SAE China 2019 (1):中国大手OEMのCASE対応とDiDiの高精度地図への取り組み

東風の自主ブランド電動化、長安のインテリジェント化計画、ビッグデータ活用

2019/11/15

要約

张进华 主持并宣布大会开始
中国汽車工程協会常務理事長兼秘書長の張進華 氏が司会を務め、開幕を宣言

 中国汽車工程学会年会展覧会(SAECCE2019)が2019年10月22日から24日まで、上海汽車展覧会センター(Shanghai Automobile Exhibition Center)で盛大に開催された。今回の大会では多くの中国工程院メンバーを含む国内外講演者による招待講演が330テーマ、論文発表が108編。国内外の完成車及び部品企業から3,000人を超える研究開発エンジニアが参加し、1万人を超える自動車業界関係者が来場した。

 中国の自動車市場は、2018年以降販売台数の減少傾向が続いているが、中国政府、自動車業界及び関連産業は、中国が目指す自動車強国に至るために通るべき道であり、数の増加から量、質の発展への変革期であるととらえている。今大会の成功は、国家から企業にいたるまで、中国自動車産業の長期的な発展に自信を持っていることを示した。

 大会のメインテーマには「自動車+、協同創新」(Automobile Plus, Collaborative Innovation)を掲げ、業界を越えたシナジーイノベーションでチャンスをつかみ、課題にチャレンジし、産業の転換とアップグレードを実現する要となることを強調した。自動車技術の各領域において、「新四化(電動化、コネクテッド、インテリジェント化、シェアリング)」技術を集め、人工知能、インテリジェントネットワーク、5G、パワートレイン、新エネルギー、安全性とテスト、法規などのホットな話題についてセッションを展開した。本稿では、大会初日に開催されたイベント及び基調講演の内容を紹介する。

 

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「内能、使能、賦能」が中国自動車産業の発展を推進

李俊 致开幕词
中国工程院メンバー、中国汽車工程協会理事長 李俊氏が開幕挨拶

 中国工程院メンバーで中国汽車工程協会理事長の李俊 氏は大会開幕の挨拶の中で以下のように述べた。中国の1-9月の自動車生産、販売台数はそれぞれ1,814.9万台と1,837.1万台、前年同期比はそれぞれ11.4%と10.3%の減少となった。自主ブランド車の生産台数は前年同期比18.5%減の590.3万台で、自動車産業は大きなプレッシャーを受け厳しい状況にある。しかし、長期的に見れば、将来も中国は依然として世界の自動車市場のコアとなるエリアである。自動車業界では「新四化」(電動化、コネクテッド、インテリジェント化、シェアリング)が共通認識となっており、これは世界の産業転換とアップグレードの方向性となっている。発展を加速するために、自動車、エネルギー、通信、交通など各業界と新興技術は協調、連携する必要がある。「内能、使能、賦能」を通して中国自動車産業の発展を推し進めたい。

 「内能」とは「内なる能力」を指す。中国では独自の自動車産業を発展させる必要がある。今後も伝統的な自動車産業はまだ長期にわたり大きな需要がある。我々は初心を忘れず内なる能力を集結し、引き上げていかなければならない。「使能」とは「能量(エネルギー)の有効利用」を指す。電池、モーター、電子制御システム、ミリ波レーダーなどの新しい機能の自動車への搭載が我々に新たなエネルギーをもたらすことを意味している。「賦能」とは「エンパワーメント」を指す。自動車産業は今、歴史的な転換期にある。インテリジェント・コネクテッドカーのコネクテッドは正にエンパワーメントにより問題を解決し、自動車産業の発展を促すものである。センシング、意思決定、ポジショニング、地図、AI、5Gなどの分野で突破口を開き、コネクテッドカーの発展を支える必要がある。例えば、シンガポールや中国雄安区などのエリアではすでに未来のモビリティ用道路が積極的にオーダーメイドされ、スマートシティが作られている。

 

 

 



