(株) アイシン (旧 アイシン精機 (株)) 2020年3月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2020年 3月期 |
2019年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
売上高 | 3,784,585 | 4,043,110 | (6.4) | -中国市場を中心にAT販売台数が減少。また新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。 |
営業利益 | 56,129 | 205,562 | (72.7) | -売上減少及び先行投資に係る償却費の増加、また事業処理費用(減損)により減益 |
税引前利益 | 53,395 | 217,486 | (75.4) | |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 24,061 | 110,123 | (78.2) | |
アイシン精機グループ | ||||
売上高 | 1,685,767 | 1,782,611 | (5.4) | - |
営業利益 | 30,253 | 67,007 | (54.9) | - |
事業動向
アイシン精機、アイシン・エィ・ダブリュと経営統合
-自動変速機 (AT) を手がけるグループのアイシン・エィ・ダブリュ (AW) と2021年4月に経営統合することで合意したと発表した。中国でのAT販売が急減速する中、経営効率を高めCASE (コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化) 関連の投資余力を生み出すためにも早期統合が不可欠と判断した。アイシンAWの株式を持つトヨタ自動車も両社の経営統合に合意し、来年4月にも保有するアイシンAW全株式をアイシン精機に譲渡する。その後、21年4月にアイシン精機とアイシンAWが合併する予定だ。存続会社はアイシン精機になる。(2019年11月1日付日刊自動車新聞より)
-同社は2019年4月1日付でアイシン・エーアイ (アイシンAI)とアイシン・エィ・ダブリュ (アイシンAW)を統合させており、アイシンAIはアイシンAWに吸収合併された。2021年4月のアイシンAWとの経営統合により、アイシンAI、アイシンAW、アイシン精機が統合されることとなる。
CASE関連事業
<自動運転関連部品売上拡大>
-2023年度までに自動運転関連部品の売上高を2千億円まで引き上げる方針を明らかにした。衝突被害軽減ブレーキやドライバーモニターシステムのほか、駐車支援やバレーパーキング (自動駐車) に用いるシステムの受注を見込む。アイシン精機は、バッグガイドモニターの画像処理やセンサーの技術を応用し、03年にステアリング操作が不要な駐車支援システムを実用化した。トヨタ自動車が今年2月に発売する「ヤリス」には、進化版としてアクセルやブレーキ操作も不要なシステムが採用された。トヨタは欧州で発売するヤリスにもこのシステムを搭載する予定だ。アイシン精機はこのほか、車両を降りたドライバーのリモコン操作で自動駐車を始めるシステムや、専用駐車場内を無人のまま自走して駐車するインフラ連携型のバレーパーキングを開発している。(2020年1月30日付日刊自動車新聞より)
<CASE事業拡大>
-CASE (コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化) のコネクテッドとシェアリングに焦点を当てた事業を積極化する。高齢者向け乗合サービス「チョイソコ」を来年末までに国内10都市で運用するほか、コネクテッド機能を使って、車両センサーから得た情報をもとに道路のメンテナンスを行う実証実験を開始。今夏にはシェアリング用途も見込む1人乗り電動小型モビリティ「ILY (アイリー) -Ai」も投入する。収益面では自動運転や電動化が軸になってくるが、自社で進められる事業が多いコネクテッドとシェアリングの領域でも収益化を目指す。同社は2023年度にCASE分野の売り上げを現在の約3倍になる1兆円に引き上げることを目指している。(2020年1月23日付日刊自動車新聞より)
<自動バレー駐車実証実験>
-アマノは同社との協業で、名古屋市内の一般駐車場で自動バレー駐車の実証実験を行うと発表した。カーシェアでの自動バレー駐車活用を想定した、一般ユーザーによる受容性評価を含めた実証実験を実施する。アマノはこれまで、ナンバープレート認識をはじめとする画像処理技術を活用した駐車場管制システムの研究・開発を進めてきた。この中で、AI (人工知能) を用いた画像解析技術を応用し、場内を走行する車両や歩行者の検知、測位を行う「カメラシステム」を開発した。このカメラシステムは、自動運転車両に対して、駐車場内の状況データを提供することで自動走行の安全性を補助する。(2020年1月29日付日刊自動車新聞より)
<新AI開発拠点開設>
