MOVE 2018:インド初のグローバルモビリティサミット(2)

マルチ・スズキがEVを出展、シェアード/コネクテッドモビリティについての議論

2018/10/22

要約

Inspire
Maruti SuzukiがWagon Rベースの電気自動車を出展

 MOVE Global Mobility Summit 2018の2日目には、住宅都市開発大臣のHardeep Singh Puri氏、石油天然ガス大臣のDharmendra Pradhan氏、マハラシュトラ州首相のDevendra Fadnavis氏がスピーチを行った。様々なセッションが用意され、都市のモビリティ、グローバルリーダーが語る持続可能なモビリティ、各州の視点から見たシェアード・コネクテッド・シームレス・モビリティのための戦略など、スマートモビリティに関する政策および計画について会合が持たれた。これらの会合の参加者の大半が、公務員、行政府、そして世界の交通分野の専門家だった。1日目のテーマ別会合に関するプレゼンテーションは2日目にも行われた。

 電気自動車の小規模な展示会とOEMによるデジタル展示も会場内で行われ、Tata Motors、MG Motor、現代、Bajaj、Mahindra、ABB、Sun Mobilityなどが出展。政府系シンクタンクのNITI Aayogは、政策や今後のモビリティの見通しに関する報告書をいくつか発表した。

 

関連レポート:
MOVE 2018(1):未来のモビリティに向けて、モディ首相やスズキ会長などが講演 (2018年10月)



電気自動車の展示

 同時開催された展示会には各社からEVモデルが出展されていた。

 

マルチ・スズキ「ワゴンR」ベースの電気自動車

 Maruti Suzukiは「ワゴンR(Wagon R)」ベースの電気自動車(EV)を展示。同社はインド各地でEV50台を使う走行テストを開始したと発表した。実験で使用するEVは日本のスズキの現行車両をベースに開発したプロトタイプで、走行テスト用にMaruti Suzukiのグルガオン(Gurgaon)工場で生産された。同社は2020年からグジャラート(Gujarat)工場で電動車用リチウムイオン電池の製造を開始する。

 

日産LEAF

 日産はグローバルEV「リーフ(LEAF)」を展示した。同社は2019年1月からLEAF を100台使うパイロットプロジェクトをインドで開始する。テスト車両はすべて完成車として輸入する。2021年にはインド全土でLEAFを発売する計画もある。その場合は車両をノックダウン(CKD)部品として輸入し、ルノー日産のチェンナイ(Chennai)工場で組み立てる。

suzuki electric vehicle 3 LEAF 3
マルチ・スズキ Wagon Rベースの電気自動車 日産 LEAF

 

現代 Kona

 現代は「コナ(Kona)」の電気自動車モデルを展示した。現代Konaは今年初め、インドのAuto Expoでコンセプトカーとして展示された。MOVE 2018で展示されたKonaのEVは量産モデルで、航続距離は482km。

 

MG Motor RX5 SUVの電気自動車

 SAIC Motorの子会社であるMG Motorは、SUVの電気自動車「MG RX5」を展示した。1回の充電で425km走行可能。急速DCチャージャーでは45分間でバッテリーパックを充電できる。同社はまた、全額出資子会社のMG Motor Indiaに5億ドルを投資して新商品の開発を行うと発表。同社は複数の新エネルギー車モデルを発売する計画で、インドではグローバル電気自動車を発売する予定。

 

Tata Motors 電動バス

 Tata MotorsはMOVE 2018で電動バスを出展した。

MG Motor RX5 Electric 2 Tata EV bus 2
MG RX5 SUVの電気自動車 Tata Motors電動バス

 

Mahindra Treo

 Mahindraは、「Treo」と「Treo Yaari]を展示した。「Treo」は3人乗り、「Treo Yaari」は4人乗りの三輪電気自動車としてインドで発売予定。この三輪電気自動車シリーズは新しいリチウムイオン電池技術を使用、他の電池材料よりも耐久性が高く、メンテナンスが容易としている。

 

Bajaj Auto

 Bajaj Autoは、人力タクシーを電動化した車両「RE」を初公開した。動力源は交換可能な48Vリチウムイオン電池で、フル充電で120kmの走行が可能。

 

