日本の車載用リチウムイオン電池:新工場竣工と増産計画が相次ぐ

トヨタ、ホンダ、日産が、2010~2012年にリチウムイオン電池搭載車を発売

2011/03/29

要 約

 以下は、日本の車載用電池メーカーのリチウムイオン電池開発・生産計画と、自動車メーカーからの受注状況の概要である。

 リチウムイオン電池を搭載する電動車両として、2009年の三菱i-MiEV、富士重工のSubaru plug-in Stella、トヨタのPrius PHEV(約600台の限定販売)に続き、2010年に日産がFuga HEV、EV Leafを発売した。2011年にトヨタPriusワゴン7人乗り車、ホンダCivic HEV(米国で発売)がリチウムイオン電池を搭載し発売される。2012年にはトヨタがPrius PHEVを市販し、iQベースEVとRAV4ベースEVを発売する。ホンダは、2012年にEVとPHEVを日米で発売するとされる。

 こうした国内自動車メーカーの計画に対応し、また海外自動車メーカーからの受注もあり、2010年に三洋電機の加西工場、東芝の柏崎工場、三菱重工の長崎量産化実証工場が竣工した。

 リチウムエナジー ジャパンは、滋賀県栗東市に新工場建設を開始し、さらに隣接地に工場用地を取得し新工場を建設する計画。AESC/日産は、EV向け電池生産を、当初計画の5.4万台分から9万台分に増やすと発表した。日立グループは2010年末に、GMのeAssistシステム向け量産を開始した。

 その他の電池メーカーの受注状況については、三洋電機はスズキ、VWを含む6社から受注した。東芝は三菱自動車の軽商用車EV向け電池を受注し、ホンダフィットEVコンセプト向けに納入。また2009年から共同開発しているVWに加え、Fiat、Scaniaとも共同開発中。リチウムエナジー ジャパンは複数の日欧自動車メーカーから受注する見込みとされる。

日本の主要二次電池メーカーの、車載用電池開発・生産計画

(*印はニッケル水素電池、他はリチウムイオン電池の計画)
  主な供給先 計画の概要
プライムアースEVエナジー
(PEVE)/トヨタ
 パナソニックが三洋電機を子会社化したことに伴い、PEVEへのトヨタの出資比率を60%から80.5%に引き上げ(パナソニックの出資比率は40%から19.5%に下がった)、社名をパナソニックEVエナジーから現社名に変更した。
 *PEVEのニッケル水素電池の生産能力は、2010年10月で年110万台分。トヨタのHEVは、当面ニッケル水素電池中心に搭載する。
 トヨタは、2011年に発売するPriusワゴン7人乗り車、2012年に発売するPrius PHEV、iQベースEV、RAV4 EVにリチウムイオン電池を搭載する。
パナソニック トヨタ、
Tesla Motors
 *三洋電機子会社化に伴い、ニッケル水素電池事業を中国企業に売却。
 Tesla Model S、トヨタRAV4 EVに、民生用リチウムイオン電池を供給。
三洋電機 *ホンダ、Ford、PSA、
VWグループ
 *ニッケル水素電池を、ホンダ、Ford、PSA、VWグループに供給。2010年度に、洲本事業所での生産を最大月産350万セルまで拡大する。
スズキ、VW、他  リチウムイオン電池を生産する兵庫県加西工場が2010年7月に竣工。三洋電機は、スズキ、VWを含む6社から受注したとされる。
オートモーティブ・エナジー・サプライ
(AESC)/日産
 2010年6月、EV用リチウムイオン電池生産能力を年9万台分へ3.6万台分増やすと発表。2010年10月に発売したFuga Hybrid、10月に生産開始したEV Leafに供給を開始。
 英国、米国、ポルトガルで、リチウムイオン電池工場の建設を開始。
リチウムエナジー
ジャパン(LEJ)
三菱自動車  滋賀県栗東市に新工場を建設し、2012年後半にLEJの3工場を合わせて三菱i-MiEV 67,800台分の生産能力を構築。さらに筆頭株主(51%)のGSユアサが隣接用地を取得し、10万台分の体制構築を目指す。
ブルーエナジー ホンダ  2011年に米国で発売するCivic Hybridにリチウムイオン電池を供給。
 ホンダは2012年に、日米でEVとPHEVを発売するとされる。
日立グループ GM、いすゞ、
三菱ふそう
 2011年にGMが搭載するeAssistシステム向けに量産を開始。
 2010年10月、Johnson Controlsと提携。
東芝 ホンダ、三菱自動車  2010年9月に柏崎工場が竣工。VWとEV向け電池を共同開発中。
 三菱自動車の軽商用車EVとホンダフィットEVコンセプトに供給する。
 Fiat、Scaniaと、HEV用電池の共同開発を進めている。
三菱重工 自社製フォーク
リフト、EVバス
 2010年11月に、長崎造船所内に量産化実証工場が完成。京都市と青森市で行うEVバス実証実験車に、リチウムイオン電池を供給。
 2011年3月、HEV用高出力品を開発中と発表。

