響はあったものの、原材料市況価格の下落による影響、前年度に行った固定資産の減損損失計上による減価償却費の負担減少や、人員の適正化及び生産性改善による効果が出ており、35億円の営業損失 (前年は営業損失40億円)に留まった。

<欧州>
-高性能量販車用製品の受注増があったものの、摩擦材ビジネスやグローバルプラットフォーム (全世界での車台共通化) 車用製品の受注が減少し、売上高は142億円 (前年比10.3%減)。利益面では、スロバキア工場における生産性改善と品質の向上によるスクラップ費用の大幅削減や、基幹部品を欧州現地調達に切り替えるなど材料費の購入価格低減に取り組んだ結果、1億円の営業利益 (前年は営業損失7億円)。

<中国>
-米中貿易摩擦・新エネルギー車補助金減額等により、国内販売台数・生産台数とも減少。主要顧客からの受注減及び海外輸出向け製品の生産減により、売上高は162億円 (前年比26.0%減)。利益面では、生産性向上等の合理化活動や経費削減による効果が出ているものの、大幅な受注減や、高利益率製品の受注減による構成変化の影響が大きく、営業利益は11億円 (前年比53.0%減)。

<タイ>
-鋳物製品の生産移管により海外向けの売上増加があったものの、一部製品でモデルチェンジを控え在庫調整が行われた影響等もあり、売上高は75億円 (前年比5.5%減)。利益面では、生産性改善による合理化効果や減価償却費の負担減少等により、営業利益は6億円 (前年比3.4%増)。

<インドネシア>
-自動二輪車用新規製品の受注増や、前年度に立ち上がったMPV (多目的乗用車) 用製品の受注好調により、売上高は205億円 (前年比0.6%増)。利益面では、生産性改善や購入部品の内製化・現地調達への切り替え等の合理化効果により、営業利益は24億円 (前年比0.2%増)。

 

研究開発

-2020年3月期の研究開発費総額は2,991百万円。また、この他に日常的な改良に伴って発生した研究開発関連の費用は4,981百万円。各地域セグメントでの主な開発活動は以下の通り:

<日本>
1) ブレーキ摩擦材
-グローバルなニーズおよび米国ワシントン州を含む複数の州で条例化された銅に関する環境規制に対応する銅フリー摩擦材開発を中心に、高性能で音・振動特性に優れ、かつ昨今着目されてきているホイールダストの制御に挑戦しながら、環境に配慮した摩擦材原材料を使用した高品質な製品の開発を推進。同時に、低コスト化についても、性能や環境へ配慮しながら開発を推進。また、xEV車のブレーキ特性にあわせた摩擦材の開発を推進。

2) ディスクブレーキ
-高性能車両向け、環境対応、自動運転への対応、更には新構造ブレーキの開発取り組みを軸に開発に注力。

3) 環境に配慮した製品開発
-車の燃費向上の観点から革新的な軽量化と引き摺り低減に注力。自動運転に対応する為の電動化技術として、パーキングブレーキ機構を電動化した電動パーキングブレーキ製品及びサービスブレーキ機構も電動化した電動サービスブレーキ製品の技術開発を推進。また、電動パーキングブレーキにおいては、量産立上げに向けた事業化準備も併せて展開している。

4) 新構造ブレーキ
-ブレーキの基本構造を新たに開発。従来製品に対して、ブレーキが安定するほか、大幅な軽量化も企図。この開発を軸に低燃費車や電気自動車(EV)へのシフトに対応することを目指す。

5) 次世代コンセプトブレーキ開発
-摩擦ブレーキとは大きく異なる構造を持つMR流体 (Magneto Rheological Fluid) を用いた新発想のブレーキの開発を展開。応答性、コントロール性向上、摩耗粉ゼロ・鳴き振動制御による低環境負荷・快適性の追求、構造設計・軽量素材による小型・軽量化を研究開発戦略として推進。

<北米>
-北米OEM向けに限定せず、グローバルなニーズに対応できる製品開発に注力。米国ワシントン州を含む複数の州で条例化された環境規制に対応した、乗用車からピックアップトラック用まで高性能で音・振動特性に優れた材料開発を行っている。ブレーキの機構開発に関しては、新構造ブレーキ開発、電動ブレーキ開発を日本と連携しながら推進。

<欧州>
-摩擦材開発に関して、フランスの研究開発拠点を中心に、高速でのブレーキ特性に対応する高性能 (効き、ジャダー) 及び、音・振動特性など、環境規制の厳しい欧州市場に適合する摩擦材から日米市場向け輸出欧州車に適合する摩擦材まで幅広い顧客ニーズに対応できる開発を推進。

<中国>
-摩擦材においては、部品・原材料の現地調達化と現地の環境に適した製法により、新興国市場で通用するコストと性能特性を有する製品開発を推進。ディスクブレーキにおいては、中国市場の顧客の要求や使われ方を調査・分析し、必要な機能・性能を低コストで提供できる製品の開発と提案を実行。

<タイ>
-タイのブレーキ開発拠点を軸に、成長著しいASEAN諸国のニーズを的確につかむためのブレーキ評価を基軸とした開発活動を推進。

 

研究開発体制

拠点名 所在地 備考
日本
開発部門 埼玉県羽生市 -
テストコース 「Ai-Ring」 福島県いわき市 -自動車部品メーカーとして国内最大規模のテストコースを使った、ブレーキ関連の試験・評価受託など
(株) 曙ブレーキ中央技術研究所 埼玉県羽生市 -新素材開発
  • 超小型化、軽量化ブレーキの開発
  • 低環境負荷型摩擦材の開発
  • 希少材料代替の開発
-新分野の開拓
  • 独自の材料の開発
  • 省エネ技術の開拓
  • 表面処理技術など、モノづくりにおける新たな技術開拓
(株) 曙アドバンスドエンジニアリング 埼玉県羽生市 -高性能ブレーキシステムの研究開発
北米
Akebono Engineering Center 米国ミシガン州 -
欧州
Akebono Europe S.A.S. フランスゴネス市 -
Akebono Advanced Engineering (UK) Ltd. 英国ウォーキングハム市 -モータースポーツ用および高性能車両用ディスクブレーキ開発
Akebono Europe GmbH ドイツヘッセン州 -ディスクブレーキ開発
中国
中国開発センター - -2011年1月設立
タイ
タイブレーキ開発拠点 - -2014年1月設立
-ASEAN諸国向けのブレーキ開発

 

設備投資

-2020年3月期の設備投資総額は9,746百万円。その内訳は、日本4,807百万円・北米2,190百万円・欧州142百万円・中国341百万円・タイ537百万円・インドネシア1,729百万円。主な投資内容は、日本では曙ブレーキ岩槻製造㈱での新規立上げ投資、曙ブレーキ福島製造㈱と曙ブレーキ山形製造㈱でのインフラ投資、北米での新規立上げ投資、中国では中国資本の会社向けの新規立上げ投資、タイは鋳物工場の生産能力増強投資、インドネシアでは工場移転のための用地取得。なお、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う影響により、2021年3月期の設備投資計画は未定。

 

海外事業

<米国>
-2019年12月、Akebono Brake Corporationの事業を縮小し、4工場のうち2工場の生産を終了、閉鎖すると発表。閉鎖する拠点は、テネシー州のAkebono Brake, Clarksville Plant (ABCT) およびサウスカロライナ州のAkebono Brake, Columbia Plant (ABCS)。今回の閉鎖は、2019年9月に公表された事業再生計画に沿ったもの。閉鎖時期はABCTが2020年8月、ABCSが2020年9月を予定。