-技術トレンドであるCASE対応に不可欠な人工知能 (AI) の開発体制を強化するため、福岡市博多区に新AI開発拠点である「九州開発センター 博多ラボ」を2020年5月に開設すると発表した。今回新設する施設では、AIを活用した画像解析により車両の周辺監視や乗員状態推定を行うソフトウェアの開発を行う。一方、2014年に開設した既存の九州開発センターでは、光や電波で物体検知を行うセンサーなどのハードウェアの要素技術開発や、実車を使用した試験評価を行う。(2019年12月5日付プレスリリースより)
移動中の広告表示に関する広告システム
-愛知県知多半島エリアの道路沿道で次世代広告システムの実証実験を2020年3月から実施する。同社が新たに開発した移動中の乗員ステータスを予測するリズムプラットフォームを使い、目的地や車の位置、道路の混雑状況などに合わせ、車内を楽しくする音声コンテンツや目的地とその周辺の店舗・施設の商品・サービスの魅力を伝える音声広告を随時配信。移動中の顧客に的確にアプローチするマーケティングを検証する。(2020年2月8日付日刊自動車新聞より)
AI分野での共同研究契約
-インド理科大学院 (IISc : Indian Institute of Science) と人工知能 (AI) 分野での共同研究契約を締結したと発表した。IIScは、タタ・グループの創始者により設立された科学技術の研究・教育機関。現状、AIの多くは設計時の想定を超える事態に適応できないという課題を抱えている中、両者は人間と同等の適応能力が実現可能とされるAIの汎用性 (Versatility) について研究を行う。アイシンのドメイン知識とIIScの高度な専門性を活用し、転移学習 (Transfer Learning) の一種である「教師なしドメイン適応 (Unsupervised Domain Adaptation)」の検討を10月より着手し、継続学習 (Continual Learning) の検討へと発展させる。同時に品質検査、予知保全、コネクテッドなどの分野への研究成果の適応も目指す。(2019年11月14日付プレスリリースより)
-カナダのAI(人工知能)スタートアップと組み、AIの「説明可能性」に関する共同開発を始めると発表した。AIをベースとしたサービスを企業に提供するエレメントAI社(EAI)と組んだ。AIは膨大なデータを学習して的確な判断を下せる一方、判定の過程が人間に分からないという「ブラックボックス問題」があり、差別を助長する恐れなどが指摘されている。AIを自動車や部品の生産技術に応用した場合も、判定根拠がわからず品質が逆に低下する懸念があるという。アイシン精機はEAIと開発を進めることにより、こうした弱点を克服し、AIの積極的な活用を進めていきたい考えだ。(2019年10月21日付日刊自動車新聞より)
道路維持管理サービスの実証実験
-アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュ(AW)は、岡崎市とともに道路維持管理サービスの実証実験を2019年10月2日より開始すると発表した。走行車両で収集したデータから道路の異常を検知し、その情報提供、補修に向けた計画支援、対策実施といった道路の維持管理のトータルサービスとなる。この取り組みの中でアイシングループは、コネクテッド技術、センサー情報分析技術を用いて車両で収集したデータを活用することにより、道路パトロール業務、管理者の補修計画作成業務を支援するサービスを提供する。(2019年9月27日付プレスリリースより)
グループ内ソフトウェア開発子会社を統合
-グループのソフトウエア開発会社2社を10月1日に統合することを正式に決めたと発表した。アイシン・コムクルーズ (名古屋市中村区) とエィ・ダブリュ・ソフトウェア (伊藤康伸社長、北海道札幌市) を統合し「アイシン・ソフトウェア」を設立する。新会社は愛知県刈谷市に本社を置き、社長にはエィ・ダブリュ・ソフトウェアの伊藤氏が就く。資本金は9800万円。出資比率はアイシン精機が58.9%、アイシン・エィ・ダブリュが41.1%になる。新会社は国内6カ所に事業拠点を持ち、従業員数は735人 (予定) になる。アイシングループはグループ内の経営資源を集約し、開発力や効率を高める取り組みを急いでおり、今回の経営統合もこの一環だ。(2019年8月30日付日刊自動車新聞より)
2021年3月期の見通し |
-2021年3月期の見通しは現時点で未定。
研究開発費 |
(単位:億円) |
2020年3月期 | 2019年3月期 | 2018年3月期 | |
アイシン精機グループ | 836 | 810 | 745 |
アイシンAWグループ | 962 | 920 | 803 |
アドヴィックスグループ | 228 | 223 | 201 |
アイシン高丘グループ | 13 | 12 | 12 |
その他 | 16 | 54 | 66 |
合計 | 2,058 | 2,021 | 1,829 |
研究開発の主な成果
- トヨタ新型BEV(電気自動車)車両「C-HR」「IZOA」、レクサスBEV「LEXUS UX300e」向けにe-Axleを搭載
- トヨタ「ヤリス」向けにステアリング、アクセル、ブレーキ操作を不要とする自動駐車技術を搭載