資料:各社発表、各紙報道



プライムアースEVエナジー/トヨタ:トヨタのHEVはニッケル水素電池搭載を継続

 トヨタとパナソニック合弁のパナソニックEVエナジー(PEVE)は、2009年12月にパナソニックが三洋電機を子会社化したことに伴い、2010年4月にトヨタの出資比率を60%から80.5%に引き上げ、同6月に社名をプライムアースEVエナジー(略称はPEVEで変わらない)に変更した。

 2010年10月の宮城工場増設により、ニッケル水素電池の生産能力は年110万台体制に拡大した(3月下旬時点では東日本大震災の影響で稼働停止中)。

 トヨタは、当面HEVにニッケル水素電池を搭載する方針だが、2011年に発売するPriusワゴン7人乗り車に、トヨタのHEVとしてリチウムイオン電池を初搭載。2012年には、個人ユーザーにも販売するPrius PHEV、iQベースのEV、Tesla Motorsと共同開発するRAV4ベースのEVなどにリチウムイオン電池を搭載する。

トヨタ:2011年からリチウムイオン電池搭載モデルを投入

 ・Prius PHEV(限定販売):2009年末から2010年前半に、日米欧の法人など特定顧客に約600台をリース販売した。

・Priusワゴン7人乗り車:2011年に日本と欧州で発売する。5人乗り車はニッケル水素電池、7人乗り車はスペースを確保するためにリチウムイオン電池を搭載する。

・Prius PHEV:2012年初頭から、Prius PHEVを年数万台規模で市販する計画。

・iQベースEV:2012年に日米欧市場で発売する。

 トヨタは、リチウムイオン電池をトヨタ主導で開発し、貞宝工場で生産している。量産段階ではPEVEでも生産する。

資料:トヨタ広報資料 2011.1.11、日刊自動車新聞 2010.11.19、Automotive News 2011.1.31

PEVE:プライムアースEVエナジーに社名変更

 パナソニックEVエナジーは、1996年にトヨタが60%、パナソニックグループが40%を出資して設立された。パナソニックの三洋電機子会社化に伴う中国独禁法当局の要求に応え、2010年4月に、トヨタは出資比率を80.5%に高め(パナソニックの出資比率は40%から19.5%に低下)、6月に社名をプライムアースEVエナジーに変更した(略記PEVEは変わらない)。
 PEVEのニッケル水素電池生産能力は、2010年10月に年間HEV 110万台分に増強された。(注)

資料:プライムアースEVエナジー website、日刊工業新聞 2011.1.24
(注)PEVEの宮城工場(生産能力は年30万台分)では、3月11日の東日本大震災の影響で稼働が停止し、設備を稼働させるためのインフラが復活していないため、静岡県湖西市の大森工場(同40万台分)と境宿工場(同30万台分)での増産対応を検討中とされる。

 



