SAE 2011 World Congress: 自動車メーカーの展示取材

Charging forward togetherをテーマにChevy Volt、日産 LEAFなどのEVが出品

2011/04/28

要 約

 以下は米国デトロイトで開催されたSAE 2011 World Congress (2011年4月12日~14日,以下SAEショー)で、自動車メーカー6社 (GM, Ford, Chrysler, Hyundai/Kia, ホンダ,日産)が展示紹介した新技術、新車両の概要である。

 今年のテーマは"Charging forward together"。会場には充電(Charge) して走る電動車両を普及させ、停滞していた景気から前に突撃 (Charge) しようという意気込みが感じられた。今年の自動車メーカーのブースは昨年と同数の6社であったが、サプライヤーの出展数は景気の回復を反映し、昨年の約100社から約140社に増えた。だが一昨年は約300社であったことから、景気回復は道半ばと言えよう。

 自動車メーカー各社が出展した内容は次の通り。(順不同)



GMはChevy VOLTなどの電動車両とVOLT搭載のLiイオン電池を展示

 GMはPHEV (Extended-Range Electric Vehicle) のChevy Volt とVoltに搭載されているLiイオン電池を展示した。昨年12月からカリフォルニア州やテキサス州などで先行販売を開始したVoltは今年の年末までに全米50州でオーダーできるようになるとのこと。

GMのChevy Volt
GMのChevy Volt

Voltが搭載している発電専用の1.4Lエンジン
Voltが搭載している1.4Lエンジン

EVとしての「電気使用量」とPlug In充電により節約できるガソリン代に関する説明
EVとしての「電気使用量」とPlug In充電により節約できるガソリン代に関する説明


 VoltのLiイオン電池にはLG Chem社製のセルが採用され、また全長165cmの電池本体には米国Continental Structural Plastics (CSP) 社のコンポジット製カバーが使われており、カバーの内部は水冷により温度調節されているとのこと。

LG Chem製のセルが200個以上搭載された1.6kWhのVolt用Liイオン電池
LG Chem製のセルが200個以上搭載された1.6kWhのVolt用Liイオン電池

Voltが搭載するLiイオン電池のCSP社のコンポジット製カバー
Voltが搭載するLiイオン電池のCSP社のコンポジット製カバー


 GMはこの他に、2011年後半に市販予定のBuick Regal eAssist TM , Cadillac Urban Luxury Concept, GMC Granite Conceptの3車を展示した。

 Buick Regal eAssistは、ECOTECと呼ぶ直噴2.4Lエンジンと6速ATに、発電機兼モーター (11kWのエンジンアシストと、15kWの回生ブレーキによる充電を行う)、空冷Liイオン電池 (115V) を搭載し、city/hwy燃費26/37mpgを達成。2.4Lのガソリンモデル (20/30mpg) と比べ約25%向上させた。

Buick Regal eAssist
Buick Regal eAssist

Buick Regal eAssist搭載エンジンとコントロールユニットと発電機・兼モーター
Buick Regal eAssist搭載エンジンとコントロールユニットと発電機兼モーター


 Cadillac Urban Luxury Conceptは昨年11月のLAオートショーに出展したもので、ホイールベース2,467mm/全長3,835mm/全幅 1,786mm/ 全高 1,536mmの小型4人乗り車。Scissor (ハサミ) 式と呼ぶドアは外側に引き出してから前方に回転するタイプ で, スペースの狭い駐車場での乗降に威力を発揮すると思われる。

Cadillac Urban Luxury Concept
Cadillac Urban Luxury Concept


 GMC Granite Conceptは昨年のデトロイト・オートショーにも展示されたホイールベース2,631mm/全長4,097mm/全幅 1,730mm/ 全高 1,446mmの小型SUVで、センターピラーのない観音開きのサイドドアが特徴。1.4Lターボ付き直4エンジンと6速ATを搭載する。

GMC Granite Concept
GMC Granite Concept

 



日産はHEVのINFINITI M35hと EV LEAFを出展

 日産は今年3月から米国で販売を開始したHEVのINFINITI M35h(日本名FUGA)を展示した。縦置きV6エンジン(単体で302hp、258lb・ft)は3.5Lのアトキンソンサイクルで、Vバンクの左右にそれぞれ1個ずつのスロットルチャンバーを、また吸排気にそれぞれ可変バルブタイミング機構を持つ。エンジンと7速ATの間にモーター(50kW、199lb・ft)兼発電機を配し、発進時にはモーターだけで走行し、さらにモーター走行で62mph(約100km/h)まで到達が可能とのこと。