その他の車両展示

 Smart E、M Jindal、Mahindraは、アーバンモビリティ向けのソリューションを展示した。3Mは、デモカーを使って電気自動車用の革新的なソリューションを展示した。

Mahindra Treo Bajaj Auto RE アーバンモビリティ

 

ABBの急速充電システム

 ABBは急速充電システム「Terra HP」を初公開した。電気自動車のバッテリーをちょうど8分で充電し200kmの走行を可能にする。インドでは業界初のシステムである。

 

Sunのモビリティ電池交換システム

 Sunは二輪車と三輪車用のバッテリー交換システムを展示。このシステムは再生可能エネルギーを動力源として用いる。二輪車および三輪車のバッテリー交換に要する時間は1分未満。

 

デジタル展示

 デジタル展示のブースでは、各社の車両や事業計画に関する情報、開発動向についてバーチャル展示が行われた。Tata、ホンダ、トヨタ、Maruti Suzuki、SB Energy、Ola、Hero、現代などが映像を使って自社ブランドの紹介を行った。

Sunのモビリティの電池交換システム Maruti Suzukiのリチウムイオン電池モジュール Tata エコシステム


住宅都市開発大臣によるスピーチ

住宅都市開発大臣のHardeep Singh Puri氏

 住宅都市開発大臣のHardeep Singh Puri氏は、2030年までにインド都市部の人口が6億に達するとし、国家レベルでの強固な公共交通システムが必要だと語った。2025年までにインドでは1世帯当たりの収入が倍になり、政策展開が今よりも容易になるという予測も示した。公共交通が大気汚染や人口増加の問題に対応できるようにするために、自動車業界に対してはクリーン燃料や電気を使うモビリティソリューションの開発を求めた。また、人々が個人所有車から公共交通へと大きくシフトするための後押しが急務であると強調。都市部の渋滞解消のための政府の取り組みや、インドのモビリティ政策構築に関する情報も提示した。

 

 

 



都市部のモビリティ:現場の視点から

 本会合では、都市部におけるスマート交通ソリューションについて話し合われた。世界銀行のBalakrishna Menon氏がモデレーターを務めた。

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「都市部のモビリティ」セッション 世界銀行のBalakrishna Menon氏

 

 

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日産自動車のプレゼンテーション

 日産自動車CIO(最高情報責任者)のTony Thomas氏によると、OEMは現在、シェアードサービスやコネクテッドサービスを提供するモビリティソリューションのプロバイダーとなりつつある。新しいリーダーシップモデル、プレミアムサービス、サポートシステム、自動運転車、そして電気自動車の採用などにより、今後の動きはさらに加速される。日産のインテリジェントモビリティを支えるのはデジタル変革であるとも語った。イノベーションセンター、先進的なデータ分析、デジタル要員、製品とサービスのサイクル迅速化が支えとなる。同社はインドのケララ州(Kerala)に最初のデジタルハブを既に立上げている。

 

 ロンドン交通局CTO(最高技術責任者)のShashi Verma氏は、ロンドン市の交通の歴史について簡単に説明した。ロンドン交通局の機能を説明し、交通機関が1つに統合されていることでロンドン市民の生活を快適にしていると語った。

 

 南アフリカのOpen Streets Advisory Board Member兼交通コンサルタントのPhilip van Rynevald氏は、南アフリカの都市で展開されているアプリケーションをベースとしたサービスについて話した。このサービスはひとつのITプラットフォーム上で開発された。例として、マルチモーダル交通とラストマイルコネクティビティを提供するケープタウン市の交通モデルを挙げた。

 

 カリフォルニア州イングルウッド市の元市長Daniel Tabor氏は、MOVE LAの施策が市民参加型の成功モデルとなったと語る。この施策の結果、複雑な都市問題を解決するスマートで変革力のあるソリューションが生まれた。排気ゼロ/ほぼゼロの乗用車やトラックを増やすことで都市の大気をクリーンな状態に保つことを強調した。

 

 Mumbai Metro Rail CorporationのAshwini Bhide氏(IAS Managing Director) は、公共交通の統合に関する課題をいくつか紹介した。ガバナンスの問題に取り組むために大都市交通機関を1つに統合することを提案。これにより、マルチモーダルな統合が進み、輸送と土地利用政策の策定が進むとした。

 