東風汽車の自主ブランド電動化技術計画

谈民强 介绍东风的电动化技术规划方案
東風汽車集団技術センター主任の談民強 氏が東風電動化計画を紹介

 東風汽車集団技術センター主任の談民強氏は、東風の自主ブランドの電動化発展戦略における技術計画を以下のように紹介した。排出ガスや燃費に対する規制は日増しに厳しくなっており、今後生産される自動車は2030年にはHEV、48V技術を含む電動車でなければ規制条件を満たすことはできなくなると予測する。また、電動車の需要は政策誘導型から市場誘導型に徐々に転換していくだろう。変化を迎えるために東風は全面的に電動化発展戦略を推し進めていく。

 東風は電動化の技術的対応において、エコノミー、ミドルレンジ、ミドル/ハイエンドの3タイプのBEV専用プラットフォームを開発。エコノミー及びミドルレンジタイプのプラットフォームは一般的なエコノミー車用プラットフォームで、ミドル/ハイエンドモデルのセダン、SUV、MPVは共用プラットフォームを採用し開発する。

 3種のプラットフォームで使用されるBEV駆動モジュールには、BD70、BD90、BD160、BD240の4モデルがあり、その最高出力は70kW-240kW、最大トルクは100Nm-500Nmである。

  ハイブリッド駆動パワートレインは2つのプラットフォームで、HD80、HD120の2モデルを展開。駆動モーターの最高出力は90-130kW、最大トルクは100Nm-300Nm。REV(Range Extenders Vehicles)、PHEV、HEVに適用する。

  バッテリーパックモジュールは2つのプラットフォームで、5モデル(HEVプラットフォーム(2モデル)とEVプラットフォーム(3モデル))を展開。EVプラットフォームのNEDCモード最大航続距離は600km、バッテリーパックエネルギー密度は220Wh/kgに達し、HEVの燃費は30%以上改善される。

 また、東風は電動化したガソリンエンジンの開発も深化させている。アトキンソンサイクル、外部冷却EGR、摩擦軽減、熱管理などの技術を採用し、エンジンの熱効率を高め、ハイブリッド制御戦略をベースにガソリンエンジンを最適化し、燃費の更なる改善を可能にする。

 

 

 



長安汽車のコネクテッドカー発展計画と実践

刘波 阐述了长安在智能网联方面的工作内容
長安汽車EVP劉波 氏が長安IoVについて事業内容を紹介

 長安汽車執行副総裁の劉波 氏は自動運転が交通システムにもたらす重大な変化と自動運転をいかに定着させるかについて述べた。同時に自動運転の発展が直面する各種問題を指摘し、最後に長安汽車のIoV(Internet of Vehicle)領域における新しい成果を紹介した。

 劉波氏によると、自動運転産業をいかに定着させるかは、自動運転が簡単にできるものではなく、レベル1からレベル4まで段階を踏んでユーザーの悩み(車庫入れ、突発的状況による緊急ブレーキなど)を解決することから始め、ユーザー体験を徐々に引き上げていくことで自動運転を実現する必要がある。現在の技術レベルを結合すると、まず以下の4つのシーンでレベル3、レベル4が定着するだろう。

① 交通渋滞での低速自動運転

②「ラストワンマイル」バレーパーキング

③ 公園、団地などパーク内でのシャトルバス

④ 限定エリアでの無人タクシー

 自動運転が直面する問題について劉波 氏は、技術面(レーザーレーダー、高精度地図、クラウドプラットフォーム、ビッグデータなど)の未熟さや市場受容性の低さ、法規及び交通インフラなどの制約を挙げ、コストの高止まりは自動運転が直面する最大の困難とした。