パナソニック:Tesla Model S、トヨタRAV4 EVに民生用電池を供給

 パナソニックは、2009年12月に三洋電機を子会社化した。これに伴い、車載用ニッケル水素電池事業を、中国の「湖南科力遠新能源股份有限公司」に売却すると発表した。

パナソニック:ニッケル水素電池事業を、中国企業に売却

 パナソニックは2011年1月、三洋電機子会社化に伴う、車載用ニッケル水素電池に関する中国独禁法当局の「パナソニックのシェアが高くなりすぎる」との指摘に応え、ニッケル水素電池事業を中国の電池メーカー「湖南科力遠新能源股份有限公司(Hunan Corun New Energy Co., Ltd.)」に譲渡する契約を締結した。
 パナソニックは、対象事業に関する全資産を100%子会社である「湘南エナジー(株)」に譲渡し、1月31日から3ヶ月以内に「湖南科力遠」に譲渡を完了する。湖南科力遠は、対象事業に関する知的財産権を使用する権利も得て、トヨタやホンダ向け交換用電池の生産を引き継ぐ他、中国メーカーへの納入も目指すとされる。

資料:パナソニック広報資料 2011.2.1、日本経済新聞 2011.2.2


 パナソニックは、米国のEVベンチャーTesla MotorsのModel Sに、民生用18650形円筒リチウムイオン電池を供給する。また2010年11月、Tesla Motorsに3,000万ドルを出資すると発表した。

 また中国の無錫工場で、EVにも使用可能な円筒形リチウムイオン電池を生産するとされている。

パナソニック:Tesla Motorsに3,000万ドルを出資

 2010年11月、パナソニックは、米国のEVベンチャー企業Tesla Motorsに3,000万ドルを出資すると発表した。パナソニックによると、Tesla Motorsは複数の電池メーカーから供給を受け、自らの技術で電池をパックする戦略をとっているが、パナソニックを優先サプライヤーと位置づけている。
 Tesla Motorsは、自社のEVに加え、電池パックを含むEVパワートレインをDaimlerのSmart fortwo EVやA-Class EVに供給している。パナソニックとTesla Motorsは、パナソニックの電池を使用しTeslaがパック化した電池システムを、共同で販売することを合意した。
資料:パナソニック広報資料 2010.11.4、日本経済新聞 2011.2.17
(注) 1. トヨタは、2010年5月、Tesla Motorsと共同でEVを開発することで合意し、またTeslaに5,000万ドルを出資した。
2. トヨタとTesla Motorsが共同開発したRAV4 EVは、パナソニック製電池を使用したTeslaの電池システムを搭載する見込み。RAV4 EVは2010年11月のLos Angeles、2011年1月のDetroitの各モーターショーに出展され、2012年に米国で発売される見込み。
3. パナソニックは、ゼロスポーツが郵便事業会社から受注した集配用EV 1,000台に、民生用汎用電池を連ねたシステムを供給する予定であったが、郵便事業会社が契約を破棄したため実現していない。
中国で円筒形リチウムイオン電池を生産し、EVへの供給も目指す
パナソニックは中国の江蘇省無錫工場で、デジタルカメラや携帯電話用の角形リチウムイオン電池を生産している。2012年度にも18650サイズ(直径18mm、長さ65mm)の円筒形電池の生産を開始する。18650形電池はノートパソコンなどに多く使用されているが、EVへの供給も目指すとされる。

資料:日刊工業新聞 2011.2.3

 



三洋電機:スズキ、VWグループなど、6社からリチウムイオン電池を受注

 三洋電機は、パナソニックと合わせて民生用を含む二次電池市場グローバルシェアトップの座を維持し、2020年度に環境対応車用二次電池市場でグローバルシェア40%(三洋電機のみで)を目指している。

 ニッケル水素電池は、ホンダ、Ford、PSA、VWグループのHEVに供給している。2010年度に、洲本工場で最大月産350万セルまで生産を拡大する。

 リチウムイオン電池については、VWグループのAudi/スズキを含む6社から受注したとされる。2009年に徳島工場のリチウムイオン電池量産第1号ラインが稼動、2010年7月に加西工場の量産第2ラインが完成してHEV用リチウムイオン電池の増産体制を構築し、またPHEV用電池も2011年に製品化する。