 7速ATはトルコンを使わず、エンジンとモーターの間にクラッチ1を置き、ATの後部にクラッチ2を配して動力を伝える。システム出力は360hp。Liイオン電池のモジュール1個は8個のセルから成り、電池パックは12個のモジュールから成る。1.4kWh(346V)のLiイオン電池はトランクルーム床下に搭載されており、またインバーターはエンジンルーム内に置かれているとのこと。

 M35hはこの他、ACコンプレッサーも電動化、アイドリングストップや回生ブレーキの採用、操舵時のみモーターが動く電動油圧式パワーステアリングを搭載している。city/hwy燃費 は27/32mpgで、3.7Lのガソリンモデル (18/26mpg) と比べcity燃費では50%向上している。

M35hに搭載されたエンジン、モーター、7速ATとLiイオン電池。最高出力は360hp
M35hに搭載されたエンジン、モーター、7速ATとLiイオン電池。最高出力は360hp

Liイオン電池はトランクルーム床下に取り付けられる
Liイオン電池はトランクルーム床下に取り付けられる


 日産はEV LEAFとLiイオン電池を展示。LEAFは昨年12月に米国、日本で同時販売された。日産は来年から北米でも生産を開始するとのこと。LEAFと主なEV、PHEVの仕様は下表の通り。

  NISSAN LEAF CHEVY VOLT TOYOTA
PRIUS PHEV
HONDA FIT EV
(Concept)
最高出力
(hpはメートル法)
80kW
(109hp)
110kW
(149hp)
100kW
(136hp)
92kW
(125hp)
最大トルク 280Nm 370Nm --- 256Nm
電池容量 24kWh 16kWh
(365V)
5.2kWh
(345.6V)
---
(288V)
燃費 (mpg)
city/hwy
106/92
(ガソリン換算)
EPA測定
93 (EV mode)
37 (Gasoline only)
60 (総合)
EPA測定
135 (PHEV,JC08)
72 (HEV, JC08)
---
航続距離 73mile (EPA) 375 mile --- ---


日産 LEAF
日産 LEAF


 LEAFの床下に置かれる容器には48個のモジュールが搭載され、個々のモジュールはLiイオンの電池セル4個で構成される。容器はゴムのガスケットを介し鉄板の上下カバーで密閉され、外部からの水の浸入を防いでいる。電池容器には内部冷却機能は付いていない模様。

LEAFの大型電池配置
LEAFの大型電池配置

電池容器に収められたモジュール
電池容器に収められたモジュール

 



Fordは新型Explorerの車両カットモデルやECO BOOSTエンジンを展示

 Fordは2011年North American Truck of the Yearを受賞したExplorerのカットモデルを展示し、搭載部品の紹介を行なった。フロントバンパービームやA、Bピラーには耐衝撃性やルーフクラッシュ性向上のためボロン鋼を使ったとしている。またフロントサイドメンバには閉断面のハイドロフォームが使われている。

新型Explorerのカットモデル
新型Explorerのカットモデル

採用した技術の紹介パネル
採用した技術の紹介パネル

バンパービームとFront End Supportの断面
バンパービームとFront End Supportの断面

ハイドロフォーム のフロントサイドメンバ
ハイドロフォーム のフロントサイドメンバ


 2011年型Explorerには3.5L自然吸気V6エンジンが設定され、EcoBoostと呼ばれる水冷ターボ付2L直噴 (DI) 直4エンジンが追加されるとのこと。いずれも吸気と排気に可変バルブタイミング機構 (Ti-VCT)を持つ。

 EcoBoostエンジンには、Taurus SHO、Lincoln MKT、Lincoln MKSなどに搭載されているV6 3.5Lも用意され、F150やFord Flexにもこれから搭載予定とのこと。このEcoBoostエンジン3.5L バージョンはTi-VCT を持ち、2基の水冷式ターボを備えた直噴DOHC 4弁エンジンで、最高出力355 hp (265 kW) 、最大トルク 350 lb・ft (475 N・m) で、ターボ過給エンジンでも直噴化によりノッキングを回避し10:1の高圧縮比を達成し、燃費と高出力を両立したとしている。

V6 3.5L 水冷ツインターボEcoBoostエンジン
V6 3.5L 水冷ツインターボEcoBoostエンジン


 Fordはこのほか、2011年後半に市販予定のFord Focus EVに搭載予定のモーターと電池などを展示した。Fordはすでに2011年型TRANSIT CONNECTでEVを、またEscape とFUSIONなどの車種でHEVを市販しており、2012年秋には更にPHEV車のC-MAXをHEV車と共に市販する予定であり、FUEL ECONOMY向上の一環としてEV~PHEV~HEVのどのタイプでも「REAL CHOICE」できるようにするとのこと。C-MAXのPHEV、HEVは、アトキンソンサイクルの2.0Lガソリンエンジン、CVT、CPI社(LG Chemの子会社)製の Liイオン電池(23kWh)、回生ブレーキ、モーター(92kW/123hp)が搭載される予定。