 最後に劉波 氏は、ここ数年における長安のインテリジェント化領域での成果の一部を紹介した。長安汽車は2018年8月に伝統的な自動車メーカーからインテリジェントモビリティ会社への転換を目指し「北斗天枢」と名付けたインテリジェント化戦略を発表し、以下のような目標を立てた。2020年までに新車のコネクテッド化100%を実現、運転支援システムを100%搭載、レベル3自動運転開発プラットフォームを完成。2025年までに車両音声制御を100%搭載、レベル4自動運転プラットフォームを開発。毎年、研究開発費の10%以上をIoVの開発に充てる。IoV開発能力と施設の整備については、自動運転コア技術を更に重視、習得し、データ+コアアルゴリズム+4大能力(EE電子電気アーキテクチャ、ソフトウェアインテグレーション、インタラクティブインテグレーション、ユーザーポータル)を発展させる。自主開発を堅持し、長安自動運転開発プラットフォームと科学技術イノベーション開発プロセスを構築し、測定試験評価体系を確立、測定試験施設建設に力を入れていく。

  長安IoVの研究開発成果の展示において、劉波 氏は2019年9月に発売した長安CS75 PLUSを重点的に紹介した。このモデルは中国国内初のリモートコントロール・バレーパーキング機能搭載車。20メートル以内で駐車スポットを自動で探し、スポットライン、車両、歩行者などを自動で識別する。車外からスマホアプリと鍵によるリモコン操作で駐車させることができ、日常的なシーンの95%に対応する。量産リモートコントロールパーキングでは世界最高レベルである。本機能は予想をはるかに超え好評で、CS75 PLUSの販売好調につながっている。

 

 

 



DiDiの自動運転領域における模索と経験

韦峻青 分享了无人驾驶领域的开发经验
滴滴自動運転公司首席技術官 韋峻青氏が自動運転開発経験を披露

 滴滴(DiDi)のモビリティ業務は中国では誰もが知るところであるが、未来のモビリティに対して更に適応するために、2016年から自動運転技術開発チーム作りを開始し、すでに高精度地図、センシングなど多くのチームを立ち上げた。チームは中米各地で研究開発、実験を展開しており、その規模は200名を超える。2019年8月、滴滴は傘下の自動運転部門を独立企業に格上げし、自動運転開発へ専心させると宣言した。滴滴自動運転公司の首席技術官 韋峻青 氏は今大会で滴滴の自動運転領域における考え方と経験を披露した。

 韋峻青 氏によると、滴滴はモビリティ領域で毎年2方向から研究開発を行っている。1つはマシンラーニング技術により効率的にオーダーに応えること、もう1つはドライバーモニタリング技術によりモビリティの効率と安全性を改善することである。現在、滴滴は上海と蘇州でコネクテッドカー実験用のナンバープレートを取得しており、車両30台で走行実験を行っている。

 自動運転に欠かせない重要技術は高精度地図である。科学技術会社として、滴滴は特に高精度地図の構築と検証面で世界をリードする経験を積んでいる。滴滴の全国的なネットワークを通じて、数十万台のセンサー搭載車両が情報を取得するとともに更新データを絶えず採集し、メンテナンスを行っている。現在、滴滴研究開発チームはすでに2,000キロメートルのセンチメートルレベル高精度地図を構築した。

 センシングシステムでは、ビッグデータ、マシンラーニングアルゴリズム、クラウドコンピューティングを含め、滴滴は一定の優位性がある。現在、独自に構築した世界最大のタグデータネットワークを持ち、センシングシステムのトレーニングを行っている。世界のトップレベルの科学者たちがマシンラーニングで絶えずシステムを更新している。また、滴滴はクラウドプラットフォームを持ち、検出されたビッグデータを利用して自動運転サービスを提供している。

 自動運転はレベル2からレベル4まで、車両運行の決定において大きな違いがあると滴滴は考える。レベル2におけるアダプティブクルーズコントロール(ACC)モジュールと車線維持モジュールなどは、決定過程を単純に積み上げたものである。複雑な道路状況におけるアーキテクチャは全く異なり、絶えず構造を最適化して自動運転体験を引き上げていく必要がある。

 

 

 



ビッグデータはいかに自動車産業の転換を促すか

陆敏 分享了大数据给汽车产业带来的变革经验

「汽車之家」の董事長兼CEO陸敏 氏ビッグデータが自動車産業にもたらす変革を語る

 世界でアクセス数の最も多い自動車情報サイト「汽車之家」は、国内外の自動車メディアのなかでも比較的大きな影響力がある。董事長兼CEOの陸敏 氏はビッグデータが自動車産業の転換をいかに促すか、その経験を紹介した。

