株式会社デンソー 2006年度の動向

ハイライト

業績
単位:億円 2007年
3月期
2006年
3月期
増減率 (%) 主な要因
全社
売上高 36,097 31,883 13.2 国内・海外における堅調な日系車生産と積極的な営業活動による
経常利益 3,221 2,831 13.8 売り上げ増加による操業度差益に加え、コスト低減努力など経営全般にわたる合理化・効率化に取り組む
当期純利益 2,052 1,696 21.0 -
自動車部門
売上高 34,890 30,668 13.8 下記製品グループ別売上高を参照

自動車分野・製品グループ別売上高
単位:億円 2007年
3月期
2006年
3月期
増減率 (%) 主な要因
熱機器 11,380 10,318 10.3 輸出増、欧州顧客への拡販
パワトレイン機器 8,301 7,335 13.2 欧州でのディーゼルコモンレールシステムに加え、ハイブリッド関連製品が好調
情報安全 5,839 4,998 16.8 北米でのカーナビ拡販、車のエレクトロニクス化進展に伴いメータ、リモートキー等が好調
電気機器 3,300 2,661 24.0 オルタネータ等電装品に加え、ハイブリッド関連製品および電動パワーステアリングECU等の安全関連製品の拡販による
電子機器 3,107 2,700 15.1 国内車両生産増、車のエレクトロニクス化進展に伴う各種ECU、センサ等が好調
モータ 2,488 2,247 10.7 ワイパシステム、パワーシート用モータ、スライドドアクローザー用モータの拡販
その他 475 407 16.7 -
合計 34,890 30,669 13.8  

地域別売上高
単位:億円 2007年
3月期
2006年
3月期
増減率 (%) 主な要因
日本
売上高 25,413 22,890 11.0 車両生産台数の増加および海外生産用部品等の輸出増加
営業利益 2,153 2,077 3.7 原材料価格高騰の影響を受けたものの、売上増加による操業度差益、合理化努力、為替差益等
北中南米
売上高 7,691 6,904 11.4 日系車両生産台数は前年並みだったが、拡販に成功
営業利益 292 219 33.4 売上増加による操業度差益、合理化努力
欧州
売上高 5,193 4,230 22.8 日系車および欧州車への拡販
営業利益 122 16 682.6 チェコおよびハンガリーでの売上増加および合理化努力等の大幅な採算改善
豪亜
売上高 4,802 3,951 21.5 タイ・中国の日系車、韓国車が好調
営業利益 459 367 25.1 売上増加による操業度差益、合理化努力

受注
2006年9月に発売されたレクサス LS460用向けに以下の新製品を納入。
- 電動可変バルブタイミング(VVT-iE)システム
- 新プリクラッシュセーフティ(PCS)システムに用いられる、ステレオ画像処理ECU、走行支援ECU、前方ミリ波レーダ、プリクラッシュシートベルトECU
- 新エアコンシステム
- リモートセキュリティシステム
- 電源制御ECU
>>> 開発動向欄参照

新会社設立
2006年10月、独ロバート・ボッシュとディーゼル車の排ガス後処理装置であるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の合弁開発・生産会社を東欧に折半出資で設立することに合意。
>>> 開発動向欄参照

2006年12月、豊田自動織機と同社との米国合弁会社で、カーエアコン用のコンプレッサーを生産するティーディー・オートモティブ・コンプレッサー・ジョージア(TACG、ジョージア州)が、同社工場で開所式を行った。
>>> 設備投資欄参照

2007年1月、アイシン精機、トヨタ紡織、同社のトヨタグループ3社は、中国広東省佛山市の部品製造会社2社の合同開業式を行ったと発表。
>>> 設備投資欄参照


事業再編
阿久比製作所に子会社デンソーエレックスの事業を集約すると発表。デンソーエレックスは、デンソーウェーブが開発した各種バーコードリーダやICカードリーダなどの電子製品や産業用ロボットを製造している。阿久比製作所内にバーコードリーダ、ICカードリーダなどを生産する新工場を建設し、高棚製作所内にあるデンソーエレックスの本社機能と電子製品製造工場を新工場に移転する。これによってデンソーエレックスの事業は阿久比製作所内に集約する。また、2007年度以降にデンソー本社地区にあるデンソーウェーブの開発部門も阿久比製作所内に移転する予定。こうした集約で同社は、同製作所をグループのメカトロニクス拠点にしていく方針。(2006年6月2日付日刊自動車新聞より)

事業計画
2015年までの10カ年経営指針「デンソー・ビジョン2015」を達成するため、今後5年間の活動計画をまとめた「2010長期構想」を策定した。2010年までに売上高4兆円以上、ROE10%以上を目指す。具体的には、商品開発では、市場が高機能化、低コスト化に二極化しているため、これに対応した商品開発を実施するとともに、システムとコンポーネントの両方で、「世界一」と「世界初」を目指した開発を展開していく。モノづくりの分野では、品質を最重点課題として、市場での“不良ゼロ”を目指した活動を徹底するとともに、安全な職場環境の実現に力を入れる。また、グローバル展開を加速していることから、海外の人材の知恵を活用して世界各極での開発・設計の実施やグローバルで、生産品目を集中・分散させることで、為替変動に強い事業構造の実現を目指す。さらに、海外事業が広がっているため、現地だけでマネジメントできる体制づくりの構築も目指す。(2006年7月29日付日刊自動車新聞より)

