【ものづくり】NVIDIA:ディープラーニングの急速な進化と活用事例

自動運転、AIマニュファクチャリング、AIシティの頭脳など

2018/07/27

要約

カリフォルニア州サンタクララのエヌビディア本社

カリフォルニア州サンタクララのエヌビディア本社

(本レポートの図表は全てエヌビディア提供)

 第11回大田区加工技術展示商談会が、2018年7月6日、大田区産業プラザPiOで開催された。本レポートは、同会場で行われた、エヌビディア インダストリー事業部 シニアアカウントマネジャー 矢本直也氏による「ディープラーニングが拓くロボティクスの新時代」と題した講演の概要を報告する。

 エヌビディアは、1993年の創業で、「ゲーミング」「AI(人工知能)」「自動運転車」など事業領域は多岐に渡る。コンピューターの世界は、1995年にマイクロソフトがWindows 95を発売、次いでモバイルフォン、クラウドの普及と進み、今やディープラーニングによるAIの時代となったとしている。

 ディープラーニングについては、2012年頃に、ニューラルネットワーク技術の発展、ビッグデータの収集と分析手法の確立、さらにエヌビディアが提供するGPU(Graphics Processing Unit)のパフォーマンス向上という3条件が揃い、急速な発展を続けている。

 ディープラーニングにより大幅に進化したAIは、広い範囲に適用されている。

 自動運転については、走行データの収集、ディープラーニングによるモデルの学習、シミュレーション、運転操作という、自動運転の全領域をカバーするプラットフォームを提供する(End-to-end platformと呼ぶ)。

 さらに、自動運転以外においても、あらゆる産業分野に浸透し、生産性の向上への貢献を開始している。多くの活用例が紹介されたが、本レポートでは、「ファナックのAIマニュファクチャリング」「武蔵精密工業のAIによる外観検査」「コマツのAIコンストラクション」、および「AIシティの頭脳」を報告する。

 

 



エヌビディアの紹介

 エヌビディアは1993年に創業され、1999年にコンピューターグラフィックスの演算などを行う画像処理装置GPU (Graphics Processing Unit)を開発した。現在従業員は約12,000人、うち8,000人がエンジニアで、その半数以上がソフト開発に携わっているという。「AIコンピューティングカンパニー」と称し、その代表的な事業領域は「ゲーミング(1,000億ドルの産業)」「人工知能(3兆ドルのIT産業)」「自動運転車(10兆ドルの交通産業)」などを対象とし、「NVIDIA GPU」という同一のプラットフォームをすべての分野に提供している。

GPUコンピューティング時代の到来、ディープラーニングの急速な発展

AIの時代
AIの時代

 ここ20年のコンピューター利用の歴史を振り返ると、1995年にマイクロソフトがWindows 95を発売し本格的PCの時代となり、その後AppleからiPhoneというモバイルフォンが登場、クラウド利用の普及と進んだ。いまやディープラーニングによるAIの時代を迎え、これまでコンピューターにおいて最も困難とされてきた課題の解決が可能になってきている。

 ディープラーニングは、2012年頃から飛躍的な進化と実用化が進んでいる。2012年に開催されたILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge、画像認識の世界的競技会)で、ディープラーニングを活用したチームがエラー率16.40%(2位以下は26%台以上)という好成績を上げた。2016年には正答率が97%まで高まり、これは人間の正答率とされる95%を超えている。

 2012年頃には、上記のニューラルネットワーク技術の発展に加え、ビッグデータの収集と処理能力の向上(メモリーなど)、さらにエヌビディアが提供するGPU(Graphics Processing Unit)のパフォーマンス向上という3条件が揃い、発展を加速させた。ディープラーニングでは、入力データが多ければ多いほど有効な結果が得られるが、そのための膨大な計算もGPUパフォーマンスの向上で可能となってきている。GPUをグラフィックス処理目的以外の演算に使うことを、GPGPU(General-purpose computing on GPU)と呼ぶ。エヌビディアによると、CPUの集積度アップによる性能向上は限界に近づいているが、並列処理が得意なGPUコンピューティングはさらに性能向上を続ける見通しとのこと。



ディープラーニングの構造

  AI(人工知能)の一分野にマシンラーニング(機械学習、AI自身が学習する)があり、ディープラーニング(深層学習)は機械学習の1つの分野である。

 ディープラーニングは、多数の層から構成される「人工ニューラルネットワーク」を活用する。人工ニューラルネットワークは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)の仕組みをプログラム上で模したモデルと言われている。

  ディープラーニングには、「学習(training)」と「推論(inference)」の2つのフェーズがある。

  「学習」では、1)入力されたデータに従い結果を出力、2)期待された結果(正解)との違いを誤差として計算、3)誤差を用いて、人工ニューラルネットワーク各層の重みパラメーターを更新、4)誤差が小さくなるまでこの過程を繰り返すことで、人工ニューラルネットワークの精度を高めていく。

