※英GlobalData社 (旧LMC)のアナリストによるショートレポート (5月24日付) をマークラインズが翻訳したものです。
・アルゼンチンの自動車産業は2023年下半期から続く経済問題の影響で、生産減に追い込まれている。2024年第1四半期の生産は3カ月連続で前年同月比マイナスとなった。足元の2024年通年生産見通しは前年比5.5%減であるが、問題が長期化すればさらにその傾向が強まると予想される。本稿の目的は、こうした経済問題が同国のライトビークル(乗用車+ライトトラック)生産台数に与える影響を多面的に分析し、その背景説明とともに、最新の動向をシェアすることである。
・2023年下半期からアルゼンチンを悩ます経済問題は、サプライヤーに債務を支払うための外貨を取得するのが困難なことに起因する。外貨不足により、生産に必要な部品の確保が不安定となり、その余波が自動車産業全体に広がっている。そして、2次サプライヤーからも部材を確保するという課題が不安定な状況をさらに悪化させ、自動車メーカーは予断を許さない状況に置かれている。
・2023年末に生じた主な例として、2023年第4四半期にシボレー「トラッカー(Tracker)」の生産に影響を与えたGMのロサリオ(Rosario)工場での10日間の稼働休止が挙げられる。ルノー・日産・三菱のコルドバ(Cordoba)工場、およびフォード・グループのヘネラル・パチェコ(General Pacheco)工場にも2023年末に影響が及んだ。フォードは新世代ミッドサイズピックアップ「レンジャー(Ranger)」を生産する同工場への影響を抑えるべく、工場の休暇期間を前倒しして、2024年1月末に新型「レンジャー」生産を再開させた。ルノー・日産・三菱のコルドバ工場では、当初2023年末までと想定された休止期間が2024年第1四半期まで続いた。同工場は2024年2月に生産を再開してからも、断続的な生産休止を余儀なくされている。
・2024年に入ると、他の自動車メーカーもこの包括的な問題に頭を抱える事態となり、特にVWグループとGMが輸入部品を確保できなくなった。段階的な稼働再開、休暇期間の延長、シフトの削減、生産再開の遅れという形で影響が及んだ結果、アルゼンチン全体で生産が減少した。例えば、ピックアップトラック「アマロック(Amarok)」とSUV「タオス(Taos)」を生産するVWグループのパチェコ(Pacheco)工場では、1月に始まった休止期間が3月下旬まで続き、シフトを減らして稼働を再開。GMのロサリオ工場は生産を4月中旬に再開したものの、4月最終週に再び休止となったため、シボレーのサブコンパクトSUVの「トラッカー(Tracker)」の生産に影響が出た。
・国内での供給制約の高まりに加え、主要な輸出市場での販売が減少したことから、自動車メーカーはさらなる生産縮小に踏み切った。トヨタグループのサラテ(Zarate)工場では、チリ、ペルー、コロンビアを含む主要な仕向け国への輸出が縮小する見込みであることから、希望退職者を募る事態に直面している。今年予想される生産面の制約と相まって、サラテ工場の短期的な見通しは暗い。ルノー・日産・三菱のコルドバ工場もまた、市場縮小の圧力がレイオフ実施という結果につながっている。
・アルゼンチンの自動車産業は、生産台数の減少や経済不安の要素により、不安定な時期を迎えている。上図に示す2024年の生産台数見通しは、これを反映したものとなっている。自動車生産の不安定化が長期化するおそれや経済的逆風を乗り切るために必要な戦略調整に対処していくことが自動車産業に求められている。足元の経済問題は2025年頃に改善される可能性が高いものの、2026年までに国内の主要モデルがライフサイクル末期を迎えるため、2025年通年の販売見通しとしては前年比横ばいが予測される。
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