カーエアコンの世界販売シェアを、2010年度に2005年度実績の30%から35%に引き上げる。新興国や米国など海外での日本メーカー車の販売が同年度に向けて大幅に増加する見通し。同社のカーエアコン販売も、2005年度実績の1,628万台から2010年度に2,200万台に増加する。同社は、2010年度のカーエアコン世界市場を2005年度比約16%増の6,280万台程度と見ており、市場の伸びを上回って販売が増加する。(2007年2月19日付日刊自動車新聞より)

環境対策
「グリーン調達ガイドライン」を改定し、すべての仕入先に対象を拡大するとともに、仕入先にグリーン調達活動の強化を求めると発表した。同社グループのグローバルで展開している事業活動で、サプライチェーン全体での環境負荷物質の使用・排出を低減するのを狙いに、内容を改定した。新しいグリーン調達ガイドラインでは、対象を部品、材料、副資材の仕入先から、設備、工事、物流などに関する仕入先を含むすべての仕入先に拡大する。その上で、仕入先に求める取り組みの項目について、従来からの環境マネジメントシステムの項目、環境負荷物質の管理と削減の2項目に加えて、仕入先の生産段階での環境改善への取り組み、ライフサイクルアセスメントへの対応、物流にかかわるCO2(二酸化炭素)排出量や梱包・包装資材の低減の3項目の活動を促し、活動の強化を求める。(2006年8月24日付日刊自動車新聞より)

同社が経済産業省に申請していた「クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクト」がこのほど、政府の「京都メカニズム推進・活用会議」に承認され、政府の正式プロジェクトとなった。今後は経産省がプロジェクトを支援し、ホスト国と国連が指定する運営機関の承認を目指す。CDMプロジェクトは、先進国とホストの途上国が共同で二酸化炭素(CO2)の排出削減事業を実施し、その削減分を投資した先進国が自国の削減目標の達成に利用できる制度。今回承認されたのは、同社が申請したマレーシア工場でのエア消費設備・エア供給施設の省エネ診断と改善。プロジェクトは今後、マレーシア政府や国連の指定する運営機関などの承認を経て、正式に発効する見通しだ。(2007年3月26日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費用

単位:  億円

2007年
3月期
2006年
3月期
2005年
3月期
2004年
3月期
2003年
3月期
全社 2,799 2,563 2,382 2,149 1,829
自動車分野 2,707 2,492 2,324 2,080 1,779


研究開発体制
 2010年までに全世界の開発人員を2004年時点に比べ3,590人増やす方針を明らかにした。国内で2,700人、海外で890人を増やす。国内での基礎研究開発を強化する一方、アプリケーション開発を現地化し、海外で事業を拡大する日系自動車メーカーなどのニーズに対応していく。(2006年12月8日付日刊自動車新聞より)

中国やインドを始めとした新興市場の拡大に伴い、地域のニーズにきめ細かく対応した製品開発を強化するため、タイのバンコク近郊にテクニカルセンターを設立することを2007年2月に決定。

技術提携
独ロバート・ボッシュとディーゼル車の排ガス後処理装置であるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の合弁開発・生産会社を東欧に折半出資で設立することについて合意したと発表した。設立は2007年初頭、2009年にコージェライト製DPFの生産を開始する予定。欧州では2008年中に施行が見込まれる次期排ガス規制「ユーロ5」に伴い、PM(粒子状物質)を浄化するDPFの新車装着が事実上、標準化する見通し。燃料噴射装置を始めとしたディーゼルエンジン用ユニットの世界大手である両社は、早期にDPFの性能、コストを両立するためにアライアンスを結び、技術、生産ノウハウを共同活用する。(2006年10月27日付日刊自動車新聞より)

新製品開発
2006年9月に発売されたレクサス LS460用に、「環境・安全・快適・利便」の4つの重点分野において、以下の新製品を開発。

環境:世界初のモーター駆動による電動可変バルブタイミング(VVT-iE)システムを開発、燃費低減や排気ガス中の有害物質低減に貢献。

安全:新プリクラッシュセーフティ(PCS)システムに用いられる、ステレオ画像処理ECU、走行支援ECU、前方ミリ波レーダ、プリクラッシュシートベルトECUを開発。

快適:後席乗員の表面温度を検知する世界初の赤外線センサを用いた、新エアコンシステムを開発。

利便:世界初のリモートイモビライザ機能を持つ、リモートセキュリティシステムを開発。

その他:電力を要する情報関連機器の搭載数増加に対応した電源制御ECUを開発。

技術導入契約(2007年3月時点)