 三洋電機は、民生用18650型リチウムイオン電池を組み合わせたシステムを、ヤマハとスズキの電動二輪車に供給した。

三洋電機:2010年7月、加西事業所内にリチウムイオン電池新工場が竣工

 2009年に完成した徳島工場に続き、2010年7月に、兵庫県加西事業所内のリチウムイオン電池新工場が竣工した。建屋工事費は130億円。当初月産100万個のリチウムイオン電池セルを生産し、2015年には1,000万個に拡大する計画。
 まずVWグループのAudiのHEV用リチウムイオン電池を生産する。さらに2011年にPHEV向けリチウムイオン電池を製品化し、加西工場に量産第3ラインを導入する計画。

資料:三洋電機広報資料 2010.7.30、Automotive News 2010.10.25

スズキのPHEVにリチウムイオン電池を供給
 三洋電機は、スズキのSwift Plug-in Hybrid試作車にリチウムイオン電池を供給する。スズキはSwift PHEVを2009年東京モーターショーに出展、2010年5月に国土交通省の型式指定を取得し、実証実験を行っている。660ccの発電用エンジンを搭載するシリーズ式PHEVで、EV走行距離は15km(JC08モード)。
スズキとヤマハの電動二輪車にリチウムイオン電池を供給
 三洋電機は、ヤマハが2010年9月に発売した電動二輪車"EC-03"に、18650サイズの民生用リチウムイオン電池を組み合わせた電池システムを供給した。
 三洋電機は、2004年からヤマハの電動アシスト自転車"PAS"にリチウムイオン電池を供給している。
 三洋電機は、スズキの電動スクーター試作車"e-Let's"向けに、インホイールモーターなど電動駆動システムと民生用リチウムイオン電池を用いた動力用電池システムを供給する。スズキは、2010年9月に公道走行調査を開始した。

資料:三洋電機広報資料 2010.9.24、スズキ広報資料 2010.5.13
(注)三洋電機は、2004年から民生用リチウムイオン電池を組み合わせたシステムの開発に取り組み、電動軽車両の動力として使用できる「動力用標準電池システム"EVB-101"」と、太陽電池と組み合わせた「蓄電用標準電池システム"DCB-101"」の2機種の量産化を実現している。

 



AESC/日産:EV用リチウムイオン電池生産能力を、年9万台分へ3.6万台分増やす

 日産は、2010年10月に、リチオウムイオン電池を搭載するFuga HEVを国内発売。同じ10月にEV Leafの生産を開始した。

 日産は、NECと合弁のオートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)座間事業所でのEV用リチウムイオン電池生産を、当初計画の年間5.4万台分(HEV用などを含めると6.5万台分)から9万台に3.6万台分増やすと発表した。

 日産は海外では、米国(EVと電池)、英国(EVと電池)、ポルトガル(電池)を生産する計画。2010年度に、上記3ヶ国で工場建設を開始した。

AESC/日産:座間事業所で、EV Leaf用電池の量産を開始

 日産は2010年10月、追浜工場でEV Leafの生産を開始した。搭載するリチウムイオン電池は、オートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)の座間事業所で、セル4枚を1つのモジュールに組み込む工程まで行い、その後日産追浜工場で48個のモジュールを電池パックに詰め、EVに組み付ける。
 AESCのリチウムイオン電池の生産能力は、当初年6.5万台分、うちEV用が5.4万台分であったが、今後の需要増を見込み、EV用電池の生産を3.6万台分増やし9万台分とした(2010年6月発表)。
米国、英国、ポルトガルで、リチウムイオン電池工場建設を開始
・英国:2010年4月、電池工場の建設を開始。2012年から生産能力6万台分で生産を開始。EV Leafは2013年初頭に年5万台の能力で生産を開始する。
・米国:2010年5月に電池工場の鍬入れ式を実施(年産能力20万台分)。EV Leafは2012年よりSmyrna車両工場で、年15万台の能力で生産する。投資総額は最大17億ドルで、米エネルギー省からの14億ドルの融資を活用する。
・ポルトガル:2011年2月、新工場の建設を開始。2012年より年産能力5万台分で生産を開始する。

資料:日産広報資料 2010.3.18/2010.5.26/2010.6.11/2010.10.22/2011.2.11

 



