日産リーフ分解調査:EV電動ユニットの新旧比較(写真集)

2010年型と2017年型リーフのモーター、インバーターなど主要部品を比較

2019/08/01

要約

  静岡県・浜松工業技術支援センターと公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構・次世代自動車センターによる「EV車両分解研修」(2019年7月11日開催)では、2010年型リーフが、2017年型でどのように進化しているかを部品展示と技術講演で解説が行われた。

  本稿ではリーフ2010年型リーフと2017年型リーフの電動ユニット主要部品(インバーター、DC/DCコンバーター、車載充電器、駆動モーター)について、画像を用いて相違点を説明する。

 

日産リーフ新旧主要諸元比較

車両/仕様 ZAA-ZE1
(2017年型)
ZAA-AZEO
(2012年型)
ZAA-ZEO
(2010年型)
全長×全幅×全高 4480×1790×1540mm 4445×1770×1550mm 4445×1770×1545mm
ホイールベース 2700mm 2700mm 2700mm
車両重量 1490kg 1450kg 1520kg
乗車定員 5名 5名 5名
交流電力量消費率(JC08) 120Wh/km 117Wh/km 124Wh/km
一充電走行距離(JC08) 400km 280km 200km
駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池 リチウムイオン電池 リチウムイオン電池
総電圧 350V 360V 360V
総電力量 40kWh 30kWh 24kWh
原動機型式 EM57 EM57 EM61
最高出力 kW(PS)/rpm 110(150)/3283~9795 80(109)/3008~10000 80(109)/2730~9800
最大トルク N・m(kgf・m)/rpm 320(32.6)/0~3283 254(25.9)/0~3008 280(28.6)/0~2730
動力伝達装置最終減速比 8.193 8.1938 7.9337
駆動方式 前輪駆動 前輪駆動 前輪駆動

出所:日産自動車ホームページ資料

 

静岡県における県内企業の技術支援体制

  静岡県は都道府県別の製造品出荷額で首位の愛知、2位の神奈川に続き、大阪に匹敵する規模をもつ。その出荷額の1/4を占める最大の産業が輸送用機械で、県内2位の電気機械産業と比較し約2倍である(政府発行 平成30年工業統計速報より)。また、浜松市は県下最大の人口である工業都市で、隣接する磐田・湖西の両市を合わせると静岡県全体の製造品出荷額の約 1/3 を占める。このような背景から、今回「最新EV分解研修」を共催した静岡県 経済産業部 産業革新局と公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構 次世代自動車センターは、いずれも将来の自動車産業動向を見据え県内企業を誘導していく重責を担う組織である。

EV車両分解研修の講演
EV車両分解研修の講演

  研修会場となった浜松工業技術支援センターは、静岡県工業技術研究所の組織下にある4拠点(静岡・沼津・富士・浜松各市)の1つで、担当地域における産学官の連携による新産業の創出や技術の高度化を推進する中核機関として、技術相談から設備の利用、依頼試験、共同研究、受託研究など、地域のモノづくり企業を総合的に支援している。

  今回の研修においては設備人員面のサポートだけでなく、技術解説(座学)や分解作業・部品の管理など、次世代自動車センターとともに中心的役割を担っていた。


  同センターでは、次の技術5分野に関して高度な計測・試験機器や専門知識・経験をもつ産業支援員を有しており、企業の研究開発・事業化・販路開拓等の課題解決をサポートしている:

  • 光:光学計測技術が中心。最近はレーザーの製造技術への応用に注力。
  • 電子:EMC(電磁両立性)技術が専門。車載、IoTなどの機器試験装置を新たに整備。
  • 機械:精密測定技術や品質工学が専門。次世代自動車関連の開発活動多数。
  • 材料:材料関連の試験・分析・破損解析等が専門。軽量化のための加工・表面処理技術に注力。
  • 繊維高分子材料:地域に多い繊維企業の支援や用途開発が専門。樹脂・ゴムの特性測定や劣化評価に専門性。

  研修の参加者は県内に主たる事業拠点をもつ企業約50社で、研修を通じて得た知見をもとに自社技術に磨きをかけ、完成車メーカーや大手部品メーカーへの新しい提案を目指すことを目的としている。また、分解部品の貸出しが可能で、各専門メーカーによる入念なベンチマーキング調査を可能にしている。これら調査結果は報告書として主催者に集められ、全ての参加企業にフィードバックされる。

 

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