会社名 契約品目 契約内容 契約期間
ドイツ Robert Bosch GmbH -アンチロックブレーキ
-トラクションコントロールシステム
-ビークルスタビリティコントロール
-パワーアシストブレーキ
特許実施権の受諾 2005年5月~2020年3月
日本 (株)日立製作所 -ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年1月~
2012年12月
米国 Delphi Corporation -ガソリンEMS 特許実施権の許諾 2006年5月~
2026年5月
日本 日本精機(株) -計器装置 特許実施権の許諾 2007年3月~
2022年12月

設備投資

設備投資費用
単位:  億円 2007年
3月期
2006年
3月期
2005年
3月期
2004年
3月期
全社 3,125 2,887 2,353 1,965
自動車分野 3,101 2,844 2,329 1,942

2008年3月期の設備投資計画は全社で3,530億円。
そのうち自動車分野では3,510億円を投資予定。 生産拡大対応に加えて、製品の小型軽量化・機能アップを実現する製品の次期型化に必要な投資を重点に置く。

国内投資
エアバッグなどの安全システムや、電動パワーステアリングなどの省燃費システム装着率上昇に伴う、ECUの需要拡大に対応するため、幸田製作所に増設したICウエハ工場の稼動を2006年6月に開始。

デンソー北九州製作所において、コモンレールシステムの構成品であるインジェクタの重要機能部品の生産を2006年12月より開始。
→既に本格稼働中の善明製作所、タイのサイアム・デンソーマニュファクチュアリング社を加えた、世界3極での供給体制を強化。

海外投資
中国
アイシン精機、トヨタ紡織、同社のトヨタグループ3社は、中国広東省佛山市の部品製造会社2社の合同開業式を行ったと発表した。開業式を行ったのは、アイシン精機の子会社、愛信精機(佛山)車身零部件有限公司と、トヨタ紡織と同社の合弁会社、佛山豊田紡織汽車零部件有限公司の2社。愛信精機(佛山)は2006年5月から電動サンルーフ、パワーシートのモーターハウジングを生産している。佛山豊田紡織は、オイルフィルターを同年7月から中国国内とアジア向けに生産しており、2007年には欧州向けの生産も開始する。愛信精機(佛山)は2007年に約3億7,700万元(約56億7千万円)、佛山豊田紡織は同年に約1億元(同15億円)の売り上げを見込む。(2007年1月24日付日刊自動車新聞より)

トルコ
トルコでカーエアコンを生産するデンソー・オートモーティブ・パルカラリ・サナイ(DNTR)社の新工場を建設し、生産能力を増強すると発表。新工場は2007年8月に操業開始予定。現在DNTRは、カーエアコンを年産14万台生産しているが、新工場の建設で、2010年までに生産能力を25万台に引き上げる計画。新工場では、カーエアコンのほか、スターター、オルタネーターも生産する。07年度までの総投資額は約24億円。(2006年4月6日付日刊自動車新聞より)

ハンガリー
欧州で需要が拡大しているディーゼル車のコモンレールシステムの生産能力を増強するため、ハンガリーの生産拠点、デンソー・マニュファクチャリング・ハンガリー(DMHU)を拡張すると発表した。2007年4月に着工し、2008年1月から稼働する予定。総投資額は3,830万ユーロ(約57億円)。これにより、生産能力は現在の年間65万台から年間100万台程度になる見込み。(2006年11月17日付日刊自動車新聞より)

スペイン
欧州でのカーエアコン販売拡大に対応するため、2006年4月にデンソー・システマス・テルミコス・エスパーニャ社の稼動を開始。

米国
ケンタッキー工場を拡張すると発表。約31億円を投じて、燃料噴射部品を増産する。2007年6月の稼働を目指し、2010年度には売上高を2005年度実績の2倍強に引き上げる。拡張するのは、キョウサン・デンソー・マニュファクチャリング・ケンタッキー(ケンタッキー州マウントスターリング市)。31億円をかけて敷地内に建屋面積7,850平方メートルの工場を増設、自動車用フューエルポンプモジュールおよびその構成部品であるフューエルフィルター、フランジ(つば)などを増産する。拡張に伴い、7月には約18億円を増資した。今月から着工し、2007年3月までに完成、生産準備に入る。2005年度の売上高は約84億円だったが、2010年度には180億円に引き上げる。(2006年8月9日付日刊自動車新聞より)

豊田自動織機と同社との米国合弁会社で、カーエアコン用のコンプレッサーを生産するティーディー・オートモティブ・コンプレッサー・ジョージア(TACG、ジョージア州)が、同社工場で開所式を行った。TACGは、豊田自動織機と同社による北米2番目のコンプレッサー生産会社として、2005年12月から可変容量型コンプレッサーの生産を開始している。現在は、トヨタの「カムリ」やクライスラーの「セブリング」などに向けて供給しており、2006年度は95万台を生産するほか、2010年までには年間200万台を生産する計画。(2006年12月2日付日刊自動車新聞より)