 AIは、学習した結果を新しいデータに適用して推測を行い(AI用語で「推論」と呼ぶ)複雑な問題を解くことができるようになった。

ディープラーニングは、AIの一分野 人工ニューラルネットワークの構造 ディープラーニングの学習フロー
ディープラーニングは、AIの一分野 人工ニューラルネットワークの構造 ディープラーニングの学習フロー

 

 



自動運転向けAIプラットフォーム NVIDIA DRIVEを提供

  自動運転関連では、独自の自動運転試験車BB8を作り(車両はFord車やLincoln車などさまざま)走行実験を行っている。世界の多くの自動車メーカー、ティア1サプライヤーと提携し、日本では、トヨタ、パイオニア、ゼンリンなどと提携している。

 エヌビディアは、自動運転向けAIプラットフォーム NVIDIA DRIVEを開発した。走行データの収集、ディープラーニングによるモデルの学習、シミュレーション、運転操作という、自動運転の全領域をカバーしている(End-to-end platformと呼ぶ)。また、オープンプラットフォームであるため、自動運転車の開発者はNVIDIA DRIVEを利用して自社の自動運転システムを強化することができる。また、自動運転のレベル2やレベル3から、ロボタクシーと呼ばれるレベル5の完全自動運転まで、様々なスケールの目的に対応可能。

 なお、実世界での走行だけでは学習モデルを含む自動運転ソフトウェアの検証として十分な距離を走り込むことは困難なため、シミュレーションシステムの強化に注力している。2018年3月に、シミュレーションシステムであるNVIDIA DRIVE SIMと実ハードウェアを用いた検証システムであるNVIDIA DRIVE Constellationを発表した。暴風雨、吹雪などの異常な天候、夜間における限定された視界、あらゆるタイプの路面および地形など、稀にしか発生しない条件や運転が困難な条件を含めて膨大な数におよぶテスト環境を作り、学習モデルをその中で検証し、さらにその学習モデルを搭載した車載AIコンピューターをシミュレーションシステムにつなげることで、実世界の走行と同じように認識するかを検証できるとのこと。2018年第3四半期から、一部のパートナー向けに早期提供を開始する。

NVIDIA DRIVE シミュレーション 自動運転検証システム
NVIDIA DRIVE シミュレーション 自動運転検証システム

 

 



ものづくりの現場におけるAI:ファナック、武蔵精密工業

ファナック:AIマニュファクチャリング

 エヌビディアとファナックは2016年10月に提携し、ファナックの製造業向けIoTプラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive system(FIELDシステム)」におけるAIの実装に関して協業を発表している。

 ファナックはFIELDシステムにおいて、AIを使ってロボットや工作機械を賢くし、製造業の生産性向上を目指している。
 AIによりロボットの稼働状況を分析することにより、これまでは予知できなかった故障の予兆を事前に検知することが可能になるという。

 

武蔵精密工業:AIによる外観検査

 製造業における目視検査工程は、これまで作業者の習熟度に依存するところが大きく、精度とスピード向上のため、自動化が求められてきた。

  検査を行う作業者への負担が大きく、コンディションや習熟度による差異も目立っていた。NVIDIA Jetson を導入し、AIを使った外観検査による自動判定により、無人化・省人化、検査スピードの向上、検査精度の安定化を図る。

ファナックが開発するAIマニュファクチャリング AIによる外観検査
ファナックが開発するAIマニュファクチャリング 武蔵精密工業のAIによる外観検査


その他の導入例:コマツ、AIシティの頭脳

 講演で紹介されたその他の事例から、「コマツAIコンストラクション」と「AIシティの頭脳」を報告する。

 

コマツのAIコンストラクション

  2017年12月、NVIDIA Jetsonを中心とするAIプラットフォームを導入し、「スマートコンストラクション」を拡張することを発表した。GPUがドローンやカメラと通信することで、現場全体の可視化を実現、建機の周りにいる人や機械を直ちに認識できる360度映像が可能になり、接触や衝突などの事故を防ぐ。また、刻一刻と変化する状況をリアルタイムに認識し、建機のオペレーターに的確な指示を与えることができる。

 

AIシティの頭脳

 2020年までに、世界で10億台のカメラが稼働するとされ、この膨大な画像を人間の目で追いかけることは不可能である。AIベースのビデオ分析で、より安全で効率的な都市を目指す。AIシティ向けのプラットフォーム NVIDIA Metropolisを導入し、特定の人を探す、特定のナンバーの車を探す、リアルタイムの顔認証などに力を発揮する。Alibaba、 Dahua、Hikvision、Huawei(4社は全て中国企業)を始め、世界で25以上のパートナーと提携している。

コマツのAIコンストラクション AIシティの頭脳
コマツのAIコンストラクション AIシティの頭脳

 

キーワード

エヌビディア、NVIDIA、GPU、ディープラーニング、自動運転、AI

<自動車産業ポータル MarkLines>