 WhereIsMyTransportのClayton Lane氏(Mobility Specialist)は、人口が中小規模の都市の92%では完全な乗り換えマップが整備されていないことを指摘。スマートシティではデータプラットフォームの統合が必要で、そのプラットフォームを使ってインフォーマルな乗り換え情報を集めたり、アプリを使ったり、分析を行ったり、料金をひとつにまとめたりすべきだと述べた。またこのプラットフォームはオープンデータ開発プラットフォームであるべきだとしている。

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1つに統合された交通機関
(ロンドン交通局)
中小都市での持続的な輸送に関する取り組み
(Mumbai Metro Rail)
データプラットフォームの統合
(WhereIsMyTransport)


石油天然ガス大臣のスピーチ

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石油天然ガス大臣のDharmendra Pradhan氏

 石油天然ガス大臣のDharmendra Pradhan氏は、クリーンで効率的、料金が手頃なモビリティシステムの必要性を強く訴えた。電気自動車の拡大のためのシナリオがいかなるものであっても、インドにはより高度な精製能力が必要となるだろう。排気を浄化するために、インドは排気規制をBS-IVからBS-VIへと一足飛びに進めるとも付け加えた。

 大臣はまた、この分野ではCNGとLNGならびにバイオCNGの使用を後押しすること、10年以内に1万カ所のCNGスタンドを設置する計画があることを表明した。インドでは現在、12のバイオ燃料精製所を建設中で、エタノール10%混合という目標達成に向けた準備が進んでいる。

 電動車については、EVシフトを支えるインフラや経済の整備に関する課題があるとし、関係省庁の連携チームが包括的な政策の策定に向けて作業中であると述べた。

 

 

 



持続可能なモビリティに関するグローバルリーダー会議

 インドのテレビ局CNBC TV18のShireen Bhan氏がモデレーターを務めた。本会合では、世界のモビリティ分野における傾向および動向について概要をまとめた。

 

 シンガポール交通大臣のLam Pin Min氏は、シンガポールの交通システムを紹介。公共交通システムの改善と自動車の排気削減に向けたシンガポール政府の取り組みについて説明した。

 

 英国Beverley and HoldernessのGraham Stuart氏は、今回のサミットが、よりクリーンな自動車の市場が成長市場であることを業界に印象付け、ゼロエミッション技術への投資促進を助けることになると語った。2017年に英国は、欧州2番目の超低排出ガス車(ULEV)市場となった。開発者および生産者として英国はグローバルリーダーであり続ける。2017年に欧州で販売された電気自動車8台のうち1台は英国製である。

 

 南アフリカ交通副大臣のLydia Sindisiwe Chikunga氏は、交通の便の改善に向けて南ア政府が採用した政策について説明した。

南アフリカ交通副大臣のLydia Sindisiwe Chikunga氏 持続可能なモビリティに関するグローバルリーダー会議 シンガポール交通大臣のLam Pin Min氏


マハラシュトラ州首相のスピーチ

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マハラシュトラ州首相のDevendra Fadnavis氏

 マハラシュトラ州首相のDevendra Fadnavis氏は、同州が電気自動車政策を策定したインドで最初の州であると語った。同州では4万台の電気バスの運行が必要と説明。同州は、ムンバイ(Mumbai)用に1,000台、プネ(Pune)用に500台、ナグプール(Nagpur)用に300台の電気バスをすぐにも購入する計画である。電気自動車の充電に課す税率を下げる計画もある。およそ10,000kmの長さの自転車専用道路と歩道を含むNMT (non-motorized transport) がまもなく完成する。また、都市間のコネクティビティを向上するハイパーループのような交通モードも研究中であるとした。

 

 

 

 

 

 



シェアード・コネクテッド・シームレス・モビリティのための戦略

 シェアード・コネクテッド・シームレス・モビリティのための戦略会合では、KPMG Indiaの会長兼CEOであるArun M. Kumar氏がモデレーターを務めた。

 LG DelhiのAnil Baijal氏がスピーチを行い、デリー向けに3,000台のバスの購入を承認したと語った。うち200台はCNG車でそのほかは電気バスである。また、デリーで50台の燃料電池バスを使った実験を数カ月以内に開始すると述べた。電気自動車へのシフトや充電設備付きの駐車場設置に対するインセンティブを提唱し、都市としての政策が必要であることを強く訴えた。州政府はデリーとその周辺都市を高速鉄道網でつなぐ計画にも着手している。