 現在「汽車之家」へのアクセスは4,300万/日、見込み客データは50万件、これらをディーラーへ販売参考情報として提供している。「汽車之家」は現在デジタル化への転換を進め、ビッグデータの活用を大幅に広げている。

 「汽車之家」が日々生み出すビッグデータは行動データと態度データの2種類がある。行動データにはユーザーにおけるサイト内の回遊、関心のあるコンテンツ、興味のあるポイント、自動車購入者の購入プロセスなどが含まれる態度データは、好きな車のモデルの評価や意見などに関するユーザーとのインタラクティブデータである。これらのデータは整理統合すれば、OEM、ディーラー、流通業界及び未来の研究開発領域にとって大変価値のある情報になる。

 陸敏 氏は「汽車之家」が産業転換の中で得た一定の成果を紹介した。インテリジェントマーケティングでは、OEMとの商談や、見込み客データなどの利用を許諾している。これは世界の自動車業界の中でも独自の方法で、「汽車之家」のビッグデータ活用における自信と能力の表れである。また、この他にはOEMと連携して「汽車之家」が提供する消費者のフィードバックデータや競合製品のデータを利用し、新製品1モデルあたりの開発サイクルを25%短縮することに期待している。リアルタイムで開放するリサーチプラットフォームを維持し、情報を素早くフィードバックし、研究開発チームの業務を促進したいと考えている。

 



Cyber Physical System Reference Architecture of Intelligent and Connected Vehicle 1.0を発表

 新世代人工知能、ビッグデータ、クラウドコンピューティングは自動車交通システムに革命的な変化をもたらす。インテリジェント・コネクテッドカーは自動車、交通、情報、通信システムが深く融合した複雑なサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System、以下、CPS)である。CPSはコンピューティング、通信、制御を一体化した次世代インテリジェントシステムである。米国では運輸省が協調型インテリジェント交通リファレンスアーキテクチャ(Architecture Reference for Cooperative and Intelligent Transportation (ARC-IT、バージョン8.3まで更新) を発表した。欧州では「Horizon2020」でC-MobILEプロジェクトとして協調型高度交通システム(以下、C-ITS)を設計し、地方当局のC-ITS化を進めている。中国のインフラ規格、ネットワーク運営規格、自動車製品規格などは他国とは異なっているため、中国の状況に沿ったコネクテッドカー体系アーキテクチャの構築が早急に望まれている。国家インテリジェント・コネクテッドカー・イノベーションセンターが先頭に立ち、清華大学、中国情報通信研究院など主要な関連省庁と企業が一年余りの時間をかけ共同で作成した「Cyber Physical System Reference Architecture of Intelligent and Connected  Vehicle 1.0」が今大会で発表された。本発表は、コネクテッドカー中国プログラムの構築、複雑なシステムの全体設計、自動車・交通・情報技術産業チェーンのアップグレード推進にとって重要な意義を持っている。

 また、今大会では「電動車エンジニアリングハンドブック」がリリースされ出版記念セレモニーが執り行われた。現在、中国のEV保有台数は世界一である。本ハンドブックでは国内自動車業界の20年余りにわたる理論、技術、製品のイノベーション成果を総括したもので、規格、法規の刷新も含まれている。EV専門の主要な技術を系統だってまとめた参考書であり、自動車エンジニアリング学会の指導のもと、数百名もの専門家が3年をかけて編纂し完成させた。

发布智能网联汽车信息物理参考架构1.0 电动汽车工程手册 首发仪式
国家智能網聯汽車創新センター首席科学者の
李克強 氏がCyber Physical System Reference Architecture of Intelligent and Connected  Vehicle 1.0を発表
数百名の専門家が3年かけて編纂した「電動車エンジニアリグハンドブック」の出版記念セレモニー

 

 

 

 

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