日産:「事業規模最適化」と「選択と集中」による構造改革

成長戦略からの軌道修正を行い、アライアンスを活用した収益重視の事業基盤構築に取り組む

2020/06/04

要約

NISSAN NEXT
日産は事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を発表した
(出典:日産 2019年度決算/事業構造改革計画)

  日産自動車は5月28日、2020年3月期(2019年度)連結決算の発表に併せて、2023年度までの4か年計画となる事業構造改革の方針を発表した。

  今回の事業方針は、2019年末にスタートした内田社長を含む新たな経営体制のもとでの初めての中期計画となるもので、これまでの事業規模拡大を目指す成長戦略から転換し、不採算事業/設備の整理とコア事業への資源集中による着実なリカバリーと収益体質の確立を図る。


  構造改革は、「事業規模の最適化」と「選択と集中」を二本の軸として、効率性・収益性を高めると共に、競争力を持つ商品、技術、市場に経営資源を集中して、それ以外のセグメントや事業ではアライアンス・パートナーであるルノーや三菱自動車のアセットを活用することで事業基盤の再構築と確実な成長を目指すとしている。

  日産は2011年にカルロス・ゴーン社長(当時)のもとで、ロシア、ブラジルなど新興市場での事業拡大と多種多量の新車投入によって大幅な販売増を目指す「Power88(シェア8%、営業利益率8%)」を事業方針として打ち出した。2017年にはPower88の未達目標を引き継ぐかたちで中計「Nissan M.O.V.E. to 2022」が発表され、2019年に入って目標の下方調整が行われたものの、広範な市場とセグメントをカバーしつつ成長と収益の両立を目指す基本戦略は維持されてきた。その間に日産のグローバルシェアは2011年の6.4%、2017年の6.2%から2019年の5.8%に減退し、巨額赤字決算を喫するに至った。

  今回発表された事業構造改革計画「NISSAN NEXT」は過去の戦略からは明らかな軌道修正となるもので、新経営陣の決意が伺える。前日の5月27日には、ルノー・日産・三菱の3社連合トップによりアライアンス方針が発表されており、日産の中期計画がアライアンスの方針と整合性をとったものであることも示された。

  今回のレポートでは、日産の事業構造改革計画の詳細内容を中心に、前日に発表されたアライアンス方針、並びに構造改革と同日に発表された2019年度の実績についてもそれらの概要を併せて報告する。


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