リチウムエナジー ジャパン/三菱自動車:長期的にEV 10万台分の生産体制を構築

 三菱自動車のi-MiEVは、2009年度に2,000台、2010年度に9,000台を販売。2011年度は世界各地からの引き合いもあり、25,000台の販売を計画。

 2010年4月、三菱自動車、GSユアサ、三菱商事が出資するリチウムエナジー ジャパンは、滋賀県栗東市に新工場を建設することを決定した。リチウムエナジー ジャパンの生産能力は2012年度下期にi-MiEV 67,800台分(うち栗東工場で5万台分)に拡大し、長期的には国内でEV 10万台相当のリチウムイオン電池供給能力を構築する。

 リチウムエナジー ジャパンは、生産する電池のほとんどを三菱自動車向けに出荷するが、日欧の複数の自動車メーカーと商談を進めており、2013~2014年頃から出荷する見込みとしている。

リチウムエナジー ジャパン:長期的に、EV年10万台分の生産体制構築を目指す

 三菱自動車、GSユアサ、三菱商事が出資するリチウムエナジー ジャパン(LEJ)は、2010年4月、滋賀県栗東市に新工場の建設を行う旨決定した。総額375億円を投資して、2012年度初頭より車載用リチウムイオン電池を年440万セル(i-MiEV 5万台分)生産する。新工場は2012年後半にはフル稼働となり、この時点でLEJの草津、京都、栗東の3工場を合わせた生産能力は、年間600万セル(i-MiEV 67,800台分)に拡大する。LEJは、長期的に国内10万台分相当のリチウムイオン電池の供給体制構築を目指すと発表した。
 子会社を通してLEJに51%出資するGSユアサは、2010年9月に、LEJの新工場建設地に隣接する用地約4.4haを取得し、新たなリチウムイオン電池工場を建設する予定と発表した。日欧の複数の自動車メーカーから引き合いがあり、受注が確定し次第新用地に工場を建設し、2013~2014年には出荷する見込みとしている。

資料:リチウムエナジー ジャパン広報資料 2010.4.14、GSユアサ広報資料 2010.9.27

 



ブルーエナジー/ホンダ:2013~2014年にHybrid車25~30万台分を生産

 2009年4月に、ホンダとGSユアサは共同で(株)ブルーエナジーを設立し、京都府福知山市に新工場建設を開始した。

 ホンダが2011年春に米国で発売するCivic HEVに、リチウムイオン電池を供給する。2013~2014年には年間Hybrid車25~30万台分を生産しフル稼働となる見込み。

 ホンダは2012年に日米で、EVとPHEVを発売するとされる。2010年12月に、フィットベースEV(東芝のリチウムイオン電池SCiBを搭載)とInspireをベースとするPHEVコンセプト(ブルーエナジー製リチウムイオン電池を搭載)を発表した。

 



日立グループ:GMのeAssistシステムにリチウムイオン電池を供給

 日立グループの日立ビークルエナジーは、2010年末に、GMが2011年に発売する次世代Mild Hybrid(GMはeAssistと呼称)に搭載するリチウムイオン電池(日立の第3世代LIB-Ⅲ)の量産を開始した。GMは、2012MYのBuick LaCrosse/Regalに搭載し、さらに米国の燃費規制をクリアするための主要なツールのひとつとして、全モデルに搭載する計画とされる。

 日立グループは、LIB-Ⅲに続き、出力密度を4,500W/kgに高めたLIB-Ⅳ、さらにエネルギー密度を120Wh/kgに高めたPHEV/EV用電池を開発中。2011年3月には、2年後をめどに、コストを3分の1以下に引き下げ、容量を3倍以上に引き上げたリチウムイオン電池セルを開発することを明らかにした。