 グジャラート(Gujarat)、ウッタルプラデシ(Uttar Pradesh)、ケララ(Kerala)、テランガーナ(Telangana)、ゴア(Goa)、そしてカルナータカ(Karnataka)の副大臣も、各州の政策に関する議論を行った。



テーマ別プレゼンテーション

 最後に、1日目のテーマ別セッションに関する議論が行われた。

 

資産活用の最大化

 本セッションの結果、車両の個人所有の増加を抑制し、あらゆる種類の移動用資産の活用を増やす必要があることが分かった。シェアードモビリティの課題は、コストと安全性、タイムスケジュール、強い動機、事業実現性、そしてマルチモーダル交通である。パネリストは、農業分野でのシェアードソリューションについて研究し、あらゆる種類の車両に対応する充電設備の開発を業界側に求めた。インドは今後15年間にこれらインフラの大半を構築することになる。従って、道路のインテリジェント交通管理システムなど、都市と地方のインフラの最適設計と開発が急務だ。政府はシェアリングを推進する新たなビジネスモデルに税制優遇措置を付与するべきとしている。

 

電動化と代替燃料

 本会合では、石油輸入、地球温暖化ガスの排出および大気汚染の問題に対処するために、インドはクリーン技術を採用しなければならないと結論付けた。可能性としては、ハイブリッド、100%電気、そして代替燃料などがある。インドの輸送用燃料の3分の2は二輪車または三輪車によって消費されているが、二輪・三輪は電気自動車に代替しやすい。多様な技術や燃料選択は市場競争にさらされるので、いずれも政府による支援を必要とする。車両と燃料技術はそれぞれ異なる速度で発展している。Eモビリティは急速に、水素系もかなりの速さで進んでおり、CNGと液体燃料は落ち着いた速度である。

 

公共交通機関の改革

 本会合では、インドは、時間に正確、マルチモード、ラストマイルコネクティビティの確立、適正価格、クリーンかつ安全な公共交通システムが必要であると結論づけた。インドは、政策と制度改革、統合された都市計画、チケット発券のための共通プラットフォーム、目標達成に向けたビッグデータの利用を推進する必要がある。インドは補助金を減らす必要があり、別ルートの資金調達と公共交通指向型の開発を推進すべきである。強固な輸送システムを確立するためには、公的部門に適切な量と質のバス、および公共部門のキャパシティが必要で、それによってシステムを統合し、公共交通システムのメリットについての認識を十分に広めるべきとしている。

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物流とロジスティックス

 本会合では、汚染パターン、都市流入パターン、多目的車両、およびその他の物流効率を最大化するための側面を含む、貨物の追跡に関する問題について議論した。物流の効率化は農業および地方経済の中での事業コストを下げることにつながる。商取引の拡大に伴い、商品移動の分野は変革期を迎えている。最適化されたトラック輸送、モーダル間の移動、旅客と貨物の同時輸送から、貨物やドライバーの交換といったビジネスモデル革新、自動運転トラック、配送ロボット、ドローン配送モデルなどの技術革新に至るまで、様々な手法が生まれている。

 

データ分析とモビリティ

 本会合では、モビリティ分野での革新を活用するための官民連携を強く訴えた。インドは現在、デジタルエンパワーメントが強く、UPIやAadharといった決済のためのフレームワークも構築されている。データアドバンテージもある。浸透率が低いという問題はあるが、それはチャンスであり、新しく効率的なモビリティモードへの飛躍の種となるはずだ。道路の安全性、ドライバー支援、そしてコーチングのためにAIも使うべきだ。交通データの分析は、スマートシグナル、インフラ計画、需要に基づくルート計画に役立つだろう。



閉会式

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 NITI Aayogは閉会式で全出席者と参加者に感謝の意を述べた。NITI Aayogは会期中にモビリティと交通分野に関する報告書を発表した。サミットは未来のモビリティに向かって前進し、新しいインドを作ろうという約束を最後に閉幕した。そして、再生可能エネルギーを利用した100%電動化したモビリティソリューションを達成するためのタイムラインを守ることを自動車業界に求めた。

 


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