PHEV用の直4の2.5LアトキンソンエンジンとCVT
PHEV用の直4の2.0L アトキンソンエンジンとCVT

FUCUS EVに搭載予定のモーター、電池、コントローラー
FOCUS EVに搭載予定のモーター、電池、コントローラー

FUCUS EVに搭載予定の水冷式Liイオン電池。FOCUS EVは後部座席後ろと床下にも  電池を搭載する
FOCUS EVに搭載予定の水冷式Liイオン電池。FOCUS EVは後部座席後ろと床下にも  電池を搭載する

 



ホンダはFIT EVとAccord PHEVのほか、電動スクーター/電動カートを展示

 ホンダは2012年に日米で販売を計画しているFIT EVを展示した。燃料電池EVのFCX Clarityで開発したギアボックス同軸モーター (92kW) とLiイオン電池を搭載し、航続距離100マイル以上 (LA4モード) を目指すとしている。

 また、同じく2012年に日米で発売する予定のPHEVの試作車(2L直4エンジンのAccordベース) も展示した。PHEVはモーター2基 (160kW) とLiイオン電池 (6kWh) を搭載し、Pure EV、モーターとエンジンの併用、エンジン直結の3つの走行モードを使う。ホンダはPHEVを発売した後も、CR-ZなどのHEVはシステムを進化させながら継続生産し、PHEVと使い分けていく計画であるとのこと。 FIT EVもPHEVも生産国は未定。

2012年に市販予定のFIT EV
2012年に市販予定のFIT EV

アコードをベースにしたPHEV試作車
アコードをベースにしたPHEV試作車


 ホンダはまた、電動スクーター EV-neoと 電動カートEV-Monpalを展示。2輪のEV-neoはLiイオン電池を搭載し、1回の充電で34kmの走行が可能 (30km/h走行時)で、ピザの配達などに使われている。EV-Monpalは4輪で制御弁式鉛電池を搭載し、最長で25km (6km/h走行時) まで走行ができ、車いすなどの用途として使われる。ホンダでは太陽光発電による充電ステーションのインフラ整備推進などを県や市と協力し、電動車両の普及を通じてCO2の削減を進めていく計画であるとのこと。

4輪電動スクーターEV-Monpal
4輪電動カートーEV-Monpal

埼玉における県や市との協力の例
埼玉における県や市との協力の例


 ホンダはこの他、小型船舶用の163ccのOHV小型エンジンを使い、LPGや都市ガスを燃料とする小型発電ユニットを展示した。停電時のバックアップ電源用のほか、発電しながら排熱を利用し暖房や給湯 (47℃) に使う省エネタイプのユニットで、燃料が持つエネルギーの約85%が電気と熱に変換されるとのこと。エンジン、エアクリーナー、オルタネ-ター、熱交換器、触媒が高さ88cm のコンパクトな容器に収められている。家庭暖房として使う場合は暖気送風機(furnace) と併用して使う。停電時に使用できない燃料電池と違い、ガス燃焼タイプの発電機は非常用のバックアップ電源として需要が増す可能性がある。

小型発電ユニットの内部構造
小型発電ユニットの内部構造

 



Hyundaiは量産車HEV Sonata, KiaはBorregoベースのFCEVを展示

 Hyundaiは2011年から販売を開始したSonata HEVを展示した。THETA 2と呼ぶ4気筒2.4L 直4 DOHCエンジン (166hp) を搭載。燃費とトルクの向上を目的に(Strong) HEV用エンジンとして初めて韓国で開発され、アトキンソンサイクルを採用したほか、バルブスプリングの荷重を低減し、サーモスタットの開弁温度を上げ(190F/88℃)、高圧縮比(膨張比13.0)を採用、plasma chrome コーティングのピストンリングを採用するなど、ベースとなるエンジンのフリクションやロスの低減を図ったとしている。

 Sonata HEVは30kW (40hp) のモーターと ファンによる空冷式Liポリマー電池 (1.4kWh/ 270V) 、スターター兼発電機 (8.5kW) を搭載し、回生ブレーキやアイドリングストップなどにより、システム出力 (206hp)、city/hwy燃費 (35mpg/40mpg) ともクラス最高レベルを達成している。HEVにはe-CVTが使われることが多いが、Hyundaiは6速ATを採用。トルクコンバーターを廃し湿式クラッチを使い、電動オイルポンプを新たに採用した。主なHEVとの比較は下表の通り。