アイシンAWにコネクテッド&シェアリングソリューションズ本部を設置
-2019年10月より愛知県岡崎市にて道路パトロール業務及び補修計画作成業務支援サービスの実証実験を開始。これまでのナビゲーションシステム及びコネクテッド技術を活用する。
研究開発活動
自動運転コンセプトカー
「i-mobility TYPE-C 20」をCES 2020で世界初公開すると発表した。「i-mobility TYPE-C 20」は、センサーが車内外周辺の障害物や乗員をモニタリングし、安全で快適な移動を提供する自動運転コンセプトカー。またCES 2020では、eAxleなどの電気自動車向けの製品をはじめ、床下のバッテリー収納スペースと床上の室内スペースを最大限に活用できる「電動薄型スロープ」や「ロアレールレスパワースライドドア」など電気自動車に最適化した車体部品も出展。このほか、様々なデータを活用してサービスを提供する「位置情報活用サービスプラットフォーム」やカーナビ技術をベースにした「物流支援システム」、アクチュエーターからデータを吸い上げて路面状態を推定する「アクチュエーター情報活用技術」、パーソナルモビリティ「ILY-Ai」なども公開。(2019年12月13日付プレスリリースより)
フランクフルト・モーターショー 電気自動車向けソリューションの展示
-熱マネジメントや軽量化などの電気自動車 (EV) に貢献する製品をフランクフルト・モーターショーに出展すると発表した。電動駆動モジュール「eAxle」、電動ポンプ、回生協調ブレーキ、アルミバッテリーフレームなどのEV向けの製品を「アイシンEVシステム」として紹介する。電動ウォーターポンプについては、小型汎用からFCスタック冷却用までの6種類の展示を行う。また、アイシン精機とデンソーの合弁会社BluE Nexusも出展し、電動車向け駆動モジュールのラインナップや1モーターハイブリッドトランスミッションなどを披露する。(2019年9月5日付プレスリリースより)
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2020年3月期 | 2019年3月期 | 2018年3月期 | |
アイシン精機グループ | 118,235 | 169,028 | 122,582 |
アイシン高丘グループ | 27,469 | 28,187 | 19,606 |
アイシンAWグループ | 107,418 | 144,991 | 87,383 |
アドヴィックスグループ | 39,844 | 32,935 | 19,082 |
その他 | 3,465 | 16,386 | 12,133 |
消去 | (5,787) | (1,597) | (473) |
合計 | 290,646 | 389,932 | 260,315 |
海外投資
<中国>
-広汽伝祺とアイシンAWの合弁会社「広汽愛信自動変速器有限公司」(広汽アイシンAW)は2019年5月28日、広汽智聯新能源汽車産業パークで正式に着工した。広汽アイシンAWは2018年12月23日に定礎式を開催。主に6速オートマチックトランスミッションを生産する。2020年末までに量産を実現させる計画。完成すれば年産高は35億元を超え、年産能力は40万台に達する見込み。(2019年5月31日付けリリースより)
-中国における乗用車用オートマチックトランスミッション (AT) の生産量拡大に対応するため、安徽环新集团有限公司との合弁で「愛信 (安慶) 汽車零部件有限公司」を設立したと発表した。AT用トランスミッションケースなどのアルミダイカスト部品の生産を行う。資本金は2億3700万元 (約40億3千万円) で、出資比率はアイシンが85%、安徽环新集团有限公司が15%。来年8月の生産開始を予定している。アイシングループは中国で唐山、台州、佛山のアルミダイカスト生産工場から中国各地のATやエンジンの生産工場に部品を供給している。新会社の設立で、主に華東地区のグループ内AT生産工場への供給能力を増強する。建屋面積は2万9400平方メートルで、従業員数は20年末で約150人の予定。(2019年4月18日付日刊自動車新聞より)
<タイ>
-タイ現地法人Aisin Asia Thailandが2022年までに年間売上高を20億バーツまで到達させる3カ年計画を発表したと報じた。タイおよび周辺諸国向けのアフターマーケット用の部品供給に重点を置き、2019年度には10億バーツの売上高を目標とするという。同社よると、年間売上高の約70%はタイ国内で、残りはカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムなどの周辺諸国から来ているとし、それらの国々では多くの自動車が中国から輸入されているため、特にアフターマーケット用部品供給事業については可能性を秘めているという。 (From an article of Bangkok Post on May 15, 2019)
設備の新設計画 |
-2021年3月期の設備投資予定額はコロナウイルス感染症拡大の影響により未定。