好調な北米が一部新興国の不振をカバー:日本乗用車7社の第1四半期決算

世界販売は1.1%増、北米では8.1%の拡大、新興国市場は1.1%増にとどまる

2015/08/24

要 約

乗用車各社の為替効果(対前年同期)
海外販売における北米比率

 2015年度第1四半期、日本乗用車7社の業績は、北米での好調な売上高と利益が一部新興国の不振をカバーし、7社全体で10%を超える増収・増益を達成した。しかし多くの新興国では、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和拡大終了(2014年秋)や2015年内の利上げ見込みなどにより通貨が下落し、日本各社の営業利益にマイナスに働いている。

 各乗用車メーカーの主力とする市場とその国の為替動向が、各社の収益に大きく影響している。また当面の世界市場は、米国市場での堅調な販売と西欧市場の回復が見込まれる一方、中国を含む新興国市場は伸び悩んでいる。

 2015年度(2016年3月期)第1四半期の日本乗用車メーカー7社の業績は、前年同期に比べ売上高が12.7%、営業利益が17.2%、当期純利益は13.7%拡大した。

 営業利益増の最大要因は為替影響で、その効果は2,372億円。7社は2015年度期首に、2015年度通年の為替影響を1,713億円 の減益効果と予想したが、第1四半期には1ドルにつき前年同期比19円の円安となり、売上高・営業利益を押し上げた。メーカー別では、北米販売比率の高い富士重(営業利益が70.5%増)と日産(同58.0%増)が大幅増益となった。米ドル以外の通貨では、ユーロ、ロシアルーブルなど多くの通貨が円に対して弱くなっていて、総額1,014億円の減益効果となった。

 7社は、第1四半期決算発表時に、通年度の為替影響を減益効果723億円に修正した。マイナス影響に見るのは、7社が年度平均で対ドル・ユーロ他の通貨レートを慎重に(8月中旬より円高に)想定しているため。マークラインズは、為替レートが現状と同程度で推移した場合、7社合計で3,000億円程度営業利益が増加すると試算している。

 また7社合計の販売台数は1.1%増、地域別に見ると北米で8.1%拡大したが、日本は11.3%減、欧州は2.1%増、アジア他新興国地域は1.1%増にとどまった。北米事業が、販売台数・収益ともに大きく貢献した。



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