Hyundai
Sonata
Toyota
Camry
Ford
Fusion
Nissan
Altima
システム出力 206hp 187hp 191hp 198hp
エンジン排気量 2.4L 2.5L 2.5L 2.5L
エンジン出力 166hp 147hp 156hp 158hp
トランスミッション 6AT e-CVT e-CVT e-CVT
モーター 40hp/30kW 40hp 40hp 40hp
二次電池 Liポリマー
34kW (270V)
NiMH
30kW (244.8V)
NiMH
26kW (275V)
NiMH
30kW (244.8V)
city/hwy燃費(mpg) 35/40 33/34 41/36 33/33


2011 Sonata HEV
2011 Sonata HEV


 Hyundaiはまた、Sonataのガソリン車に設定されている4気筒2.0Lターボエンジンを展示した。この直噴エンジンはツインスクロールターボを採用。排気干渉によるロスを減らし、低回転からターボ過給による高トルクと高回転での出力アップを狙っている。その結果、最高出力274 hp、最大トルク269 lb・ftとともに、 city/hwy燃費が22mpg/33mpgと上表HEV並の良好なhighway燃費を達成している。またターボにはモーター駆動のwaste-gateを採用し、冷機時に常開にすることで触媒の暖機を早めて活性化時間短縮を狙ったとしている。

Sonata搭載のTHETA2 2.0 Turbocharged GTIエンジン外観
Sonata搭載のTHETA2 2.0 Turbocharged GDIエンジン外観

THETA2 2.0 Turbocharged GTIエンジン性能曲線
THETA2 2.0 Turbocharged GDIエンジン性能曲線

ツインスクロールターボ
ツインスクロールターボ

 Hyundaiは2010年Genevaモーターショーに出展したディーゼルエンジン搭載のHEV、i-Flowコンセプト車に搭載したU2-1.7L 2 Stage Turbo Dieselエンジンを展示した。この 2 Stage Turboエンジンは、大小2つのターボを直列に配置し、低速域では小径ターボのみが作動し1500rpmで最大トルク274lb・ftを発生し、また中高速域では大径ターボも作動して、低速トルク・燃費・高出力(157hp) ・過渡応答性のいずれをも満足できるシステ。ただし、ガソリンエンジンをベースとするHEVが北米マーケットでは主流であり、Hyundaiがこの2 Stage Turbo DieselをHEVのベースエンジンとして導入するかは、コストに対する効果の観点から現時点では不透明である。

U2-1.7L 2 Stage Turbo Dieselエンジン外観
U2-1.7L 2 Stage Turbo Dieselエンジン外観

U2-1.7L 2 Stage Turbo Dieselエンジン性能曲線
U2-1.7L 2 Stage Turbo Dieselエンジン性能曲線


 Kiaは2008年LAモーターショーに出展したBorregoベースの燃料電池EV (FCEV) を展示した。Borrego FCEVは154hp (115kW) の燃料電池のほかに、134hp (100kW, 450V) の大容量キャパシタを搭載し、70MPaの水素燃料タンクを後輪前後の床下に2個もしくは3個配置している。147hp (110kW) のモーターにより最高速度は100mph、航続距離は最大で426mile (680km) とのこと。

Kia BorregoベースのFCEV
Kia BorregoベースのFCEV

Borrego FCEVの技術概要
Borrego FCEVの技術概要

 



CHRYSLERは米国エネルギー省とのPHEVプロジェクト参加車両を展示

 Chryslerは米国DEPARTMENT OF ENERGY (DOE) から$48 Millionの予算を取得し、Dodge RAM 1500トラックをベースにPHEVを140台試作、3年間実車走行を行ないながら、様々なデータ取得を行なう実験を実施している。実車走行する州はノースダコタ、アリゾナ、ハワイ、マサチューセッツなど全米の広い範囲に及び、PHEVをスマートグリッドのインターフェイスに使ったり、双方向充電の評価など多岐にわたるデータや数値を取得するとしている。

 プロジェクトは2009年から始まり、2014年6月に終わる予定。

RAM1500 PHEV DOEプロジェクトの概要
RAM1500 PHEV DOEプロジェクトの概要

Dodge RAM 1500トラックベースのPHEV車両
Dodge RAM 1500トラックベースのPHEV車両

Dodge RAM 1500 PHEVに使われるシステムや部品
Dodge RAM 1500 PHEVに使われるシステムや部品

PHEV車両の充電コネクター
PHEV車両の充電コネクター

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>