内燃機関の改善と電動化への取り組み

オートモーティブワールド2018:マツダと日産の基調講演より

2018/02/16

要約

  本レポートは、2018年1月に東京ビッグサイトで開催された第10回オートモーティブワールドにおける基調講演の中から、マツダと日産の内燃機関改善および電動化への取り組みに関する内容を報告する。講演内容の要旨は以下のとおり。

 

マツダ:内燃機関改善に対する目標と取り組み

  マツダ株式会社 常務執行役員・シニア技術フェロー、技術研究所・統合制御システム開発担当 人見光夫氏による基調講演の概要は以下のとおり。

  現時点では確かにICE(内燃機関)車はEV(電気自動車)に比べるとCO2排出量が約50%多いが、だからと言ってICE車をEVに置き換えるのは全体最適の観点からは得策ではない。CO2発生の少ない発電方法で得られた電力は、まず石炭発電などを減らす方に使うべきである。自動車のEV化に頼るのではなく、発電方法と自動車の両方でCO2排出量を削減する努力をする方がインフラコストも安く、CO2排出量低減効果も大きい。

  Skyactiv搭載車で実用燃費を10%強改善すれば、平均的発電方法で供給された電気を使うEVにCO2排出量で追いつく。火力発電で最もCO2発生の少ないLNG発電で供給された電力で動くEVにも25%程度の改善で追いつく。これが当面の目標となる。CO2排出量25%改善はSPCCI (Spark Controlled Compression Ignition) のSkyactiv-Xに遮熱効果を付加すれば可能となる。

  排気規制は個別に規制値を考えるのではなく、全体最適化の視点で見れば、もっと効率的に有害物質の排出を抑えられる。乗用車は貨物車の3倍CO2を出しており、貨物車は乗用車の7倍NOxを出している。例えば(総排出量の少ない)乗用車のNOx規制値を若干緩和することで、(寄与度の大きい)燃費を10~15%改善、つまりそれだけのCO2排出量を削減できる。

 

日産:次の100年に向けた自動車用エンジンの革新

  日産自動車株式会社 常務執行役員 パワートレイン技術開発本部 平井俊弘氏による基調講演の概要は以下のとおり。

  日産の中長期ビジョン:

  • CO2排出量を2050年までに90%削減する
  • 大気汚染物質を排出ガス規制にかかわらず、ゼロレベルに削減する
  • 内燃機関の高効率化による低燃費車の拡大
  • バッテリーEVの普及を推進する


  バッテリーと液体燃料のエネルギー密度を比較すると、バッテリーをすべてのクルマに積むにはまだまだ重くて大きい。

  内燃機関の熱効率向上の手段として、可変圧縮比を展開していく。高出力と熱効率の両立、リンク機構による理想的なピストン運動により、側圧を減少してフリクションを低減し、二次振動を抑制する。

  内燃機関の役割を変える技術として、e-POWERを導入。バッテリーEVのバッテリーの代わりに内燃機関を発電機として使う。内燃機関の作動条件を絞ることで効率の良い領域だけで運転することで、同時にバッテリーEVと同様に減速時のエネルギー回生を行う。

 

SKYACTIV-X VCターボエンジン
SPCCIを採用した次世代エンジン SKYACTIV-X
(東京モーターショー2017に展示)
可変圧縮比を実現したVC-Turboエンジン
(デトロイトモーターショー2018に展示)

 

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