 日立製作所は、2010年10月、米国のJohnson Controlsと先端蓄電製品とシステムに関する開発・生産・販売などでの協業を検討すると発表した。

日立グループ:GMのeAssistにリチウムイオン電池量産を開始

 日立製作所は2008年に、GMの次世代Mild Hybridシステムにリチウムオン電池を年間10万台分供給する契約を締結した。GMは、2012MYのBuick LaCrosse/Regalに、同電池を搭載する次世代型Mild Hybrid(GMはeAssistと呼称)仕様を設定する。
 GMは、米国政府の、2016年に自動車メーカーごとの平均燃費を35.5 mpgとする規制を達成するために、eAssistを主要なツールの1つとして全モデルに搭載すると報道されている。GMは、eAssistは20~25%の燃費改善効果があり、しかもフルHybridシステムよりコストが低く、多くのモデルに搭載することが可能としている。

資料:Automotive News 2010.10.11/2010.11.15
(注)GM向けリチウムイオン電池を生産している日立ビークルエナジーの本社工場(茨城県ひたちなか市)は、3月11日の東日本大震災で被災したが、23日から業務を再開し、28日からリチウムイオン電池生産を再開すると発表した。

日立グループ:コストを3分の1、容量は3倍以上のリチウムイオン電池を開発

 日立製作所は、コストを3分の1、容量を3倍以上に引き上げ、合わせて価格性能比を10倍以上向上させたリチウムイオン電池の開発を目指す。日立ビークルエナジーなどグループ関連会社の総力を挙げて、電極材料の組成や形状、セル構造や製造工程などを見直し、2012年末に技術を確立し、2013年には製品化と量産のめどをつけたい考え。
 日立製作所は、高いコストパーフォーマンスにより車載用電池で新たな受注を目指すとともに、次世代送電網スマートグリッドや建設機械など産業分野にも展開する。

資料:日本経済新聞 2011.3.3

日立グル-プ:リチウムイオン電池のラインアップ

LIB-Ⅱ LIB-Ⅲ LIB-Ⅳ PHEV/EV用
商用車向け GMへ供給 開発中 開発中
容量(Ah)/Capacity 5.5 4.4 4.8 25.0
出力密度(W/kg)/Specific Power 2,600 3,000 4,500 2,400
エネルギー密度(Wh/kg)/Specific Energy 66 61 72 120

資料:2011年3月開催の第2回国際二次電池展の展示
(注)HEV用電池では、EVに比べ少ない電池で瞬発力を出すために出力密度を重視、EV用電池では一定距離を走行するためにエネルギー密度を重視する。

 



東芝:柏崎工場で量産を開始、三菱自、ホンダに供給

 東芝では、2008年3月に稼働開始した佐久工場に続き、2010年9月に柏崎工場が竣工し、2011年2月にリチウムイオン二次電池SCiBの量産を開始した。

東芝:2010年9月、柏崎工場が完成

 東芝柏崎工場は、2008年3月に稼働した佐久工場に続き、2010年9月に竣工し、2011年2月に量産を開始した。生産開始当初の能力は月産50万セルで、EV向けの20Ahセルから量産を開始する。2011年度中に、生産能力を月産100万セル以上に拡大する。将来は、250~300万セルに拡大する構想。

資料:東芝広報資料 2010.9.29


 東芝は2009年2月からVWとEV用リチウムイオン電池を共同開発しており、三菱自とホンダにも供給予定。またFiat、ScaniaとHEVに搭載するリチウムイオン電池の共同開発を進めている。

東芝:ホンダのフィットEVコンセプトと電動バイクに供給

 東芝は、ホンダフィットEVコンセプトにSCiBを供給する。最高速度は144km/h、EV航続走行距離は160km以上(ホンダが2010年12月に発表)。
 東芝のリチウムイオン二次電池SCiBが、ホンダの業務用電動バイク"EV-neo"に採用され、ホンダは2010年12月にリース発売を開始した。ベース車の車両価格は税込み45.5万円、1充電走行距離は34km(30km/h定地走行テスト値)、急速充電器を用いて30分で残量ゼロからのフル充電が可能。

資料:東芝広報資料 2010.4.13、ホンダ広報資料 2010.12.16/2010.12.20

三菱自動車の軽商用車EVに供給

 東芝は、三菱自動車が2011年にも発売する軽商用車EVに、リチウムイオン電池SCiBを供給する。軽商用車EVは1充電走行距離が約100kmで、宅配便事業者など都市内物流分野での需要を見込む。三菱自動車は、i-MiEV用電池を、自ら出資するLithium Energy Japanから調達しているが、調達先を多様化し、コスト削減を目指すとされる。
資料:東芝広報資料 2010.7.2、日刊自動車新聞 2011.1.22、Automotive News 2011.2.7
(注) 1. 東芝は2009年2月、VWがNSF(New Small Family)と呼ぶ小型車をベースに開発するEVに搭載するモーターなどの駆動ユニット、エレクトロニクスやエネルギー密度(Specific energy density)の高いリチウムイオン電池の共同開発で合意した。
2. 東芝は、車載用リチウムイオン電池では後発(2007年12月にSCiBを発表)だが、SCiBの安全性(ショートする可能性が低い)、長寿命(6,000回を超える充放電が可能)、急速充電性能(5分間で90%以上の充電が可能)、電気二重層キャパシタ並のパワー密度などが評価され受注を拡大しているとされる。

 



三菱重工:2010年11月に量産化実証実験工場が完成、電気バスに供給

 三菱重工は、1998年から九州電力と共同開発を開始し、リチウムイオン二次電池MLiX(エムリクス)を開発し、2010年11月、長崎造船所内にリチウムイオン二次電池の量産化実証実験工場が完成した。今後国内外の市場動向を踏まえ、2011年をめどにさらなる本格的な量産工場着工を計画している。

 2011年2~3月に京都市と青森市で行う電気バス実証実験車にリチウムイオン電池を供給した。

 現行品は、定置用または電動車両ではEV向けとしているが、2011年3月の第2回国際二次電池展に、主にHEVを想定して開発中の高出力型MLiXを出展した。

三菱重工:2010年11月、長崎量産化実証工場が竣工

 三菱重工が、リチウムイオン二次電池事業への本格参入に向け、長崎造船所内に建設していた量産化実証工場が、2010年11月に竣工した。約100億円を投資し、年間生産能力66MWh(電池換算で約40万個)を構築して12月から量産を開始し、ライン稼働率や電池性能の実証に取り組んでいる。
 2011年をめどに、さらなる本格的な量産工場の着工を計画している。
 当面は、フォークリフト、クレーンなどの産業機械や、風力発電、太陽光発電各種施設の非常用電源などの定置向けに事業を進める。三菱重工の社内事業にも多くの需要がある。自動車用にも複数のメーカーにサンプル出荷しており、需要により検討するとしている。

資料:三菱重工広報資料 2010.11.18、日本経済新聞 2010.10.19

三菱重工:大型EVバス実証実験車に供給
 2011年2月に、三菱重工と京都市が共同で、リチウムイオン電池を搭載するEVバス運行に関する実証実験を行った。今回の実証実験の結果を踏まえて、2011年度に量産プロトタイプEVバスを開発し、2012年度に再度走行実験を行い、EVバスの実用化を目指す。
 3月には、同様の実証実験を青森市で行う。

資料:三菱重工広報資料 2010.9.2
(注)三菱重工は、2009年10月に、ディーゼルエンジンとリチウムイオン電池 + モーターを組み合わせたハイブリッドフォークリフトを発売した。また2011年3月の第2回国際二次電池展に、鉛電池をリチウムイオン電池に置き換えたEVフォークリフトを初披露した。

三菱重工:MLiXセル仕様(現行品と開発中)

  標準型(現行品) 高出力型(開発中)
MLiX50 MLiX Strong 40 MLiX Slim 20 MLiX Petit 12
重量 kg 1.4 1.4 0.8 0.5
公称容量 Ah 50 40 20 12
公称電圧 V 3.7 3.7 3.7 3.7
エネルギー密度 Wh/kg 132 106 100 90
Wh/L 264 211 185 152
最大電流 連続 A 100 150 100 50
10秒 A 300 500 300 160
サイズ(W x D x H) mm 110 x 38 x 155.5 110 x 38 x 155.5 110 x 28 x 121 110 x 38 x 67

資料:2011年3月開催第2回国際二次電池展での展示

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>